「その日はヨットやから遅くまで部活やわ。ごめん。また次の機会やな。」
またこうして、友達の誘いを断らなければならない。こういう時、面倒だと思う。
「またヨットかよ。お前も懲りへんなぁ。もう12月やぞ。ヨット部ってほんとおかしいよ。」
「そうかもね。冬の海は、寒くてあんまり頭働かない。」
「俺は夏の海しか知らんけど、今はめっちゃ冷たいやろ。」
「冬の練習は手先の感覚なくなるな。正直きつい。毎年恒例やけど、手の皮むけて痛くなって、日常生活に異常をきたすんや」
「お前らさぁ、1年でどれくらいヨット乗ってるんや?」
「あー。そんなことあんま考えたことなかった。オフ期間もあるけど、長期休暇期は週5日することもあるし。自主練も合わせて1年で平均して週3日するって考えたら、年間ざっと150日海で過ごしてることになるかな。」
「人間は陸で生活する生き物やねんで。」
「言われんでも分かっとうわ。毎日ありがたく陸に帰ってます。」
「1日どれくらい練習するん?」
「基本的に朝から日くれるまでやっとうわ。ヨット部ある日は練習で疲れて、他になんもできへんな。」
「ほんまに、なんのために大学いっとんねんって話やな。」
「俺もたまに自分で自分を疑問に思うわ。必死こいて努力してやっとのことで天下の東大入って、蓋開けてみたら、海出る日ばっかやもんな。」
「ヨット、そんなに楽しいんか?」
「楽しい瞬間は確かにあるよ。でも別にずっと楽しいわけちゃう。苦労の方が多いかもしれんな。台車でガソリン缶押して買いに行ったりするし。葉山ってとこで練習するときは合宿所とハーバーの往復でヘトヘトなるし。海出ても風無くて1日中待って終わることもあるんや。」
「へぇ〜。大変やな。ご苦労さん。」
「ありがとう。」
「んで、お前らは何を目標としてんの?」
「関東で6位入賞して、全日本大会も出場して、今年の屈辱を晴らすんや。」
「それってどれくらいむずいことなん?」
「俺らスポーツ推薦もないし、未経験者ばっかやから、茨の道やねんな。今年はありがたいことに1年生で経験者3人も入ってくれたけど、それ以外全員未経験や。」
「すまん、ちょっと辛いこというかもしれん。将来ヨットで飯食ってくわけちゃうやろ?仮に全日本出場できてその先は?万が一その関東入賞をできてそのあとは?結局お前らのとこより強い大学がおって、そういうとこに負けて引退するんやろ。」
「お前、辛辣やな。でも、本当のとこはそうやと思う。。でも入賞、カッコええやん。俺らの代で勢いのせて、後輩たちがゆくゆくは優勝してくれるのが楽しみなんや。俺らは嬉しいことに後輩たちには恵まれとうからな。」
「心底疑問や。なんでそんなにも本気になれるんや。なんでこんなにも楽しい大学生活捨てて、しんどい方を選ぶんや。」
「毎年引退される先輩方がめっちゃカッコよくてな。どんだけ練習しんどくても、辛くてやめたい思っても、最後は結局、俺もこんな人たちになりたい、こんな人達に囲まれて大学生活過ごしたいって、毎年思わされるんや。いうても次の引退は俺らの番やねんけど。」
「やっぱお前バカだな。カッコいいだけで動いとる。」
「そうかもな。でも他の部員も、多分俺みたいなバカ多いんちゃうかなぁ。。」
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ヨット部の良さを話そうとすればするほど、相手に伝わらないことが多いものです。部活やってる方なら、結構わかってくれるんです。すみません。この会話読んでちょっと胸糞悪いと思った方もいるかもしれませんね。
さて、今年のスローガンは凡事徹底です。掃除、あいさつ、時間守る。当たり前のことを当たり前のように”ちゃんと”する。なかなか難しいものですが、自分含め、少しずつですが部全体が変わっているようにも見受けられます。このスローガン、そっくりそのまま自分の今年の抱負にしようかなと思います。
長くなりました。最後になります。緊急事態宣言でまた練習ができなくなりました。仕方ないことだと受け止めるのはもう慣れましたな。先がどうなるかは見えませんが、いずれ再開したときにはまた生き生きと帆走できるよう、この自粛期間を生かして、もう一度自分を謙虚に見つめ直したいと思います。
ラスト1年、最後まで”ちゃんと”走りきります。
新4年 470クルー 齊藤崇
明日は、1年マネージャーの小屋さんになります。お楽しみに。
自分もあとは読むだけでいいので楽ですな。みなさん毎日楽しみにしてます。