分度器
人間はほんらい、きっと一人一人
遮るもののない
パノラマの視界を与えられて
誕生するはずなのだが・・
僕の分度器は
いつだってそれ程の
深く広い視野の角度を
示してはくれないのだ
北を向いているときには
きっと、南には盲目だし
東の方角に関心を持てば
西のことは忘れる
いつでも四周に神経を配り
いつでも100%の視界を実感するのは
確かに至難の業ではある
艱難辛苦の果てに
其其の頂を極めた者だけが
戴冠の栄誉を享受する
多寡だか数刻の苦悩や
言語に尽くせる労苦で
踏める頂など皆無なのだと教える
当然のように
僕はまだ分度器の広大無辺に存在する
どんな頂も踏めないでいる