守田です。(20110425 03:30)
昨日24日は全国でいろいろな催しがありました。東京では渋谷に5000人、
芝公園に3000人が集まったと伝えられています。浜岡原発のある静岡
では800人、広島400人だそうです。また前日23日には草津の初めての
デモに70人が参加とか。雨の中で盛り上がったそうです。それぞれについて
動画がアップされ始めているので、後で集めてみたいと思っています。
(情報をお持ちの方、どんどんおよせください)
脱原発機運は徐々に広がりだしつつありますが、こうした動きは政府内部
からも出てきつつあります。その一つが環境省の動きです。同省はある意味で
経産省などと違った利害を持っていると思いますが、21日に自然エネルギーの
可能性に言及し、風力発電で、原発40基分を賄えるという大胆な提言を
行いました。明らかに脱原発気運をにらみつつ、環境省サイドのエネルギー
政策への転換を意図しているのだと思います。
しかし記事を読んで、僕はなんとも言えない違和感を感じました。とくに記事には
環境省が小水力発電を過小評価していることが書かれており、納得できま
せんでした。また環境省による上からのエネルギー転換の提言にも、どこか
共感できないものを感じました。
そこで、友人で、小水力発電の普及を目指しており、岩波ブックレット
『地域の力で自然エネルギー』の著者の一人である古谷桂信さんにコメントを
依頼したところ、丁寧な解説を送っていただけました。文章もさすがなので
今宵はこれをそのままみなさんにお送りしたいと思います。岩波ブックレット
につては、下記を参照して下さい。
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2707860/top.html
以下、古谷さんの文章をお送りします。
自然エネルギーへの転換にあたっては、ただ原子力を風力、小水力に変える
ことだけでなく、電力の管理の仕方を、一極集中から、地域主体へと変えることが
大切であること、そのとき、私たちは新たな可能性を手にすることができるのだ・・・
という点がミソだと思います。
***********************
古谷桂信さんからのメッセージ
守田さんから、環境省の再生エネルギーの理論上の調査に関する記事について
質問がありましたので、みなさんにもお届けします。
まず、朝日新聞と共同通信の記事を読んでみてください。
***
風力発電で原発40基分の発電可能 環境省試算
朝日新聞 2011年4月22日5時0分 http://t.asahi.com/27c3
環境省は21日、国内で自然エネルギーを導入した場合にどの程度の発電量
が見込めるか、試算した結果を発表した。風力発電を普及できる余地が最も
大きく、低い稼働率を考慮しても、最大で原発40基分の発電量が見込める結果
となった。風の強い東北地方では、原発3~11基分が風力でまかなえる計算だ。
同省は震災復興にあたり、風力発電を含めた自然エネルギーの導入を提案
していく方針だ。
今回の試算は、理論上可能な最大導入量から、土地利用や技術上の制約を
差し引き、さらに事業として採算性を確保できることを条件に加えた。
試算によると、固定価格買い取り制度など震災前に政府が決めていた普及策
だけでも、風力なら日本全体で約2400万~1億4千万キロワット分を導入できる。
風が吹いているときだけ発電するため、稼働率を24%と仮定。それでも出力
100万キロワットで稼働率85%と仮定した場合の原発約7~40基分に
相当する。
ただし東北など電力需要を上回る発電量が期待できる地域がある一方で、
電力会社間の送電能力には現状では限界がある。試算どおりに導入するのは
短期的には難しいとみられている。
家庭以外の公共施設や耕作放棄地などを利用する太陽光発電や、用水路
などを活用する小規模の水力発電についても検討したが、多くの導入量は
見込めなかった。これらを普及させるには、さらに技術開発を促すなど追加的な
政策が必要だという。
***
風力や地熱の潜在力大きいと発表 東北のエネルギー調査
2011/04/21 19:37 【共同通信】http://goo.gl/SR6Zt
環境省は21日、風力や地熱、水力発電など再生可能エネルギーの利用
可能性について、東北地方(新潟県を含む)では、火力や原子力などによる現行
の発電量を上回る潜在力があるとする調査結果を発表した。福島第1原発
事故を受け原子力を含むエネルギー政策の見直しが避けられない中、注目を
