守田です。(20110424 09:00)
先ほどの記事に関連して、非常に気になる記事が朝日新聞から出されている
ので紹介します。
「『排気の遅れ、水素爆発招いた』米紙が原発事故分析」という記事です。
それによると、米紙ウォルストリート・ジャーナルが、事故の初期に、東電が
放射能の放出を伴う「排気」=ベントを躊躇したことが、事故を深刻化したと
批判しているといいます。朝日新聞はただそれを「客観的」に伝えています。
しかしこのウォルストリート・ジャーナルの内容はうのみにできない。
東電を単純に悪者にすることは危険だと思うのです。なぜかと言えば、ここには
同じことがあったときに、速やかに排気をしろという強い提言が含まれている。
過去のことよりも、今後のことが念頭にあって、この記事が出て来ているように
思えるのです。
事故初期を振り返ってみると、格納容器は確かに2倍の圧力で膨れ上がろうと
していた。そのとき政府もまた東電にベントを命じました。しかし最近になって
はっきりしてきたことは、このときのベントでもの凄い放射能が排出された。
数回のベントで、チェルノブイリの10分の1に近づくようなものが出されたのです。
だからこそ、東電はためらった。猛毒を撒くことに躊躇したのです。とても
民間の一企業にできる判断ではないと思ったことでしょう。それに対して政府は
「すぐ行え、ただし東電の判断で行え」としか言ってくれなかった。それで東電は
動揺を続け、その挙句にベントを行ったのです。
政府はなぜ自分の判断でしなかったのか。明らかに責任回避のためだったと
思います。それは周辺住民に大変な危機が迫っていることを告知することの
責任回避でもあったかもしれない。ともあれそのようにして、ベントは行われ
ました。猛毒がまかれることが告げられぬままに。
実は現在も、それと同じような状態にあるのではないか。またしても工程表は
東電の名前で出されている。そしてそこには、1号機に続く2号機、3号機の
窒素封入も書き込まれています。繰り返し述べてきたように、この場合も、
相当に大量の放射能が窒素に押し出されて出てくる。つまりドライベントと
同じようなことが行われることになるのです。
東電はまたしても、深い動揺の中にあるのではないでしょうか。いやあっても
おかしくないと思えます。再び三度、東電の名で、猛毒を撒かねばならない
からです。あるいはそのために、2号機、3号機への窒素封入が始まって
いないのかもしれない。
この点を再びアメリカ政府はいらいらし、ウォルストリート・ジャーナルにこの点を
書かせているのではないか。そうしたことが予想されます。
こう考えると、事故数日後に、東電が事故対処からの全面撤退を政府に
申し出たことの理由もみえてくるような気がします。あのとき僕は東電には
もう出来ることがないので、撤退したいといいだしたのだと思ったし、そんな
人たちはとっとと、いなくなってもらえばいいのにと思いました。
その点で、菅首相がどなりつけたことにも否定的でした。しかし、今、思うのは、
東電はもう一企業として責任を負わされる範疇を超えている、政府に判断して
欲しい。そこから逃げ出したいと思ったのではないか。それに対して管首相は
責任主体に逃げられるとかなわないので、どなったのではないか。そんな
風に思えます。
そしてそうした脈絡からこの記事が出てきた背景を考える時、工程表に
書かれた2号機、3号機への窒素封入作業が、非常に、重く、危機的なもの
として僕には移ります。
どうか、みなさん。ここに注目してください。たとえ破局的に爆発にいたらざる
とも、事故初期と同じように、大気中に非常に高い濃度の放射能が飛び出して
くる可能性があると僕は思います。
近くの方たちに、早急に被ばく対策を強化すべきことを伝えてください。
とくに福島の子どもたち、近隣の子どもたちは、校庭から高い放射線が出ている
からだけでなく、原発そのものが危機的であり、さらに放射能漏れが深刻さを
増す可能性が高いからこそ、できるだけ早く疎開させてあげることが必要だと
思います。
・・・今日は午後10時より後藤政志さんが同志社大学で講演されるので、
これから飛んでいきます。ぜひ、ここに書いたことも質問してこようと思います。
