tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本:不思議な国の「賃金・物価」物語

2023年11月30日 14時12分44秒 | 経済
日本の賃金が「あまりに上らない」からでしょう、公正取引員会が、
「賃上げを価格転嫁する」ための「企業の行動指針」
を取りまとめて公表しました。

これは大変結構なことで、このブログでも、「賃上げの力のない中小企業などが賃上げをしたら、その分を価格転嫁できるようにすればよい」と指摘して来ました。

おそらく世界の先進国を含む多くの国でこの話を聞いたら、政府機関が、賃上げした分価格転嫁してよいと言ったら、たちまち経済は賃金インフレになって、結果は賃金物価のスパイラルで、ハイパーインフレが発生しますよ。そんな国は、すぐに国際競争力を失って立ち行かなくなるだけだよ、と物笑いになりそうです。

ところが、日本では、経済活動についてのレフェリーの代表である公正取引委員会が、それをやりなさいと指針まで公表するというのです。

報道による内容の主要点を挙げますと、
発注する企業に対しては、人件費の転嫁を受け入れる取り組み方針を経営トップまで上げて決定し、社内外に示すこと、といった懇切な説明があります。

受注する企業に対しては、価格交渉の際は根拠として最低賃金の上昇率や春闘の妥結額などの公表資料を利用することや、価格を提示する際には自社のみならず、下請け企業などの人件費も考慮して行うこと、とこれまた、まさに懇切丁寧な説明があります。

何で、世界の中で日本だけ、こんな事が起きるのかについては、少し先回りして、このブログの「賃上げ圧力の弱い社会」で説明し、そんなに賃上げを奨励しても日本経済は大丈夫なのかは、「日本経済活性化の鍵」以降の3回シリースで分析しています。

岸田政権の大きな間違いは、政府がカネをばら撒けば経済が活性化するという自己都合中心の経済政策(補助金、給付金は票につながるという期待感)しか見えないという事でしょう。財源は赤字国債だと国民は知ってます。

今回の公正取引委員会の政策は、純粋に「良いルールの設定」と、「レフェリー」に徹することで日本経済の活性化と図るという「本来の」経済政策の在り方の実践であるという点が素晴らしいと思います。

岸田政権が赤字財政でのバラマキでなく、この公正取引委員会の方針に最重点を置けば、効果はバラマキの何倍も大きいでしょう。

理由は、経済の現実のプレーヤーである「労使の行動」によって直接に経済活動のバランスを回復する事が可能になるからです。

アベノミクス以来、日本は「インバウンドは日本がリード」などと言われるほど、物価もそして賃金も安い国になって、しかも賃上げを皆が遠慮している国なのです。
このまま放置すれば、プラザ合意の時のように、世界で問題にされる恐れすら予見されます。

やらなければならない事は解っているのです(賃金水準の引き上げです)。
多分、日本経済の活性化は、「不思議な国日本」が、「不思議な国」でなくなるのと同時にスタートという事になるのではないでしょうか。

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