守田です。(20110415 23:30)
明日に向けて(31)で、「放射線被ばくから身を守ろう」という文章を書き、
9日の講演会の場にも持参しました。
これに対して、講演を聞いて下さった京都精華大学の細川弘明先生から、
放射線規制値について、僕の書き方では、年間1ミリシーベルトの放射線で、
10万人に5人がガンになる事実を受け入れるかのようになっている。
「そんなことを認めてしまってはだめだ。10万人のために5人に死んでくれと
いうことだよ。これは」と指摘を受ました。
大変、はっとしました。その点も含めて、書き直さなければと思っていましたが、
ようやく手を入れることができましたので、改訂版としてみなさんにお届けします。
同時にこの1ミリシーベルトは、外部被ばくを中心に考えた値であり、内部被ばく
の目安がないことを考え、観測される空間線量に対して、内部被ばくを考えると
3倍ぐらいを見積もった方が良いという意見も加えています。
また1ミリシーベルトの被ばくの場合、10万人に5人がガンになるという捉え方は
危険を小さく見積もりすぎている、10万人に40人が妥当な見方だという見解を
唱えてる科学者がいることも知り、この確率も、10万人に5人から40人と
書き改めました。
ここでもう少し細川さんの意見について考えたことを述べます。
この10万人に5人とか、1万人に1人とかいう値は繰り返し、マスコミでも使われて
います。非常に可能性が小さいので、大丈夫だと言う論脈で使われることが
多い。確かに自分自身のリスクを考える時に10万分の5は少ない値かもしれない。
10万分の40でもそうかもしれません。
しかし多くの人々に目を向けた時、単に確率だけでは割り切れないものが
ここにはあることを考えなければいけないと思います。5~40人が確実にガンに
なるという事実。誰かが電力のために犠牲になるという点です。あなた方
5~40人は10万人のために犠牲になってくださいという考えがここにある。
もう少し分母を大きくしてみましょう。100万人ではこの数は50人から400人に
なります。1億ではどうか。5000人から4万人にもなってしまう。
つまり日本の交通事故死者の数を超える人数なのです。
私たちは、交通事故死の報を聞いたときに、交通事情を守るためのやむを得ない
死だと捉えるのでしょうか。そうではなく、その都度、痛みを感じます。そして
交通事故死が少しでも減ることを願います。
これと同じことを考えなくてはならない。10万人に5人ぐらいから40人ぐらい
ガンになっても構わないという風には、私たちは日常的にも考えてはいないのです。
ここにはいわば確率論的なトリックがあります。
これに対して細川先生は、常に犠牲になる側、5人、ないし40人の側に
しっかりと立って、考えておられるのだなと感じました。同時に、原子力政策が、
少数の犠牲はやむを得ないと非常に安易に考えて成り立っていることも
より見えてきました。
犠牲があることを前提にしている。そのため現在のような非常時に
なると容易に、その枠を拡大し、許容値も緩和されてしまいます。
(現在非常時に働く人の被ばく許容値が、100ミリから250ミリに大きく緩和
されています)
いや事故を起こさなくても、原発は点検などのときに、たくさんの被ばく労働者
を産みながら運転されてきている。被ばく者を作りながら動いてきたのが
原子力発電なのです。
この点、僕も考えの中に甘い点がありました。その点を踏まえて、放射線
被ばくから身を守る術を書き直しました。お役に立てば幸いです・・・。
*****************************
放射線被ばくから身をまもろう
(2011年4月15日)
みなさま。
福島第一原発では、懸命の復旧作業が続けられていますが、残念ながら
まだ危険な状態が続いてます。最近では、原子炉を収めている格納容器の
中に水素がたまり、水素爆発が起こってしまう危険性が生まれています。
