明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日にむけて(15)原発事故作業員を守りたい!

2011年04月02日 22時00分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110402 22:00)

友人が、原発事故作業に従事している方々を、将来にわたって守るべきだ
という提言が出されていることを教えてくれました。一読して共感したので、
みなさんにご紹介します。
また毎日新聞が、現場に急きょ派遣され、投入された東電社員のインタビューを
載せています。現場のリアリティが分かる良い記事だと思います。

事態がどう進むか、予断ができませんが、僕はその先のことも少し
見通しておかなくてはならないと思います。「ゆっくり進むチェルノブイリ」の先に、
「チェルノブイリのその後」が待ち構えているだろうということです。
原子力政策を推進したい人々が、事故後の影響の過小評価を始める可能性
があるということです。

実際、チェルノブイリの後にそれが起こりました。1990年の4月から12月に
かけて、ソ連政府から要請をうけたIAEAが、25カ国とWHOなど7つの国際機関
から約200人の専門家を組織してチェルノブイリ事故調査を行いました。
このとき日本は、広島放射線影響研究所の重松逸造理事長を、団長として
送りこみましたが、この方は、かつて水俣病を「調査」し、水俣病とチッソの
因果関係を否定した人物でした。

その結果、出たのは、
「汚染地域の住民のあいだに、チェルノブイリ事故による放射線の影響は
認められない。ソ連政府の出したデータはおおむね正しく、とられてきた
汚染対策も妥当である。ただし、避難と食物制限については、放射線
防護の観点から必要な範囲を超えており、もう少し緩和すべきである」
という報告でした。(『原発事故を問う』七沢潔 岩波新書 P238-239)

実はこの調査には、原発から半径30キロ圏内からの避難民13万5千人や、
事故処理作業に従事した60万人の作業者が入っていませんでした。この
限定的調査の結果を、原子力推進の側に立つIAEAは利用し、放射線被ばくの
影響を小さく表現しようとしたのです。
これにより被ばく者の救済が遅れたり、多くの人々が、保障を受けられない
事態も生まれました。これがチェルノブイリの後に起こったことでした。


チェルノブイリのその後と同様のことが繰り返されないために、私たちは、
作業を行った方への将来にわたる医療保障を求めるとともに、現場で行われて
いる作業の実態を、可能な限り、監視していきたいものです。
今後、多くの方がこの仕事に従事することをも考えて、さまざまなところで、
放射線被ばくの恐ろしさと、身の守り方を学んでいきましょう。

またIAEAの調査のような露骨なことが行われなくても、そもそも放射線被ばくに
よる健康被害は個人ではなかなか証明しにくいことを見据えて、あらゆるところで
記録を取っていくことも提案したいと思います。


とくに作業に赴かれる方には、可能な限り、記録を残しておくことをお勧めします。
後々に色々な意味で有利だからです。また放射能汚染が高くなってきた地域に
住まわれている方、避難されている方、救援のために入られる方も、ぜひ記録を
残して下さい。これらは先々、重要な意味を持つ可能性があります。

原発事故作業員の方たちを守るために知恵を絞ることは、私たち全体を守って
いくことにもつながります。互いに互いを守り合いながら、歩んでいきましょう。



*****************************

「英雄」ではない「被害者」である原発事故作業員に、
生涯にわたって医療補償を 医療ガバナンス学会 (2011年3月28日 14:00)
有限会社T&Jメディカル・ソリューションズ代表取締役 木村 知
2011年3月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 


 とうとう、原発事故作業員の方々に大きな被曝事故が起きてしまった。

 ほんの数日前まで、新聞をはじめとした各メディアは、原発事故現場に向かう
これら作業員の方々のことを、「決死の覚悟」で「命懸けの任務」を行う、まるで
戦時中の特攻隊員を彷彿とさせる「英雄」として扱い、その勇気を讃美する
論調を世間にあふれさせていた。こうしたある種の異様な論調やそれに
同調する国民感情に空恐ろしい違和感を覚えたのは、けっして私ばかりでは
あるまい。

