守田です。(20110428 03:30)
このところ、友人たちからガイガーカウンターの購入に向けたアドバイスを
頼まれることが数回続きました。いろいろと相談に乗りましたが、幾つか
気になる点がでてきました。
一つにはなかなか信頼に足る購入先が見つからないことです。ネットなどで
中国の製品が出回っていますが、僕の周りで、6万円払って、正常に作動
しない粗悪品をつかまされた例があります。
僕としては、ロシア製のもので16000円という相対的に安い価格で出ているものを
海外から購入しようとしていますが、信頼に足るものとして推薦できる段階に
ありません。この購入がうまくいったら、商品を紹介しようと思います。
しかし他方で思うのは、原発近郊などで使用する場合、すでに放射能がたくさん
舞っている状態では、ガイガーカウンターの使用は有効ではない面もあるという
ことです。この辺を踏まえていないと、安全ではない場所で安全だと誤解する
こともありえます。そのため、化学者の友人と相談し、ガイガーカウンターの
効能について分かりやすく書いてもらいましたので、紹介します。
あらかじめエッセンスを書いておきます。
これまで繰り返し述べてきたように、放射線被ばくには外部被ばくと内部被ばく
があり、ガイガーカウンターでは外から飛んでくる放射線の値が測れるだけです。
空気中に塵として舞っている放射能が検出されているわけではありません。
そのため今回のような事故時ではない平時では、ガイガーカウンターは、
自然界にない放射性物質がそばにあることを指し示すものとして、非常に
有効ですが、現在の原発の近くのように、すでに放射性物質がたくさん
あることが明らかな地域では、針やカウンターの振れは、外から飛んでくる
放射線を示しているだけで、塵に付着した放射能など、吸い込んで内部被ばく
をもたらす物質の存在を表しているわけではありません。
これを誤解して、内部被ばくも含めた被ばくの可能性がモニターされていると
誤解すると危険です。つまり放射能が舞っているところでは、ガイガーカウンター
で危険の度合いを測ることは難しいということです。もちろん針が振り切れる
ような場所、ないしは高い値が計測されているところに長居は無用ですが、
値が低いからといって安全と思ってしまうと危険です。この点で、ガイガー
カウンターは上手に使う必要があります。
以上に踏まえて以下の内容をご参照ください。
(編集中。前回の通信で、福島現地調査報告会の会場を、京都大学文学部
新館第一講義室としていましたが、正しくは第三講義室でした。訂正し
お詫びします)
*************************
ガイガーカウンターを上手に使おう
●ガイガーカウンターの原理
放射線は、正式には電離放射線”ionizing radiation”という、物質をプラズマ化
(荷電化)する性質を持った光です。
ガンマ線は、波長が10^-12[m] ~ 10^-15[m]のもので、この大きさの波長は、
原子の状態をダイレクトに変化させるエネルギーを持っています。
いわゆるガイガーカウンター(GMカウンター)は、内部に電極が設置された
管(ガイガー管)の中にプラズマ化しやすいガスを封入し、放射線が通ると、
ガスが電離されて、電気が流れる仕掛けを使います。
蛍光灯に似ています。放射線が通ればランプが点灯、通らなければ消灯する
蛍光灯だと思ってください。
したがって、この装置は「放射線が通った」「通っていない」しか検出しません。
この電極の先に、カウンター回路をつけ、単位時間当たり「何回電気が
流れたか」を測定することで、たとえばCPM(カウント毎分)が「計測」される。
この計測値が放射線量(シーベルト毎時)へ「換算」されます。
(換算量はたいてい100[cpm]=1マイクロシーベルトパーアワーですが。)
●恐れるべきは外部被ばくよりも内部被ばく
放射能(放射性物質)というのは厄介です。
放射線量が低いからといって、必ずしも毒性が弱いとは限らない。
ガイガーカウンターによる放射線量の測定は、自然由来以外の人工放射能
(放射性物質)が存在することを教える、「目安」だと思ってください。
ガイガーカウンターで測定できるのは放射線の線量だけで、そのエネルギーの
大きさ、すなわち放射線の由来する物質までは分かりません。強いエネルギー
を発する核種(α線核種:ウラン、プルトニウム、アメリシウムなどなど)も、
β線でもγ線でも、みな一緒です。