窒素を注入して、爆発を未然におさえる努力が進められていますが、原子炉格納
容器内の放射能を含んだ水蒸気が外に出されています。続けて2号機、3号機でも
にも行われる予定で、1号機よりもたくさんの放射能が出てくると心配されています。
今回の事故では最初の数日間の間に、チェルノブイリ事故の10分の1にもあたる
たくさんの放射能が漏れだしました。しかし政府も、経産省保安院も、東京電力も
私たちに教えてくれませんでした。
今、起きている放射能漏れについても、情報が充分に伝わってきていません。
漏れている放射能が多くなると、気候次第で、みなさんの街に流れてくる可能性
があります。このためここで放射能から身を守る方法を、まとめたいと思います。
放射能・放射線とは何か。被ばくはどのように起こるのか
放射能とは、放射線を発する能力を持った物質のことです。放射線には主なものに
アルファー線、ベーター線、ガンマー線、中性子線があります。私たちの身体の
細胞を傷つけ、健康被害やガン、遺伝的な悪影響などをもたらすことがあります。
放射線は、出ているところからの距離の2乗に反比例して、威力が減ります。
距離が2倍になれば、威力は4分の1に、4倍になれば16分の1になります。このため、
放射線源からできるだけ離れるた方が害が少なくなります。
反対に近づけば近づくだけ威力が増します。距離が半分になれば威力は4倍に、
4分の1になれば16倍になります。放射能が身体の中に入ってしまうと、
距離がごく小さくなるため、少ない量で、大きな害がもたらされます。
このため、被ばくは、外部被ばくと内部被ばくに分けて考えられます。
外部被ばくは外から飛んできた放射線にあたること、内部被ばくは、
呼吸や飲食などで、体の中に放射能が入り、被ばくする場合を指します。
放射能はどのように運ばれてくるか
放射能は気体であったり、微粒子であったりしますが、空気中のチリなどに
くっつき、風で運ばれてきます。雲にもくっつき、雨が降ると、水滴と一緒に
なって地上に落ちてきます。水の中にも入り込んでいきます。
原発からの距離がそのまま汚染の度合いに重なるわけではありません。汚染は風で
放射能が運ばれていく地域に広がり、雨が降ったところで強くなります。原発に
近くても、雨雲が通り過ぎたところの方が汚染が低い場合もあります。
放射能が大気中に出てきた時は、天気に注意する必要があります。大事なのは
風向きです。自分のいるところが風下に入っている場合は、放射能を含んだ風や
雲の接近に要注意です。各地の放射線モニタリングポストの値を注意しましょう。
雨が降った後は、水の流れに沿って放射性物質が集まりやすくなります。浄水場に
これらの水が流れ込むと、急に濃度が高くなります。放射能はものにもくっつきます。
そのものが移動することで、運ばれることもあります。
放射線被ばくをさけるために
放射能が流れて来ている場合には、参考になるのは花粉症やインフル対策です。
まずは可能な限り、外出を控え、部屋の中にいる用にしましょう。換気扇やエアコンも
使わず、家の密閉性を高めましょう。隙間風テープなども有効です。
外出が必要な時は、必ずマスクを着用してください。キメの細かいものほど
いいです。また目や擦り傷、切り傷などからも体内に入らないように注意します。
帰宅したら、手洗い、うがい、着替えをこまめに心がけましょう。
また身体もすっぽりと包むようにしてください。髪の毛も覆ってください。
ビニール合羽で身体を覆い、使い捨てるのが理想ですが、合羽の上から
ビニール袋をもう一重かぶり、使い捨てるのも一つの手です。
雨には特に注意してください。降り始めが濃度が高いです。足元や靴にも気を
つけて濡れないようにしてください。また濡れたものは家の外で洗い流し、中に
持ち込まないようにしましょう。
避難所ではどうしたらいいのか
避難所でも、より被ばくをさけるいろいろな工夫を重ねることができます。大切
なのは、放射能を含んだチリが舞っている時は、外での活動を控えることです。
