徐勝の東アジア平和紀行―韓国、台湾、沖縄をめぐって | |
徐 勝 | |
かもがわ出版 |
こんな本が出たそうです。まだ読んではいません。本屋さんへの注文ばかりが増えていきます…。
次の紹介文は琉球新報です。佐喜眞道夫さんはかつてNPO法人広島県手話通訳問題研究会(手話センターひろしま)が沖縄学習の旅を企画した際にお世話になりました。
在日朝鮮人の徐勝さんはソウル大学校大学院に留学中、韓国の反共法のかどで政治犯として1971年から19年間獄中にいた人である。
東アジアは冷戦構造の中で台湾では蒋介石、蒋経国、韓国では李承晩、朴正煕と、いずれもアメリカに追従する反共独裁政権が続いた。戦中の「親日派」は「親米反共派」に衣替えし隠然たる力を持ち温存されている。沖縄も冷戦時代から今日までアメリカの防共ラインの要石と位置付けられてきた。そこでは民衆に対する無慈悲な人権弾圧と、国家テロリズムが横行し多くの人々が政治監獄につながれた。しかし冷戦の終結と80年代後半からの長い民主化闘争で独裁政権の解明が進み、政治犯の人権と名誉が回復されてきた。今、東アジアは劇的に変わろうとしている。
氏は出獄後東アジアの人権、平和、国家暴力を対象とする研究者として今年の3月まで立命館大学の教授も務めた。本書は徐勝さんが東アジア民主化闘争の先頭に立つ人々を台湾に、韓国に、そして沖縄に訪問し、共通の体験を語り合い抑圧構造の解体を目指す旅日記である。その身体的感覚と深い学識から来る探求は、私たちが知らなければならないたくさんの知識と重大な事実を指摘する。
例えば、沖縄平和祈念公園の「黎明の塔」の前では、戦争終結の責任を放棄し自殺した牛島司令官、長参謀長を顕彰する碑文を当時戦争遂行の中枢にいた吉田茂が揮毫(きごう)しているのを見て「これは戦犯祈念公園ではないか」と指摘するのである。沖縄平和祈念公園が靖国化しているのではないか、という東アジアからの声に沖縄は応えなければならないだろう。そのためには沖縄戦を体験した者として「ゆずることのできない私たちの信条」である「沖縄の心」を思想的にも心情的にも深く胸に刻むことが必要となるだろう。
徐勝さんとともに東アジアの身近な人々から数多くのことを学び、大切な問題を突き付けられる濃い旅の紀行文である。(佐喜眞道夫・佐喜眞美術館館長)