よく、α線核種やβ線核種は、すぐ減衰するから大丈夫とかいう人がいますが、
そもそも、そういう人工放射能が身近に検出されるだけで「危険」という感覚が
無い人は、自分の思考回路をよ~く疑うべきです。それを吸い込んでしまえば
内部被ばくするわけですから。
ガイガーカウンターで測定されている放射線は、大気中の放射能のついた塵を
測定しているわけではありません。大気中の塵よりも、地表に降下した放射性
物質の放っている放射線の方が強く測定されています。
放射線は大気中で主に水蒸気と衝突して減衰します。
放射線を放つ物質は地表に滞留しているので、地表から距離が離れれば
離れるほど、放射線量は少なくなります。本当は、測定基準に「地表の
放射線量」として表記するべきなのです。
●毎時1マイクロシーベルト の放射線量は管理区域(立入規制)レベル
地球上では、自然放射線以上の放射線量が検出された場合、放射性物質が
存在します。自然放射線の量は、毎時0.005~0.05マイクロシーベルトのオーダー
なので、毎時1マイクロシーベルト 以上のオーダーで放射線量が検出
された段階で、実験家の常識からいえば、内部被ばくの危険性がある管理
区域レベル(年間1.3ミリシーベルトとかのレベル )であり、厳重に管理された
施設の中で、施設外に放射性物質を漏らさないような措置が取られます。
(毎時0.6マイクロシーベルトで放射線管理区域に該当する)
放射線量が「比較的に」低いからといって、放射能は確実に存在するわけです
から、内部被ばくの危険性は十二分にあります。だから、そういう場所を「管理
区域」として外界と隔離するのです。
現在の福島は、これがまったく管理されていない状況であり、平時の労働安全
管理規定から言えば法的に逸脱した状況にあります。
原子力災害法における特例措置で被ばく限度が 年間20mシーベルトから50m
シーベルトの間に大幅に引き上げられているから、住民は安全管理規定のもとに
行動することを免れるという、奇妙な状態にあるのです。
本来は、管理責任者を置いて、管理区域内に入る全ての構成員にフィルムバッジ
(一種のガイガーカウンターです)が渡され、年間被ばく量を管理しないといけない。
実際、そういう議論も出ていると思います。
以上
このところ、友人たちからガイガーカウンターの購入に向けたアドバイスを
頼まれることが数回続きました。いろいろと相談に乗りましたが、幾つか
気になる点がでてきました。
一つにはなかなか信頼に足る購入先が見つからないことです。ネットなどで
中国の製品が出回っていますが、僕の周りで、6万円払って、正常に作動
しない粗悪品をつかまされた例があります。
僕としては、ロシア製のもので16000円という相対的に安い価格で出ているものを
海外から購入しようとしていますが、信頼に足るものとして推薦できる段階に
ありません。この購入がうまくいったら、商品を紹介しようと思います。
しかし他方で思うのは、原発近郊などで使用する場合、すでに放射能がたくさん
舞っている状態では、ガイガーカウンターの使用は有効ではない面もあるという
ことです。この辺を踏まえていないと、安全ではない場所で安全だと誤解する
こともありえます。そのため、化学者の友人と相談し、ガイガーカウンターの
効能について分かりやすく書いてもらいましたので、紹介します。
あらかじめエッセンスを書いておきます。
これまで繰り返し述べてきたように、放射線被ばくには外部被ばくと内部被ばく
があり、ガイガーカウンターでは外から飛んでくる放射線の値が測れるだけです。
空気中に塵として舞っている放射能が検出されているわけではありません。
そのため今回のような事故時ではない平時では、ガイガーカウンターは、
自然界にない放射性物質がそばにあることを指し示すものとして、非常に
有効ですが、現在の原発の近くのように、すでに放射性物質がたくさん
あることが明らかな地域では、針やカウンターの振れは、外から飛んでくる
放射線を示しているだけで、塵に付着した放射能など、吸い込んで内部被ばく
をもたらす物質の存在を表しているわけではありません。
これを誤解して、内部被ばくも含めた被ばくの可能性がモニターされていると
誤解すると危険です。つまり放射能が舞っているところでは、ガイガーカウンター
で危険の度合いを測ることは難しいということです。もちろん針が振り切れる
ような場所、ないしは高い値が計測されているところに長居は無用ですが、
