人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

カザルス弦楽四重奏団「ベートーヴェン・サイクルⅠ~第11番”セリオーソ”、第13番”大フーガ付”」を聴く~強く印象に残るクァルテット:サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン

2018年06月08日 07時57分01秒 | 日記

8日(金)。わが家に来てから今日で1345日目を迎え、自民党が6日の選挙制度改革問題統括本部などの合同会議で、参院定数を6増やす公職選挙法改正案を了承した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                  「議員が多すぎる」が民意なのに正反対のことをやっている 次の選挙で落ちるぞ!

 

          

 

昨日仕事が休みだった娘に 夕食は何が食べたいかと聞いたら、ソーメンが食べたい言います。ソーメンは作り置きができないので 自分で茹でてもらうことにしました   そういうわけで 夕食作りはお休みしました

 

         

 

いよいよ「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン」の目玉公演、1つの弦楽四重奏団がベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲(16曲)を演奏する「ベートーヴェン・サイクル」が始まりました 今年はスペインを代表する「カザルス弦楽四重奏団」が7日から10日までの4日間、6公演の中で弦楽四重奏曲第1番から第16番までとHess34(ベートーヴェンのピアノ・ソナタ作品14-1の編曲)の計17曲を集中的に演奏します

全17曲の演奏順と組み合わせは次のようになっています なお、第1番~第6番(1800年:30歳)を前期、第7番~第11番(1805~14年:35~44歳)を中期、第12番~第16番(1825~26年:55~56歳)を後期と分類しています

①7日(木)19時 :第11番「セリオーソ」、第13番「大フーガ付」   (中期+後期)

②8日(金)19時 :第4番、第9番「ラズモフスキー第3番」、第14番    (前期+中期+後期)

③9日(土)13時 :第1番、Hess34、第8番「ラズモフスキー第2番」 (前期+前期+中期)

④9日(土)19時 :第5番、第10番「ハープ」、第12番        (前期+中期+後期)

⑤10日(日)13時 :第3番、第2番、第7番「ラズモフスキー第1番」   (前期+前期+中期)

⑥10日(日)19時 :第6番、第16番、第15番              (前期+後期+後期)

演奏順としては大雑把に言って①第1番から第16番まで番号順に演奏する方法、②前期+中期+後期を各1曲ずつ組み合わせる方法、③その他の方法と3通りありますが、カザルス弦楽四重奏団は②に近い③で、独自の演奏順を採用していると思われます   これについては、チェンバーミュージック・ガーデンの総合プログラム冊子では一切解説されていませんが、三つ折りチラシに各公演のタイトル的な記述(下の写真の赤字部分)があるので、これが参考になると思われます 

それによると、①7日19時:第11番、第13番=「濃密と拡がりの極致」、②8日19時:第4番、第9番、第14番=「ポピュラーな音楽素材の変容」、③9日13時:第1番、Hess34、第8番=「夜の情景~2つの調性をめぐって」、④9日19時:第5番、第10番、第12番=「変奏楽章に魅せられて」、⑤10日13時:第3番、第2番、第7番=「4人の理想的な対話」、⑥10日19時:第6番、第16番、第15番=「言葉がもたらすインスピレーション」となっています 私はこれをヒントに各公演で演奏される楽曲の共通点を探りながら演奏を楽しもうと思っています

 

     

 

というわけで、昨夕 第1弾「ベートーヴェン・サイクルⅠ~弦楽四重奏曲第11番”セリオーソ”、第13番”大フーガ付」を聴きました

カザルス弦楽四重奏団は1997年に創立の 今年結成21年目を迎えたスペインのクァルテットで、ロンドン国際弦楽四重奏コンクール、ブラームス国際コンクールで第1位を獲得しています 

1ヴァイオリン=ヴェラ・マルティナス・メーナー、第2ヴァイオリン=アベル・トマス、ヴィオラ=ジョナサン・ブラウン、チェロ=アルノー・トマスの4人から成ります ヴィオラのジョナサン・ブラウンだけがアメリカ・シカゴ生まれで、残り3人がスペイン生まれです

折しもこの日の夕刊各紙に「2日に就任したスペインのサンチェス新首相が6日 閣僚名簿を発表したが、17人中11人が女性という顔ぶれとなっている。新政権は7日、国王への報告を経て発足する」というニュースが載っていましたが、このクァルテットを率いる第1ヴァイオリンのヴェラ・マルティネス・メーナーさんも女性です

まず最初に 第1日目に第11番「セリオーソ」と第13番「大フーガ付」の組み合わせを持ってくる大胆さに驚きます しかし、冷静に考えてみると、演奏時間にして最短(第11番:20分弱)と最長(第13番:50分超)の作品の組み合わせであることが分かります それがタイトル的な言葉「濃密と拡がりの極致」の意味であるように思えます

 

     

 

会場は満席近い状況です 毎年ベートーヴェン・サイクルは人気プログラムです

1曲目は弦楽四重奏曲第11番ヘ短調作品95「セリオーソ」です 「セリオーソ」とは「真面目な、厳粛な」の意味です。1810年10月(ベートーヴェン40歳)にウィーンで完成し、親交のあったハンガリーの親友ニコラウス・ズメスカルに献呈されました。1814年5月、シュパンツィク四重奏団により初演されました