とくに食べ物の分配に注意し、屋内で行えるための準備を進めてください。
避難所はたくさんの人が常時、出入りするので、密閉性を高めることはできま
せんが、入り口のカーテンを二重にすれば、外気が入りにくくなります。靴の泥も
良く落とすように工夫し、外から持ち込まれるものを少なくしましょう。
やはり雨には要注意ですが、合羽が手元にない人がすぐに使えるように、
ビニール袋を出入り口におき、即席の合羽とすると良いです。タオルも用意し、
濡れた人をふいてあげましょう。
避難所ではみなさん、疲れがたまっているので、あまり神経質に被ばくだけを
避けようとすると、お互いの気持ちのズレが生じてしまいかねません。この点にも
注意して、それぞれに可能な工夫を重ねてださい。
放射能はどれぐらいから危険なのか
被ばくを有効に避けるためには、一方で、放射能がどれぐらいから、どれだけの
危険性があるのかを知っておくことも大切です。私たちの周りには、自然界から
発している放射線もあり、私たちには抵抗力もあると考えられています。
被ばくを避ける目安になるのは、国が定めている私たち一般人が浴びる許容線量が
あげられます。1年間に1ミリシーベルトです。シーベルトは、いろいろな放射線が
人間の身体に及ぼす影響を概算したものです。
1ミリシーベルトを浴びると、長年経ってからガンになる確率が10万人に5人から
40人の割合で生じます。この確率は、浴びる放射線総量が高まるにつれて上がって
いきます。そのため1ミリシーンベルト以上、浴びないようと法律が定めています。
こうしたガンになる確率が低い値から生じることが、「にわかに健康に
被害はない」というアイマイな言葉を生む根拠になっています。にわかでは
なく、長年たったら被害がでる可能性があるのです。
放射線被ばくの影響には年齢と個人差が
ただし、この値は成人の平均値であり、乳児や子どもはもっと低い値でもより
高い影響が出ると考えられています。どれぐらいの違いを見込むか意見が分かれて
いますが、大人の10分の1から3分の1ぐらいの幅だと考えられています。
またお酒に強い人と弱い人がいるのと同じように、放射線に対しても感受性の
強い人と弱い人がいることも考えておく必要があります。人によって
ガンになる確率が高くなったり、低まったりするのです。
テレビやマスコミで流れている放射線への対処の情報には、この個人差
が無視されています。また100ミリシーベルト以下では健康に害がないと言う
人すらいますが、全く間違っています。浴びないにこしたことはないのです。
またそのわずかな確率も人の感受性によって上下します。とくに乳幼児や子ども、
妊婦さんとお腹の赤ちゃんは、感受性が高いので、最優先で守る必要があります。
より年齢の高い方に、子ども、若い人たちのガードに回っていただきましょう。
放射線量で測れるのは外部被ばくのみ
また空間に飛んでいる放射線量で測れるのは、外部被ばくの量だけで、内部
被ばく量は測れないことを知っておく必要があります。空間に放射線が多く
観測されるときは、チリになった放射能も飛んでいます。
マスクなどで吸い込むことを減らすことができますが、全部を排除するのは
難しいので、ある場所で、ある値の放射線が出ている場合、どうしても
一定のものは吸い込んでいると考えた方が良いです。
実際にはどのような放射能を吸い込むかによって、身体が被る影響が違い、
量的に測ることが難しいのですが、ここでは概ね空間線量の2倍ぐらいの量が、
身体に入ってきていると考えましょう。
つまり1時間に10マイクロシーンベルトのところにいれば、20マイクロシーベルト
ぐらいを体内に取り込んでいて、被ばく量は30マイクロシーベルトになると
考えると良いということです。これは非常に大雑把な把握です。
放射能と前向きに立ち向かおう
一方で見ておくべきことは、放射線被ばくの害は、総量50ミリシーベルトぐらい
