8日(日)その2.昨日は午後3時から新宿文化センターで開かれた三ツ橋敬子=東京シティフィルによる「ニューイヤー・コンサート」が終わったのが午後5時,終わるや否や早足で会場を後にして,途中,コンビニでおにぎり3個とペットボトルのお茶を買って,地下鉄丸の内線新宿3丁目駅から四谷経由で南北線六本木1丁目駅まで急ぎました 会場のサントリーホールに着いたのは5時35分過ぎでした.コートをクロークに預け,ロビーの椅子に座っておにぎりを食べ,席に着いたのは5時55分でした.まあ,何とあわただしかったことか
東京交響楽団の第596回定期演奏会は午後6時過ぎに始まりました.指揮は飯森範親,プログラムはレスピーギの①ローマの噴水,②ローマの松,③ローマの祭の”ローマ三部作です
最初に指揮者の飯森が舞台に登場して新年の挨拶をしましたが,今回の演奏会が,初めて日経のBSジャパンとニコニコ動画で同時生中継される旨をアナウンスしたので,会場がどっと沸きました 話の最中に,楽員がぞろぞろと入場してきたのは良いのですが,左サイドから入ってきた楽員が,譜面台か何かを引っ掛けたらしく”バタン”と大きな音がしました
飯森が「大丈夫ですか?生中継らしいハプニングですね」とコメントして,また会場が沸きました.そして「今回ローマ3部作を一挙に演奏するが,いかにレスピーギがローマを愛していたかを感じとってもらえれば嬉しい」と締めくくりました
プログラムは,前半が①ローマの噴水,②ローマの松,後半がローマの祭となっており,作曲順に演奏されます.
レスピーギは1879年にイタリアのボローニャで生まれ,1913年にはローマのサンタ・チェチーリア音楽院の教授に就任しました.そして「ローマの噴水」を作曲,1917年3月に初演されました.この時は不評だったようですが,翌18年2月に友人の指揮者アルトゥーロ・トスカニーニの指揮で再演されると,大好評で迎えられ,レスピーギは作曲家としての名声を確立することになりました.そういう意味ではレスピーギにとってトスカニーニは”恩人”ですね
曲は①夜明けのジュリアの谷の噴水②朝のトリトンの噴水③昼のトレヴィの噴水④たそがれのメディチ荘の噴水からなっています.どの曲もイタリアの太陽の光が燦燦と輝くもとで噴水が湧き上がる様子が,管弦楽によって見事に描写されます.ここではオーボエ首席の荒絵理子の演奏が光っていました
曲の合間に再び飯森がマイクを持って登場し「レスピーギは音色に敏感な作曲家だった.色彩感溢れる音楽を作曲した彼は”イタリアのラヴェル”とでも言うべき人だった」と解説をします.いい得て妙だと思いました ここで,舞台左袖にトランペット4本,トロンボーン2本が追加されました.
次は「ローマの松」です.①ボルゲーゼ荘の松②カタコンブ付近の松③ジャニコロの松④アッピア街道の松からなります.プログラムの解説によると,「ローマの噴水」と後の2作「ローマの松」「ローマの祭」との違いは,「ローマの噴水」が現在のローマでの幻想を扱っているのに対して,後の2作品は,過去のローマの栄光に思いを巡らしているところであり,音楽的にも後の2作品はストラヴィンスキーの影響が見られ,音色がより豊かで絢爛豪華になっている,とのことです.確かに実際に聴くとそういうことが分かります.
第3部「ジャニコロの松」の中で,(録音された)ナイチンゲールの鳴き声が聴こえる中,クラリネットが弱音で美しいメロディーを奏でるのですが,首席のエマニュエル・ヌヴーの演奏は絶品でした 強奏するより弱音で息の長いメロディーを吹く方がよほど難しいのではないかと思うのですが,彼の演奏は完璧でした
第4部「アッピア街道の松」のフィナーレはいつ聴いても気持ちが高揚します.圧巻でした
休憩後の最後の曲は「ローマの祭」です.①チルチェンセス.古代ローマ時代に皇帝ネロが円形競技場で行った祭です.②50年祭.中世にローマはキリスト教の聖地となり,1300年から50年ごとにローマで大恩赦が行われましたが,その時の祭です.③10月祭.ワイン収穫祭です.④主顕祭.1月6日にキリストの誕生を祝うために東方三博士がベツレムを訪れたことを祝う祭です
第3部「10月祭」ではマンドリンのセレナーデが奏でられるのですが,会場が広いせいもあってマンドリンの音が目立たなかったのが残念でした 反対にコンマス高木和弘のヴァイオリン・ソロは美しく響き渡りました
第4部「主顕祭」はまさにストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」に似たメロディーが流れます管弦打楽器総動員のフィナーレは圧巻でした
ローマ3部作は東京交響楽団の十八番といってもいいかも知れません.今回,初めてBS放送とニコ動で生中継された演奏としては大成功だったのではないかと思います
〔プログラム表紙の絵は作曲家シェーンベルクの描いた「The Lucky Hands」です〕