人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ダニエル・ハーディング+新日本フィルでブルックナー「交響曲第7番ホ長調」を聴く

2015年11月09日 07時01分19秒 | 日記

9日(月)。わが家に来てから408日目を迎え、1日のうちで一番幸せな”おやつタイム”を過ごすモコタロです

 

          

          ご主人は まだパソコン問題が未解決みたい 人間は大変だ

 

  閑話休題  

 

昨日、サントリーホールで新日本フィル第549回定期演奏会を聴きました プログラムは①ブレット・ディーン「ドラマティス・ぺルソネ」、②ブルックナー「交響曲第7番ホ長調」です。①のトランペット独奏はホーカン・ハーデンベルガー、指揮はダニエル・ハーディングです

 

          

 

1曲目の「ドラマティス・ぺルソネ」は、オーストラリア出身の作曲家ブレット・ディーンが2013年にハーデンベルガーのために書いたトランペット協奏曲で、今回が日本初演です タイトルの「ドラマティス・ぺルソネ」はラテン語で「劇作品のメイン・キャラクター」のことだそうです。第1楽章は「スーパーヒーローの転落」、第2楽章は「独白」、第3楽章は「偶発的革命」という表題がついています

長身のハーデンベルガーがトランペットを持って登場します。小柄なハーディングが一層小さくに見えます オケは左から奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、右にチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります。弦の右サイド後方にはワーグナー・チューバが4本スタンバイします。ハーディングが指揮する時のコンマスはチェ・ムンスです

この曲を説明するのは困難ですが、聴いた限りでは、トランペットの弱音から最強音までの可能性を追求した技巧的な曲で、印象に残るのは第2楽章の弱音器を付けたソロ・トランペットによる演奏です 一転、第3楽章ではオケが最強音で行進曲を奏でる中、それに抵抗するかのようにトランペットが強く主張しますが、最後はオケのビッグ・バンによって喧騒は収まります

ハーデンベルガーは会場いっぱいの拍手に、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を静かにロマンティックに演奏し、聴衆を魅了しました

 

          

 

休憩後はブルックナーの「交響曲第7番ホ長調」です。今回はドイツの指揮者・音楽学者であるベンヤミン・グンナー・コールスによる2015年新版による演奏ということです 第7交響曲は「初版」「ハース版」「ノヴァーク版」と改訂版が3つありますが、「初版」をベースに改定を加えたということです プログラムの解説は関野さとみという方が書いています

「第7番の作曲が着手されたのは1881年、ブルックナー57歳の年である。この交響曲でブルックナーは初めてワーグナー・チューバを採用しているが、最初に仕上げられた第1、第3楽章には出番がない この楽器が使用される第2、4楽章の完成は1883年まで持ち越され、第2楽章は1883年1月に完成しているが、その翌月の2月、ブルックナーが敬愛してやまないワーグナーがヴェニスで世を去った ブルックナーは偶数楽章の筆をワーグナーの死の予感とともに進め、この2つの楽章でのワーグナー・チューバの使用には、巨匠へのオマージュの意味合いがあると考えられている。この特徴的なワーグナー・チューバの使用法、とりわけダイナミクスをはじめとする問題にもコールスは詳細な考察を加えており、ハーディング指揮による今回の公演ではどのような効果が生み出されるかが注目される

私はこういう解説をしてほしいのです この解説を読むと、今回の演奏でどこにポイントを置いて聴けば良いかが分かります。コールス版による改定箇所は各楽章であるのでしょうが、われわれ素人にはどこがどう改定されているのか、さっぱり分かりません。その点、関野さんの解説を参考にすれば、その一つとして、ワーグナー・チューバがどこで演奏されているかに注目すれば良いのです

同じ新日本フィルの定期公演でも、トリフォニー・シリーズからサントリー・シリーズに移って良かったと思うのは、プログラミングの問題もありますが、解説者が分かりやすい解説を書いてくれるということが大きいと思います いつもこのブログで書いているように、解説に”文学”はいらないのです。聴く者の助けになるような客観的な知識を与えてくれる解説が求められているのです

さて、第1楽章の冒頭、ハーディングのタクトのもと雄大なテーマが低弦とホルンによって奏でられブルックナーの第7番が開始されます 絵に描くとすれば、マッターホルンを仰ぎ見る感じといえばよいでしょうか。さて、注目はワーグナー・チューバです。第1楽章でも出番がありました。管楽器に厚みを加えています

第2楽章「アダージョ」はこの曲のハイライトです。関野さんの解説の通り、ブルックナーは師と仰ぐワーグナーの死を予感しながら追悼の音楽を書いています ブルックナーの「アダージョ」楽章はどの交響曲も素晴らしいと思いますが、この7番のそれは断トツだと思います ハーディングのタクトのもと、弦も管も打も渾身の演奏を展開します

第3楽章はトランペットが活躍する明るいスケルツォです。ブルックナーのスケルツォは特徴がありますが、その典型のような曲です そして、第4楽章のフィナーレは軽快な音楽が続きます。ハーディングと新日本フィルはブルックナーの音の大伽藍を築き上げ、曲を閉じます 最後の音が鳴り終わり、ハーディングのタクトがゆっくりと下されて、会場から拍手とブラボーが沸き起こりました 新日本フィルの会員は、「曲が終わって指揮者がタクトを下すまでの間も演奏の一部である」ということを理解している証拠です これが、演奏が終わるや否やブラボーを連発したり大きな拍手をしたりするのは、指揮者と演奏家に対して大変失礼だし、他の聴衆に対しても失礼千万な行為です。まさに、その瞬間に”感動”があるからです

さて、注目すべきワーグナー・チューバですが、偶数楽章に限らず全曲を通じて使われていました。ブルックナーのワーグナーへの追悼の意味合いが強く反映された改定版による演奏だったことになるでしょう この日の新日本フィルは総力を挙げて渾身の演奏を展開しました

ところで、プログラムの短信欄を見ると、私が注目し応援している今年の新人・3人娘(第1ヴァイオリン=古日山倫世、第2ヴァイオリン=松崎千鶴、ヴィオラ主席=脇屋冴子)のうち松崎千鶴さんが10月1日付で正団員になったとのことです。おめでとうございます また、ホルンの藤田麻理絵さんはアフィニス文化財団の海外研修員として約1年間スイスに留学するそうです。お二人の健闘をお祈りします

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