まででは長年経ってガンになる確率がだんだんに上がっていくことにあり、ガンに
ならない確率の方が高くあるということです。
つまり、被ばくしたら何もかも終わってしまうわけではけっしてありません。
その意味で、恐れすぎないことも大事です。放射線が細胞を傷つけても、人間の
身体には再生能力があり、修復が可能です。
ガンに対しても、医療の進歩によって、たくさんの治療法が開発されています。
ガン患者の方々の闘病記の積み上げもあります。ガンにならないための方法も、
たくさん提唱されています。他の危険な物質を避けることもその一つです。
また実はガンの大きな因子は、ストレスです。このため周りの人々と温かい絆を
保ち、前向きな気持ちを作っていけば、この大きな因子を取り除くことができます。
その意味で、周りの人々と助け合って生きて行くことが、放射能の害を防ぎます。
まとめます。
恐れからではなく、勇気をもって立ち向かう気持ちで、放射線被ばくに対応して
いきましょう。そのために放射線がどのようなものかを学び、どれぐらいから
危険が生じるのかを把握し、みんなで助け合って、お互いを守っていきましょう。
とくに間近に迫っている窒素注入による高濃度の放射能の放出では、再び、野菜の
汚染が高まったり、飲料水の制限がでたりする場合があります。ミネラルウォーター
の需要も高まるので、子どもさんのおられる家庭は、事前に買っておいて下さい。
あるいは少し前に、家のやかんやポットなどなどに水を満たしておくのも良い手です。
放射能は少しでも体内に入れないに越したことはないからです。またそうした行為は、
より大きな爆発などが起こった時の予行演習にもなります。
反対に、基準値を超した水しか手元に入らなくなった場合、その水を飲まずに、
脱水症状になる方が、赤ちゃんや子どもさんに危険であることも知っておいて
ください。被ばくを恐れ、他の大きいなリスクを背負わないようにしてしてください。
どうかみなさま。
強く逞しい気持ちで、放射能汚染と立ち向かっていきましょう。
明日に向けて(31)で、「放射線被ばくから身を守ろう」という文章を書き、
9日の講演会の場にも持参しました。
これに対して、講演を聞いて下さった京都精華大学の細川弘明先生から、
放射線規制値について、僕の書き方では、年間1ミリシーベルトの放射線で、
10万人に5人がガンになる事実を受け入れるかのようになっている。
「そんなことを認めてしまってはだめだ。10万人のために5人に死んでくれと
いうことだよ。これは」と指摘を受ました。
大変、はっとしました。その点も含めて、書き直さなければと思っていましたが、
ようやく手を入れることができましたので、改訂版としてみなさんにお届けします。
同時にこの1ミリシーベルトは、外部被ばくを中心に考えた値であり、内部被ばく
の目安がないことを考え、観測される空間線量に対して、内部被ばくを考えると
3倍ぐらいを見積もった方が良いという意見も加えています。
また1ミリシーベルトの被ばくの場合、10万人に5人がガンになるという捉え方は
危険を小さく見積もりすぎている、10万人に40人が妥当な見方だという見解を
唱えてる科学者がいることも知り、この確率も、10万人に5人から40人と
書き改めました。
ここでもう少し細川さんの意見について考えたことを述べます。
この10万人に5人とか、1万人に1人とかいう値は繰り返し、マスコミでも使われて
います。非常に可能性が小さいので、大丈夫だと言う論脈で使われることが
多い。確かに自分自身のリスクを考える時に10万分の5は少ない値かもしれない。
10万分の40でもそうかもしれません。
しかし多くの人々に目を向けた時、単に確率だけでは割り切れないものが
ここにはあることを考えなければいけないと思います。5~40人が確実にガンに
なるという事実。誰かが電力のために犠牲になるという点です。あなた方
5~40人は10万人のために犠牲になってくださいという考えがここにある。