集めそうだ。
環境省が民間調査会社に調査を委託。規制などのため立地困難な場合を除き、
風速や河川流量などの一定要件を満たす場所すべてで設置を進めると仮定し、
発電可能な電力量を推計した。
それによると、風力発電は陸上と洋上設置を合わせて全国で19億キロワット
の発電が可能だった。うち東北地方は3億キロワットで、東北電力の2009
年度の供給力1655万キロワットを大きく上回った。
温泉発電を含む地熱発電は、全国1400万キロワットのうち東北が350万
キロワット。河川や農業用水を利用した中小水力発電は、全国1400万キロワット
に対し東北430万キロワットだった。
環境省は「太陽光は地域によって大きな差は出ないが、風力や地熱は地形
など自然条件から東北に大きな可能性がある」と話している。
また、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を導入した場合、事業
として採算が取れる発電量も試算。風力発電は全国ベースで2400万~1億
4千万キロワット、地熱発電は110万~480万キロワットだった。ただ今国会
に提出済みの同制度の導入を盛り込んだ関連法案は、成立の見通しは
立っていない。
***
再生可能エネルギーの普及を目指すときの私のスタンスは、本質的に地域
密着型の社会資本である自然エネルギーの導入にあたっては、そこに住む人が
主役になれるか、導入にあたって主体的に参加できるのか、ということを
重視しています。
原子力を筆頭にした現在の電力会社体制で進められたあらゆる電源開発は、
その正反対の立場です。
そこで、今回の環境省調査の結果ですが、とくに、北海道と東北が風力の
適地だということは自然エネルギーの関係者間でも共通認識はあります。
ただし、この調査には、急激な勢いで普及していた風力発電開発に、なぜ急激に
ブレーキがかかったかということへの懸念、反省がまったく反映されていません。
私も、風力の可能性は否定しませんが、これまでの風力発電の開発は、プチ
原発のように、地元や地域の了解や意志がほとんど反映されないような形での
導入が進みました。
そういうところの多くでは、低周波による健康被害がでたり、実際には上手く
稼働しなかったりした例が多数みられました(滋賀県草津市の琵琶湖博物館横の
風車など)。
補助金が容易に取れ、水力のように、水利権の縛りなどがなかったため、一部の
企業によって乱開発が進み、風力発電全体のイメージが低下しました。
その反省に立ち、地域の資源を自分たちが探し、自分たちの力で、地域を
豊かにしていく可能性がもっとも高いのが、小水力利用なのです。
水力は水利権が厳格で、勝手に使うことができないという理由もありますが、全国
小水力利用推進協議会という普及団体の中心メンバーが、私と同じ発想でいる
ことも大きな理由です。
小水力の専門家、茨城大学の小林久教授は、「小水力は主要な脇役になれる」
と表現しています。
風については、そういう全国的な普及団体は聞いたことはありません。
人口密度が高く、複雑な地形の日本では、風力についても、地元の資源としての
位置づけが必要ではないかと思います。
そのように地元が捉えて開発された風力発電は上手くいっています。
プチ原子力的な発想の風力が、たとえ原発30基分導入されても、それは人を
幸福にはしない施設ではないかと思います。
小水力は、私の認識では賦存量は最大で300万キロワットくらいで、原発3基分
ほどです。
共同通信の記事の1400万キロワットというのは、3万キロワット以下ですので、
中水力も含めていますね。環境配慮をしなければ、それくらいは可能ということで
しょう。
ともかく、私が現在、小水力に力を入れているのは、小水力が再生可能
エネルギー導入の地域でのスターター役と、トレーニングツールとして最適と
考えているからです。
賦存量では、波力、風力、地熱、バイオマスの方がたくさんあることは事実です。
全体の資源量と使いやすさを見極めることも大事ですが、今は、「エネルギーを
市民が自分たちの手に取り戻しうる」ということを実感してもらうことがもっとも
大事だと考えています。
ですから、今年度、高知で小さいものでの実効性のある発電機を数カ所導入し、
来年度中には、市民の手での小水力発電所を数カ所稼働させることを目標に
しています。
もっと急ぐべきかもしれませんが、自然エネルギーもやり方をあやまったら、
以前の風力と同じ失敗を繰り返す可能性もありますので、、、。
