人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

工藤重典フルートカルテットのモーツアルト「フルート四重奏曲全曲演奏会」を聴く~工藤重典✕堀米ゆず子✕篠崎友美✕山崎伸子による渾身の演奏~浜離宮朝日ホール

2018年10月03日 07時22分16秒 | 日記

3日(水)。わが家に来てから今日で1461日目を迎え、トランプ米大統領は1日の記者会見で、自動車に追加関税を発動するとの「脅し」が、日本などとの新たな2国間協議の開始につながったとの認識を示した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      安倍首相は「トランプとはお友だち」と楽観してると 後でしっぺ返しにあうぜ!

 

  昨日は娘も私も外食だったので夕食作りはお休みしました  

 

         

 

昨夕、浜離宮朝日ホールで「工藤重典フルートカルテット W.A.モーツアルト フルート四重奏曲全曲演奏会」を聴きました プログラムは、モーツアルトのフルート四重奏曲①第1番ニ長調K.285 、②第2番ト長調K.285a、③第3番ハ長調K.Anh.171/285b、④第4番イ長調K.298、⑤ヘ長調K.370 (原曲:オーボエ四重奏曲K.370)です 演奏は、フルート=工藤重典、ヴァイオリン=堀米ゆず子、ヴィオラ=篠崎友美(新日本フィル首席)、チェロ=山崎伸子です

 

     

 

ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)は1777年9月、職探しのためパリへ旅立ちました その途中 マンハイムで長期間滞在しましたが、現地の宮廷オーケストラのフルート奏者ヨハン・バプティスト・ヴェンドリングと親交を結びました   モーツアルトは彼からオランダ東インド会社に勤務する裕福な医師フェルディナント・ドゥジャンを紹介されます。音楽愛好家でフルートも嗜むドゥジャンはモーツアルトに「フルートのための小さくて軽く短い協奏曲を3曲と四重奏曲を数曲 作曲するよう」注文しました その結果、モーツアルトが作ったのが「フルート協奏曲第1番」、「同第2番」(オーボエ協奏曲の編曲版)、フルート四重奏曲3曲でした しかし、約束より作品数が足りないということで報酬は半分以下に減らされてしまいました この日演奏されるのは、そのフルート四重奏曲(3曲)を含む5曲です

演奏の順番はプログラム前半に比較的馴染みの薄い「第2番K.285a」と「第4番K.298」、そして「ト長調K.370」(オーボエ四重奏曲の編曲版)を演奏し、後半に演奏機会の多い「第3番K.Anh.171」と「第1番K.285」を演奏するというプログラミングです 同じ種類の音楽が続くので 最後に一番有名な作品を取っておくという苦肉の策と言えるでしょう

自席は1階4列5番、左ブロック右から2つ目です。会場は7割方埋まっている感じでしょうか

4人の演奏者が登場し配置に着きます。左から蝶ネクタイが似合う工藤さん、キンキラ金のさりげなくない派手な衣装の堀米さん、黒の上に青系統の衣装をまとった山崎さん、上が黒、下がカラフルな幾何学模様のスタイリッシュな衣装の篠崎さんという並びです

曲目の「第2番ト長調K.285a」は1778年1月か2月にマンハイムで作曲されたと考えられていますが、自筆譜が存在せず真偽について疑問が持たれています 第1楽章「アンダンテ」、第2楽章「テンポ・ディ・メヌエット」の2楽章から成ります

2曲目の「第4番イ長調K.298」は1786年の秋から翌年の初め頃にかけてウィーンで作曲されたと考えられています 第1楽章「アンダンテ」、第2楽章「メヌエット」、第3楽章「ロンド:アレグレット・グラツィオーソ」の3楽章から成ります

3曲目の「フルート四重奏曲ト長調K.370」は、モーツアルトのオーボエ四重奏曲へ長調K.370」を、彼の死から10年後の1801年に原曲より2度高いト長調に編曲し出版された作品(編曲者不詳)です オリジナルの「オーボエ四重奏曲K.370」はモーツアルトが1780年11月から1781年3月までミュンヘンに滞在していた際、1781年初めに当時の名オーボエ奏者フルードリム・ラムのために書かれました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「ロンド:アレグロ」の3楽章から成ります