**************************
「排気の遅れ、水素爆発招いた」 米紙が原発事故分析
2011年4月23日21時20分 朝日新聞
23日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は、福島第一原子力
発電所の事故について、放射性物質の外部放出を懸念し、東京電力が格納
容器内のガスの排出をためらったことで水素爆発を招いたとする分析記事を
掲載した。
同紙は、同原発1号機は地震・津波の発生から半日たった3月12日午前
2時半に格納容器内の圧力が2倍に達し、東電は排気を決めたとしている。
しかし、準備などに手間取り、実際に排気できたのは同日午後。その
約1時間後に水素爆発が起きて原子炉建屋が破壊された。これに伴う炉心の
損傷はなかったが、「壁」の一つが失われたことでその後の大量の放射性
物質の放出につながったほか、炉の冷却のための作業を妨げる原因にも
なった。
同紙によると、日米の専門家は排気の遅れで水素爆発が起きやすい条件が
できたと考えている。放射性物質と水素を含む格納容器内のガスは、排気
専用のパイプを経由して建屋の外にある排気塔に導かれるが、圧力が2倍に
なるまで待ったため、パイプの継ぎ目などからガスが漏れやすくなり、
建屋内に充満した可能性があるという。
専門家は「放射性物質の放出を心配するあまり排気に慎重になったことが、
事態を悪化させたようだ」とみている。水素爆発の防止を重視する米国は、
格納容器内の圧力が耐圧の上限に達する前でも早めに排気を行うことに
しており、同様の方針は韓国や台湾でも採用されていると指摘している。
米国では、1979年のスリーマイル島原発事故で作業員の判断ですばやく
排気が行われ、原子力規制委員会(NRC)が追認したが、日本では排気は
「最後の手段」として、電力会社のトップや政府の判断を待ってから行う体制。
記事はこうした考え方の違いも排気の遅れにつながった可能性を指摘した。
(パナマ市=勝田敏彦)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104230312.html
先ほどの記事に関連して、非常に気になる記事が朝日新聞から出されている
ので紹介します。
「『排気の遅れ、水素爆発招いた』米紙が原発事故分析」という記事です。
それによると、米紙ウォルストリート・ジャーナルが、事故の初期に、東電が
放射能の放出を伴う「排気」=ベントを躊躇したことが、事故を深刻化したと
批判しているといいます。朝日新聞はただそれを「客観的」に伝えています。
しかしこのウォルストリート・ジャーナルの内容はうのみにできない。
東電を単純に悪者にすることは危険だと思うのです。なぜかと言えば、ここには
同じことがあったときに、速やかに排気をしろという強い提言が含まれている。
過去のことよりも、今後のことが念頭にあって、この記事が出て来ているように
思えるのです。
事故初期を振り返ってみると、格納容器は確かに2倍の圧力で膨れ上がろうと
していた。そのとき政府もまた東電にベントを命じました。しかし最近になって
はっきりしてきたことは、このときのベントでもの凄い放射能が排出された。
数回のベントで、チェルノブイリの10分の1に近づくようなものが出されたのです。
だからこそ、東電はためらった。猛毒を撒くことに躊躇したのです。とても
民間の一企業にできる判断ではないと思ったことでしょう。それに対して政府は
「すぐ行え、ただし東電の判断で行え」としか言ってくれなかった。それで東電は
動揺を続け、その挙句にベントを行ったのです。
政府はなぜ自分の判断でしなかったのか。明らかに責任回避のためだったと
思います。それは周辺住民に大変な危機が迫っていることを告知することの
責任回避でもあったかもしれない。ともあれそのようにして、ベントは行われ
ました。猛毒がまかれることが告げられぬままに。
実は現在も、それと同じような状態にあるのではないか。またしても工程表は
東電の名前で出されている。そしてそこには、1号機に続く2号機、3号機の
窒素封入も書き込まれています。繰り返し述べてきたように、この場合も、
相当に大量の放射能が窒素に押し出されて出てくる。つまりドライベントと