昨日24日は全国でいろいろな催しがありました。東京では渋谷に5000人、
芝公園に3000人が集まったと伝えられています。浜岡原発のある静岡
では800人、広島400人だそうです。また前日23日には草津の初めての
デモに70人が参加とか。雨の中で盛り上がったそうです。それぞれについて
動画がアップされ始めているので、後で集めてみたいと思っています。
(情報をお持ちの方、どんどんおよせください)
脱原発機運は徐々に広がりだしつつありますが、こうした動きは政府内部
からも出てきつつあります。その一つが環境省の動きです。同省はある意味で
経産省などと違った利害を持っていると思いますが、21日に自然エネルギーの
可能性に言及し、風力発電で、原発40基分を賄えるという大胆な提言を
行いました。明らかに脱原発気運をにらみつつ、環境省サイドのエネルギー
政策への転換を意図しているのだと思います。
しかし記事を読んで、僕はなんとも言えない違和感を感じました。とくに記事には
環境省が小水力発電を過小評価していることが書かれており、納得できま
せんでした。また環境省による上からのエネルギー転換の提言にも、どこか
共感できないものを感じました。
そこで、友人で、小水力発電の普及を目指しており、岩波ブックレット
『地域の力で自然エネルギー』の著者の一人である古谷桂信さんにコメントを
依頼したところ、丁寧な解説を送っていただけました。文章もさすがなので
今宵はこれをそのままみなさんにお送りしたいと思います。岩波ブックレット
につては、下記を参照して下さい。
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2707860/top.html
以下、古谷さんの文章をお送りします。
自然エネルギーへの転換にあたっては、ただ原子力を風力、小水力に変える
ことだけでなく、電力の管理の仕方を、一極集中から、地域主体へと変えることが
大切であること、そのとき、私たちは新たな可能性を手にすることができるのだ・・・
という点がミソだと思います。
***********************
古谷桂信さんからのメッセージ
守田さんから、環境省の再生エネルギーの理論上の調査に関する記事について
質問がありましたので、みなさんにもお届けします。
まず、朝日新聞と共同通信の記事を読んでみてください。
***
風力発電で原発40基分の発電可能 環境省試算
朝日新聞 2011年4月22日5時0分 http://t.asahi.com/27c3
環境省は21日、国内で自然エネルギーを導入した場合にどの程度の発電量
が見込めるか、試算した結果を発表した。風力発電を普及できる余地が最も
大きく、低い稼働率を考慮しても、最大で原発40基分の発電量が見込める結果
となった。風の強い東北地方では、原発3~11基分が風力でまかなえる計算だ。
同省は震災復興にあたり、風力発電を含めた自然エネルギーの導入を提案
していく方針だ。
今回の試算は、理論上可能な最大導入量から、土地利用や技術上の制約を
差し引き、さらに事業として採算性を確保できることを条件に加えた。
試算によると、固定価格買い取り制度など震災前に政府が決めていた普及策
だけでも、風力なら日本全体で約2400万~1億4千万キロワット分を導入できる。
風が吹いているときだけ発電するため、稼働率を24%と仮定。それでも出力
100万キロワットで稼働率85%と仮定した場合の原発約7~40基分に
相当する。
ただし東北など電力需要を上回る発電量が期待できる地域がある一方で、
電力会社間の送電能力には現状では限界がある。試算どおりに導入するのは
短期的には難しいとみられている。
家庭以外の公共施設や耕作放棄地などを利用する太陽光発電や、用水路
などを活用する小規模の水力発電についても検討したが、多くの導入量は
見込めなかった。これらを普及させるには、さらに技術開発を促すなど追加的な
政策が必要だという。
***
風力や地熱の潜在力大きいと発表 東北のエネルギー調査
2011/04/21 19:37 【共同通信】http://goo.gl/SR6Zt
環境省は21日、風力や地熱、水力発電など再生可能エネルギーの利用
可能性について、東北地方(新潟県を含む)では、火力や原子力などによる現行
の発電量を上回る潜在力があるとする調査結果を発表した。福島第1原発
事故を受け原子力を含むエネルギー政策の見直しが避けられない中、注目を