 しかしそんなメディアの論調も、今回の被曝事故が起きてやっと「作業員の
安全確保を」という方向に変わりつつあるようだ。

 とは言え、事故の全容も未だ不明で、今後の見通しもつかず、事態収拾に
これからも多くの時間を要する状況で、これら作業員の方々はますます
増員されていくに違いない。それに伴い、このような被曝事故も、仮に杜撰な
安全対策が見直されたとしても、今後「二度と起きない」とは、けっして断言
できないだろう。

 また、重大な被曝事故でなくとも、ギリギリの作業環境のもと相当量の被曝を
することで、「直ちに影響」は出なくとも、数年、数十年の経過を経て健康
被害が発生する可能性も否定はできない。

 被曝のリスクだけでなく、十分な食料や睡眠さえ保障されない劣悪な労働
条件での任務を強いられているとも聞く。肉体的なダメージはもちろん、
精神的なダメージも計り知れない。このようなダメージは、仮に任務を終えて
無事家族のもとへ帰宅できたからと言っても、簡単に癒えるものではないだろう。

 つまり、この原発事故現場での作業に関わったすべての方々には、「直ちに
影響が出ない」とは言っても、将来なんらかの肉体的あるいは精神的「健康
被害」が発生する可能性が否定できないと言える。

 そこで、非常に心配されるのが、将来なんらかの健康被害がこれら作業に
関わった方々に生じた場合、「適切な補償が受けられるのか」、という問題だ。

 ただでさえ労働者の立場は弱い。

 日頃診療をしていると、明らかに「就労中のケガ」であるにもかかわらず、
「ぜったいに『労災扱い』にしないで欲しい」と建設現場で負傷した土木作業員に
懇願されることは、珍しくない。

 建設業界ではゼネコン、下請け、孫請けと順次下部企業へと工事が発注
される受注形態があり、「労災事故」が多い下請けには、その上部企業から
の工事の発注がされなくなるという、「病的ピラミッド構造」が根強く残っている。

 そのため、下請け、孫請けなどの零細企業は、なるべく「労災事故」の件数を
少なくする必要があり、作業中ケガ人が発生した場合、全額自費診療扱い
として事業主が自腹で治療費を支払ったり、酷い場合はケガそのものを
「就労と無関係」と作業員に言わせたりするなどの、いわゆる「労災逃れ」
「労災隠し」を行う事例が後を絶たない。

 これは、建設業界に限定したものであるとは、けっして言えないだろう。

 今回の原発事故現場でも「協力会社」といわれる「下請け企業」から多くの
作業員の方々が動員されているとのことだ。

 はたして、この「下請け企業」の方々に将来健康被害が発生した場合、
適切な補償はされるのだろうか?

 「労災認定されるはずだ」という意見もあろう。

 しかし残念ながら、答えは「否」であると、私は思う。

 確かに「直ちに影響が出た」ものについては、労災認定される可能性は
もちろんあり得ると思われるが、将来起こり得る健康被害も不明であるうえ、
遅発性に起こったものについての認定は、原発事故現場での作業と相当
因果関係が強固に証明できるもの以外は、まず無理だろう。

 そもそもただでさえ、作業中の安全管理対策が杜撰である企業が、将来
起こり得る健康被害まで補償することなど、到底期待できない。

 つまり、「原発事故作業に起因した健康被害」を労災ですべて補償するのは、
不可能ということだ。

 自衛官については、原子力災害対処によって死亡もしくは障害が残った
場合、「賞恤金(しょうじゅうつきん)」が支払われ、今回その額が通常の
1.5倍に引き上げられたという。

 もちろん、金銭が補償されればいいという問題ではないが、企業、特に
下請けなどの零細企業に所属している作業員の方々にも同程度の補償は
最低限必須と考えられる。今後起こり得る健康被害の種類が特定し得ない
このような特殊な状況である以上、原発事故作業との因果関係が証明できる
ものについてはもちろん、それ以外の傷病を含めたすべての医療費および
定期的な健康診断による健康被害調査についても、国が責任を持ち、
生涯にわたって補償を行うべきと考える。