同じようなことが行われることになるのです。
東電はまたしても、深い動揺の中にあるのではないでしょうか。いやあっても
おかしくないと思えます。再び三度、東電の名で、猛毒を撒かねばならない
からです。あるいはそのために、2号機、3号機への窒素封入が始まって
いないのかもしれない。
この点を再びアメリカ政府はいらいらし、ウォルストリート・ジャーナルにこの点を
書かせているのではないか。そうしたことが予想されます。
こう考えると、事故数日後に、東電が事故対処からの全面撤退を政府に
申し出たことの理由もみえてくるような気がします。あのとき僕は東電には
もう出来ることがないので、撤退したいといいだしたのだと思ったし、そんな
人たちはとっとと、いなくなってもらえばいいのにと思いました。
その点で、菅首相がどなりつけたことにも否定的でした。しかし、今、思うのは、
東電はもう一企業として責任を負わされる範疇を超えている、政府に判断して
欲しい。そこから逃げ出したいと思ったのではないか。それに対して管首相は
責任主体に逃げられるとかなわないので、どなったのではないか。そんな
風に思えます。
そしてそうした脈絡からこの記事が出てきた背景を考える時、工程表に
書かれた2号機、3号機への窒素封入作業が、非常に、重く、危機的なもの
として僕には移ります。
どうか、みなさん。ここに注目してください。たとえ破局的に爆発にいたらざる
とも、事故初期と同じように、大気中に非常に高い濃度の放射能が飛び出して
くる可能性があると僕は思います。
近くの方たちに、早急に被ばく対策を強化すべきことを伝えてください。
とくに福島の子どもたち、近隣の子どもたちは、校庭から高い放射線が出ている
からだけでなく、原発そのものが危機的であり、さらに放射能漏れが深刻さを
増す可能性が高いからこそ、できるだけ早く疎開させてあげることが必要だと
思います。
・・・今日は午後10時より後藤政志さんが同志社大学で講演されるので、
これから飛んでいきます。ぜひ、ここに書いたことも質問してこようと思います。
**************************
「排気の遅れ、水素爆発招いた」 米紙が原発事故分析
2011年4月23日21時20分 朝日新聞
23日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は、福島第一原子力
発電所の事故について、放射性物質の外部放出を懸念し、東京電力が格納
容器内のガスの排出をためらったことで水素爆発を招いたとする分析記事を
掲載した。
同紙は、同原発1号機は地震・津波の発生から半日たった3月12日午前
2時半に格納容器内の圧力が2倍に達し、東電は排気を決めたとしている。
しかし、準備などに手間取り、実際に排気できたのは同日午後。その
約1時間後に水素爆発が起きて原子炉建屋が破壊された。これに伴う炉心の
損傷はなかったが、「壁」の一つが失われたことでその後の大量の放射性
物質の放出につながったほか、炉の冷却のための作業を妨げる原因にも
なった。
同紙によると、日米の専門家は排気の遅れで水素爆発が起きやすい条件が
できたと考えている。放射性物質と水素を含む格納容器内のガスは、排気
専用のパイプを経由して建屋の外にある排気塔に導かれるが、圧力が2倍に
なるまで待ったため、パイプの継ぎ目などからガスが漏れやすくなり、
建屋内に充満した可能性があるという。
専門家は「放射性物質の放出を心配するあまり排気に慎重になったことが、
事態を悪化させたようだ」とみている。水素爆発の防止を重視する米国は、
格納容器内の圧力が耐圧の上限に達する前でも早めに排気を行うことに
しており、同様の方針は韓国や台湾でも採用されていると指摘している。
米国では、1979年のスリーマイル島原発事故で作業員の判断ですばやく
排気が行われ、原子力規制委員会(NRC)が追認したが、日本では排気は
「最後の手段」として、電力会社のトップや政府の判断を待ってから行う体制。
記事はこうした考え方の違いも排気の遅れにつながった可能性を指摘した。
(パナマ市=勝田敏彦)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104230312.html