明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(62)子どもを逃げさせない日本という国

2011年04月21日 17時30分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110421 17:30)

子どもたちに対する迫害としか言えないような措置が始まりました。
高い線量の放射線を発している学校を閉鎖せず、子どもたちの登校を続け
させようというのです。一番先に守られるべき子どもたちが、「放射能は
怖くないキャンペーン」のために、学校に縛りつけられようとしています。
子どもたちをなんとか救いだす必要があります。

記事は次のように述べています。
「文部科学省は19日、福島県内の小中学校や幼稚園などの暫定的な利用
基準を公表した。校舎や校庭を利用できるか判断する目安として、年間
被曝(ひばく)量が20ミリシーベルトを超えないようにし、校庭の放射線量が
毎時3.8マイクロシーベルト以上では屋外活動を制限することとした。」

「今回の基準は、国際放射線防護委員会(ICRP)の「緊急事態収束後の年間
被曝量は1~20ミリシーベルトの範囲で考える」という目安を参考にした。」
「この数値は、屋外で同じ線量を24時間、1年間浴びると仮定すると20ミリを
超える。だが、木造校舎や室内で16時間過ごせば、被曝量は約6割になり、
20ミリにおさまるという。」

要するに、緊急事態収束後の年間被ばく許容値は1ミリから20ミリシーベルト
であり、この範囲で収めるためには、校庭では1時間当たり3.8マイクロ
シーネルト以上、浴びないようにすればいいというのです。

これはもはや暴論であると言わざるをません。
まず緊急事態収束後に、私たちの被ばく許容値が20ミリシーベルトに緩和
されてしまうこと事態が問題ですが、かりにそれを問わないにしても、
子どもの場合、放射線への感受性は、大人よりも格段に高いわけです。
とくに小さい子ほど高い。幼稚園児などはもっとも危ない。

大まかに子どもは大人の3倍から10倍の放射線に対する感受性を持って
いると言われますが、かりに10倍と考えた場合、大人の許容値が1ミリから
20ミリであるならば、子どもの許容値は0.1ミリから2ミリでなければ
いけない。もちろん、被ばくは可能な限りゼロに近づけるべきで、1ミリという
値も政治的に決まっているものでしかありませんが、それでもこれを基準に
しても、幼稚園児を含む子どもたちの基準を年間20ミリとするのは
あまりの暴論です。

しかもその子どもたちの中にも、感受性には個人差があり、もっと少ない
値の放射線でもダメージを受ける子どももいる。これらを考えた時に
子どもたちに年間20ミリシーベルトもの被ばくを強いるのはもはや
大人社会による暴力以外ではない。子どもたちの、大人たち、社会への
信頼を著しく裏切る行為です。


さらに校庭にはそれほどいないので、毎時3.8マイクロシーベルトの放射線が
出ている校庭にいても、年間20ミリを超えないと言われていますが、
これだけ継続的に放射能漏れが起こり、校庭が汚染されているような状況では
教室内もまた汚染されていることは確実です。

また校庭が汚染されているならば、通学路も汚染されているし、当然、自宅
も汚染されている。長期間にわたって、家の中に外気を取り込まないことなど
不可能ですから、屋内にいても相当量の被ばくをすることは間違いありません。

しかも汚染物質は風で繰り返し巻き上げられます。小さい子どもほど、地面に近く、
そこから受ける線量も多ければ、巻き上げらる放射能を呼吸によって
とりこんでしまう可能性も高い。その上、こうした地域では当然、飲料水等々の
汚染濃度が高いので、放射能はさまざまな経路から体内に入ってきます。

それらを考えて、仮にこれらの地域では、毎時3.8マイクロシーベルトの放射線を
浴び続けることになると過程してみましょう。これはどのような値になるのか。
まず24時間で91.2マイクロシーンベルトになります。約0.1ミリシーベルトです。
つまり年間被ばくの許容値を大人を1ミリから20ミリと考え、子どもをその
10分の1と考えた時の、0.1ミリシーベルトにほぼ1日で到達してします。

ここに90日いるとどうなるでしょうか。8208マイクロシーベルト、したがって
約8ミリシーベルトにもなってします。子どもの許容値を緩い値として2ミリ
シーベルトと考えても3カ月でその4倍になってしまう。

ちなみに、これは放射線管理区域をも大きく超える値です。この区域は
「外部放射線による実効線量が、3月間につき1.3mSVを超えるおそれのある
区域」と規定されているからです。そのため幼稚園や、小学校が、この基準の
6倍もの放射線にさらされる場になってしまうのです。

この国は子どもたちを逃がそうとしません。子どもたちは、多くの場合、登校
するかどうか、どの学校に通うかを自己判断などできません。だから大人に
社会に子どもの安全を守る義務があるのに、私たちの国はこれを完全に
裏切っています。これは未来世代への暴力です。

いつか子どもたちが大人になり、原発事故のことを詳しく知った時、大人たちに
こう言うのではないでしょうか。「どうしてあの時、あなたたちは、私たちを逃がして
くれなかったのですか」・・・。それはこの世代の子どもたちの深いトラウマに
なってしまうに違いない。そんなことがあってはなりません。

何とかこの暴力的な措置を止めて、子どもたちを救わなければいけない。
子どもを守れ、子どもを救え、子どもたち、逃げろという声をあげていきましょう!

*******************************

学校の放射線量、暫定基準を公表 文科省
2011年4月20日1時36分 朝日新聞

 福島第一原発事故を受けて、文部科学省は19日、福島県内の小中学校や
幼稚園などの暫定的な利用基準を公表した。校舎や校庭を利用できるか
判断する目安として、年間被曝(ひばく)量が20ミリシーベルトを超えない
ようにし、校庭の放射線量が毎時3.8マイクロシーベルト以上では屋外活動を
制限することとした。

 現在、制限の対象は13施設。各施設に線量計を配り、変化を監視する。
基準は8月下旬までに再検討する。

 今回の基準は、国際放射線防護委員会(ICRP)の「緊急事態収束後の年間
被曝量は1~20ミリシーベルトの範囲で考える」という目安を参考にした。
校庭の放射線量が毎時3.8マイクロシーベルト以上の学校などで
屋外活動を制限する。

 この数値は、屋外で同じ線量を24時間、1年間浴びると仮定すると20ミリを
超える。だが、木造校舎や室内で16時間過ごせば、被曝量は約6割になり、
20ミリにおさまるという。

 この基準を超えたのは、福島市や郡山市、伊達市の13の小中学校、
幼稚園、保育園(児童生徒ら3560人)。この13施設では、校庭や砂場での
屋外活動は1日あたり1時間程度にとどめる。手洗いやうがい、帰宅時に
靴の土を落とす、などを勧める。

 学校の汚染調査から、放射性物質が沈着した砂ぼこりを吸い込むことに
よる内部被曝の影響は、高い学校でも全体の被曝量の3.5%ほどで、
考慮する必要はないと結論付けた。

 今後、1週間ごとに校庭や校舎の放射線量を測り、制限の解除を再検討する。

 学校の基準を巡っては、原子力安全委員会の委員が13日の会見で
「(子どもの年間被曝量について)大人の半分の10ミリ程度に抑えるべきだ」
との見解を示したが、翌日に正式決定ではないと撤回していた。

 原子力安全委員会の久木田豊委員長代理は19日、現実的には、
校庭内の外に8時間以上いる可能性は低いことなどから「毎時3.8
マイクロシーベルトを超えても、年20ミリを十分下回る見通しだと
理解している」と述べた。(佐藤久恵)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104190598.html
コメント (4)
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