 今後、入れ替わり立ち替わり、各方面、各所属の作業員の方々がこの
任務に関わってくるにつれ、すべてがウヤムヤになってしまいかねない。
 早急に、いや緊急にこの医療補償について論じ検討しておく必要性を
強く訴えたい。

 原発作業員の方々は、「英雄」である以前に「労働者」であり、自分自身や
家族の犠牲を強いられている「被害者」であることを忘れてはならない。

 いくら「英雄」と讃美されても、肉体的精神的被害はけっして癒されることはない。

 この「被害者」としての作業員の方々に、生涯にわたって医療補償を行う
ことは、安全を犠牲に今日まで原子力政策を推し進めてきた国がなすべき、
最低限の「せめてもの償い」と言えるのではなかろうか。

 作業員の方々を「英雄」と讃えた国民ならば、この「勇気ある被害者」への
公的医療補償に、まったく異論はないと信じる。


木村 知(きむら とも)
有限会社T&Jメディカル・ソリューションズ代表取締役
AFP(日本FP協会認定)
医学博士

1968年カナダ国オタワ生まれ。大学病院で一般消化器外科医として診療しつつ
クリニカルパスなど医療現場でのクオリティマネージメントにつき研究中、
2004年大学側の意向を受け退職。以後、「総合臨床医」として「年中無休
クリニック」を中心に地域医療に携わるかたわら、看護師向け書籍の監修など
執筆活動を行う。AFP認定者として医療現場でのミクロな視点から医療経済
についても研究中。著書に「医者とラーメン屋-『本当に満足できる病院』
の新常識」(文芸社)。きむらともTwitter: https://twitter.com/kimuratomo



<福島第1原発>「ガスマスクずれ吸った」作業の東電社員

 東京電力福島第1原子力発電所の事故処理に当たる作業員の多くが、
被ばく量を測る放射線量計を携行していなかったことが分かったが、現場では
実際にどのように作業が進められているのか。原発敷地内で数日間働き、
自身も線量計を持たなかった東電社員の男性が毎日新聞の取材に応じ、
作業実態の一端を明かした。

【中川聡子、日下部聡】
(毎日新聞 4月2日(土)2時33分配信)



 ◇家族に告げず

 男性は3月中旬、上司から福島出張を打診され、「行きます」と応じた。
その夜、本社に集合。幹部から「とりあえず行け。何とかしてこい」と言われ、
着の身着のまま他の20~40代の作業員数人とワンボックスカーに乗った。
「家族には心配をかけるだけだから福島行きは報告できなかった」。一方、
友人には「2週間たって帰ってこなかったら両親に連絡してくれ」と頼み、
出発した。

 作業は外部電源の引き込みだった。でも「現場がどうなっているのか、
原発に入るまで全く分からなかった。既に同僚ががれきを片付け鉄板を敷き、
足場を整えていたが、それも現場に入るまで知らなかった」。

 自衛隊や消防も待機場所とする福島県楢葉町の運動施設でいったん
待機し、現場の放射線量が下がったことを確認して原発へ。顔全体を覆う
マスク、ゴム手袋、長靴のほか、普通の作業服の上にガーゼのような白い
布製の上下を着た。「きちんとした防護服は恐らく早い段階で切らして足りない
状態になっていた」。さらに「長靴の上にもビニール製の防護をつけるべきだが、
自分たちはコンビニでも買えるような簡単なゴミ袋のようなものを長靴の
上にはいて、ガムテープで巻き付けただけだった」という。

 車で原発敷地内に入ると、最も線量が多いとされる3、4号機付近は
猛スピードで駆け抜けた。現場に到着すると駆け出し作業に当たった。

 ◇「現場で判断を」

 ガスマスクをしているため、大声を張り上げないと意思疎通がままならない。
本部との連絡手段は携帯電話1台だけ。とはいえ本部も混乱しているため、
指示を受けたり報告したりしている余裕はない。「現場で判断しろ、ということ
だった」。ところが作業中、本部から突然、終了時間変更の指示が飛び、
混乱に拍車がかかった。

