人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

カザルス弦楽四重奏団「ベートーヴェン・サイクルⅣ~弦楽四重奏曲第5番、第10番、第12番」を聴く~サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン / 新たな「トイレに長蛇の列の法則」

2018年06月10日 07時55分06秒 | 日記

10日(日)その2.よい子はその1から見てね モコタロはそちらに出演しています

昨日午後7時からサントリーホール「ブルーローズ」で、カザルス弦楽四重奏団「ベートーヴェン・サイクルⅣ~弦楽四重奏曲第5番、第10番、第12番」を聴きました これはサントリーホール  チェンバーミュージック・ガーデンの一環として開かれたコンサートです

 

     

 

この日の共通テーマは「変奏楽章に魅せられて」です。これは分かり易いですね

1曲目は「弦楽四重奏曲第5番イ長調作品18-5」です  この曲は1798年から1800年にかけて作曲され、ベートーヴェンの後援者フランツ・ヨーゼフ・フォン・ロプコヴィツ侯爵に献呈された6つの弦楽四重奏曲の一つです 6曲は第3、第1、第2、第5、第6、第4番の順に作曲されたので、4番目の作品ということになります

第1楽章「アレグロ」、第2楽章「メヌエット」、第3楽章「アンダンテ・カンタービレ」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります この作品は同じ調性のモーツアルトの「弦楽四重奏曲第18番K.464」を手本にしたと言われています。ちなみにK.464は第1楽章「アレグロ」、第2楽章「メヌエット」、第3楽章「アンダンテ」、第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」となっており、極めて似通っています

初期の作品なので、第1ヴァイオリンはアベル・トマスが務めます この作品では主題と5つの変奏による第3楽章「アンダンテ」が素晴らしい演奏でした ベートーヴェンはこの作品で、弦楽四重奏曲では初めての試みとして変奏曲を取り入れましたが、この時からすでにベートーヴェンは変奏の名人だと思いました また、第4楽章ではジャジャジャジャーンの「運命の動機」っぽいリズムによる曲想が展開しますが、この曲の特徴と言えるでしょう


     

 

2曲目は弦楽四重奏第10番変ホ長調作品74「ハープ」です この曲は1809年にウィーンで作曲され、フランツ・ヨーゼフ・フォン・ロプコヴィツ侯爵に献呈されました 「ハープ」という愛称は第1楽章でたびたび現れる特徴的なピッツィカートの動機から付けられたものです

第1楽章「ポコ・アダージョ」、第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ」、第3楽章「プレスト」、第4楽章「アレグレット・コン・ヴァリアツィオー二」の4楽章から成ります

この曲は中期の作品なので、第1ヴァイオリンがヴェラ・マルティナス・メーナーに代わります 第1楽章が開始されますが、随所にハープの愛称の元になったピッツィカートがつま弾かれ流麗な音楽が進行します 第2楽章は冒頭 ヴェラさんのヴァイオリンが繊細に美しく響きます 第3楽章のプレストはスケルツォです。ここでもジャジャジャジャーンの「運命の動機」が激しく繰り返し演奏されます 切れ目なく演奏される第4楽章は主題と6つの変奏曲です 終楽章に変奏曲が置かれたのはこの第10番だけです 4人の演奏で聴くと、やっぱりベートーヴェンは変奏曲の名人だということが分かります

さて、1曲目の第5番と2曲目の第10番「ハープ」の両曲に「運命の動機」が出てきました 時系列からみると、まず「弦楽四重奏曲第5番作品18-5」が1800年に作曲され、次に「交響曲第5番ハ短調”運命”」が1807~08年に作曲され、そして弦楽四重奏曲第10番作品74「ハープ」が1809年に作曲されたという順番になります したがって、ベートーヴェンは「作品18-5」で使った動機を「運命交響曲」に生かし、その後、その動機を再び「作品74」に取り込んだということになります これだけでも、ベートーヴェンが一つの動機をいかに有効に活用したかが分かります

ここで20分の休憩に入りますが、男子トイレが長い列です 何年か前にこのブログで「ブルックナーの交響曲のコンサートでは男子トイレに長蛇の列が出来る」という”法則”を書きましたが、最近は多くの女性がブルックナーを聴くようになってきたようで、演奏者側でも、読響の第2ヴァイオリン首席の瀧村依里さんなどはブルックナーが好きだと公言しています その代わりというわけではありませんが、「ベートーヴェンの弦楽四重奏曲のコンサートでは男子トイレに長蛇の列が出来る」という”法則”が成り立つように思います この日も、会場をざっと見渡したところ7対3くらいの割合で男性層の方が多かったように思います。これは今に始まったことではありませんが、もっと女性層が増えてもいいように思います

 

     


休憩後の3曲目は「弦楽四重奏曲第12番変ホ長調作品127」です この曲はロシア貴族ガリツィン公爵の委嘱により1823年から24年にかけてウィーンで作曲されました 後期の作品の最初の曲で、「第15番作品132」「第13番作品130」とともに同公爵に献呈されました

第1楽章「マエストーソ~アレグロ」、第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・カンタービレ」、第3楽章「スケルツォ:ヴィヴァーチェ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ」の4楽章から成ります

第1ヴァイオリンのヴェラさんの合図で第1楽章が、深呼吸のような大きな動作により開始されます 第2楽章のアダージョは冒頭 ヴェラさんの静謐で美しい演奏から入り、ベートーヴェン得意の変奏に移りますが、ここではチェロを嗜んだガリツィン公爵も活躍できるように書かれた場面もあります   第3楽章の躍動感溢れる音楽を経て、第4楽章の流麗なメロディーで締めくくられます

カザルス弦楽四重奏団の演奏で ここまで11曲聴いてきたわけですが、一つの大きな特徴は、ヴェラさんが第1ヴァイオリンを務めた時の「アダージョ楽章」における静謐な演奏は特別な美しさがあるということです

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カザルス弦楽四重奏団「ベートーヴェン・サイクルⅢ~弦楽四重奏曲第1番、ヘ長調Hess34、第8番"ラズモフスキー第3番”」を聴く~サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン

2018年06月10日 00時20分26秒 | 日記

10日(日)その1.わが家に来てから今日で1347日目を迎え、史上初の米朝首脳会談の舞台となるシンガポールで、カクテルやハンバーガーなど 便乗の記念メニューが続々と生まれている というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      金髪トランプ+金正恩のダブル金で ダブルゴールドバーガー・テポドン乗せ は?