値が低いからといって安全と思ってしまうと危険です。この点で、ガイガー
カウンターは上手に使う必要があります。
以上に踏まえて以下の内容をご参照ください。
(編集中。前回の通信で、福島現地調査報告会の会場を、京都大学文学部
新館第一講義室としていましたが、正しくは第三講義室でした。訂正し
お詫びします)
*************************
ガイガーカウンターを上手に使おう
●ガイガーカウンターの原理
放射線は、正式には電離放射線”ionizing radiation”という、物質をプラズマ化
(荷電化)する性質を持った光です。
ガンマ線は、波長が10^-12[m] ~ 10^-15[m]のもので、この大きさの波長は、
原子の状態をダイレクトに変化させるエネルギーを持っています。
いわゆるガイガーカウンター(GMカウンター)は、内部に電極が設置された
管(ガイガー管)の中にプラズマ化しやすいガスを封入し、放射線が通ると、
ガスが電離されて、電気が流れる仕掛けを使います。
蛍光灯に似ています。放射線が通ればランプが点灯、通らなければ消灯する
蛍光灯だと思ってください。
したがって、この装置は「放射線が通った」「通っていない」しか検出しません。
この電極の先に、カウンター回路をつけ、単位時間当たり「何回電気が
流れたか」を測定することで、たとえばCPM(カウント毎分)が「計測」される。
この計測値が放射線量(シーベルト毎時)へ「換算」されます。
(換算量はたいてい100[cpm]=1マイクロシーベルトパーアワーですが。)
●恐れるべきは外部被ばくよりも内部被ばく
放射能(放射性物質)というのは厄介です。
放射線量が低いからといって、必ずしも毒性が弱いとは限らない。
ガイガーカウンターによる放射線量の測定は、自然由来以外の人工放射能
(放射性物質)が存在することを教える、「目安」だと思ってください。
ガイガーカウンターで測定できるのは放射線の線量だけで、そのエネルギーの
大きさ、すなわち放射線の由来する物質までは分かりません。強いエネルギー
を発する核種(α線核種:ウラン、プルトニウム、アメリシウムなどなど)も、
β線でもγ線でも、みな一緒です。
よく、α線核種やβ線核種は、すぐ減衰するから大丈夫とかいう人がいますが、
そもそも、そういう人工放射能が身近に検出されるだけで「危険」という感覚が
無い人は、自分の思考回路をよ~く疑うべきです。それを吸い込んでしまえば
内部被ばくするわけですから。
ガイガーカウンターで測定されている放射線は、大気中の放射能のついた塵を
測定しているわけではありません。大気中の塵よりも、地表に降下した放射性
物質の放っている放射線の方が強く測定されています。
放射線は大気中で主に水蒸気と衝突して減衰します。
放射線を放つ物質は地表に滞留しているので、地表から距離が離れれば
離れるほど、放射線量は少なくなります。本当は、測定基準に「地表の
放射線量」として表記するべきなのです。
●毎時1マイクロシーベルト の放射線量は管理区域(立入規制)レベル
地球上では、自然放射線以上の放射線量が検出された場合、放射性物質が
存在します。自然放射線の量は、毎時0.005~0.05マイクロシーベルトのオーダー
なので、毎時1マイクロシーベルト 以上のオーダーで放射線量が検出
された段階で、実験家の常識からいえば、内部被ばくの危険性がある管理
区域レベル(年間1.3ミリシーベルトとかのレベル )であり、厳重に管理された
施設の中で、施設外に放射性物質を漏らさないような措置が取られます。
(毎時0.6マイクロシーベルトで放射線管理区域に該当する)
放射線量が「比較的に」低いからといって、放射能は確実に存在するわけです
から、内部被ばくの危険性は十二分にあります。だから、そういう場所を「管理
区域」として外界と隔離するのです。
現在の福島は、これがまったく管理されていない状況であり、平時の労働安全
管理規定から言えば法的に逸脱した状況にあります。
原子力災害法における特例措置で被ばく限度が 年間20mシーベルトから50m
シーベルトの間に大幅に引き上げられているから、住民は安全管理規定のもとに
行動することを免れるという、奇妙な状態にあるのです。
本来は、管理責任者を置いて、管理区域内に入る全ての構成員にフィルムバッジ
(一種のガイガーカウンターです)が渡され、年間被ばく量を管理しないといけない。
実際、そういう議論も出ていると思います。
以上