明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日にむけて( 23 )ヨウ素 131 だけで 3600 億ベクレルの汚染水を海洋投棄・・・

2011年04月05日 13時26分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110405 13:30)

放射能漏れの現状、およびその報道の分析を行いたいと思います。
現在、各地のモニタリングポストで測られている空間線量は、低下傾向に
あります。反対に、海洋水の汚染が広がっています。
事故当初に繰り返し行われたベント抑制された一方で、応急冷却の
ために、炉内に注がれた海水が、あちらこちらから漏れ出した結果です。

この汚染水をどうするか。バージ(はしけ)や、メガフロートなどでの応急的
受け止めるが検討されていますが、その準備も追い付かず、1万トン超の
排出が昨夜から始まりました。その量は莫大です。ただもはや「莫大」という
形容はむなしい気がします。そもそも「高濃度」も「低濃度」も死語です。


この点で参考にしたいのが、この海洋投棄を報じている記事です。
記事は次のように伝えています。

「東京電力は4日午後7時過ぎ、福島第一原子力発電所で高い濃度の放射性
物質を含む汚染水の貯蔵先を確保するため、低濃度の汚染水約1万1500
トンの海への放出を始めた。」
「経済産業省原子力安全・保安院は「危険を回避するためのやむを得ない
措置」として了承した。東電は「健康への影響は小さい」としている。」

この場合、「回避するため」とされる危機とは何でしょうか。文脈から
「高い濃度の放射性物質」の海への漏えいを防ぐことであることが読み取れます。
では高い濃度とは何か、低い濃度とは何か。もはや何の実態も示していません。

濃度とは、ある特定単位に含まれる放射性物質の量を測ったもので、放射性
物質の量は濃度に体積がかけられないと出てこない。どんなに「高濃度」でも
体積がゼロに近ければ、恐ろしさも低下します。

そのため真の危機は「高い濃度の汚染水が海洋に注ぎこむ」ではなく、放射性
物質が海に注ぎ込むことそのものあり、危機の度合いは、量に比例して高まる
ことが分かります。だから「低濃度の汚染水の海洋投棄」は、危機回避には
なりません。より「低い」危機を選んだに過ぎないし、この場合の「低い」も
相対的なものでしかありません。

大切なのは、実際にはどれだけの放射性物質が放出されようとしているのか
です。これは次の記事から読み取れます。

「集中廃棄物処理施設にたまっている水の放射性ヨウ素131の濃度は、
海水の濃度基準の157倍ほど。5、6号機周辺の地下水は海水と雨水が
混ざったものとみられ、5号機が同40倍、6号機が同500倍。同10億倍の
2号機タービン建屋の汚染水と比べ、放射性物質の濃度はずっと低い。
今回、海に放出される計1万1500トンの汚染水に含まれる放射線の総量は
2号機タービン建屋内の汚染水の9リットル分程度だ。」

ここには重要なポイントである、海水のそもそもの濃度基準が書かれてないので、
他社の記事から補ってみると、1リットルあたり40ベクレルとなっているようです。
(以下のNHKニュースを参照)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110404/t10015096941000.html

そうすると2号機タービン建屋の汚染水は、10億倍となっていますから、
ここの汚染水には1リットル当たり、ヨウ素131だけで400億ベクレルの放射性
物質が含まれていることが分かります。

今回、放出されるのはこれの9リットル分程度ということですから、放射性
ヨウ素131だけで3600億ベクレルが投棄されるのです。これがどうして危機では
ないのでしょうか。

政府も東電も、放射能漏れについては、もはや「高濃度」「低濃度」という
言い方をやめ、発表単位を統一し、何がどれだけ出ているのか、分かりやすく
伝えることに尽力すべきです。マスコミ各社も、政府の広報と化してしまわずに、
政府の出す一次情報を分かりやすく直して報道すべきです。