第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アレグレット・マ・ノン・トロッポ」、第3楽章「アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ・マ・セリオーソ」、第4楽章「ラルゲット・エスプレッシーヴォ」の4楽章から成ります 前述の通り、全16曲の弦楽四重奏曲の中で演奏時間が一番短い作品となっています

4人が登場し スタンバイします 左から第1ヴァイオリン=ヴェラ・マルティナス・メーナー、第2ヴァイオリン=アベル・トマス、チェロ=アルノー・トマス、ヴィオラ=ジョナサン・ブラウンという並びです。ヴェラさんはローズレッドを基調とし、下が黒のレースで覆ったシックな衣装です

第1ヴァイオリンの合図で第1楽章冒頭の緊迫した音楽が奏でられます 一気にベートーヴェンの厳しい世界に持っていかれます この緊張感をどう表現すればよいのか分かりません。第2楽章はチェロの穏やかなメロディーから始まる優しく美しい音楽です 間を置かずに演奏される第3楽章は「セリオーソ」の表示があり、厳粛で情熱のこもったスケルツォ的な音楽が奏でられます 第4楽章は第1ヴァイオリンを中心に情熱的な主題が演奏されますが、フィナーレは意外なほど明るい曲想で終結し「セリオーソ」との落差の大きさを感じます

この1曲を聴き終わった段階で、このクァルテットは相当レヴェルの高い演奏集団であることが分かります 4人のアンサンブルは完璧です


     

 

休憩後は弦楽四重奏曲第13番変ロ長調作品130「大フーガ付」です この曲は「第九」の初演の翌年=1825年8月に完成、1826年3月21日にシュパンツィク四重奏団により初演され、ニコライ・ゴリツィン公爵に献呈されました その後 第6楽章の「大フーガ」が難解である等の批判を受け、これを「作品133」として独立させ パトロンのルドルフ大公に献呈、そして1826年9月から11月までかけて新たに「アレグロ」から成る楽曲を作曲し第6楽章に当てました 改訂版は1827年4月22日にウィーンで初演されました なお、今回の「ベートーヴェン・サイクル」では演奏されない第6楽章「アレグロ」はベートーヴェンの完成した最後の作品となりました 実は、私はこの明るく軽い感じの「アレグロ」が大好きで、「大フーガ」よりも好きかも知れません

第1楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ」、第2楽章「プレスト」、第3楽章「アンダンテ・コン・モート・マ・ノン・トロッポ」、第4楽章「ドイツ舞曲風に:アレグロ・アッサイ」、第5楽章「カヴァティーナ、アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ」、第6楽章「フィナーレ:大フーガ」の6楽章から成ります 古典的な弦楽四重奏曲の枠を超えた6楽章から成るディヴェルティメント風の作品と言えるかもしれません 前述の通り、この作品は全16曲の弦楽四重奏曲の中で最も演奏時間の長い作品となっています

4人が再登場演奏に入りますが、ここで真ん中の2人がタブレットを見ながら演奏していることに気が付きました。今後 電子楽譜が増えていくんだろうな、と思いました 第1楽章が瞑想的で荘重な序奏で開始されます 第2楽章は第3楽章への橋渡し的な役割を持つ速いテンポによるスケルツォ風の短い曲です 第3楽章は民族舞曲風のメロディーも流れる穏やかな曲です 第4楽章は「ドイツ舞曲風に」とあるように、素朴なレントラーの音楽が幸せを感じさせます そして第5楽章はベートーヴェンの弦楽四重奏曲の緩徐楽章の中で最も有名な「カヴァティーナ」です 「カヴァティーナ」は歌謡的な短いアリアを意味しますが、天国的な、神への感謝を捧げているかのような抒情的で美しい曲です この楽章はベートーヴェン自身も気に入っていたようです 第1ヴァイオリンによる弱音の静謐感溢れる演奏が、背筋が寒くなるような素晴らしい演奏でした

いよいよ第6楽章「大フーガ」に入ります この楽章は24小節の「序奏」と第1フーガ、第2フーガ、第3フーガ、第2フーガの再現、第3フーガの再現、コーダの7つの部分から成ります

冒頭の「序奏」の厳しいまでの音楽に圧倒されます この緊張感に満ちた音楽を聴きながら思ったのは、「ベートーヴェンは当時、ほとんど耳が聴こえなかったはず どのようにしてこの曲を作曲したのだろうか? とくに前半部分を聴く限り、当時の聴衆にとっては不協和音そのものにしか聴こえなかったのではないか!」ということです 頭の中でイメージを膨らませてそれを音符として楽譜に落とし込んだのでしょうが、ベートーヴェンの頭の中で弦楽器は鳴っていたのだろうか、という疑問です 努力の天才ベートーヴェンだからこそ作曲が可能だったのではないか、と思います

カザルス弦楽四重奏団の演奏は、ため息の出るほど素晴らしいパフォーマンスでした これまで毎年のように「ベートーヴェン・サイクル」で色々な弦楽四重奏団の演奏を聴いてきましたが、今まで一番印象が強かったのはアメリカの「パシフィカ・クァルテット」でした 今回の「カザルス弦楽四重奏団」は彼らに並ぶ、あるいはこれからの演奏次第で、それを上回る結果を示してくれるような予感がします


     

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