もう少し分母を大きくしてみましょう。100万人ではこの数は50人から400人に
なります。1億ではどうか。5000人から4万人にもなってしまう。
つまり日本の交通事故死者の数を超える人数なのです。
私たちは、交通事故死の報を聞いたときに、交通事情を守るためのやむを得ない
死だと捉えるのでしょうか。そうではなく、その都度、痛みを感じます。そして
交通事故死が少しでも減ることを願います。
これと同じことを考えなくてはならない。10万人に5人ぐらいから40人ぐらい
ガンになっても構わないという風には、私たちは日常的にも考えてはいないのです。
ここにはいわば確率論的なトリックがあります。
これに対して細川先生は、常に犠牲になる側、5人、ないし40人の側に
しっかりと立って、考えておられるのだなと感じました。同時に、原子力政策が、
少数の犠牲はやむを得ないと非常に安易に考えて成り立っていることも
より見えてきました。
犠牲があることを前提にしている。そのため現在のような非常時に
なると容易に、その枠を拡大し、許容値も緩和されてしまいます。
(現在非常時に働く人の被ばく許容値が、100ミリから250ミリに大きく緩和
されています)
いや事故を起こさなくても、原発は点検などのときに、たくさんの被ばく労働者
を産みながら運転されてきている。被ばく者を作りながら動いてきたのが
原子力発電なのです。
この点、僕も考えの中に甘い点がありました。その点を踏まえて、放射線
被ばくから身を守る術を書き直しました。お役に立てば幸いです・・・。
*****************************
放射線被ばくから身をまもろう
(2011年4月15日)
みなさま。
福島第一原発では、懸命の復旧作業が続けられていますが、残念ながら
まだ危険な状態が続いてます。最近では、原子炉を収めている格納容器の
中に水素がたまり、水素爆発が起こってしまう危険性が生まれています。
窒素を注入して、爆発を未然におさえる努力が進められていますが、原子炉格納
容器内の放射能を含んだ水蒸気が外に出されています。続けて2号機、3号機でも
にも行われる予定で、1号機よりもたくさんの放射能が出てくると心配されています。
今回の事故では最初の数日間の間に、チェルノブイリ事故の10分の1にもあたる
たくさんの放射能が漏れだしました。しかし政府も、経産省保安院も、東京電力も
私たちに教えてくれませんでした。
今、起きている放射能漏れについても、情報が充分に伝わってきていません。
漏れている放射能が多くなると、気候次第で、みなさんの街に流れてくる可能性
があります。このためここで放射能から身を守る方法を、まとめたいと思います。
放射能・放射線とは何か。被ばくはどのように起こるのか
放射能とは、放射線を発する能力を持った物質のことです。放射線には主なものに
アルファー線、ベーター線、ガンマー線、中性子線があります。私たちの身体の
細胞を傷つけ、健康被害やガン、遺伝的な悪影響などをもたらすことがあります。
放射線は、出ているところからの距離の2乗に反比例して、威力が減ります。
距離が2倍になれば、威力は4分の1に、4倍になれば16分の1になります。このため、
放射線源からできるだけ離れるた方が害が少なくなります。
反対に近づけば近づくだけ威力が増します。距離が半分になれば威力は4倍に、
4分の1になれば16倍になります。放射能が身体の中に入ってしまうと、
距離がごく小さくなるため、少ない量で、大きな害がもたらされます。
このため、被ばくは、外部被ばくと内部被ばくに分けて考えられます。
外部被ばくは外から飛んできた放射線にあたること、内部被ばくは、
呼吸や飲食などで、体の中に放射能が入り、被ばくする場合を指します。
放射能はどのように運ばれてくるか
放射能は気体であったり、微粒子であったりしますが、空気中のチリなどに
くっつき、風で運ばれてきます。雲にもくっつき、雨が降ると、水滴と一緒に
