おっと、最近では珍しい元箱つきの殆ど新品に見えるPEN-S3.5が来ましたよ。昔は中古屋さんの目玉などで見かけましたが、最近では貴重ですね。プライスタグや保証書も付属しています。しかし、保証書にシリアル№と購入日の記載がありませんね。シリアル№は販売時に記入をするシステムだったのでしょうけど、この個体は、正式に販売はされずに販売店でデットストックとなったものでしょうかね。私はこの辺りの事情は知りません。研究家さんたちの方が詳しいことでしょう。しかし、シリアル№の記載が無いとすると、この個体の保証書だという確認も出来ないわけですね。まぁ、間違いいなくセット品だとは思いますけどね。オーナーさんは「新品状態なのでO/Hの必要はないかも」とのことですが、腕時計と同じで、組立から何十年も経過した精密機械は、油脂が劣化しており、そのまま使うと早期の磨耗をきたします。
非常にきれいな個体ですから、まず実用には使われなかった個体と思いますが、完全に工場を出たままかというと、それはちょっと怪しいところです。私としても、工場での組立基準には非常に興味がありますが、この個体は一度トップカバーを開けられています。駒数カニ目ネジの孔は角ばった工具で回された形跡があります。駒数板も正規の位置に止まっていません。また、経時劣化で駒数ガラスにクラックが入っています。
巻上げをしてみると・・・逆転防止爪が利いていませんね。巻上げレバーが前後に回ってしまいます。長期に作動していなかった個体に就いては、爪が固着して機能をしていない場合がありますが果たして・・・
巻き戻しダイヤルの軸部分のガタ量が大き過ぎますね。グラグラです。工場ではこの状態では検査合格しないと思いますけどね。
逆転防止爪がギヤに掛かっていません。ダイヤルを一度分離したのです。爪を留めるネジのスリ割りも痛んでいます。外そうとしたのでしょう。外す必要などないのです。巻き戻しダイヤルのガタは↓部分に調整用のワッシャーが入っていたはずです。ファインダーも曇ったままですが、何をしたかったのでしょうね。意味不明です。
シャッターは分解を試みたようですが、ネジロックのビスを回せずに断念したようです。確かに殆ど作動させていないシャッターなので、程度は良いと思いますが、シャッター羽根には赤錆が発生しています。まぁ、あまり書く話題もありませんので・・ファインダーのカバーなんですが、ご覧のように工場でゴム系接着剤で接着していますが、過去に分解された個体で古い接着剤を取り除いているのを見たことがないですね。
で、このように清掃をしておきます。この作業を怠ると、ファインダーブロックに密着して接着することは出来ません。
殆ど未使用と言っても、部品の状態が良いとは限りません。前の分解時にもリンケージの作動に問題があって分解をされていますね。しかし、原因を改善しておらず、症状は完治していません。このリンケージ関係の表面処理はいくつか種類があって、この頃の処理が一番劣化が進んでいます。使用しなくともコンディションは落ちていくのです。
巻き戻しダイヤル軸のカラーには、調整用のワッシャーを追加しておきます。これで、カラーが供回りすることを防止します。
で、このように仕上がりました。少し前にも3.5が来ましたが、状態は全く異なります。いくらデッドストック新品とは言え、例えば50年近く前のデッドストック腕時計をそのまま使用することは考えられません。カメラだって同じですね。最後に、オーダーがありましたレンズキャップを取り付けてあります。
どうしようかと考えましたが、オーナーさんのご好意によって付属品を同梱頂きましたので、保証書とプライスタックをUPしておきます。