前半の3曲を聴いた限りでは、あくまでも主役である工藤氏のフルートを弦楽の3人がでしゃばることなくしっかりと支えることに徹したバランスの取れた演奏でした   中でも一番モーツアルトを演奏する喜びを体現していたのはチェロの山崎さんでした ヴィオラの篠崎さんも顔には出さないけれど悦びが音に現われていました 残念ながら堀米さんのヴァイオリンは絶好調からはやや遠いところにありました

 

     

 

プログラム後半の1曲目は「第3番ハ長調K.Anh.171/285b」です この曲はドゥジャンのために作曲した3曲のうちの1曲と考えられていますが、1782年頃にウィーンで作曲されたという説もあります 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンティーノ」の2楽章から成ります

明るくリズミカルな第1楽章が終わり、第2楽章の心地良い音楽を聴いていて、「待てよ、この曲どこかで聴いたことがあるぞ・・・」と思いました 容量の限られた私の脳にグーグルの検索をかけてやっと出て来たのは「セレナード第10番変ロ長調『グランパルティータ』K.361」の第6楽章と同じメロディーだということでした 「グランパルティータ」は「13楽器のセレナード」とも呼ばれています。楽器編成は、オーボエ2、クラリネット2、バセットホルン2、ホルン4、ファゴット2、コントラバス1というもので、フルートは入っていません モーツアルト自身の作品ですから、どの曲をどの曲に流用しようが自由ですが、それにしても楽器編成が違うだけでメロディーは一緒というのは、「フルート協奏曲第2番ニ長調K.314」と「オーボエ協奏曲ハ長調K.271k」が同じ曲であるのと同様、モーツアルトはよほど切羽詰まって作品を完成させる必要に迫られていたのでしょう

最後は一番有名で演奏する機会が最も多い「第1番ニ長調K.285」です この曲は1777年12月25日にマンハイムで完成されました。第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「ロンド」の3楽章から成ります

第1楽章は冒頭から音楽が青空を翔るようです 他のフルート四重奏曲に比べて個々の楽器のメロディーがくっきりと浮き上がります

小林秀雄は『モオツアルト』の中で、モーツアルトの弦楽五重奏曲第4番ト短調K.516の冒頭部分を指して「モオツアルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。涙の裡に玩弄するには美しすぎる」と表現していますが、この言葉はアンリ・ゲオンの『モーツアルトとの散歩』からヒントを得ていると言われています 著作の中でゲオンは「フルート四重奏曲第1番K.285」の第1楽章について次のように表現しています

「第1楽章(アレグロ)は1787年の無二の傑作 弦楽五重奏曲ト短調(K.516)の冒頭部アレグロの 最高の力感のうちに見い出される新しい音を 時として響かせている それは ある種の表現しがたい苦悩で、流れゆく悲しさ、言い換えれば、爽快な悲しさとも言えるテンポの速さと対照をなしている。この晴れやかな陰鬱という点からみれば、それはモーツアルトにしか存在せず、思うに、彼のアダージョやアンダンテなどのうちいくつかをよぎる透明な告白よりもずっと特殊なものである

この捉え方からすれば、第1楽章はただ単にあっけらかんとした明るい演奏ではいけないことになりそうです しかし、この日の4人の演奏のように、素直に明るく喜びに満ちた表現で良いように思います

むしろ、この曲で聴くべきところは第2楽章のアダージョの悲しさから第3楽章の喜びへの急変です 弦楽器のピッツィカートに乗せて憂いに満ちたメロディーを奏でていたフルートが、一瞬のうちに歓喜の世界を歌い上げます

この部分に言及して「皆がまだ泣いているのに、モーツアルトはもう笑っている」と表現したのは、やはり小林秀雄だったでしょうか 貧相な脳に検索にかけてもなかなか出てきません この部分における4人の演奏は適度に抑制が効いていて素晴らしかったです

大きな拍手の中、主役の工藤氏がマイクを持って登場し

「フルート四重奏曲全曲を一度のコンサートで演奏する機会は滅多にありません 今回は3人の素晴らしい演奏家も揃ったのでチャレンジすることにしました フルート四重奏曲ばかりで飽きてしまうんじゃないかと心配していたのですが、何とか最後まで演奏し切りました アンコールに第2番のメヌエットを演奏します

とあいさつし、第2番の第2楽章「テンポ・ディ・メヌエット」を演奏して大きな拍手の中 コンサートを締めくくりました モーツアルト好きにはたまらない演奏会でした。今度は誰かヴァイオリン協奏曲全曲演奏会でもやってくれませんかねえ

 

     

コメント
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