人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

暗譜で弾く古典四重奏団のチャイコフスキー「弦楽四重奏曲第1番~第3番」を聴く

2013年03月18日 06時59分52秒 | 日記

18日(月)。昨日の日経朝刊に「タイタニック沈没 最後まで演奏 悲劇のバイオリン発見 英で展示後、競売に」という小さな記事が載りました 記事を要約すると、

「英競売会社”ヘンリー・オルドリッジ&サン”はこのほど、1912年に沈没した英豪華客船タイタニック号の沈没間際まで船上で演奏を続けた楽団のバイオリンが見つかったと発表した 避難する乗客らを落ち着かせるために楽団が最後まで演奏を続けたエピソードは有名。バイオリンは楽団長だった英国人ウォレス・ハートリーさんのもので、2006年に英国人男性がアマチュア音楽家だった母親の荷物から発見、専門家の鑑定により本物と断定された ハートリーさんは事故で死亡したが、バイオリンを革のケースに入れ、大切そうに体に結びつけた状態で、海上で発見されたという

私はあの有名な映画「タイタニック」を観ていないので、まったく知らなかったのですが、楽団はタイタニック号が沈没する間際まで、乗客を落ち着かせるために演奏を続けていたのですね 100年も前のことですが、音楽家はいつの世でも”人のために役立とう”と頑張っているのですね あらためて敬意を表するとともにご冥福をお祈りします

 

  閑話休題  

 

昨日、古典四重奏団の「チャイコフスキー氏からの手紙」コンサートを聴きました プログラムはチャイコフスキーの全弦楽四重奏曲(「第1番ニ長調」、「同第2番ヘ長調」、「同3番変ホ短調」)です 公演テーマに「チャイコフスキーからの手紙」を掲げたことについてチェロの田崎氏は音楽情報誌「ぶらあぼ」3月号に次のように書いています。

「チャイコフスキーは筆まめで手紙を多く書いており、そこに自分の内面的なこと、音楽のこと、他人の作品や演奏、自分の作品についてたくさん書いている。弦楽四重奏曲は”内的な告白”の部分が強いので”手紙”という感覚が当てはまるのではないかと思う。作品は、まさに作曲家からの手紙なので、心を込めて読み取って演奏したいと思う」

自席は8列23番と、かなり前のセンターブロック通路側です。会場は5~6割の入りでしょうか。入り口で配られたプログラムには第1ヴァイオリンの川原千真さんによる親切で詳細なプログラム・ノートが掲載されています。作曲家や作品の理解に大きく役立ちます このカルテットは「レクチャー・コンサート」をやっていますが、出来るだけ多くの人に作曲家や演奏曲目を理解してもらおうとする積極的な姿勢があって、いつも感心します 他のオケやカルテットでも見習ってほしいと思います。このカルテットは1986年、東京芸術大学及び大学院卒業生によって結成されましたが、現在のレパートリーは80数曲に及ぶといいます

 

          

 

舞台上には椅子が4つ並んでいるだけで、譜面台はありません。このカルテットは演奏曲目を”すべて”暗譜で演奏するのです それは驚きです。左から第1ヴァイオリンの川原千真、チェロの田崎瑞博、ヴィオラの三輪真樹、第2ヴァイオリンの花崎淳生という態勢を取ります

1曲目の「弦楽四重奏曲第1番ニ長調」は”アンダンテ・カンタービレ”の愛称で知られていますが、それは第2楽章の表記から採られました 初演時にはあのツルゲーネフもパリから会場に駆け付けたとのことです。私がこの曲の全曲を聴くのは初めてです。第1楽章は穏やかな音楽が奏でられます。第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」は、よくコントロールされたノーブルな演奏です 決して感情過多になりません。第3楽章と第4楽章は間を置かずに演奏されました。申し分のない見事な演奏でした

2曲目の「第2番ヘ長調」は第1番から3年後に書かれました。第1楽章冒頭は不協和音が現われ、モーツアルトのカルテットを想起しました。第4楽章は4人の力演で、ほとばしる情熱とでも言うべき曲想を見事に歌い上げました

休憩後の「第3番変ホ短調」は「葬送のアンダンテ」という愛称が付けられています。チャイコフスキーの弦楽四重奏曲などに深くかかわっていたラウプの死を悼んで作曲したものです 第1楽章は深い喪失感に彩られた曲想で、チャイコフスキーの心情がよく表われています。最後の第4楽章になると、一転して活気に溢れた音楽が展開し、深い悲しみから抜け出したかのような印象を受けます

この日はチャイコフスキーの弦楽四重奏曲全3曲をいっぺんに聴いたわけですが、演奏が素晴らしかったので初めての出会いとして幸いでした。チャイコフスキーの室内楽再発見の日となりました

 

          

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