人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

METライブビューイングでヘンデルの歌劇「ロデリンダ」を観る~快調!ルネ・フレミング

2012年01月09日 08時02分16秒 | 日記

9日(月・祝日).昨日午前10時から新宿ピカデリーでMETライブビューイング,ヘンデルの歌劇「ロデリンダ」を観ました 昨年12月3日に米メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラをライブ録画し映画化したものです.休憩を2回挟んで約4時間と長丁場のオペラです 会場を見渡すとオペラの映画にしてはかなりの人数の観客が入っています.昨年のMETの来日公演の影響が大きいのかもしれません

キャストは王女ロデリンダ=ルネ・フレミング(ソプラノ),国王ベルタリード=アンドレアス・ショル(カウンターテナー),国王の妹エドゥイージェ=ステファニー・プライズ(メゾソプラノ),裏切り者の新王グリモアルド=ジョセフ・カイザー(テノール),国王の側近ウヌルフォ=イェスティン・デイヴィーズ(カウンターテナー),謀略の首謀者ガリバルド=シェン・ヤン(バスバリトン)です.指揮はバロック音楽の専門家ハリー・ビケット,演出はスティーヴン・ワズワースです

このオペラは7世紀の北イタリア,ランゴバルト王国を舞台に,愛と欲望がせめぎあう物語です.フレミングの希望で2004年にMETで初演され,ワズワースの演出ともども評判になったもので,今回が再演になります

オーケストラ・ピットにはチェンバロが向かい合せに2台置かれ,1台は指揮者が指揮をしながら弾き,もう1台はチェンバリストが弾きます.幕が開きバロック音楽特有のメロディーが奏でられるのですが,驚いたことに,まるで古楽器で演奏しているのではないかと勘違いするほど,18世紀的な響きがするのです

幕間のインタビューで,インタビュアーのデボラ・ボイト(ワーグナー歌手)から「ヘンデルの時代と違って,現代の大ホールでバロック・オペラを上演するのには困難があるのではないか」と質問され,指揮者のハリー・ビケットは「METオペラのオーケストラは演奏レベルが高いので何の問題もない.強いて言えば,テオルボという当時の楽器を使用していることと,2台のチェンバロを使っているのが特徴だ」と答えていました.

ヒロイン役のルネ・フレミングは,インタビューの中で「このオペラはダ・カーポ・オペラだから,2度目に繰り返すときは別の表現をする必要がある」という趣旨のことを言っていました 「ダ・カーポ」とはイタリア語で「初めから」という意味で,曲の初めに戻り,もう一度繰り返して演奏することを指示する演奏記号をいいます.このオペラでは,一つのアリアの中で同じ歌詞を繰り返し歌うことになります.高い歌唱力とともに優れた演技力が求められます.歌手陣は繰り返し部分では表情を変えて歌っていました.「ダ・カーポ」がなければ,このオペラはもっと短くなることでしょう.いかどうかは別として

フレミングの声の美しさ,演技の素晴らしさをどう表現すればいいのでしょうか.このソプラノ歌手は今回のようなバロック・オペラから近代のR・シュトラウス「バラの騎士」の元帥夫人まで幅広く歌えるオールマイティな実力を持っています しかも,何を歌っても違和感なく,まるで,そのアリアが彼女のために書かれたのではないか,と思ってしまうほど説得力のある歌を披露します また,マスネの「タイス」のような滅多に上演される機会のないオペラに積極的に取り組んでレパートリーを確実に広げているのも彼女の素晴らしいところです 今のMETに彼女が居なかったら,METは限られた演目の繰り返し上演しかなかったかも知れません.彼女はMETにとってそれ程大きな存在です.世界最高峰のオペラハウスMETの女王といっても言い過ぎではないでしょう

国王ベルタリード役を歌ったアンドレアス・ショルは,現在最高のカウンター・テナー歌手と言われています.カウンターテナーというのは,女声の声域を歌う男性歌手のことで,テノールよりも高いアルトの音域を歌います バロック期以前の女声パートを歌います.ボイトの「カウンターテナーになっていなかったら,何になっていましたか?」というインタビューに対してショルは「警察のカウンター・テロリストになっていたところだったが,歌の道を選んだ」と答えていました.彼が言っていた「カウンター・テロリスト」はテロ対策要員とでも訳せばいいのでしょうか,彼一流のジョークなのでしょう.カウンターに座ってウィスキーの水割りでも飲んで聞き流すことにします・・・・・・なんテナー

「ヘンデルのオペラについてどう思うか」と訊かれて,メゾソプラノのプライズは「もっと,今の歌手はヘンデルを歌うべきだ.彼の音楽の心地よいテンポが大好きだ」と語っていましたが,音楽を聴いていると良く分かります.バッハがオペラを作曲したらこういう曲を作っただろうか,と思うようなメロディーが随所に出てきます.残念ながらバッハはオペラを1曲も作曲していませんが

もう一人のカウンターテナー=デイヴィーズ,メゾソプラノのプライズ,テノールのカイザー,バスバリトンのヤンも高い歌唱力,演技力で,METオペラの水準の高さを示していました

ヘンデル「ロデリンダ」は13日まで,新宿ピカデリーで午前10時から,東銀座の東劇で午後6時半から上映されています

次は来週,グノーの歌劇「ファウスト」を観に行きます.MET新演出だとのことですが,これも休憩を含め4時間を超える大作,初めて観るオペラです.今から楽しみです

 

             

 

 

 

 

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