守田です。(20110405 13:30)
放射能漏れの現状、およびその報道の分析を行いたいと思います。
現在、各地のモニタリングポストで測られている空間線量は、低下傾向に
あります。反対に、海洋水の汚染が広がっています。
事故当初に繰り返し行われたベント抑制された一方で、応急冷却の
ために、炉内に注がれた海水が、あちらこちらから漏れ出した結果です。
この汚染水をどうするか。バージ(はしけ)や、メガフロートなどでの応急的
受け止めるが検討されていますが、その準備も追い付かず、1万トン超の
排出が昨夜から始まりました。その量は莫大です。ただもはや「莫大」という
形容はむなしい気がします。そもそも「高濃度」も「低濃度」も死語です。
この点で参考にしたいのが、この海洋投棄を報じている記事です。
記事は次のように伝えています。
「東京電力は4日午後7時過ぎ、福島第一原子力発電所で高い濃度の放射性
物質を含む汚染水の貯蔵先を確保するため、低濃度の汚染水約1万1500
トンの海への放出を始めた。」
「経済産業省原子力安全・保安院は「危険を回避するためのやむを得ない
措置」として了承した。東電は「健康への影響は小さい」としている。」
この場合、「回避するため」とされる危機とは何でしょうか。文脈から
「高い濃度の放射性物質」の海への漏えいを防ぐことであることが読み取れます。
では高い濃度とは何か、低い濃度とは何か。もはや何の実態も示していません。
濃度とは、ある特定単位に含まれる放射性物質の量を測ったもので、放射性
物質の量は濃度に体積がかけられないと出てこない。どんなに「高濃度」でも
体積がゼロに近ければ、恐ろしさも低下します。
そのため真の危機は「高い濃度の汚染水が海洋に注ぎこむ」ではなく、放射性
物質が海に注ぎ込むことそのものあり、危機の度合いは、量に比例して高まる
ことが分かります。だから「低濃度の汚染水の海洋投棄」は、危機回避には
なりません。より「低い」危機を選んだに過ぎないし、この場合の「低い」も
相対的なものでしかありません。
大切なのは、実際にはどれだけの放射性物質が放出されようとしているのか
です。これは次の記事から読み取れます。
「集中廃棄物処理施設にたまっている水の放射性ヨウ素131の濃度は、
海水の濃度基準の157倍ほど。5、6号機周辺の地下水は海水と雨水が
混ざったものとみられ、5号機が同40倍、6号機が同500倍。同10億倍の
2号機タービン建屋の汚染水と比べ、放射性物質の濃度はずっと低い。
今回、海に放出される計1万1500トンの汚染水に含まれる放射線の総量は
2号機タービン建屋内の汚染水の9リットル分程度だ。」
ここには重要なポイントである、海水のそもそもの濃度基準が書かれてないので、
他社の記事から補ってみると、1リットルあたり40ベクレルとなっているようです。
(以下のNHKニュースを参照)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110404/t10015096941000.html
そうすると2号機タービン建屋の汚染水は、10億倍となっていますから、
ここの汚染水には1リットル当たり、ヨウ素131だけで400億ベクレルの放射性
物質が含まれていることが分かります。
今回、放出されるのはこれの9リットル分程度ということですから、放射性
ヨウ素131だけで3600億ベクレルが投棄されるのです。これがどうして危機では
ないのでしょうか。
政府も東電も、放射能漏れについては、もはや「高濃度」「低濃度」という
言い方をやめ、発表単位を統一し、何がどれだけ出ているのか、分かりやすく
伝えることに尽力すべきです。マスコミ各社も、政府の広報と化してしまわずに、
政府の出す一次情報を分かりやすく直して報道すべきです。
ちなみにここでも「東電は「健康への影響は小さい」としている」そうです。
記事も何の価値判断もなしにそれを流しています。
ヨウ素131だけで3600億ベクレルの放射能を海に流して、健康への影響が
小さいとは、とても考えられない。しかも汚染水には、他の放射性物質も
