21日(日)。わが家に来てから今日で1479日目を迎え、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と欧州宇宙機関(ESA)は19日午後、米国以外で初の水星探査機2基を南米フランス領ギアナのクール―宇宙基地からアリアン5ロケットで打ち上げ 成功した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
暗いニュースばかりで気が滅入る中 彗星のごとく現れた水星のニュースはいいね
昨夕、サントリーホールで東京交響楽団の第664回定期演奏会を聴きました プログラムは①ワーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」、②ベルリオーズ「幻想交響曲作品14」です ①のメゾ・ソプラノ独唱はエドナ・プロホニク、指揮はダン・エッティンガ-です
ダン・エッティンガ-はイスラエル生まれ。2015年シーズンからシュトゥットガルト・フィルの音楽監督を務めています。日本では東京フィルの常任指揮者(現・桂冠指揮者)を務め、新国立オペラでは「ファルスタッフ」「イドメネオ」「ニーベルングの指環・四部作」「こうもり」で東京フィルと、2016年の「サロメ」で東響とオーケストラ・ピットに入っています
メゾ・ソプラノのエドナ・プロホニクはイスラエル生まれ。ドイツを中心に世界の歌劇場でワーグナー等を歌い高い評価を得ています
オケはいつもの東響の並びで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成。コンマスは水谷晃です
1曲目のワーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」は、リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)が1857年から58年にかけて マティルデ・ヴェーゼンドンクの5つの詩に作曲したもので、ヴェーゼンドンク夫人との激しい恋愛から生まれた作品です 当時ワーグナーは楽劇「ジークフリート」を作曲中だったにも関わらず、それを中断し「トリスタンとイゾルデ」の創作に没頭します。その過程で生まれたのが「ヴェーゼンドンク歌曲集~女声のための5つの詩」でした 第1曲「天使」、第2曲「止まれ」、第3曲「温室にて」、第4曲「悩み」、第5曲「夢」の5曲からなります
若き日のダニエル・バレンボイムを彷彿とさせるダン・エッティンガ-が、メゾ・ソプラノのエドナ・プロホニクとともに登場し配置に着きます エッティンガ-の指揮で第1曲「天使」の演奏に入りますが、プロホニクは深みのある豊かな声で歌い、エッティンガ-✕東響がぴったりと寄り添います 第3曲「温室にて」の中盤ではヴィオラのソロが聴かれますが、首席の青木篤子の演奏はなかなか聴かせてくれました
最後の第5曲「夢」が静かに終わるや否や、2階席後方からバンという大きな音が聞こえました 何かを落としたか倒したかといった音です。このブログで何度も書いていますが、クラシック音楽を生で聴く醍醐味は最後の一音が鳴り終わった直後の一瞬のしじまをかみしめるところにあります そこに演奏のすべてが凝縮されているといっても過言ではありません。その一番肝心なところでバンとやられては感動的な演奏が台無しです。指揮者とオケ、そして他の聴衆に対して大変失礼なことです チラシの束など 落ちて音の出る物は膝の上に載せない、倒れそうな物は最初から床に寝かせておく ー これはコンサートを聴くうえで常識です。心してほしいと思います
満場の拍手とブラボーにエドナ・プロホニク✕エッティンガ-✕東響はリヒャルト・シュトラウス「8つの歌」から「献呈」を、そしてシューベルト「音楽に寄せて」をアンコールに歌いさらに大きな拍手とブラボーを浴びました 私の考えでは、「ヴェーゼンドンク歌曲集」が20数分と短いので、最初からこの2曲は”闇プロブラム”に含めていたのではないかと察します 両曲とも素晴らしかったのは言うまでもありません
プログラム後半はベルリオーズ「幻想交響曲 作品14」です この曲はエクトル・ベルリオーズ(1803‐1869)が1830年に作曲した作品です この作品は「ある芸術家の生涯におけるエピソード」という副題を持っています ベルリオーズはイギリスのシェイクスピア劇団の女優ハリエット・スミッソンの舞台を観て一目惚れしたものの、片思いに終わったという経験を この曲に込めたのです 曲のストーリーは「若い芸術家が失恋して阿片を飲んで自殺を図るが、それが致死量に達しなかったため、奇怪な幻想を夢見る 夢の中で、芸術家は愛する女性を殺して処刑され、魔女の饗宴に身を置く。その女性は一つの旋律となって繰り返し現れる」というものです
ベートーヴェンの「第九交響曲」が初演された1824年からわずか6年後に作曲された「幻想交響曲」は、イデー・フィクス(固定観念)の使用による標題音楽の手法を試み、リストの交響詩やワーグナーの楽劇への道をひらいた画期的な作品と言われています
この曲は第1楽章「夢、情熱」、第2楽章「舞踏会」、第3楽章「野の風景」、第4楽章「断頭台への行進」、第5楽章「魔女の夜宴の夢」の5楽章からなります
ステージを見ると、ヴァイオリン・セクションとヴィオラ・セクションの手前(客席側)にハープが2台ずつ計4台置かれています こういう配置を見るのは初めてです。しかし、ハープの出番は第2楽章なので演奏者は不在です。また、最初 打楽器はティンパニ奏者だけで、金管楽器も限られています 他の打楽器や金管楽器群は第3楽章の前に加わります
この日の演奏では、オーボエの荒木奏美、フルートの甲藤さち、クラリネットの吉野亜希菜、ファゴットの福士マリ子、そして第3楽章ではコールアングレの篠崎隆ら木管楽器群の演奏が冴えていたほか、金管楽器群もパワー全開でした この曲で好きなのは第2楽章「舞踏会」のハープ4台と弦楽5部の演奏と、第4楽章「断頭台への行進」のファゴット4本の合奏ですが、この日の演奏は大満足でした
ところで、第3楽章「野の風景」で舞台上のコールアングレと舞台裏のオーボエが会話を交わす場面がありますが、裏のオーボエはどこで吹いていたのでしょう? ステージに極めて近いところにように思えましたが、当然ながら荒木奏美さんは吹いていませんでした
いい気分で第4楽章「断頭台への行進」を聴き終わって、一息つこうと思った瞬間、またしても2階席から 今度は大きな声でブラボーがかかりました このあと第5楽章が残されていることは事前にプログラムを見ていれば分かるはずです ブラボーをかけるほどの度胸がある人なら、コンサートは初めてではないと推測します。プログラムを見ることぐらい朝飯前でしょう ダン・エッティンガ-は大人の対応で、すぐに第5楽章に移りましたが、演奏者の集中力を削ぐ恐れのある このような行為は 指揮者やオケの楽員に対して大変失礼だし、他の聴衆は「シラケ鳥飛んでいく東の空へ」です 「演奏に感動したからブラボーをかけたのだ」という言い訳は通用しません。演奏はまだ終わっていないのですから はっきり言いますが、演奏を聴く心構えが出来ていません 次からはプログラムを見て 顔を洗って出直してきてほしいと思います
さて この日のダン・エッティンガ-による「幻想交響曲」は、曲のグロテスクな面を前面に出したメリハリのある演奏でした 個人的には、オペラを振った方が もっと良いと思います
【訂正・補筆】
東響会員さんからコールアングレ奏者は最上峰行さんではなかったかとのご指摘がありました。確認の結果その通りでしたので、東響会員さんにお礼を申し上げるとともに、ここに訂正させていただきます