人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

スタンディング・オベーション止まず~チョン・ミュンフン指揮ソウルフィルを聴く

2012年01月17日 06時26分06秒 | 日記

17日(火).昨夕,サントリーホールでチョン・ミュンフン指揮ソウルフィルのコンサートを聴いてきました プログラムは①ドビュッシー交響詩「海」,②マーラー「交響曲第1番ニ長調」の2曲です.

この組み合わせで聴く演奏会は昨年5月10日に次いで2回目です.あの時は庄司紗矢香を迎えてのチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」と「悲愴交響曲」を演奏しましたが,熱気に満ちたエネルギッシュな演奏が今でも忘れられません 8月2日のアジアフィルのコンサートとともに私の昨年のコンサート・ベスト5に入っています.演奏会の模様はそれぞれ5月11日,8月3日のブログに書きました

サントリーホールはほぼ満員です.自席は,東京交響楽団サントリーシリーズ定期会員席のすぐ一つ前の1-17-16です.日本のオーケストラの場合,演奏家は開演時間に合図とともに舞台に登場しますが,このオケはその前から自分の席に座って個々人で練習をしていますコンサートマスターが登場して拍手が起こるとやっと練習を終えてチューニングに移ります

前回初めて見たときにも思ったのですが,平均年齢が若いオケです.昨年5月の時よりも若返っているのではないかと思いました 1995年にチョンがソウルフィルの音楽監督になってから,厳しい選別で相当の割合の楽団員が入れ替わったと聞いているので,現在もそれが続いているのかも知れません 楽団員は弦楽器は女性比率が高く,管・打楽器は男性比率が高い傾向にあります.ソウルフィルと名乗っているもののクラリネット,ホルン,トランペット,トロンボーンの首席クラスは韓国以外の欧米人に頼っています.とはいえ,弦楽器のほとんどは韓国人です

1曲目のドビュッシーの交響詩「海」3つの交響的スケッチは,海のないブルゴーニュ地方で書かれていて,実際に海を見て書いたものではありません.初版のスコアの表紙には,葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景から”神奈川沖浪裏”」が使われています.ドビュッシーは,こういうものから印象を受けて曲を書いたのでしょう.”印象派”と呼ばれる所以です

チョンのタクトにより第1部「海の夜明けから真昼まで」が始まります.管楽器を取ってみても誰かが抜群にうまいというのではないのですが,指揮者のもと色彩感豊かにドビュッシーの心象世界を奏でていきます それは第2部「波の戯れ」,第3部「嵐と海の対話」でも変わりません.フィナーレを畳みかけるように終えると,ブラボーと拍手の嵐です.

ここで,初めて気がついたことがあります.昨年5月の時はまったく意識がなかったのですが,女性全員が黒のパンツスーツなのです.日本のオケのように黒のロングドレスを着ている女性は一人もいません この方が演奏するのに機能的なのかも知れません.また,見ていて颯爽としていてすごくカッコイイのです

マーラーの交響曲第1番ニ長調は,初稿では5楽章から成っていましたが,後に”花の章”と呼ばれた第2楽章を削除し4楽章にしましたチョンが小さな動きで第1楽章の導入部を指示し,弦楽器の弱音に乗せてクラリネットのカッコウの鳴き声が聴こえます.それからは,ぐんぐんマーラーの世界に引きずり込んでいきます.第2楽章では力強く前進します.そして第3楽章では,コントラバスのソロで有名なテーマ「狩人の葬送行進曲」がおごそかに奏でられます.先日有楽町スバル座で観たドイツ・オーストリア映画「善き人」で使われていた音楽です

第4楽章には間を置かずに突入します.マーラーの「嵐のように激しく動いて」の指示通り,怒涛の快進撃を見せます.圧倒的な迫力.その一方で,歌わせるべきところはテンポを落としてゆったりと歌わせます 静から動へ,動から静へ,また,緩から急へ,急から緩へと移りゆく演奏の素晴らしさ チョンならではのタクトさばきです.終盤ではホルン8人を立たせて演奏させますが,これはマーラーの指示どおりです.そして弦,管,打楽器総動員による圧倒的なフィナーレを迎えます

指揮者のタクトが大きく円を描いて演奏が終わるや否や,会場は興奮のるつぼ,ブラボーの掛け声とともに,あちこちでスタンディング・オベーションが見られました 私の前の席の人も立って拍手したので,舞台が見えなくて困りました.自分も立てばいいのですが,後ろの人が見えなくなるし・・・・と考えて,止めました 楽員はみな「われらが敬愛するチョン・ミュンフンの下でマーラーの大曲を演奏した」という充実感と自信に溢れた顔で,誇りをもって自分の立ち位置で拍手を受けています

鳴り止まない拍手,ブラボーに,チョン・ミュンフンが会場の方を向いて「スペシャル・アンコール・・・ラヴェル”ラ・ヴァルス”」と言ったので,会場はまた,興奮のるつぼに.ラヴェルの作曲した「ワルツ」を振幅の大きな演奏で表現し,またまた大きな声援,拍手が会場を満たしました.

あらためて思うことは,チョンと楽員の信頼関係の深さです 現在のソウルフィルはチョン・ミュンフンなくしてはあり得ない存在であり,チョンの音楽に賭ける情熱を体現したソウル(魂)フィルハーモニーであるということです

サントリーホールの年間カレンダーの8月2日のところに「チョン・ミュンフン指揮アジアフィル」とありました.この時,ソウルフィルを中心とするオーケストラがまた聴けます.アジアフィルは昨年の私のベスト1コンサートでした まだプログラムは発表されていないようですが,曲が何であれ聴きにいきます

 

             

コメント (6)
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