多様・多量に含まれているのです。(データがないので、「多様・多量」と
書きましたが、この点も公表されるべき重要ポイントです)
そもそも東電はこうしたことを、何の科学的なデータもなしに語っています。
事故から3週間が過ぎてなお、こうした非科学的で、不誠実な言動を繰り返し、
被害を小さく見せようとすることに頭を使い続けている東電が、現場で責任を
負っていることそのものに、大きな矛盾、あるいは危機そのものが
あるように思えてなりません。
・・・情報発信を続けます。
*****************************
汚染水1万トン超、海に放出…やむを得ない措置
東京電力は4日午後7時過ぎ、福島第一原子力発電所で高い濃度の放射性
物質を含む汚染水の貯蔵先を確保するため、低濃度の汚染水約1万1500
トンの海への放出を始めた。
5日間かけて流す。原子炉等規制法第64条にもとづく緊急措置で、経済
産業省原子力安全・保安院は「危険を回避するためのやむを得ない措置」
として了承した。東電は「健康への影響は小さい」としている。今回の事故で
汚染水を意図的に海へ放出するのは初めて。
放出するのは、4号機南側にある集中廃棄物処理施設内にたまった水
約1万トンと、現在は冷温停止している5、6号機のタービン建屋周辺の
地下水約1500トン。50メートルプール6~7個分に相当する。
集中廃棄物処理施設にたまっている水の放射性ヨウ素131の濃度は、
海水の濃度基準の157倍ほど。5、6号機周辺の地下水は海水と雨水が
混ざったものとみられ、5号機が同40倍、6号機が同500倍。同10億倍の
2号機タービン建屋の汚染水と比べ、放射性物質の濃度はずっと低い。
今回、海に放出される計1万1500トンの汚染水に含まれる放射線の総量は
2号機タービン建屋内の汚染水の9リットル分程度だ。
(2011年4月5日01時28分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110404-OYT1T00923.htm
放射能漏れの現状、およびその報道の分析を行いたいと思います。
現在、各地のモニタリングポストで測られている空間線量は、低下傾向に
あります。反対に、海洋水の汚染が広がっています。
事故当初に繰り返し行われたベント抑制された一方で、応急冷却の
ために、炉内に注がれた海水が、あちらこちらから漏れ出した結果です。
この汚染水をどうするか。バージ(はしけ)や、メガフロートなどでの応急的
受け止めるが検討されていますが、その準備も追い付かず、1万トン超の
排出が昨夜から始まりました。その量は莫大です。ただもはや「莫大」という
形容はむなしい気がします。そもそも「高濃度」も「低濃度」も死語です。
この点で参考にしたいのが、この海洋投棄を報じている記事です。
記事は次のように伝えています。
「東京電力は4日午後7時過ぎ、福島第一原子力発電所で高い濃度の放射性
物質を含む汚染水の貯蔵先を確保するため、低濃度の汚染水約1万1500
トンの海への放出を始めた。」
「経済産業省原子力安全・保安院は「危険を回避するためのやむを得ない
措置」として了承した。東電は「健康への影響は小さい」としている。」
この場合、「回避するため」とされる危機とは何でしょうか。文脈から
「高い濃度の放射性物質」の海への漏えいを防ぐことであることが読み取れます。
では高い濃度とは何か、低い濃度とは何か。もはや何の実態も示していません。
濃度とは、ある特定単位に含まれる放射性物質の量を測ったもので、放射性
物質の量は濃度に体積がかけられないと出てこない。どんなに「高濃度」でも
体積がゼロに近ければ、恐ろしさも低下します。
そのため真の危機は「高い濃度の汚染水が海洋に注ぎこむ」ではなく、放射性
物質が海に注ぎ込むことそのものあり、危機の度合いは、量に比例して高まる
ことが分かります。だから「低濃度の汚染水の海洋投棄」は、危機回避には
なりません。より「低い」危機を選んだに過ぎないし、この場合の「低い」も
相対的なものでしかありません。