 

         

 

昨日、サントリーホール「ブルーローズ」で、午後1時からカザルス弦楽四重奏団「ベートーヴェン・サイクルⅢ~弦楽四重奏曲第1番ヘ長調、ヘ長調Hess34、第8番ホ短調」を、午後7時から「同サイクルⅣ~第5番、第10番、第12番」聴きました   これはサントリーホール  チェンバーミュージック・ガーデンの一環として開かれたコンサートです   ここでは、サイクルⅢ(弦楽四重奏曲第1番ヘ長調、ヘ長調Hess34、第8番ホ短調)について書きます

 

     

 

この日の演奏曲目の共通テーマは「夜の情景~2つの調性をめぐって」らしいのですが、さて解明できるかどうか

1曲目は「弦楽四重奏曲第1番ヘ長調作品18-1」です  1798年から1800年にかけて6曲まとめて作曲され、ベートーヴェンの後援者フランツ・ヨーゼフ・フォン・ロプコヴィツ侯爵に献呈された「作品18」の弦楽四重奏曲の一つです   第1番となっていますが、6曲の完成順は第3、第1、第2、第5、第6、第4の順なので2番目に書かれた曲ということになります  1799年に一旦完成されヴァイオリンの達者な友人カール・アメンダに贈られたのですが、その後、ベートーヴェンは改作したのです。この作品を第1番としたのはヴァイオリニスト、シュパンツィクの勧めによるものと言われています

この曲は第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アダージョ・アフェットゥオーソ・エド・アパッショナート」、第3楽章「スケルツォ:アレグロ・モルト」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります

初期の作品のため第1ヴァイオリンはアベル・トマスが務めます この曲の特徴は第2楽章です。この楽章についてベートーヴェンはアメンダに「ロメオとジュリエットの墓場の場面を考えて書いた」と語ったとされ、楽章のスケッチにフランス語で「最後の呼吸」と記したとされています 第1ヴァイオリンを中心に極めて感傷的で静謐な音楽が美しく響きます まさに「最後の呼吸」のようです。この辺のアンサンブルは見事です 続く第3楽章のスケルツォと第4楽章のアレグロは、一転して別世界となり、明るく力が漲る音楽が展開します 中盤では英雄交響曲の一部のメロディーが聴こえてきて面白いと思いました 交響曲第3番”英雄”はこの作品18-1のすぐ後、1803~04年にかけて作曲されています ベートーヴェンはこのメロディーを後の傑作交響曲に転用したのでしょう

 

     

 

2曲目は「弦楽四重奏曲ヘ長調Hess34」です これは作曲者による「ピアノ・ソナタ作品14-1」の編曲です ピアノ・ソナタ第9番と第10番から成る「作品14」は、1798~99年に作曲され ブラウン男爵夫人ヨゼフィ―ネに献呈されました。ベートーヴェンはソナタ第9番を1801~02年に弦楽四重奏曲に編曲、1802年に出版されました 原曲は「ホ長調」ですが、チェロの最低音の関係で半音高い「ヘ長調」に移調されているとのことです

第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「アレグロ」の3楽章から成ります 

プログラム・ノートに作品14は「室内楽的な性格を有している」と書かれているのですが、予習としてピアノ・ソロで聴いた時はそんな感じはしませんでした しかし、第1楽章冒頭の愛らしい主題から曲が展開するにつれ、そのことが納得できました


     


休憩後の3曲目は弦楽四重奏曲第8番ホ短調作品59-2「ラズモフスキー第2番」です この曲は、ウィーン駐在ロシア大使アンドレイ・ラズモフスキー伯爵の依頼により1805年から06年にかけて作曲した3曲の弦楽四重奏曲の2番目の曲ですが、3曲中唯一の短調の作品です

第1楽章「アレグロ」、第2楽章「モルト・アダージョ」、第3楽章「アレグレット」、第4楽章「フィナーレ:プレスト」の4楽章から成ります

中期の作品のため、第1ヴァイオリンはヴェラ・マルティナス・メーナーに代わります 彼女の合図で第1楽章が力強い2つの和音で開始されます これで一気にラズモフスキーの世界に引き込みます 第2楽章はベートーヴェン自身により「この楽章は深い感情をもって演奏される」と記されていますが、4人の演奏はまさにそれを体現するかのような深みのある叙情的な演奏でした

第3楽章のアレグレットはスケルツォで、中間部では献呈者ラズモフスキー伯爵の故郷=ロシアの民謡が主題として使用されていますが、4人はフーガによって楽し気に演奏します 聴いている方も楽しくなってきます 第4楽章のプレストはワクワク弾むような行進曲が奏でられ、4人の丁々発止のやり取りの中で明るく力強く曲を閉じます

この日は、残念ながら共通テーマの「夜の情景~2つの調性をめぐって」の「夜の情景」が何を意味するのか解明できませんでしたが、普通のベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会では聴くことの出来ない「ピアノ・ソナタ第9番」の編曲による「Hess34」を聴くことが出来て良かったと思います

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする