7日(水)その2。よい子は「その1」から見てね。モコタロはそちらに出演しています
昨日午後7時半から よみうり大手町ホールで「第17回読響アンサンブル・シリーズ公演『上岡敏之と読響木管メンバーによる室内楽』」を聴きました プログラムは①ビュッセル「カンテコール」(ホルン&ピアノ)、②ベートーヴェン「セレナーデ」(フルート&ピアノ)、③ヒンデミット「イングリッシュホルン・ソナタ」(イングリッシュホルン&ピアノ)、④ルーセル「ディヴェルティスマン」(六重奏)、⑤プーランク「ピアノと木管のための六重奏曲」です。演奏は、ピアノ=上岡敏之、ホルン=日橋辰朗(首席)、オーボエ&イングリッシュホルン=北村貴子、フルート=倉田優(首席)、クラリネット=金子平(首席)、ファゴット=井上俊次(首席)です
公演に先立って午後6時50分(通常は7時開始)から上岡敏之氏によるプレトークがありました 上岡氏は この日のプログラムはドイツとフランスがテーマとなる室内楽だが、曲目は出演者と相談しながら決めたことを説明し、”ピアニスト”としてベートーヴェン、ヒンデミット、フォーレ、ドビュッシーなどのピアノ曲を弾きながら、「ドイツ語は語尾を明確に発音するように 音楽も明確だが、一方のフランス語は語尾があいまいであるように 音楽もどことなく不明確なところがある」と解説しました。上岡氏は日本語よりもドイツ語の方が上手なようで、日本語が前のめりになっていましたが、決して指揮はそうではありません
さて本番です。1曲目はフランスの作曲家・指揮者・教師のビュッセル(1872-1973:101年生きた!)の「カンテコール」です この曲は1926年、パリ音楽院の卒業試験のために書いた小品です。演奏はホルン=日橋辰朗、ピアノ=上岡敏之です。わずか6分程度の曲ですが、名ピアニスト上岡氏の伴奏を得て、日橋氏のホルンが冴えわたっていました
2曲目はベートーヴェン(1770-1827)の「セレナーデ ニ長調」です この曲は、もともとフルート、ヴァイオリン、ヴィオラのための作品として作曲されたものですが、クラインハインツが1803年にフルート(またはヴァイオリン)とピアノのための曲として編曲したものです 演奏はフルート=倉田優、ピアノ=上岡敏之です。7つの楽章から成る曲ですが、第1楽章は冒頭のおどけた感じの曲想が印象的です 第2楽章はまるでモーツアルトの曲のように感じました 第6楽章のアダージョから間を置かずに第7楽章のアレグロ・ヴィヴァーチェに移った後は、フルートの息継ぎが大変そうです 私もン十年前にフルートを1年だけ習った経験がありますが、あの息継ぎはなかなか出来ません 倉田さんは「さすがは首席」の演奏でした
3曲目はドイツの作曲家・ヒンデミット(1895-1963)の「イングリッシュホルン・ソナタ」です この曲はヒンデミットがアメリカに亡命していた1941年に完成しました 演奏はイングリッシュホルン=北村貴子、ピアノ=上岡敏之です。この曲は「遅く」「アレグロ・ペザンテ」「モデラート」「スケルツォ:速く」「モデラート」「アレグロ・ぺザンテ」の6つの楽章から成りますが、切れ目なく演奏されます イングリッシュホルンといえば、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」の第2楽章で使われていることで知られていますが、ヒンデミットのこの曲でも、とくに緩徐楽章でその持ち味を発揮し、北村さんは息の長いメロディーを朗々と奏で、聴衆の郷愁を誘っていました
プログラム後半の最初の曲は、フランスの作曲家アルベール・ルーセル(1869-1937)の「ディヴェルティスマン作品6」(六重奏)です この曲は1906年に作曲し初演されました。演奏はピアノ=上岡敏之、ホルン=日橋辰朗、オーボエ=北村貴子、フルート=倉田優、クラリネット=金子平、ファゴット=井上俊次です 曲を聴く限り、いかにもフランス音楽といった感じの生き生きとした楽しい曲で、わずか7分程度の曲ながらフランスのエスプリを堪能しました
最後の曲はプーランク(1899-1963)の「ピアノと木管のための六重奏曲」です この作品は1932年に完成後、1939年に改訂されました 第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「ディヴェルティスマン:アンダンティーノ」、第3楽章「フィナーレ:プレスティッシモ」の3楽章から成ります
プログラム・ノートに「おもちゃ箱をぶちまけたかのように多彩な楽想が飛び交い」と表現されていましたが、まさにそんな感じの曲想です 6つの楽器がそれぞれを主張しながらも、不思議と調和が取れています その上、ただ煩いというのではなく、エスプリというか フランス風の「粋」を感じさせます そんな 粋 な曲を6人の演奏家は 息 を合わせた見事なアンサンブルで演奏し、楽しい世界を表出しました
この日のコンサートは、読響の木管奏者たちと指揮者・上岡氏のピアニストとしての実力が発揮された楽しい公演でした