ちなみにここでも「東電は「健康への影響は小さい」としている」そうです。
記事も何の価値判断もなしにそれを流しています。
ヨウ素131だけで3600億ベクレルの放射能を海に流して、健康への影響が
小さいとは、とても考えられない。しかも汚染水には、他の放射性物質も
多様・多量に含まれているのです。(データがないので、「多様・多量」と
書きましたが、この点も公表されるべき重要ポイントです)

そもそも東電はこうしたことを、何の科学的なデータもなしに語っています。
事故から3週間が過ぎてなお、こうした非科学的で、不誠実な言動を繰り返し、
被害を小さく見せようとすることに頭を使い続けている東電が、現場で責任を
負っていることそのものに、大きな矛盾、あるいは危機そのものが
あるように思えてなりません。


・・・情報発信を続けます。


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汚染水1万トン超、海に放出…やむを得ない措置

 東京電力は4日午後7時過ぎ、福島第一原子力発電所で高い濃度の放射性
物質を含む汚染水の貯蔵先を確保するため、低濃度の汚染水約1万1500
トンの海への放出を始めた。

 5日間かけて流す。原子炉等規制法第64条にもとづく緊急措置で、経済
産業省原子力安全・保安院は「危険を回避するためのやむを得ない措置」
として了承した。東電は「健康への影響は小さい」としている。今回の事故で
汚染水を意図的に海へ放出するのは初めて。

 放出するのは、4号機南側にある集中廃棄物処理施設内にたまった水
約1万トンと、現在は冷温停止している5、6号機のタービン建屋周辺の
地下水約1500トン。50メートルプール6~7個分に相当する。

 集中廃棄物処理施設にたまっている水の放射性ヨウ素131の濃度は、
海水の濃度基準の157倍ほど。5、6号機周辺の地下水は海水と雨水が
混ざったものとみられ、5号機が同40倍、6号機が同500倍。同10億倍の
2号機タービン建屋の汚染水と比べ、放射性物質の濃度はずっと低い。

今回、海に放出される計1万1500トンの汚染水に含まれる放射線の総量は
2号機タービン建屋内の汚染水の9リットル分程度だ。

(2011年4月5日01時28分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110404-OYT1T00923.htm

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明日にむけて( 22 )デモについてもう一度・仙台から避難してきた女性の訴え

2011年04月05日 10時07分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110405 10:00)

デモについてもう一度、書きます。

橋本さんの報告にもあるように、この日、仙台から子どもと一緒に避難されてきた
女性、清水香名さんが、自らマイクをとって先頭で繰り返しアピールを行って
下さいました。その内容がWEB上に公開されましたので、みなさんにお知らせ
します。僕も京都河原町を歩きながら彼女の訴えを聞き、胸を打たれました・・・。


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「緊急 放射能汚染から子どもたちを救ってください」


はじめまして。仙台の清水香名です。二人の娘の母親です。14日に仙台から
子どもたちを放射能汚染から離すために、実家にある兵庫県尼崎市に
避難してきました。

地震の被災直後、空港・電車・新幹線・高速道路も機能せず、バスの全ての
交通手段も絶たれ、ガソリンも無く、動きたくてもみんな動けないという、一都市
まるごと陸の孤島になってしまいました。

地震の当日、夫が福岡にいたことや、奇跡のようなことが重なり、震災後
2日目に、夫が仙台に車でもどってくれました。

私は、数年前から原発の安全性に疑問を持ち、原発事故の恐ろしさを知り、
仲間たちと勉強会などしてしていたこともあり、少しは知識がありましたから、
地震直後から原発事故がとても心配でした。

すでに、一号基が爆発している状態の中、夫は風向きが変わる前に、まずは
子どもたちを原発事故の放射能汚染から離そうと言いました。こんな中、
両親や親戚・友人や地域の人たちを置いて、仙台を出たくないと言う私に、
「まずは子どもたちを安全なところに出させて欲しい。そのために必死に
帰ってきた」との夫の言葉に、はっとして私は仙台を出る決意をしました。
着の身着のままで 我が家を、大好きな仙台を後にしました。

今、福島原発の放射能汚染の状況は、悪くなるいっぽうで、福島は、もう子ども
たちがいる場所ではないし、人がいてはいけないと感じています。福島原発の
状況からもう一刻の猶予もないと思います。