集めそうだ。
環境省が民間調査会社に調査を委託。規制などのため立地困難な場合を除き、
風速や河川流量などの一定要件を満たす場所すべてで設置を進めると仮定し、
発電可能な電力量を推計した。
それによると、風力発電は陸上と洋上設置を合わせて全国で19億キロワット
の発電が可能だった。うち東北地方は3億キロワットで、東北電力の2009
年度の供給力1655万キロワットを大きく上回った。
温泉発電を含む地熱発電は、全国1400万キロワットのうち東北が350万
キロワット。河川や農業用水を利用した中小水力発電は、全国1400万キロワット
に対し東北430万キロワットだった。
環境省は「太陽光は地域によって大きな差は出ないが、風力や地熱は地形
など自然条件から東北に大きな可能性がある」と話している。
また、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を導入した場合、事業
として採算が取れる発電量も試算。風力発電は全国ベースで2400万~1億
4千万キロワット、地熱発電は110万~480万キロワットだった。ただ今国会
に提出済みの同制度の導入を盛り込んだ関連法案は、成立の見通しは
立っていない。
***
再生可能エネルギーの普及を目指すときの私のスタンスは、本質的に地域
密着型の社会資本である自然エネルギーの導入にあたっては、そこに住む人が
主役になれるか、導入にあたって主体的に参加できるのか、ということを
重視しています。
原子力を筆頭にした現在の電力会社体制で進められたあらゆる電源開発は、
その正反対の立場です。
そこで、今回の環境省調査の結果ですが、とくに、北海道と東北が風力の
適地だということは自然エネルギーの関係者間でも共通認識はあります。
ただし、この調査には、急激な勢いで普及していた風力発電開発に、なぜ急激に
ブレーキがかかったかということへの懸念、反省がまったく反映されていません。
私も、風力の可能性は否定しませんが、これまでの風力発電の開発は、プチ
原発のように、地元や地域の了解や意志がほとんど反映されないような形での
導入が進みました。
そういうところの多くでは、低周波による健康被害がでたり、実際には上手く
稼働しなかったりした例が多数みられました(滋賀県草津市の琵琶湖博物館横の
風車など)。
補助金が容易に取れ、水力のように、水利権の縛りなどがなかったため、一部の
企業によって乱開発が進み、風力発電全体のイメージが低下しました。
その反省に立ち、地域の資源を自分たちが探し、自分たちの力で、地域を
豊かにしていく可能性がもっとも高いのが、小水力利用なのです。
水力は水利権が厳格で、勝手に使うことができないという理由もありますが、全国
小水力利用推進協議会という普及団体の中心メンバーが、私と同じ発想でいる
ことも大きな理由です。
小水力の専門家、茨城大学の小林久教授は、「小水力は主要な脇役になれる」
と表現しています。
風については、そういう全国的な普及団体は聞いたことはありません。
人口密度が高く、複雑な地形の日本では、風力についても、地元の資源としての
位置づけが必要ではないかと思います。
そのように地元が捉えて開発された風力発電は上手くいっています。
プチ原子力的な発想の風力が、たとえ原発30基分導入されても、それは人を
幸福にはしない施設ではないかと思います。
小水力は、私の認識では賦存量は最大で300万キロワットくらいで、原発3基分
ほどです。
共同通信の記事の1400万キロワットというのは、3万キロワット以下ですので、
中水力も含めていますね。環境配慮をしなければ、それくらいは可能ということで
しょう。
ともかく、私が現在、小水力に力を入れているのは、小水力が再生可能
エネルギー導入の地域でのスターター役と、トレーニングツールとして最適と
考えているからです。
賦存量では、波力、風力、地熱、バイオマスの方がたくさんあることは事実です。
全体の資源量と使いやすさを見極めることも大事ですが、今は、「エネルギーを
市民が自分たちの手に取り戻しうる」ということを実感してもらうことがもっとも
大事だと考えています。
ですから、今年度、高知で小さいものでの実効性のある発電機を数カ所導入し、
来年度中には、市民の手での小水力発電所を数カ所稼働させることを目標に
しています。
もっと急ぐべきかもしれませんが、自然エネルギーもやり方をあやまったら、
以前の風力と同じ失敗を繰り返す可能性もありますので、、、。