13日(水)。今日はメンデルスゾーンの有名な「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」が初演された日です 1845年3月13日、フェルディナント・ダヴィットのヴァイオリン・ソロ、ニルス・ゲーゼ指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって初演されました
ヴァイオリニストの来日公演プログラムを見ると、なぜかこの”メンコン”が多くて、「ほかに演奏する曲はないのかい?」と聞きたくなるのですが、名曲中の名曲には違いありません。嫌になるほどロマンチックでドラマチックな曲です CDの愛聴盤はヒラリー・ハーンの2002年録音かな
閑話休題
「知の挑戦~本と新聞の大学Ⅰ」(集英社新書)を読み終わりました これは朝日新聞社と集英社が2012年3月に創設し、各分野の第一人者が連続講義を行った「本と新聞の大学」の内容を文字で再現したもので、次の5回から成っています
1.日本はどうなる? 一色清(朝日新聞出版雑誌統括)と姜尚中(東京大学教授)の対談
2.私的新聞論~プロメテウスの罠 依光隆明(朝日新聞編集委員)
3.政治学の再構築に向けて 杉田敦(政治学者)
4.2020年の中国~世界はどう評価するか 加藤千洋(元朝日新聞編集委員)
5.科学と人間の不協和音 池内了(天文学者、宇宙物理学者)
面白いと思ったところをつまみ食い的に抜粋して見ます。
まず、「1.日本はどうなる?」の中で姜尚中氏が「知」のあり方を語っているところです
「私は”知”というものを説明する際、しばしば”生もの”と”干もの”という二つのものを例に使います 生ものの知の代表は新聞を中心とするメディアです。ジャーナリズムです。これに対して、干ものとは大学や本~主に古典ですが~によって担われているような知です。では、生ものと干ものの関係はどうあるべきかというと、私は双方をほどよく関連させて、二つのあいだを行ったり来たりすることが理想だと思います 二つをバランスよく取り入れて、双方をチューニングしつつ、ある種の”総合知”のようなものを身につけたい。これがまた、「座標軸」にもなるわけです」
次に「4.2020年の中国」の中で加藤氏が質問に答える形で中国との付き合い方について語っているところです
「中国は国として付き合うとなかなか厄介なんですけれども、一人一人の中国人と友だちになると情も厚い いざという場合には助けてくれる、向こうが困っていたら逆にこっちが助ける、そういう関係になれる。77.8%の人が中国にあまり親しみを感じないという状況ではなかなか難しいでしょうが、そういう困難な状況を打破するには、やっぱり人と人、一人ずつが顔と顔を向け合ってつきあいを深めていくことだと思います 中国に友人といえるような人はいらっしゃいますか?日本にいる中国の人でもいいけれども、友人としてつきあう、そういう試みをされてはいかかでしょうか」
最後に「5.科学と人間の不協和音」の中で、池内氏が語っているところです
「科学の将来を考える時、私はよく、”タイムホライズン”のお話をするのです。私たちが景色を遠く見渡すと、地平線が見えるでしょう?そして、その線より先は見えません。それは、地球が丸いから、そして、光がまっすぐ進むからです それと同じように、私は時間にも地平線があると思っています。どのくらい先のことを想像してものごとに取り組むか、そのぎりぎり見通せるライン。それがタイムホライズン(時間の地平線)です 自分の未来としてこういうことをやろうとか、ここまでは頑張ろうとか展望するのに良いのです。ところが、そのタイムホライズンは、いまどんどん短くなっているように思います 余裕がなくなって、近視眼的になっている。それはまずいことでしょう。ひょっとしたら、あなたの会社は長期ビジョンや大きな展望を持って何かに取り組むのではなく、姑息な改良主義のようなものに陥っているのではないでしょうか 日本はいま、失われた20年だか30年だかで色々な側面で焦っていますが、悪あがきしてはいけません。そうではなく落ち着いて、もう1回、本当の基礎のところに立ち返って、10年、20年かけて、きっちりとやり直していかないといけないと思います。なかなかそうなりませんけれども、そうあるべきだと思います」
インターネットが世界的に普及している中、あえて新聞と本のメディアが組んで「知」を総合的に捉えようとした意欲的な試みです 久しぶりに”堅い本”を読んで少々疲れ気味ですが、この本で取り上げられている事項は、どれもがあらためて考えさせられることばかりでした