「復興のために」「学校のために」と、いろんな事情の中に縛られている福島
・宮城の被災地から今すぐにでも、妊婦さん、赤ちゃん、子どもたちや
その親を出してほしい。

チェルノブイリでは、小さい子どもたちから最初に甲状腺ガンになり命を落として
ゆきました。アフガニスタンでも、米軍の使用した劣化ウラン弾による体内被曝で、
子どもたちの死者の数は今だに増え続けています。なぜ教訓にできないの
でしょうか。

5年後、10年後に苦しむ子どもたちを増やしてはいけない。そんなものを子ども
たちにみすみす背負わせないでやってほしい。今この瞬間にも、被災地の
子どもたちは、高いレベルの放射能汚染の中にいるのです。

被曝に不安をかかえながらも暮らしている、仙台のお友だちと、ここからメールで
励ましあう子どもたちの姿を見ながら こんなむごいことがあっていいのかと
涙が流れます。
動きたくても動けない仙台の大切な大切な友人たちからは、不安な気持ちを
綴ったメールが続々と届きます。身が引き裂かれる思いです。この国には、
もう期待などしていません。民間より声をあげてゆくよりほかないのだと
思っています。

今もっとも最優先しなくてはならないことがあります。復興よりもです。今西側
にいる私たちができること。私もまだ手探りです。でも、後悔したくありません。

この緊急事態のなかご縁のある皆様にお力になって頂きたく書きました。
全国の皆さま、子どもたちを導く立場にある方々からも 声を上げて頂きたいと
お願いしたいのです。


4月3日 2011

清水香名

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明日にむけて( 21 )ついに政府高官がメルトダウンの危機があったと指摘

2011年04月05日 00時16分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110405 00:10)

みなさま。流量が多くなって大変、恐縮ですが、3日から4日にかけて、福島原発
の今を捉えるために、大変、重要な記事が相次いで出て来ています。このため
解説を急ぎたいと思います。(文章が長くならないように、今後、基本的には
一つの発信で、一つの記事を扱うようにします。)

今回は「放射性物質止まる時期、数ヵ月後が目標」という細野補佐官の発言を
報じた記事を取り上げます。

記事はこう書いています。
「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応を担当している細野豪志首相
補佐官は3日朝、民放のテレビ番組に出演し、事故に伴う放射性物質の放出を
止められる時期について「おそらく数カ月後が一つの目標になる」と述べた。」

細野副長官はここで放射能が数か月漏れ続けることを明確にしています。
これは今までよりも事実に迫る発言だと思います。もちろんすでに明らかな現実を
認めたにすぎないとも言えますが、ともあれ今後、私たちが、数カ月もの間、
放射能漏れと共存しなければならないことが政府高官によって宣言されたのです。
深刻さを受け止めなくてはいけない。「ゆっくりとしたチェルノブイリ」、(この場合は
大量の放射能漏れ)が数か月にわたって進んでゆきます・・・。

このことから、原発の近くから離れた方が有利なこともますます明らかになりました。
次から次へと放射能が出続けるからです。今は海に汚染物質が大量に
流れ込んでいますが、浜から、地下水から、魚介類から、陸上へ戻ってきます。

一方で西日本の側も、被ばくが避けられなくなっていくことも明らかです。
私たちの社会は、広範な物資が駆け巡っており、福島周辺で数か月も、発生する
放射能を遮断することは難しいからです。

つまり、大事故のときの放射能雲や、今漏れ出している放射能による
一次的な被ばくに襲われないと思われる地域でも、食料や飲料水などに混入した
放射能による内部被ばくは避けられません。

とくに家畜のえさなどが放射能汚染されたり、魚介類が汚染され、生体濃縮
されて広範な地域に移動したり、食物連鎖が続いていくことを考えれば、
産地特定により、汚染物質を排除しても、一部をガードできるだけです。

その意味で私たちは、放射能との共存の時代に入ったと言えると思います。
もはや覚悟を決めて、これと闘うことです。私たち自身の免疫力を最大限に、
高めていくことが大事です。