なって地上に落ちてきます。水の中にも入り込んでいきます。
原発からの距離がそのまま汚染の度合いに重なるわけではありません。汚染は風で
放射能が運ばれていく地域に広がり、雨が降ったところで強くなります。原発に
近くても、雨雲が通り過ぎたところの方が汚染が低い場合もあります。
放射能が大気中に出てきた時は、天気に注意する必要があります。大事なのは
風向きです。自分のいるところが風下に入っている場合は、放射能を含んだ風や
雲の接近に要注意です。各地の放射線モニタリングポストの値を注意しましょう。
雨が降った後は、水の流れに沿って放射性物質が集まりやすくなります。浄水場に
これらの水が流れ込むと、急に濃度が高くなります。放射能はものにもくっつきます。
そのものが移動することで、運ばれることもあります。
放射線被ばくをさけるために
放射能が流れて来ている場合には、参考になるのは花粉症やインフル対策です。
まずは可能な限り、外出を控え、部屋の中にいる用にしましょう。換気扇やエアコンも
使わず、家の密閉性を高めましょう。隙間風テープなども有効です。
外出が必要な時は、必ずマスクを着用してください。キメの細かいものほど
いいです。また目や擦り傷、切り傷などからも体内に入らないように注意します。
帰宅したら、手洗い、うがい、着替えをこまめに心がけましょう。
また身体もすっぽりと包むようにしてください。髪の毛も覆ってください。
ビニール合羽で身体を覆い、使い捨てるのが理想ですが、合羽の上から
ビニール袋をもう一重かぶり、使い捨てるのも一つの手です。
雨には特に注意してください。降り始めが濃度が高いです。足元や靴にも気を
つけて濡れないようにしてください。また濡れたものは家の外で洗い流し、中に
持ち込まないようにしましょう。
避難所ではどうしたらいいのか
避難所でも、より被ばくをさけるいろいろな工夫を重ねることができます。大切
なのは、放射能を含んだチリが舞っている時は、外での活動を控えることです。
とくに食べ物の分配に注意し、屋内で行えるための準備を進めてください。
避難所はたくさんの人が常時、出入りするので、密閉性を高めることはできま
せんが、入り口のカーテンを二重にすれば、外気が入りにくくなります。靴の泥も
良く落とすように工夫し、外から持ち込まれるものを少なくしましょう。
やはり雨には要注意ですが、合羽が手元にない人がすぐに使えるように、
ビニール袋を出入り口におき、即席の合羽とすると良いです。タオルも用意し、
濡れた人をふいてあげましょう。
避難所ではみなさん、疲れがたまっているので、あまり神経質に被ばくだけを
避けようとすると、お互いの気持ちのズレが生じてしまいかねません。この点にも
注意して、それぞれに可能な工夫を重ねてださい。
放射能はどれぐらいから危険なのか
被ばくを有効に避けるためには、一方で、放射能がどれぐらいから、どれだけの
危険性があるのかを知っておくことも大切です。私たちの周りには、自然界から
発している放射線もあり、私たちには抵抗力もあると考えられています。
被ばくを避ける目安になるのは、国が定めている私たち一般人が浴びる許容線量が
あげられます。1年間に1ミリシーベルトです。シーベルトは、いろいろな放射線が
人間の身体に及ぼす影響を概算したものです。
1ミリシーベルトを浴びると、長年経ってからガンになる確率が10万人に5人から
40人の割合で生じます。この確率は、浴びる放射線総量が高まるにつれて上がって
いきます。そのため1ミリシーンベルト以上、浴びないようと法律が定めています。
こうしたガンになる確率が低い値から生じることが、「にわかに健康に
被害はない」というアイマイな言葉を生む根拠になっています。にわかでは
なく、長年たったら被害がでる可能性があるのです。
放射線被ばくの影響には年齢と個人差が
ただし、この値は成人の平均値であり、乳児や子どもはもっと低い値でもより
高い影響が出ると考えられています。どれぐらいの違いを見込むか意見が分かれて
