お父様の形見というセイコー・クラウン21石が来ています。非防水ケースですから文字盤の状態は悪いですが、当時は少数派のステンレスケースのため、金メッキケースと比較すれば、ケースの状態は悪くはありません。時計を振るとカタカタと音がするとのことでしたが、機械留めのネジが緩んでいるようです。
この時計は、25年前に時計屋さんに修理に出したとのことでしたが、機械を分離して見ると・・カタカタは2本のうちの片方の機械留めネジが緩んでいたのですが、もう片方がすごいことに。ネジが折れて地板内に残ってしまったので、隣に孔を開けてネジ切りもせず規格外のネジをねじ込んであります。地板内に残ったネジを取り出す工具もありますが、錆びてネジが太っていればまず外れません。このネジを無理に抜こうとすると折れますので、このままとします。
テンプの受け部分の地板が削られています。受けの角度を調整したかったのでしょうか?
何度か分解歴のある機械で、汚れも多かったですから、念入りに超音波洗浄をしました。
香箱にゼンマイをセットして香箱真をセットします。
中心のホゾ穴も摩耗を修正してありました。
受け側のホゾ穴も修正してありますね。
機械の組立が終わって、脱進機のアンクル爪(ガンギ車)に注油をします。見えないですかね? 丸穴の中に見える部分です。
組立注油が終わって文字盤・針を取り付けます。
風防とケースは軽く研磨をしてあります。
調整をしない最初の状態です。それほど悪いデータではないですね。
文字盤の劣化が残念ですが、これも高度経済成長期にお父様が頑張っていた証でしょう。手持ちの新品文字盤ですが、上はSSケース用ですが、下は金メッキケース用ですね。機械は19石と21石が有って21石の方が生産数は少ないと思います。ケースも当時は非防水の時代ですから金メッキの方が一般的でステンレスケースは少数派でしょう。この組み合わせは少なく、私も探しているところです。1962年3月製。