囲碁きちの独り言 Ⅱ

趣味の旅行、うたごえ、囲碁の事や日常の出来事を記録する。

こんな時代にさせないために・・・

2023-06-12 08:25:51 | 囲碁きちのつぶやき

昨日の東京新聞です。「週のはじめに考える」として以下の記事が掲載されました。

今の政治状況を見るにつけ、私もあの忌まわしい戦争中のことを思わざるを得ません。そんな時代に戻そうとする輩が跋扈しているからです。

自らのj自省と勉強のためにあえて転載させてもらいます。

 

「狂気の再来」101歳の警鐘

                    週のはじめに考える

「まさか自分が逮捕されるなんて思ってもいなかったんだ」。ベレー帽が似合うその人は東京・永田町の議員会館でマイクを握っていました。北海道旭川市に住む百一歳になる画家、菱谷(ひしや)良一さん=写真。戦時中に治安維持法違反で逮捕された経験があり、全国組織「治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟」が五月に行った国会への請願行動に参加するため、高齢を押して駆け付けたのです。

◆自由奪った治安維持法

 日米開戦が迫る一九四一(昭和十六)年、北海道を舞台に「生活図画事件」と呼ばれる思想弾圧事件が起きました。
 教員を育成する旭川師範学校五年生で十九歳だった菱谷さんは治安維持法違反で逮捕され、懲役一年六月の実刑判決を受けます。身の回りの生活をありのままに描く美術教育を実践していた同校や旭川中学の教師と生徒、卒業生ら計二十六人が検挙されました。
 発端はその年の一月、作文指導をしていた北海道綴方(つづりかた)教育連盟の教師五十三人とともに、旭川師範の教師で美術部顧問の熊田満佐吾さんが検挙されたことでした。
 美術部の活動と美術教育の全体が「コミンテルンや日本共産党の目的遂行のためにする行為」とみなされたのです。熊田さんの影響を受けた危険人物として、菱谷さんら美術部員の学生らが検挙されたのはその八カ月後でした。
 治安維持法は「国体の変革」や「私有財産制度を否認」する結社などを取り締まるため、二五(大正十四)年に制定されました。共産主義思想の取り締まりが主な目的で、敗戦時に連合国軍総司令部(GHQ)に廃止を命じられるまでの二十年間、国民から言論や表現、思想の自由を奪い、戦時体制維持に猛威をふるいました。
 特別高等警察(特高)に拷問を受けた作家小林多喜二の死は知られていますが、どれほどの人が犠牲になったか。歴史学者の荻野富士夫さんらの調査で検挙者数は十万人余とされていますが、全体像は分かっていません。
 「絵を描き、映画や読書について語りあっていただけの若者が非国民の犯罪者に…」。手錠をかけられたしぐさで語る菱谷さんは共産党とは無関係でした。強引な検挙の背景には、法を変質させた度重なる改正があります。
 最高刑を死刑に引き上げた二八(昭和三)年の改正では「結社の目的遂行の為(ため)にする行為」を処罰の対象とする「目的遂行罪」が導入されました。
 労働組合や文化芸術活動も「共産主義を広める行為」とみなされれば弾圧可能になり、生活図画事件で有罪となった人々にも目的遂行罪が適用されました。
 四一(同十六)年の改正では国体変革を目的とする結社だけでなく、それを支援する「支援結社」や「結社にあらざる集団」まで取り締まりの対象とされ、適用範囲は飛躍的に広がりました。
 特高や検察が脅しとすかしで有罪証拠をでっちあげたことは菱谷さんらの例でも分かります。
 ロシア文学の蔵書は共産主義者の証し。押収絵画に描かれたレコード鑑賞会や話し合う人々は「共産主義者の集会」。「共産主義を知らない」と答えると、マルクスの資本論を渡され、作文を書かされる。捏造(ねつぞう)された尋問調書に菱谷さんは母印を押したのです。
 一年三カ月投獄された刑務所の独房は冬は氷点下三〇度にもなりました。出所後に召集された北海道の部隊で敗戦を迎え、戦後はガス会社で定年まで働きました。

◆最後の生き証人として

 転機は事件から六十年の歳月が流れたころ、同級生の呼びかけで始まった事件の真相究明です。菱谷さんは一緒に検挙された仲間の松本五郎さん=二〇二〇年に九十九歳で死去=らとともに治安維持法犠牲者として実名を公表して証言を始め、国に謝罪と賠償を求めてきました。菱谷さんは事件の最後の生き証人とも言えます。
 その菱谷さんが今、心配しているのが、安倍政権時代に成立が強行された「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法です。
 共謀罪の対象は組織的な犯罪集団に限られていますが、内心に踏み込んでの処罰が可能となっていることで「現代の治安維持法」と呼ぶ専門家もいます。
 菱谷さんは「『共謀罪』法は治安維持法そっくりだ。狂気の時代を繰り返してはならない」と強調します。国民全体を弾圧対象にした悪法の歴史を再来させてはなりません。「平和を守りたい」。菱谷さんが鳴らす警鐘にこそ、耳を傾ける必要があります。
コメント
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