大切なのは、実際にはどれだけの放射性物質が放出されようとしているのか
です。これは次の記事から読み取れます。
「集中廃棄物処理施設にたまっている水の放射性ヨウ素131の濃度は、
海水の濃度基準の157倍ほど。5、6号機周辺の地下水は海水と雨水が
混ざったものとみられ、5号機が同40倍、6号機が同500倍。同10億倍の
2号機タービン建屋の汚染水と比べ、放射性物質の濃度はずっと低い。
今回、海に放出される計1万1500トンの汚染水に含まれる放射線の総量は
2号機タービン建屋内の汚染水の9リットル分程度だ。」
ここには重要なポイントである、海水のそもそもの濃度基準が書かれてないので、
他社の記事から補ってみると、1リットルあたり40ベクレルとなっているようです。
(以下のNHKニュースを参照)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110404/t10015096941000.html
そうすると2号機タービン建屋の汚染水は、10億倍となっていますから、
ここの汚染水には1リットル当たり、ヨウ素131だけで400億ベクレルの放射性
物質が含まれていることが分かります。
今回、放出されるのはこれの9リットル分程度ということですから、放射性
ヨウ素131だけで3600億ベクレルが投棄されるのです。これがどうして危機では
ないのでしょうか。
政府も東電も、放射能漏れについては、もはや「高濃度」「低濃度」という
言い方をやめ、発表単位を統一し、何がどれだけ出ているのか、分かりやすく
伝えることに尽力すべきです。マスコミ各社も、政府の広報と化してしまわずに、
政府の出す一次情報を分かりやすく直して報道すべきです。
ちなみにここでも「東電は「健康への影響は小さい」としている」そうです。
記事も何の価値判断もなしにそれを流しています。
ヨウ素131だけで3600億ベクレルの放射能を海に流して、健康への影響が
小さいとは、とても考えられない。しかも汚染水には、他の放射性物質も
多様・多量に含まれているのです。(データがないので、「多様・多量」と
書きましたが、この点も公表されるべき重要ポイントです)
そもそも東電はこうしたことを、何の科学的なデータもなしに語っています。
事故から3週間が過ぎてなお、こうした非科学的で、不誠実な言動を繰り返し、
被害を小さく見せようとすることに頭を使い続けている東電が、現場で責任を
負っていることそのものに、大きな矛盾、あるいは危機そのものが
あるように思えてなりません。
・・・情報発信を続けます。
*****************************
汚染水1万トン超、海に放出…やむを得ない措置
東京電力は4日午後7時過ぎ、福島第一原子力発電所で高い濃度の放射性
物質を含む汚染水の貯蔵先を確保するため、低濃度の汚染水約1万1500
トンの海への放出を始めた。
5日間かけて流す。原子炉等規制法第64条にもとづく緊急措置で、経済
産業省原子力安全・保安院は「危険を回避するためのやむを得ない措置」
として了承した。東電は「健康への影響は小さい」としている。今回の事故で
汚染水を意図的に海へ放出するのは初めて。
放出するのは、4号機南側にある集中廃棄物処理施設内にたまった水
約1万トンと、現在は冷温停止している5、6号機のタービン建屋周辺の
地下水約1500トン。50メートルプール6~7個分に相当する。
集中廃棄物処理施設にたまっている水の放射性ヨウ素131の濃度は、
海水の濃度基準の157倍ほど。5、6号機周辺の地下水は海水と雨水が
混ざったものとみられ、5号機が同40倍、6号機が同500倍。同10億倍の
2号機タービン建屋の汚染水と比べ、放射性物質の濃度はずっと低い。
今回、海に放出される計1万1500トンの汚染水に含まれる放射線の総量は
2号機タービン建屋内の汚染水の9リットル分程度だ。
(2011年4月5日01時28分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110404-OYT1T00923.htm