2日(月).わが家に来てから401日目を迎え,箱入り息子からの脱却を図るモコタロです
閑話休題
昨日,文京シビックセンター2階にある「シビックチケット」に行き,「響きの森クラシック・シリーズ2016-2017シーズン券」を引き取ってきました S席を継続予約しているので予約確定ハガキに料金19,500円を添えて提出し,4枚のチケットと引き換えました.このシリーズには東京フィルの首席客員指揮者で,1987年イタリア生まれの若き俊英アンドレア・バッティストー二が初登場し,レスピーギ「ローマの松」他を演奏するのが目玉です
その足で,新宿ピカデリーに行って,METライブビューイング2015-2016の第1作,ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」の指定券を取ってきました 4日(水)午前10時からの部にしました.大好きなソプラノのアンナ・ネトレプコ,バリトンのディミトリ・ホヴォロストフスキーが出演します.すごく楽しみです
新宿ピカデリーに行ったついでに,ライブビューイングの日本語版ガイドブックを買いました 税込みで1,440円です.2015ー2016年の上映オペラ10作品のストーリーやキャストが紹介されていて,予習には不可欠のガイドブックです
も一度,閑話休題
昨日午後3時からサントリーホールで「コバケンとその仲間たちオーケストラ 10周年記念コンサート」を聴きました 下のチラシを見て,どういう趣旨のコンサートなのかも確かめずに,サントリーホールでのコンサート・チケット代が全席指定3,000円と格安なので手配したコンサートです
自席は1階7列5番,左ブロック左から2つ目です.会場は9割方埋まっているでしょうか 拍手の中,オーケストラのメンバーが入場します.が,顔が分かるのはコンサートミストレスの瀬崎明日香しかいません
平均年齢は若いようですが,中には前の人の肩を借りて歩く演奏者もいます.目が見えないのでしょう
慌ててプログラムの解説を読むと,「『コバケンとその仲間たちオーケストラ』は,プロ・アマ・年齢を問わず,活動の趣旨に賛同する不特定多数の演奏家たちとそれを支えるボランティアから構成される」と紹介されています.さらに「活動の趣旨」というのは「知的しょうがいのある方々を招いて生の演奏を聴いてもらうため,出演者がボランティアで『支え合い,共に生きる』ことをオーケストラという集合体で具現することを目指す」というものです
オケは左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという態勢をとります 全員が「がんばろう日本」の白字が浮き出た黒のTシャツで統一しています
プログラムの前半はドヴォルザーク「交響曲第9番ホ短調”新世界より”」です.進行役のフリーアナウンサー朝岡聡氏によると,このオケが新世界交響曲を全曲通して演奏するのは10周年を迎えた今年が初めてとのことです
コバケンのタクトで第1楽章が開始されます.臨時編成オケにしてはしっかりした音が出ています さて,問題は第2楽章「ラルゴ」におけるイングリッシュホルンにより奏でられる「家路」のテーマです
オーボエ奏者が演奏しましたが,これが実に上手いのです
後で知ったのですが,海外で活躍する演奏家とのことでした.納得です
舞台上の演奏家の人数が多いので,マスの音の力で会場を圧倒します プロだけのオケにない新鮮な感動を覚えます
休憩時間に,P席に平塚学園高校と蒲田女子高校の吹奏楽部のメンバー80数名がスタンバイします 後半1曲目はヴェルディの歌劇「アイーダ」から「凱旋行進曲」です.コンミスが代わりました.理由は後で分かります
これほど勇壮な音楽も珍しいでしょう.途中で細くて長い「アイーダ・トランペット」が6本登場し,凱旋のメロディーを高らかに奏でます
このアイーダ・トランペットはカラヤン+ウィーン・フィルのためにヤマハが制作した楽器で,この曲の時だけ使用されます.7列目で聴くと相当迫力があります
コンミスを外れた瀬戸明日香が鮮やかな真っ赤なドレスでソリストとして登場します 演奏するのはサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」
この曲を演奏するには”情熱の赤”しかないでしょう
朝岡氏の話によると,彼女は10年間このオケのコンミスを務めると同時に,この曲のソリストを務めてきたとのことです.相当技巧的な曲ですが,数々の賞を得ている実力派の瀬戸にとっては弾きなれた曲なのでしょう.情念のこもった情熱的な演奏でした
ここで何故か楽員全員が退場し,ピアノがセンターに運ばれます.この間,朝岡が小林にインタビューするのですが,セット・アップ中のスタッフが譜面台を倒してしまい大きな音が出ると,すかさず朝岡が「譜面台も感動したんでしょうかねえ」とフォローしていました
この人はマイナスをプラスに変えることができるプロのアナだな,と思いました
そして,映画音楽のためにコバケンが弾いた時に皇后陛下が聴いておられたというモーツアルトの「ピアノ協奏曲第23番」の第2楽章を,コバケンがピアノを弾きながらオケを指揮しました なかなかのものです
演奏後,朝岡が「指揮者というのは指揮するだけでなく,ピアノも弾ける人も多いのでしょうね?」と訊くと「ピアノも弾くし,ヴァイオリンも弾くし,チェロも弾きます・・・・ただ,モノにならないだけです
」と答え,笑いを誘っていました
次いで,コバケンのピアノ伴奏のもと,日本フィルの首席トロンボーン奏者・藤原巧次郎がプッチー二の歌劇「トゥーランドット」から「誰も寝てはならぬ」を高らかに歌い上げました
次に,大きな和太鼓が指揮者の後方に置かれ,小林研一郎作曲「パッサカリア」から「夏祭り」が賑やかに演奏されました.極めて日本的な音楽です
再び朝岡が登場し,チャイコフスキーの「荘厳序曲1812年」について解説しましたが,この人の解説は驚くべき正確さで,淀みなく話すので非常に分かり易く,曲の理解に役立ちます クラシック音楽を良く知っている人です.「コンサート・ソムリエ」を名乗るだけのことはあります
冒頭はヴィオラとチェロのソロによってロシア正教会聖歌に基づく序奏が演奏されますが,女性首席チェロ奏者と男性首席ヴィオラ奏者の演奏が抜群に上手いのです チェロなどは,チェロ・セクション全員の音が彼女の身体を通して一つとなって出て来るように感じます
これは凄いことです
後で分かったのですが,彼らも海外からの応援組でした
途中の大砲は和太鼓2人によって打ちこまれました フィナーレには高校生たちも加わり音の大伽藍を築き上げました.会場からは大きな拍手とボラボーが寄せられ,会場の温度が急上昇しました
アンコールにビゼーの「アルルの女」組曲から「ファランドール」を軽快に,情熱的に演奏,聴衆を興奮の坩堝に巻き込んでコンサートを締めくくりました
オケの面々と高校生たちは全員で一礼の後,手を振って聴衆に別れを告げました 午後3時に始まったコンサートが終わったのは6時近くになっていました
素晴らしいコンサートでした 必ずしもプロのオケが感動的な演奏をするとは限りません.臨時編成のプロ・アマ混成オケでも,むしろ混成オケだからこそ感動的な演奏が出来るのかもしれません
この日のコンサートはそれを証明して見せました
来年も聴きに行きます