或る物語
産まれたというその事だけで
幸せな瞬間がある
けれど
それは記憶の添え書きのようなもので
誰も覚えてはいない
但し書きの失意や,餞別の栞や
剰え,最初で最後の不幸の体現もある
どんなに多くの幸運を辿ったとしても
不運でしか終われない不幸もある
未知の未来に
定額の幸不幸の価値はないのだ
それだから,其其のonoreは
記憶に残してゆく幸福を求めて流離う
それこそが,生まれついた最初の命題
天恵のenisiをビタミンに
心交の絲を結び,心幅をutaにし
心楽を希求する長く途方もない旅路
生きるとは
最期の幸福を設えるために
そのinochiの総力を費やすること