それではPEN-Fに戻りますね。この個体はオークションで入手されたとのこと。#1195XXと1964-7月の製造。東京オリンピックで日本が沸いていた頃ですね。そう思うと随分と昔ですから程度が悪くて当然という気もしてきます。この子もとにかくばっちぃ個体で、何度か剥がされたシボ革はヨレヨレで手垢まみれ。作動はミラーが止まる状態ですが、分解されているのでフリクションの増大か組立て方に問題があるのかは分かりません。なんか、まったくトルクの無い今にも死にそうな感じですよ。
では、淡々と作業を進めて行きましょう。全て分解してダイカスト本体は洗浄してあります。やっときれいなシボ革が現れましたよ。まずは、巻上げ側のストラップアイのビスが緩んでガタガタしていますので、接着剤と併用で取付けておきます。
ダイカスト本体にスプロケット軸とスプール軸を取付けて巻上げレバーもセットしてあります。最近のFは分解する度にビクビクするのてですが、調子が最悪であった割にはシャッターユニットに問題はありませんでした。中々きれいなユニットです。ブレーキのOリングも交換してあります。では、本体に組み込んで行きますよ。Fの初期型はシャッターユニットを本体にセットするのには知恵の輪のようなことをする必要がありましたが、この頃になるとダイカストの底部のリブ部分を大きめにカットしてあって、組み込みは容易になっています。工場の組立からクレームがあったのでしょう。しかし、巻上げレバーのクラッチもすでに改良されて、やっと落ち着いてきた頃の生産機ですね。
外観の汚れと当初の不調からどうなるかと思いましたが、これが意外にメカと光学系も悪くは無いのです。すいすいと組立は進みます。モルトかすとテープ糊の汚れでひどい状態だったビューファインダー本体を取り付けます。ここのモルトを省略する修理屋さんが多いようです。FTとはモルトの位置が変わりますが、オリジナルに忠実に再現をしておきます。下に見える#2プリズムも奇跡的に腐食がありません。但し、リターンミラーは貼り替えかも知れませんね。リターンミラー基部の遮光モルトの配置が間違っていました。
フレネルレンズも比較的きれいです。サイドカバーはレンズ位置を間違えて装着した跡がありますが、前回の修理時にシボ革を貼る接着剤が付着しています。気になるのできれいに清掃してから取付けます。
きれいになったでしょ。さて、例のシボ革ですが、元々、生地の硬化もあるんですけど、前回の剥離が適切ではなかったのです。左側は切れたものを貼ってありました。右側は細かく砕けて無くなってしまいました。
ちょっと画像がピンボケ。仕方が無いので、純正のシボ革から欠損部分を切り出して合わせています。格子柄ですから接合する部分の柄を合わせる必要があります。こんなものかなぁ?
どうでしょうか? 言われなければ分からないでしょ。返って左側の方がヨレていますよね。
で、こうなりました。全反射ミラーはご希望で交換してあります。トルクは少し弱めなんですが、巻上げも軽快で何より作動が安定しています。これなら、労わって使って頂ければずっと生きていけると思いますよ。オークションものだって良いものもあるんですね。あとは、セットされていた38mmを清掃して完成です。