30日(水)。昨日、ミューザ川崎で読売日本交響楽団のコンサートを聴きました これは毎年夏、ミューザ川崎で開かれている「フェスタサマ―ミューザ」の一環として挙行されたコンサートです
開演40分前からプレ・コンサートがあったので自席で聴きました。フルート、オーボエ、ホルン、ファゴット、クラリネットの木管五重奏なのですが、最初にクラリネット奏者が曲目の解説をしてくれたのは良いのですが、早口と会場の残響時間との相乗効果で、何を言っているのかさっぱり分かりません 多分、プーランクか誰かフランスの作曲家による曲なのですが分かりません。コンサート・ホールでのトークは会場の残響時間を考慮に入れてゆっくりと話さなければならないことを理解してほしいと思います
もう一つ。曲が終わったので席を立ってロビーに出たのですが、何と2組目の演奏があったのです 弦楽合奏によるモーツアルト「ディヴェルティメントK.136」の第1楽章と第3楽章でした。また席に戻って聴こうかと思ったのですが、隣席の高齢者が足が不自由で、出たり入ったりすると迷惑がかかるので、ロビーのモニター・テレビを観て我慢しました
こういうのも、あらかじめ「2曲演奏します」とひと言アナウンスしてくれていれば席に座って待っていられたのです
プレ・コンサートとは言え、ちょっとした配慮が欲しいと思いました
この日も「ほぼ日刊サマーミューザ朝刊」が配られ、27日の東京シティ・フィルの演奏の模様が写真入りで紹介されていました
閑話休題
さて、本番はオール・チャイコフスキー・プログラムで①バレエ音楽「眠りの森の美女」からワルツ、②ヴァイオリン協奏曲ニ長調、③交響曲第6番ロ短調”悲愴”です。指揮はダレル・アン、②のヴァイオリン独奏は松山冴花です
自席は1C-7列16番、センターブロック左から3つ目の席です。会場はほぼ満席 オケのメンバーが配置に着きます。ほとんど顔が分かりません。弦楽器ではヴィオラの柳瀬省太、コントラバスの西澤誠治くらいしか分かりません。それにしても読響は相変わらず男性比率が非常に高いオケです
コンミスの日下紗矢子が登場します。彼女は今年4月から読響のコンミスに就任したばかりです 定期公演でなく、サマーフェスティバル公演に敢えて出演させたのは、読売日響、ひいては親会社である読売新聞社の、一般聴衆を定期会員に引き入れるための戦略なのでしょう
指揮者ダレル・アンはブザンソンやトスカニーニといった世界のコンクールで優勝したシンガポール生まれの若き俊英です 私の第一印象は”非常に落ち着いている”指揮者です
1曲目の「眠りの森の美女」のワルツは絢爛たる舞踏会が目に浮かぶような優雅な演奏です まずはダレル・アンと日下紗矢子のお披露目パフォーマンスといったところです
2曲目のヴァイオリン協奏曲は、9歳でニューヨークに渡り、ジュリアード音楽院で学んだ松山冴花が独奏を務めます。真赤なドレスで登場しました 私は何度か女性ヴァイオリニストでこの曲を聴いてきましたが、ほとんどが「赤い」衣装で演奏していたように記憶しています。たしかに、この曲全体のイメージは”情熱の赤”が最も相応しい色と言えます
ダレル・アンのサポートで第1楽章がゆったりと奏でられます。松山冴花は目をパッチリ開けて、自分の出した音の行方を見届けるようにしっかり前を見て演奏します 第1楽章終了後、フライングの拍手が起こりました
まあ無理もありません。白熱の演奏でしたから。第2楽章のカンツォネッタではたっぷりと美しい”歌”を聴かせ、第3楽章では息もつかせぬアレグロで駆け抜けました。しかし、全体的な印象としては”静かな情熱を湛えた演奏”とでも言うべきものでした
演奏後、松山は会場後方に向けてウィンクをしましたが、その先には誰がいたのでしょうか
休憩後は交響曲第6番”悲愴”です。総合プログラムに首席ファゴット奏者の吉田将さんが「ファゴット吹きには”悲愴”は暗くて気分を引きずる」といったことを書いていますが、第1楽章序盤、第4楽章では、まさに「今にも死にそうな暗いメロディー」が楽章全体を覆います
この曲を聴いていて、いつも心配になることがあります。それは第3楽章「アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」が終了した直後、曲が終わったと勘違いした聴衆が大拍手を浴びせて、演奏者の緊張感を弛緩させないかということです そこは世界の指揮者コンクールを制覇してきたダレル・アンです。第3楽章がフォルティッシモで終わっても、両手を下ろしません。そのまま、間をとって第4楽章につなげます。これで緊張感が途切れることなく、本来の”悲愴”な曲想に戻ります
それにしても第3楽章の”勇ましい行進曲”と第4楽章の”今にも死にそうな重苦しさ”との落差はどうでしょうか きっと、37歳で教え子と結婚したものの、すぐに結婚生活が破たんしてしまったことと関係があるのではないかと思います
ダレル・アンの指揮はスタイリッシュで無駄がなく、しかも終始落ち着いており、年齢の割には自分のスタイルが”出来上がっている”ように思いました