 本来なら3~4時間で終わる作業にのべ2日かかった。「ガスマスクとかで
非常に動きづらいし、作業の際にマスクがずれる場面は何度もあった。多分、
かなり(放射性物質を含む空気を)吸ってるだろうなと思う」。線量計は
リーダー格の1台だけで、他の作業員は持っていなかった。

 3月24日に3号機のタービン建屋で作業員2人が汚染された水たまりで
被ばくしたことについては「自分たちも可能性はあった」という。敷地内は
地震の影響であちこち陥没して穴があり、水がしみ出していた。ガスマスクが
邪魔で足元を確認できず、同僚が何人も穴に落ちた。

 ◇健康に不安 

 「アラームが鳴っても作業を続けた(2人の)気持ちもよく分かる。『他に
やる人間がいないんだから、とにかくやらないといけない。やるまで帰れない』
という焦りは現場では強い」と語る。

 敷地内では水素爆発の影響なのか車が建屋の外壁に刺さり、あちこちに
津波で運ばれた大きな魚やサメが転がり、それを狙った鳥が上空を旋回
していた。「ガスマスクの『シュー、シュー』『パコパコ』という音が響き、
白装束の自分たちが作業している。全く現実感のない世界だった」と振り返る。

 最終日に被ばくの検査をしたが、人数が多く丸1日かかった。異常はない
とされ、帰社すると「よくやった」と上司がねぎらってくれた。それでも「長期的な
影響については不安だ」と漏らした。

 ◇震災で混乱、激減

 なぜ、原発復旧に携わる全作業員に線量計が行き渡らないのか。東京
電力は31日夜、福島第1原発内に約5000台あった線量計が地震と津波で
壊れて320台に激減し、チームで作業に当たる際に代表者1人だけに
持たせていることを明らかにしたが、実際には震災当日の混乱で線量計が
持ち出されたり、捨てられるケースも少なくなかった。

 原発では作業員が放射線管理区域から出る際、線量計を返却しなければ
ならないが、3月11日の地震発生時はパニック状態となり多くの作業員が
線量計を着けたまま逃げた。タービン建屋にいた作業員の男性は「線量計は
東電の用意したかごに入れて外に出るが、そんなことはしなかった」と証言。
東電関連会社の男性社員(40)も「そのまま帰宅した人が多かった。
ゴミ箱に捨てられていた線量計もあったので回収したが、少ししか集まら
なかった」と話す。

 ◇販売会社に在庫なし

 問題が表面化したことで東電側は全員の線量計確保を目指すとしているが、
放射線関連機器販売大手の「千代田テクノル」(本社・東京)によると、
線量計の在庫はほとんどない状態という。

【町田徳丈、日下部聡】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110402-00000007-mai-soci

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明日にむけて( 14 )新聞が原発の危機を報じ始めた・・・

2011年04月02日 17時59分32秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です(20110402 03:00)

原発の現状を直視しようとする冷静な記事が出始めました。
一つは、福島原発で起きた全電源喪失事故と同じシミュレーションが
1981~1982年にアメリカで行われており、福島原発がそれとほぼ
同じ道を辿ったと推測されるというものです。

これは
「ブラウンズフェリー原発1号機をモデルに、米オークリッジ国立研究所が
実施した。出力約110万キロワットで、福島第一原発1~5号機と同じ
米ゼネラル・エレクトリック(GE)の沸騰水型「マークI」炉」
で行われたものです。

このシミュレーションを辿った上で、記事は次のように書いています。
「バッテリーは8時間使用可能で、シミュレーションと違いはあるが、起きた
事象の順序はほぼ同じ。また、計算を当てはめれば、福島第一原発の
格納容器はすでに健全性を失っている可能性がある。」

つまりシミュレーションとの比較からいっても、「格納容器はすでに健全性
を失っている可能性がある」=破断し、最悪の事故に発展する可能性が
あることが指摘されています。

ただしこの記事は重大な事態を見過ごしています。福島第一原発1号炉では、
全電源喪失と同時に、冷却材喪失という重大事故が同時に起こっていた
可能性が高いことです。この記事では電源喪失による、冷却材が循環できず、
燃料が熱くなり、危機に向かったことが想定されている。そのため、停電開始後
5時間で燃料棒が露出と書かれています。

