人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

オリビア・ニュートン・ジョン~LPレコードの思い出

2011年03月27日 16時03分19秒 | 日記
27日(日)その2.先日夜たまたまBSをかけたらオリビア・ニュートン・ジョンが歌っていた。デビュー当時はハイティーンだった彼女も今は60歳を超え、立派に成人した娘さんがいる。番組は彼女の生い立ちから乳がん撲滅運動を展開する現在に至るまでをインタビューを交えながら紹介し、リサイタルの様子を映し出していた。大ヒットした「愛の告白」「そよ風の誘惑」など懐かしく聴いた。

オリビア・ニュートン・ジョンといえば彼女のLPのことで忘れられない思い出がある。社会人となって3年目だったと思う。アメリカと日本の新聞協会が新聞記者を10数人ずつ交換して、お互いの国の実情を視察してコミュニケーションギャップを無くそうという「日米記者交換計画」というのがあり、当時国際部にいた私がアメリカの記者10数人を2週間(だったと思う)お世話することになった。

東京で政治、経済、文化界のゲストを招いてセッションを開き、その後、九州に飛び、広島で原爆資料館を見学、大阪に移動して司馬遼太郎さんの話を聴き、大相撲大阪場所に出場していたハワイ出身の高見山のインタビューをこなして東京に戻った。このツアーには国際交流サービス協会という外務省の外郭団体の職員も1人ついて2人で同行したのだが、最後に都内の小さな会場で「さよならパーティー」が開かれた。

サービス協会の彼は流暢な英語で「貴重な機会を与えてもらい皆さんと行動を共にすることができ、ありがたかった」というような挨拶をした(と思う)が、自分は英語でしゃべるのが苦手で、手元にメモを持って話した。すると記者団から笑いながら「ノー・ペーパー!」の野次がとんだ。というのは、セッション中、ツアー中を問わず、常に次のスケジュールを書いたメモを見ながら行動していたから、視察団から見れば、自分たちは監視されているのではないかと思ったのかもしれない。さよならパーティーぐらいカンペ無しで頼むよ!といったところだろう。

パーティーが終わるにあたって、記者団の団長が私に「お世話になったお礼に、記者団全員から気持ちを込めて」と言って、2枚のLPをプレゼントしてくれた。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったオリビア・ニュートン・ジョンの「LET ME BE THERE」とヘレン・レディの「I AM WOMAN」だった。うれしくて涙が出そうになるのを必死でこらえた。記者団のだれかに「趣味は何か」と聞かれ「音楽を聴くことだ」と答えた覚えがある。それでLPのプレゼントになったのだろう。「一所懸命にやれば努力は報われる。無心に人に尽くせば、心は通じる。そのことに国境は無い」。そういうことを学んだ新人時代だった。

先日、部屋の整理の一環でLPレコード約500枚を処分したが、この2枚には手を付けられなかった。今、手元に残されたオリビアのLPを聴いている。LPは単なる”物”ではない。


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冷たい熱帯魚を観る~なぜマーラー第1交響曲が使われたか?

2011年03月27日 11時15分42秒 | 日記
27(日)。最近観た映画から。「本当におもしろくて刺激的な映画体験を望むなら早くこれを観ろ!大人のためのエンターテインメント!」のキャッチフレーズに誘われて園子温監督「冷たい熱帯魚」をテアトル新宿で観た。監督自身の実体験といくつかの猟奇殺人事件からインスパイアされて作ったという。

物語は小さな熱帯魚屋を営む男が、ひょんなことから巨大熱帯魚屋の男に誘われ、知らず知らずのうちに悪の道に引きずりこまれ破滅への世界へ導かれていくというもの。主人公を演じる吹越満は、地味でまじめな性格が、抗しがたい力によってだんだん捻じ曲げられていく有様を見事に演じている。それに加えて、巨大熱帯魚屋の経営者役のでんでんが強烈な存在感を示している。人が好いと思わせておいて、急に態度を変えて主人公をどん底に追い込んでいく男を見事に演じ分けている。

殺人と死体解体といったシーンが、これでもかといった具合に出てくる。R-18の指定を受けている。昨年観た韓国映画「息もできない」と同じ領域にある映画だと感じた。この映画に対しては賛否両論があるだろう。しかし、そんなことにはあまり興味はない。問題はこの映画でどんな(クラシック)音楽が使われているかだ。

使われたクラシック音楽は2つ。一つはワルトトイフェルの「スケーターズ・ワルツ」。もう一つはマーラーの「交響曲第1番の第3楽章」だ。スケーターズ・ワルツは、水族館での楽しい雰囲気のシーンで使われている。マーラーの方は、主人公が「おかしいぞ。いま引き返さないと後戻りできなくなる」と疑問に思う場面のたびに流される。

この曲は、冒頭ティンパニーにより葬送行進曲風の4度モチーフが打ち続けられ、コントラバスのソロで第1主題が始まり、カノンとして繰り返し繰り返し演奏される。主人公の不安な精神状態を端的に表すのにふさわしい音楽の選定だ。この曲は、いずれ破滅を迎える主人公への葬送行進曲なのだ。そうした意図があってマーラーのこの曲が選ばれたのではないか。監督の本当の意図は知らないが、これが私の勝手な解釈だ。
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