12日(金)。昨日の朝刊各紙は、元警察官僚で 初代内閣安全保障室長を務めた佐々淳行氏が10日、老衰のため都内の病院で死去(享年87歳)したというニュースを報道していました 佐々氏というと、私は1972年2月の「あさま山荘事件」を思い出します。この事件は、1972年2月19日から同28日にかけて、連合赤軍のメンバー5人が軽井沢にある河合楽器の保養所「あさま山荘」に侵入し当時31歳の山荘管理人の妻を人質にして 銃を持って籠城した事件です
2月28日の機動隊の突入時にはNHK・民放5社が犯人連行の瞬間まで断続的に生中継していたという事実が、この出来事が歴史的な事件だったことを物語っています この時 人質救出作戦の指揮をとったのが佐々淳行氏でした
この時、私はNHK教育テレビでN響のコンサートを観ていました 森正さんの指揮によりモーツアルトの「交響曲第25番ト短調K.183」の第1楽章が演奏されていました すると、急に画面が切り替わり、クレーンからぶら下げられた巨大な鉄球が山荘に打ちつけられるシーンが映し出されたのです これは当時 大学生だった私にとって強烈でした 目的の良し悪しは別として、若者たちが権力を相手に命を懸けて戦っている。それをテレビで観ているだけの自分はいったい何なのだろうか? こんなことをしていていいのか と自問しました そんなことを考えながら”実況中継”を見ていると、画面が切り替わり、再びNHKホールでの演奏の模様が映し出されました。モーツアルトは第4楽章に移っていました
あの日あの時のモーツアルト「ト短調交響曲K.183」の切羽詰まったような音楽は、山荘に籠城した5人の若者の悲劇の運命を暗示していたようで、今でも忘れることができません
ということで、わが家に来てから今日で1470日目を迎え、全国から魚介や青果が集まる東京都の中央卸市場「豊洲市場」が11日開場し 初セリが行われた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
移転決定から17年経ってやっとオープンした 来年の今頃は何と言っているだろ?
昨日、夕食に「オクラの豚バラ巻き」と「生野菜サラダ」を作りました 「オクラ~」は大原千鶴先生のレシピです。オクラと長芋を豚バラ肉で巻いて焼きます。焼いている途中で長芋がつるりと外に出てしまうのもあり焦りましたが、なんとか押し込みました
昨日、上野の東京藝大奏楽堂で「バーンスタインのアメリカ」公演を聴きました これは東京藝大の演奏藝術センター企画による「作曲家・バーンスタイン」シリーズの第3回目の公演です。プログラム前半はレクチャー「バーンスタインと/のアメリカ」で講師は藝大音楽学部楽理科教授・福中冬子さん。後半はコンサートで、プログラムはバーンスタインの①「キャンディード」序曲、②「キャンディード」より「美しく着飾って」、③「ウエスト・サイド・ストーリー」より「シンフォニック・ダンス」です 出演は、ソプラノ=西口彰子、管弦楽=藝大シンフォニーオーケストラ、指揮=藝大指揮科教授・山下一史です
全席自由です。1階13列12番、左ブロック右通路側を押さえました 夜の公演ということでか、聴衆はいつもよりは少ないようです。それでも7割以上は入っている感じです
最初に東京藝大音楽学部楽理科教授・福中冬子さんがステージに登場し、映像を交えながら「バーンスタインと/のアメリカ」と題してレクチャーをしました
いきなり「日本国憲法前文」が出てきたのにはビックリしました 「風が吹けば桶屋が儲かる」ではありませんが、福中さんの論理展開は概ね次のようなものです
「日本国憲法前文」はGHQがもたらした憲法草案に基づくが、それはアメリカの「独立宣言」や「リンカーン大統領のゲティスバーグ演説(人民の人民による人民のための政治)」の影響を受けている アメリカの作曲家コープランドは、リンカーンの民主主義精神に触発され「リンカーンの肖像」を作曲した バーンスタインは19歳の時の1937年にコープランドに出会って以来 いろいろな面で彼の影響を受けることになる
これで「日本国憲法前文」とバーンスタインが結びついたわけです 福中さんはさらに、1949年にニューヨークで親ソ組織の主催による「世界平和会議」が開かれた際、バーンスタインはコープランドとともに参加(ソ連からはショスタコーヴィチが参加)しているが、こうしたことから、彼はFBIから親共産主義活動を行ったとして1953年に一時的にパスポートを没収されるに至っている、と説明します しかし、結局のところバーンスタインの音楽を含む全芸術活動は「自由な人間への讃歌」であり、彼はそのための啓もう活動を行っていたのではないか、と指摘しました
福中さんの話は初めて耳にすることばかりで とても勉強になりました
休憩後はコンサートです 藝大音楽学部2~4年生の弦・管・打楽器専攻生を主体とする「藝大シンフォニーオーケストラ」のメンバーがステージに登場し配置に着きます 弦は左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという配置をとります
1曲目のバーンスタインの喜歌劇「キャンディード」はフランスのヴォルテールが18世紀に書いた小説「カンディード」が原作です
今年4月に藝大指揮科教授に就任した山下一史氏の指揮で「序曲」の演奏に入りますが、これはもう、ブラスと打楽器を中心に胸のすくようなスカッとする演奏でした
2曲目の「キャンディード」より「美しく着飾って」はヒロインのクネゴンデが歌うアリアです 彼女は男爵家の令嬢で キャンディードを愛していましたが、今や高級娼婦としてユダヤ人の大富豪とカトリックの大司教に仕える身となっています アリアは惨めな境遇を嘆きながらも、煌めくネックレスやドレスを前にして、快楽に浸る喜びを歌い上げるものです
オレンジ系の華やかな衣装の東京藝大出身、西口彰子さんが登場、山下一史氏の指揮で歌に入ります 西口さんはヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ「こうもり」のロザリンデのアリアに似た「美しく着飾って」をコロラトゥーラを交えて感情表現豊かに歌い上げ 満場の拍手を受けました
プログラムの最後は「ウエスト・サイド・ストーリー」より「シンフォニック・ダンス」です ニューヨークを舞台とするミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」は1957年に初演されましたが、良く知られているようにシェイクスピアの戯曲「ロメオとジュリエット」を基にしています 「シンフォニック・ダンス」はミュージカルから9曲を選んでメドレーにしたものです
曲は プロローグ ~ いつかどこかで ~ スケルツォ ~ マンボ ~ チャチャ ~出会いのシーン ~ クール フーガ ~ ランブル ~ フィナーレから成ります まず、「プロローグ」のジャズのリズムが素晴らしい ラテンのリズムによる「マンボ」は熱い演奏で 聴いている方も熱くなります 四人のコントラバス奏者はどさくさに紛れて楽器をクルッと回転させていました さしずめ四輪駆動のコントラ”バス”といったところでしょうか 格闘場面の「ランブル」で演奏は絶頂に達します 気持ちのいい演奏でした
今回のような「レクチャー+コンサート」は東京藝大らしい素晴らしい企画だと思います これからも新しい企画を期待したいと思います