オリンパス35Vですかね。メーカーサイトを見ると1955年6月発売と言うことで古いです。「焦点合わせに直進ヘリコイドを採用」とのことで「あぁ、なるほど」セルフタイマー内蔵のコパルシャッターはシャッター羽根が開かない。レンズを分離してシャッターを点検します。
古い割には状態は悪くはないですね。シャッター/絞り羽根の洗浄脱脂とガバナー/タイマーを分解洗浄などして行きます。
まだ、距離計は内蔵されていないので非常にシンプルなファインダー。助かるのは対物レンズと光枠が普通は接着が多いですが、このモデルはバネ付きフレームで留める設計で、簡単に分離出来、清掃する作業性がすごく良いです。
で、問題は、このモデルだけではなく、この時代のシボ革は薄いビニールレザーのような材質で、接着が甘くなるとバリバリに割れてしまうことです。小学生の頃、粉を固めた板状にスジボリがされていて不要な部分を手でちぎって取り除いて完成させると景品がもらえる(良く表現できない)遊びがありましたが、それと同様に触るとバリバリ割れてしまいます。特にレンズ横の部分が剥がれている個体が多いですね。
シャッターボタン下の剥離を補修(シボ革交換)とのご依頼でしたか、細かなところも剥がれかかっています。接着剤を塗布しようとシボ革をめくると「パリッ」と割れますから慎重に作業します。
裏蓋を開ける時に爪で引っ掛けるので、この部分も剥がれます。奥まで接着が剥がれています。
一番の問題はここです。現存の個体の多くはこの部分が剥離していますね。
接着剤が利いていれば割れることは無いのですが、シャッターボタンを押す時に一番力を掛けてグリップするところですからね。オーナーさんはこの部分だけ1枚貼り替えてとのご依頼のようでしたが、現代のシボ革を部分的に貼っても変ですし、全体に貼り替えるとOLYMPUSのロゴなども無くなってしまうので、私の判断で欠損している部分を同じ材料で補うことにしましたが、とんでもない神経と工数が掛かってしまい大失敗の判断でした。
オリンパス35はどこかにストックしているはずなので探して来ました。しかし、こちらの部品取りだって同じように風化をしているのでした。これを割らずに剥離することは非常に困難。しかも、所定の形状にカットする時にも割れのリスクがあります。まぁ、こんな程度に貼りましたが二度とやりたくないですね。