私たちの身体には、高度の自己修復能力が備わっており、けして被ばくを
したらそれで終わりではない。その意味で放射能は「正しく怖がり」、
なおかつ、もはや「正しく立ち向かっていく」べき対象だということに腹を
くくりましょう。態勢を整えて、みんなで闘いましょう。


次に記事で非常に重要なのは次の点です。

記事は
「細野氏はまた、番組後に記者団に対し「事故発生直後は炉心溶融(メルト
ダウン)の危機的な状況を経験したし、原子炉格納容器が破断するのでは
ないかという危機的状況も経験した。しかし、そういう状況は脱した。若干落ち
着きを取り戻している」と説明した」と伝えています。

ついに政府高官から、私たちが、チェルノブイリ原発の爆発のような、破局的な
危機の上を歩いていたことが明らかにされたのです。 これも非常に重大です。

このことで、当初、さまざまなところで叫ばれていた「チェルノブイリ的な事態は
絶対におきない」という見解、また、「にもかかわらず、被災地の不安をあおるの
はよくない」という指摘も間違っていたことが明らかになりました。

やはり、当初、「逃げる」ことを叫び、実行し、迫りくる危機を周りに伝えようと
した人々が正しかったのです。このことが、細野副長官によって明らかに
されたことを、見据えておきたいものです。


その点で、細野副長官の発言は、踏み込んだものであり、僕は歓迎したいと
思います。よくぞ言われたのではないでしょうか。すでに与野党からの袋だたきが
始まっているようですが、屈することなく、さらに真実を述べて欲しいものです。

とくに細野副長官が「そういう状況は脱した。若干落ち着きを取り戻している」と
述べている根拠を示して欲しいです。本当にそう願いたいですが、残念ながら、
現在、明らかになっているデータからは、危機を脱した兆候が見出せないのです。
はっきりとした事実、数値を示した科学的な説明が求められます。

・・・細野副長官の検討を祈りたいです。


ともあれ、これまで原発の状況について、政府が事実に反した安全宣言を
繰り返してきたことが明らかになりました。またテレビで安全、安全と繰り返して
いた解説者たちも、ウソを語っていたか、少なくとも事実を見誤り、視聴者に、
真実とは正反対の解説をしていたことも明らかになりました。

今後テレビを見る時は、解説者が事実を間違えて語っていたことを、謝るか
どうかに注目したいものです。またテレビで、「今私たちにできること。政府や
あやしい解説者のデマに惑わされないこと」と流して欲しいですね。


**********************************

放射性物質止まる時期「数カ月後が目標」 細野補佐官

 東京電力福島第一原子力発電所の事故対応を担当している細野豪志首相
補佐官は3日朝、民放のテレビ番組に出演し、事故に伴う放射性物質の放出を
止められる時期について「おそらく数カ月後が一つの目標になる」と述べた。

 細野氏は「国民に不安を与えないためにも目標を設定すること(が大事だ)。
原子炉を冷却する仕組みを完全に作って安定させるという目標がある。試行
錯誤で行っていることを説明する時期が来た」と述べ、放射性物質の放出が
止まる時期の見通しを語った。

 細野氏は3月15日に東電本店内に設置した「福島原子力発電所事故対策
統合本部」(本部長=菅直人首相)に常駐し、政府と東電との調整のほか、
米国との協力の統括役を務める。

 細野氏は一方で、「使用済み核燃料が1万本以上あり、処理するのに相当
時間がかかる」とも指摘。放射性物質の放出を食い止めても、事態の完全
収束まではさらに時間がかかるとの見通しも示した。

 細野氏はまた、番組後に記者団に対し「事故発生直後は炉心溶融(メルト
ダウン)の危機的な状況を経験したし、原子炉格納容器が破断するのでは
ないかという危機的状況も経験した。しかし、そういう状況は脱した。若干落ち
着きを取り戻している」と説明した。

(2011年4月3日10時36分 朝日新聞)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104030041.html
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