3日(火).昨日は家族揃って狭山の実家にお年始に行ってきました 妹夫婦が母親を介護してくれています.世田谷で一人暮らしをしている姪っ子と,相模原に住む甥っ子夫婦と小1の長女,生まれて2ヶ月の長男もやってきたので,賑やかなお正月になりました
残念ながら,昨年のお正月には元気だった猫のトラは昨年7月に亡くなり,いまは雄のミラのみになってしまいました 赤ん坊が体重5キロなのに,このミラは7キロもあります
普段は居ないお客さんに代わるがわる遊んでもらい忙しいひと時を過ごしたようです.
本人にインタビューしてみました.「きょうは多くの人に囲まれて,いかがでしたか?」
「忙しくて猫の手も借りたいくらいだったぜ
」
「新年早々,猫年に相応しいコメントをありがとうございました」
「おいおい,今年は辰年
だろうが.そんなこと言ったら辰瀬がないぜ
」
〔猫パンチを繰り出す直前のミラ〕
閑話休題
昨年暮れから読み続けてきた樋口有介著「楽園」(中公文庫)を読み終わりました 同氏の「ピース」が面白かったので,2冊目として選んだ本です
「楽園」は1994年10月に,角川書店から書き下ろし長編として刊行されました.物語の舞台は赤道直下「東経145度,北緯5度」に位置する人口4,800人のズック共和国です.南太平洋上の小さな島国に大量のプラスチック爆弾が持ち込まれた疑いが生じます そうした中,反政府主義者の男が爆死します.この国の大統領は余命半年の運命にあり,後継者争いが展開します.果たして男の爆死と後継者争いはどう繋がっているのか,日本のODA,アメリカCIAが絡み,経済界を牛耳るマルカネ・ザワオの暗躍も絡んで,果たしてズック共和国の行方は・・・・・といった内容です
なお,著者は「文庫本化によせて」の中で,登場人物の一人マルカネ・ザワオは,当時佐川急便汚職事件で問題になっていた金丸信と小沢一郎をもじった名前であることを明かしています
「ピース」の中でも使われていたのですが,この国で話される言葉として著者が選んだのは,何と上州弁なのです 例えば,こんな感じです.
「大臣,昼間デチロに,電気の鍋を注文したそうですな」
「適当なやつがありそうかい」
「アメリカ製の鍋なら,すぐにでも取り寄せられますがね」
「鍋じゃねえんだ.わしにもよく分からんけど,米を炊く専門の機械だそうだ.母ちゃんがなあ,どうしてもソニーの電気釜が欲しいんだと」
「米を炊く専門の,ソニーの電気釜,ねえ」
・・・・それにしてもソニーの電気釜って,いったい・・・・・
著者は「文庫本化によせて」の冒頭で次のように書いています.
「「センセイの小説はみんな好きだけど,あの【楽園】だけは失敗作ですよね」とは,銀座のホステスさんに言われたせりふ.私は”うーむ”と唸る以外に返す言葉がなかったことを,16年経った今でも思い出します.なにしろ当時の私は,【楽園】こそがマイベスト,と固く信じていたんですから」
この本を読み終わった感想は,当時のホステスさんの気持ちが良くわかる,ということです「ODAを排除した真の民族の独立」など著者の言いたいことは理解できます.が,とにかく,南太平洋の小さな島国の出来事という条件もあってか,物語に抑揚がないのです
この小説が「書き下ろし」というところに問題があると思われます.これが連載小説であれば,その都度,山場を設定しないと読者に飽きられてしまうので,読者の集中力を維持するためにいくつもの山場を設定するはずです
最初に読んだ「ピース」が面白かっただけに,次に読む本に期待したいと思います