いますが、大人の10分の1から3分の1ぐらいの幅だと考えられています。
またお酒に強い人と弱い人がいるのと同じように、放射線に対しても感受性の
強い人と弱い人がいることも考えておく必要があります。人によって
ガンになる確率が高くなったり、低まったりするのです。
テレビやマスコミで流れている放射線への対処の情報には、この個人差
が無視されています。また100ミリシーベルト以下では健康に害がないと言う
人すらいますが、全く間違っています。浴びないにこしたことはないのです。
またそのわずかな確率も人の感受性によって上下します。とくに乳幼児や子ども、
妊婦さんとお腹の赤ちゃんは、感受性が高いので、最優先で守る必要があります。
より年齢の高い方に、子ども、若い人たちのガードに回っていただきましょう。
放射線量で測れるのは外部被ばくのみ
また空間に飛んでいる放射線量で測れるのは、外部被ばくの量だけで、内部
被ばく量は測れないことを知っておく必要があります。空間に放射線が多く
観測されるときは、チリになった放射能も飛んでいます。
マスクなどで吸い込むことを減らすことができますが、全部を排除するのは
難しいので、ある場所で、ある値の放射線が出ている場合、どうしても
一定のものは吸い込んでいると考えた方が良いです。
実際にはどのような放射能を吸い込むかによって、身体が被る影響が違い、
量的に測ることが難しいのですが、ここでは概ね空間線量の2倍ぐらいの量が、
身体に入ってきていると考えましょう。
つまり1時間に10マイクロシーンベルトのところにいれば、20マイクロシーベルト
ぐらいを体内に取り込んでいて、被ばく量は30マイクロシーベルトになると
考えると良いということです。これは非常に大雑把な把握です。
放射能と前向きに立ち向かおう
一方で見ておくべきことは、放射線被ばくの害は、総量50ミリシーベルトぐらい
まででは長年経ってガンになる確率がだんだんに上がっていくことにあり、ガンに
ならない確率の方が高くあるということです。
つまり、被ばくしたら何もかも終わってしまうわけではけっしてありません。
その意味で、恐れすぎないことも大事です。放射線が細胞を傷つけても、人間の
身体には再生能力があり、修復が可能です。
ガンに対しても、医療の進歩によって、たくさんの治療法が開発されています。
ガン患者の方々の闘病記の積み上げもあります。ガンにならないための方法も、
たくさん提唱されています。他の危険な物質を避けることもその一つです。
また実はガンの大きな因子は、ストレスです。このため周りの人々と温かい絆を
保ち、前向きな気持ちを作っていけば、この大きな因子を取り除くことができます。
その意味で、周りの人々と助け合って生きて行くことが、放射能の害を防ぎます。
まとめます。
恐れからではなく、勇気をもって立ち向かう気持ちで、放射線被ばくに対応して
いきましょう。そのために放射線がどのようなものかを学び、どれぐらいから
危険が生じるのかを把握し、みんなで助け合って、お互いを守っていきましょう。
とくに間近に迫っている窒素注入による高濃度の放射能の放出では、再び、野菜の
汚染が高まったり、飲料水の制限がでたりする場合があります。ミネラルウォーター
の需要も高まるので、子どもさんのおられる家庭は、事前に買っておいて下さい。
あるいは少し前に、家のやかんやポットなどなどに水を満たしておくのも良い手です。
放射能は少しでも体内に入れないに越したことはないからです。またそうした行為は、
より大きな爆発などが起こった時の予行演習にもなります。
反対に、基準値を超した水しか手元に入らなくなった場合、その水を飲まずに、
脱水症状になる方が、赤ちゃんや子どもさんに危険であることも知っておいて
ください。被ばくを恐れ、他の大きいなリスクを背負わないようにしてしてください。
どうかみなさま。
強く逞しい気持ちで、放射能汚染と立ち向かっていきましょう。