24日(火).昨夕,東京文化会館で小林研一郎指揮東京フィルのコンサートを聴きましたこれは日本演奏連盟が主催して毎年この時期に実施している「都民芸術フェスティバル」の一環として開かれた演奏会です.東京都の助成金が出ている関係もあり低料金で聴けるせいか、いいプログラムの公演のいい席はすぐに売り切れてしまいます.結局B席しか取れませんでした
いつも1階席ばかりで聴いている身にとって,東京文化会館の2階以上の左サイド,右サイドの席は非常に分かりにくいです.3階L2列8番だったのですが,左サイドと右サイドの席が中2階,中3階みたいになっていて,自分がどこにいるのか分かりにくいのです.アテンダントの女性に訊いてやっとたどり着きました
会場は満員御礼 登壇した東京フィルのメンバーを見ると,コンマスはソロ・コンサートマスターの荒井英治ですが,他のメンバーがいつも定期演奏会で見ている演奏家と違う人が多いような気がします
もっとも東フィルは約160人もの楽員を抱えているので,見慣れない人が出演していても不思議ではないのかも知れません.チューニングなしで指揮者を迎えます.多分,楽屋で済ませてきたのでしょう
演奏曲目は①モーツアルト「フィガロの結婚」序曲,②ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」(ピアノ=小山実稚恵),③ベートーヴェン「交響曲第5番ハ短調”運命”」の3曲です.
指揮者の小林が登場し「フィガロの結婚」序曲を軽快なテンポで開始します.まずは小手調べといったところでしょう
次いで,舞台左袖にスタンバイしていたピアノが中央に運ばれて,ここでオケがチューニングそしてソリストの小山実稚恵がグリーンを基調としたドレスで登場,ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」をピアノの和音で開始します
どちらかというと男性的な力強い演奏で音楽を進めます.第2楽章を開始する直前,2階センターあたりの席でくしゃみの音がして,小林はタクトを一旦降ろし,静寂を待って再びタクトを挙げました.くしゃみをした人はきっとプレッシャーを感じたでしょうね
第2楽章のアダージョをたっぷりと聴かせ,第3楽章の力強いアレグロに入ります.ピアニストと指揮者の手が上に突き上げられフィニッシュを迎えました
会場一杯の拍手です
休憩時間に,ご一緒したMさん(ピアノが弾ける)に感想を訊いてみました.
tora:小山実稚恵のピアノはどうだった?
Mさん:ダイナミックで良かったんじゃない.この人,コンチェルトのレパートリー60曲だって!すごいね
tora:暗譜で弾くんだから凄いよね
チャイコフスキー・コンクールとショパン・コンクールの両方に入賞したんだよね.
Mさん:そう.チャイコが3位でショパンが4位だね.ところで,彼女の弾いたピアノ,ヤマハじゃなかった?パンフレットに載っている広告もヤマハのピアノだし.記憶にあるピアノの音と違うな・・・・・ピアノの音ってこんな音だったかなって思って
tora:広告がヤマハだからって,使用楽器がヤマハとは限らないと思うけど・・・・でも,最近はヤマハもあちこちで使われるようになったことも確かだね
Mさん:ピアノの形も変わっていたと思う.普通,ピアノの胴体部分にメーカー名が書かれているけど,あのピアノは何も書いてなかったよね
tora:そういえばそうだね・・・・うーん,ヤマハかも知れないね
休憩後のベートーヴェン「交響曲第5番」は,聴く側も最初から気合を入れて聴かないと置いていかれます 小林は早めのテンポでオケをドライブします.随所で,”ため”を作っておいて,一気に爆発させる小林特有の指揮ぶりが見られました
隣席のMさんは第2楽章でカクンとコケていました.後で訊くと「ベートーヴェンはなぜか眠くなっちゃうのよね」とのことでした.珍しいと思います.ベートーヴェンを聴いてカクンは(笑) 度胸が据わっているのでしょうね
圧倒的なフィナーレが終わると会場一杯の拍手です 小林はいつものようにオケを楽器ごとに立たせて拍手を求めます.そして,”予想通り”拍手を制してひと言挨拶をします
「今日は聴きに来ていただき,ありがとうございました.東京フィルの熱演を私自身も楽しませていただきました.今年が皆様にとって良い年になりますよう,また,皆様と,より多くお会い出来ることを願っています」
そして,アンコールにブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」を演奏しました.ハンガリーのオーケストラで長い間指揮をしてきた小林の十八番ですから,これはもう指揮者のやりたい放題の演奏です かつて往年の名指揮者ハンス・クナッパーツブッシュがやったように,テンポを頻繁に変えて緩急自在にオケを操っていました
演歌流に言えば”こぶしを回した”歌わせ方です
これには会場の温度が急上昇するほどの拍手の嵐です
熱くなって外に出ると,そこは雪国の世界でした.しかもボタン雪です.アトレ上野の「LIMONELLO」で”炎のコバケン”の指揮ぶりを振り返りました.
tora:小林研一郎って楽章のたびに,演奏を始める直前に奏者に向かって一礼してからタクトを振るでしょう.あれはやめた方がいいと思うな.指揮者はもっと威厳を持ってオーケストラに対峙しないと.”俺について来い!”という感じでね
Mさん:現代では,リーダーは,それじゃあ誰もついて行かないと思うな
tora:彼の場合はやりすぎだと思うよ
Mさん:ああいうのいいと思うなあ私はああいうキャラ好きだな
tora:そ,それはよかった
というわけで,大雪で電車がユキドマリになる前に帰れるように,黒ビールを1杯飲んで早めに引きあげました