しかし実際には、その後に冷却材の喪失も起こり、燃料棒が早期に露出して
しまった可能性が高い。つまりこのシミュレーションよりもさらに
過酷なことが起こっている可能性が考えられるわけです。格納容器の
ダメージは、ここでの想定よりも、さらに深刻だと推測されます。

なおこの記事の最後に、
「原子力安全研究協会の松浦祥次郎理事長(元原子力安全委員長)は
「何もかもがダメになるといった状況は考えなくてもいいという暗黙の了解が
あった。隕石(いんせき)の直撃など、何でもかんでも対応できるかと言ったら、
それは無理だ」と話す。」
とあります。

これに対して、原子力資料情報室にゲストスピーカーとして参加している
元原子炉設計者の後藤政志さんは、どれほど確率が低かろうとも、
物理的に大変な危機が起こりうるものを選んではいけないのではないかと
語りました。僕も原子力政策がよってたってきた「考えなくていいという暗黙の
了解」はもはや覆されなければならないと思います。


さてもう一つの記事は、この松浦氏と田中俊一・元日本原子力学会長
などが、
「状況はかなり深刻で、広範な放射能汚染の可能性を排除
できない。国内の知識・経験を総動員する必要がある」
という提言を行ったという記事です。

まったく妥当な提言です。僕自身、最ものぞんできたことです。しかし反対に
この提言からは、今なお原発災害への対処に「国内の知識・経験を総動員」して
いない現実が透けて見えて来て、残念であり、悲しい気がします。

正常バイアスに捕われ、事故が極めて危機的なものであること直視し、
明らかにしなかったがために、三週間経った今も総動員体制ができていない。
そこに私たちの危機の第二の実態があるように思います。逃げる時間が
あるのに逃げず、力を集める時間があるのに集めない・・・そんな状態を、
私たちなりの方法で少しでも変えたいものです。

記事は次のように続いています。
「同原発1~3号機について田中氏らは「燃料の一部が溶けて、原子炉圧力
容器下部にたまっている。現在の応急的な冷却では、圧力容器の壁を熱で
溶かし、突き破ってしまう」と警告。また、3基の原子炉内に残る燃料は、
チェルノブイリ原発事故をはるかに上回る放射能があり、それをすべて
封じ込める必要があると指摘した。」

これも妥当な認識だと思います。現在の福島第一原発が、1号機から3号機
まで、ともに圧力容器崩壊の危機に立っていること、これを原子力推進
サイドが認め、警告を発したのは、少なくとも僕が知る限りこれが初めて
です。こうした率直な提言は喜ばしいものですが、しかしそれだけに一層、
原発の危機が深いことも読み取れます。

この危機が乗り越えられることを祈るばかりですが、同時に重大危機の
勃発への構えを作り出すべき必要性を、私たちは、再再度、認識すべきだと
思います。

なお松浦氏はまた
「原子力工学を最初に専攻した世代として、利益が大きい
と思って、原子力利用を推進してきた。(今回のような事故について)考えを
突き詰め、問題解決の方法を考えなかった」と陳謝した。」
そうです。

人々に詫びることもなく解説を繰り返す、○○大学教授などとは違い、
これも真摯な態度だと思います。

しかしもう一歩踏み込んで欲しい。そもそもマグニチュード9という地震の
想定もまた、それこそ「隕石が落ちてくる」ような確率のものと考えられていた
のです。しかし今後はそれを想定せざるをえない。そうだとすると、すべての
稼働している原発をすぐに止めなければならないし、これを想定した原発は
採算的にも成り立たないため、原子力政策はここで閉じる以外にないのです。


今後のこれらの方々の発言にも注目しつつ、情報発信を続けます。



原発の全電源喪失、米は30年前に想定 安全規制に活用

2011年3月31日16時39分 朝日新聞
 東京電力福島第一原子力発電所と同型の原子炉について、米研究機関が
1981~82年、全ての電源が失われた場合のシミュレーションを実施、報告書を
米原子力規制委員会(NRC)に提出していたことがわかった。計算で得られた
燃料の露出、水素の発生、燃料の溶融などのシナリオは今回の事故の経過と
よく似ている。NRCはこれを安全規制に活用したが、日本は送電線などが
早期に復旧するなどとして想定しなかった。

