26日(木)。先日Kさんから読売日本交響楽団定期公演の招待券を2枚いただいたので,昨夕、サントリーホールで第511回定期演奏会を聴いてきました 招待受付で指定券と引き換えたのですが,2階C11列22番と25番.席が飛んでいます.どうも連番の席の用意は無いようでした
指揮は上岡敏之。プログラムは①モーツアルト「交響曲第34番ハ長調K.338」、②マーラー「交響曲第4番ト長調”大いなる喜びへの賛歌”」の2曲です。読響を聴くのは昨年夏に聴いて以来、上岡敏之はドイツの手兵ヴッパータール交響楽団と来日したときに聴いて以来です
舞台上のオーケストラを見て女性が増えているのに気がつきました N響と読響は男性比率が高いことで双璧でしたが,最近,弦楽器を中心に急激に女性が増えてきたようです.コンマスはソロ・コンサートマスターの藤原浜雄です
オーケストラのチューニングが済んで,前髪に特徴のある上岡俊之の登場です 上岡のタクトが振り下ろされ1曲目のモーツアルトの「第34交響曲」第1楽章が始まります.この曲はモーツアルトの生まれ故郷ザルツブルク時代最後の交響曲で,1780年,つまり作曲者が24歳の時に書かれました
有名な35番(ハフナー)以降の交響曲を避け,あえて地味な34番を選んだのは上岡の自信の現れでしょうか
その指揮ぶりを見てヴッバータール交響楽団を指揮した時のことを思い出しました あの時も確かモーツアルトとマーラーの組み合わせでしたが,大きなアクションで,時には片足を挙げて右に左に身体を向けて細かく楽員に指示を出しますが,その動きは滑らかです
ひと言でいえば”リラックスした柔軟な”指揮.まるで踊っているような指揮ぶりです
今まで見てきた指揮者とはまったく違います.強いて言えば,かつてビデオで観た,カルロス・クライバーがモーツアルトのリンツ交響曲を指揮した時の指揮ぶりに近いような印象があります.もちろん違いますが
まったく違う例えで言えば,ロックンローラーが「俺はこういう主義なんで,そこんとこ,よろしく!」というような唯我独尊的な態度が見えてきます
そして,それを認める聴衆が存在することは否定できません
休憩時間に,ご一緒したEさんに感想を訊いてみました.Eさんは音大で声楽と指揮を学び,卒業後,独学でピアノを勉強し地元・町田でピアノ教室を開いています.また,女性コーラス・グループの指揮もやっています 彼女曰く,
「軽やかでしたね あれで片足を挙げないでしっかり指揮をしたらもっと良かったと思いますね
」
指揮を学んだ経験のあるEさんの言葉には重みがあります
休憩後のマーラーの「第4交響曲」は第4楽章にソプラノの歌が入り,「大いなる喜びへの賛歌」というあだ名がついています.しかし,マーラー自身がその詩につけた題は「天国の暮らし」というものです
上岡の指揮で第1楽章が始まります.指揮ぶりはモーツアルトの時と同じです.大きなアクションで指揮をしますが,大雑把かといえば,まったく逆で,細かく各楽員に指示を出します.”大胆にして細心の指揮”とでも言えばよいのでしょうか
第3楽章の「安らぎに満ちて」は私が好きな楽章です.まるで天国にいるような安らかで平穏な音楽が続きます 上岡はゆったりとしたテンポで進めます.あまりにもゆったり過ぎて,一時は音楽が止まってしまうのではないか
と心配するほどテンポを落とします
弦楽器はいいでしょうが,管楽器は気の毒です
指揮者が長く引っ張るものだから,吹き続けなければならないからです.
この楽章の終盤で,ソプラノのキルステン・ブランクが左袖から登場し,指揮者の左にスタンバイします.多くの指揮者が第3楽章の後,間を置かず第4楽章に入りますが,上岡は一旦,区切りをつけます.クラリネットがヨーデルのようなメロディーを奏で,鈴がシャンシャンと鳴らされます.そしてソプラノ独唱が”天国の暮らし”を歌い出します
が,どうしたことでしょう ソプラノの声が届いて来ないのです
”何か変だ”と思いました.この曲が終わったらEさんに感想を訊いてみようと思って最後まで聴きとおしました
終演後はご多分に漏れず拍手とブラボーの嵐でしたが,これは多分,指揮者と読響に対するものではないか,と思いました
通常ですと終演後は指揮者がオーケストラの代表者であるコンサートマスターに握手を求め,労をねぎらうものですが,上岡は一度もそういうことはありませんでした
こうしたところも他の指揮者とまったく異なるところです.良いかどうかは別として
帰りの地下鉄で,この日のコンサートを振り返ってみました.
tora:上岡の指揮はどうでしたか?
Eさん:最近ベルリンフィルを振って話題になった・・・誰でしたっけ・・・そうそう佐渡裕.佐渡さんと違って軽やかだったですね.佐渡さんは肩に力が入っていて,強引に力で引っ張ってゆくようなところがある それに対して上岡俊之さんの指揮は,柔らかくて軽やかでいいと思います.ドイツのオーケストラでもああいう指揮者を受け入れているんだなあと思いました
tora:たしかに指揮者としては正反対のタイプですね.それにしても,彼はよく動き回りますね.右に左に,時に片足を挙げたりと.でも,各楽員に対しては事細かに指示を出してましたよね
Eさん:そう思います.指揮はすごく上手だと思います 読響も良かったと思います。特に弦(楽器)が良かったですね。
tora:ところでマーラーの第4番で歌ったソプラノのブランクはどうでしたか?ちょっと気になったんですが・・・・・
Eさん:あの人,風邪でも引いていたんじゃないかな.全然声が出ていなかったですね それに歌い方も不自然なところがあったし
tora:やっぱりそう思いましたか
(でも,みんな拍手してたな・・・・) オケに声が消されていたところもありましたね
・・・・・・ということで,Eさんはブランクに対しては”問題外”,上岡俊之に対しては極めて高い評価を与えていました.また来日したら聴きたい と言っていました.
別れ際に,毎週1回はプールで身体を鍛え、健康に良いことには何でもチャレンジする健康オタクの彼女が「9割の腰痛は自分で治せる」という本を貸してくれました しっかり読んで,これからのコンサート通いに備えたいと思います