今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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SEIKO ファイブ51系の巻

2017年09月10日 15時05分46秒 | ブログ

カメラの方はご依頼が途切れたので少しサボって別の仕事をしていました。で、岡山のご常連さんからセイコー5が届きました。ご友人から誕生日プレゼントで頂いたとのことですが、1日2分遅れるそうです。いゃあ、盛大にケースを削られていますね。モデルは5126-7020と亀戸の機械で、5126A(23石)は76系の後継として発売になった機械ですね。基礎はセイコーマチックPの5106Aです。薄型に設計されていて、振動数は19800(5.5振動)という過渡期の設計かな・・製造は1969-1月で、この頃流行りのブルー文字盤ですね。ブルー文字盤は私も高校生の時にしていました。

観察すると・・このモデルは普及機の中での高級タイプなので、風防はガラスですが、この個体も確かにガラスですが、ベゼルより引っ込んでいます。オリジナルは、かなり厚いガラスが出っ張っているはずですので、規格外をセットされているようです。よって防水性能はなし。インナーリングも削られていて指紋もついていますね。

左側の2つは私の所有の5139-6000(下)5139-7040(上)で6000の方は1969-2月の製造で、今回ご依頼のモデルとは1カ月違いの製造です。5139Aは27石となって、秒針規正装置が付いた上級モデルというところでしょうか。どちらもセイコー5なので手巻き機能は省略されています。

元々、この個体はプレゼントされた友人のお身内の時計屋さんに有ったものとのことで、どなたが手掛けたものかは不明です。2分遅れるとのことでしたが、時計を振ってもうんともすんとも動きませんよ。

 

まず、不動の原因を探ってからのオーバーホールです。全く作動しないことからテンプを中心に点検すると・・天輪の下にネジが嵌っていますよ。これは機械留めのネジです。

 

ネジを取り除いて、じゃ動くかな? と思ってもやっぱり動かない。テンプを外してアンクルの作動を確認すると、弱いがトルクは来ている。

 

ははぁ、これだね。ヒゲゼンマイが天輪と接触していますね。これは機械留めのネジが接触したものか? 元々接触をしていたようにも感じます。不調に動くより、全く動かない方が原因の特定は優しいということ。この後、ヒゲゼンマイを調整して作動することを確認しました。

しかし、色々なところが怪しい機械には違いありません。文字盤が固定されていないようです。文字盤を留めるネジが両面テープを丸めた?ものを押し込まれています。両面テープを取り除くと・・ネジが折れていて、ネジ部は地板に残ったままです。あ~ぁ。

筒車の上面がヤスリで故意に削られているようです。文字盤が固定されていなければ、返って針と接触しやすくなるのに何で削った? 針の嵌合も完全でない気がして、もしかすると針は別物なのかも知れません。まぁ、この手の個体が一番厄介なんですね。

すべて洗浄をして組み立てて行きます。諏訪のオーソドックスな設計とは違った眺め。

 

 どうもヒゲゼンマイがくちゃくちゃで癖がついているので分解をして修正をしています。まだ天輪は大きくロービートで精度を上げようとする設計ですかね。

 

なかなか動きだしてくれないのでヒゲを微調整して動きだしました。機械が裏だと、そこそこの精度になりましたが、表(文字盤上)だと急速に遅れ方向になる。天真の摩耗です。

 

 結局のところ、交換する天真のストックが無いため、うちのご常連さんからユニット(5126A)の提供を頂けるお話となって、オーナーさんもケースも含めて交換したいとのご希望から、パーツが集まった時点で作業を再開することにしました。よって、しばらく中止します。

再開します。交換用のユニットをオーバーホールしていきます。

 

 

2つ目なので途中は割愛します。ツヅミ車が欠品していましたので、オリジナルの方から調達して組んであります。

 

テンプのダイヤショックに注油をします。受石に注油をしているのが分かりますか? これに右の穴石枠をかぶせてセットします。

 

自動巻輪列を組みます。

 

 

文字盤はこの時代の流行りのきれいなブルー文字盤です。残念ながらインデックスに腐食が出ていますので、アルコールで軽く磨いておきます。オリジナルのカレンダー曜日の表記は日本語ですが、オーナーさんのご希望で英語に交換してあります。

 

針の状態が良くありません。センターにブルーの線が入っているデザインですが、特に短針の取付穴周辺の剥離が目立ちます。このようなプリントされている針の場合は、針(3本)をまとめて抜かないとプリントを痛めてしまいます。で、オーナーさんから補修のご希望ですが、完全な補修は無理です。軽く修正・・

塗料も色目も違うし夜目遠目。長針がかぶりますので、あまり目立たないことを期待します。将棋盤のマス入れは日本刀の刃に漆を塗って押し当てる技法と同様に、刃物に塗料を付けて針に転写するような技法もあるようですが、乾燥の速い塗料では上手く行かないと思いますね。

 一難去ってまた一難。交換用のケースは、私がオークションで見つけてオーナーさんが落札したものでしたが、届いてみると・・なんとベゼルがありません。

 

 それだけでなく、裏蓋には2個所にクラックが入っていました。私も良く画像を見ていなかったのですが、しかし、不鮮明な画像だけで「画像で判断してください」的な説明で、ベゼルの欠品や裏蓋のクラックの表示をしていないのは不誠実だと思いますね。オリジナルからのベゼル移植も検討しましたが、外径に比較的大きな違いがあって、無理をするとクラックが入る危険があるため、オリジナルを何とかするしかありません。

オリジナル。一画像では見きれいに見えますが、電動工具でガリガリと削ってしまったままという状態。元々、削り代などないところを削るのですから、電動工具などては削り過ぎてしまうのです。小さな花壇を作るのにユンボを入れているようなもの。

元々のオリジナルのカットも全く分からない状態ですから、のっぺらぼうに化粧をするようなものです。オリジナルとは異なりますが、なんとか研磨していきます。画像は一日掛けて手磨きだけで修正をしている途中の画像。

 

ケースの構成パーツ。上段中央の白いパッキンは変色して黄ばみ易いので、多少状態の良い調達ケースのパーツを使用して圧入したところ、風防ガラスが保持できないという失敗をしました。計測すると0.1mmの差がありました。交換用の純正パーツが入手出来ないので再使用をするしかありませんが、注意が必要です。因みに、裏蓋用のフラットパッキンから適当な寸法のものをセットしたところ、使えそうな感じでしたけどね。

純正の風防ガラス(ハードレックス)310W11GNをセットしたところ。

 

 

機械をケーシングしました。

 

 

最後に回転錘を取り付けて組み立て終了。歩度調整をします。

 

 

ケースはすべて手磨きだけで仕上げました。何度も開けた裏蓋は圧入時のクラックが心配でしたが、なんとか完了。

 

 

右は同時期(1968-4)に製造された諏訪製のセイコー5 (6119-8140)です。どちらも流行りのブルー文字盤ですが、諏訪の方が紺色に近く、放射状に輝く処理もされていません。私はこちらが好きですけど・・というこで、あ~長かった。素性の悪い個体のレストアは手間が掛かる言う見本のような個体でした。どうせプレゼントをするなら、この程度に仕上げてからプレゼントすれば良いのにね。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/


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