 このシミュレーションは、ブラウンズフェリー原発1号機をモデルに、米オーク
リッジ国立研究所が実施した。出力約110万キロワットで、福島第一原発
1~5号機と同じ米ゼネラル・エレクトリック(GE)の沸騰水型「マークI」炉だ。

 今回の福島第一原発と同様、「外部からの交流電源と非常用ディーゼル
発電機が喪失し、非常用バッテリーが作動する」ことを前提とし、バッテリーの
持ち時間、緊急時の冷却系統の稼働状況などいくつかの場合に分けて計算した。

 バッテリーが4時間使用可能な場合は、停電開始後5時間で「燃料が露出」、
5時間半後に「燃料は485度に達し、水素も発生」、6時間後に「燃料の溶融
(メルトダウン)開始」、7時間後に「圧力容器下部が損傷」、8時間半後に
「格納容器損傷」という結果が出た。

 6時間使用可能とした同研究所の別の計算では、8時間後に「燃料が露出」、
10時間後に「メルトダウン開始」、13時間半後に「格納容器損傷」だった。

 一方、福島第一では、地震発生時に外部電源からの電力供給が失われ、
非常用のディーゼル発電機に切り替わったが、津波により約1時間後に
発電機が止まり、電源は非常用の直流バッテリーだけに。この時点から
シミュレーションの条件とほぼ同じ状態になった。

 バッテリーは8時間使用可能で、シミュレーションと違いはあるが、起きた
事象の順序はほぼ同じ。また、計算を当てはめれば、福島第一原発の
格納容器はすでに健全性を失っている可能性がある。

 GEの関連会社で沸騰水型の維持管理に長年携わってきた原子力コン
サルタントの佐藤暁さんは「このシミュレーションは現時点でも十分に有効だ。
ただ電力会社でこうした過去の知見が受け継がれているかどうかは
わからない」と話す。

 一方、日本では全電源が失われる想定自体、軽視されてきた。

 原子力安全委員会は90年、原発の安全設計審査指針を決定した際、
「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又(また)は非常用
交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない」とする
考え方を示した。だが現実には、送電線も非常用のディーゼル発電機は
地震や津波で使えなくなった。

 原子力安全研究協会の松浦祥次郎理事長(元原子力安全委員長)は
「何もかもがダメになるといった状況は考えなくてもいいという暗黙の了解が
あった。隕石(いんせき)の直撃など、何でもかんでも対応できるかと言ったら、
それは無理だ」と話す。(松尾一郎、小宮山亮磨)
http://www.asahi.com/international/update/0330/TKY201103300512.html


原発事故、国内の経験総動員を…専門家らが提言

 福島第一原子力発電所の事故を受け、日本の原子力研究を担ってきた
専門家が1日、「状況はかなり深刻で、広範な放射能汚染の可能性を排除
できない。国内の知識・経験を総動員する必要がある」として、原子力災害
対策特別措置法に基づいて、国と自治体、産業界、研究機関が一体となって
緊急事態に対処することを求める提言を発表した。


 田中俊一・元日本原子力学会長をはじめ、松浦祥次郎・元原子力安全
委員長、石野栞(しおり)・東京大名誉教授ら16人。

 同原発1~3号機について田中氏らは「燃料の一部が溶けて、原子炉圧力
容器下部にたまっている。現在の応急的な冷却では、圧力容器の壁を熱で
溶かし、突き破ってしまう」と警告。また、3基の原子炉内に残る燃料は、
チェルノブイリ原発事故をはるかに上回る放射能があり、それをすべて
封じ込める必要があると指摘した。

 一方、松浦氏は「原子力工学を最初に専攻した世代として、利益が大きい
と思って、原子力利用を推進してきた。(今回のような事故について)考えを
突き詰め、問題解決の方法を考えなかった」と陳謝した。

(2011年4月2日01時42分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110401-OYT1T00801.htm


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