人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

許光俊著「オペラ入門」を読む ~ 「最高の入門書にして究極のオペラ本」というキャッチコピーにウソはない!

2020年01月03日 07時27分28秒 | 日記

3日(金)。昨日は埼玉県S市の実家に年始の挨拶に行ってきました 娘は仕事始めで行けませんでしたが、息子はまだ正月休みなので同行しました 独身の姪や、甥の子どもたちにお年玉をあげてすっからかんになりました。トホホ

ということで、わが家に来てから今日で1922日目を迎え、ビデオリサーチによると、昨年大みそかのNHK総合「第70回紅白歌合戦」の平均視聴率が前半34.7%、後半37.3%で過去最低だったことが2日分かった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                    tora家では20年以上も紅白歌合戦を観てないらしい   流行歌には興味ないようだ

 

         

 

許光俊著「オペラ入門」(講談社現代新書)を読み終わりました 許光俊は1965年東京生まれ。慶應義塾大学卒、東京都立大学大学院修了。現在、慶應義塾大学法学部教授。著書に「世界最高のクラシック」「世界最高のピアニスト」(ともに光文社新書)、「クラシックを聴け!」(ポプラ文庫)などがある

 

     

 

結論から先に書きます 世に「オペラ入門」と題する書籍は山ほどありますが、この本は決定版と言っても良いと思います

オペラの歴史、作曲家と作品、その時代背景などが分かり易い言葉で書かれています 単に事実を紹介するにとどまらず、著者独自の鋭い視点からオペラ作品を、あるいはヒーローやヒロインを解釈する姿勢も見られ、それが説得力を持っています

本書は次の25章から構成されています

1.オペラはどこでどう生まれたのか

2.リュリとラモー ~ 宮殿で栄えるオペラ

3.ヘンデル ~ 歌はロンドンで花開く

4.モーツアルト ~ 革命のオペラ

5.ベートーヴェン ~ 天才にもできないことがある

6.ウェーバー ~ 天性の劇場人

7.フランスのグランド・オペラ

8.ワーグナ― ~ 巨大な、あまりにも巨大な

9.オペレッタ ~ あえて軽薄に

10.ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティ~イタリアの声の愉しみ

11.ヴェルディ ~ 歌劇の「王様」

12、「カルメン」~ 奇蹟の作品

13、「ペレアスとメリザンド」~ フランス・オペラの最高峰

14.チャイコフスキーとムソルグスキー ~ 北国ロシアで夢見られたオペラ

15.東欧のオペラ ~ 独特の味わい

16.プッチーニ ~ より繊細に、よりモダンに

17.リヒャルト・シュトラウス ~ 巨大なワーグナーの後で

18.ベルク~慈悲の大家

19.ショスタコーヴィチ ~ 20世紀ソ連のオペラ

20.ストラヴィンスキー ~ アメリカで、英語で

21.オペラでないから「三文オペラ」

22.ミュージカルとガーシュイン

23.ブリテン ~ 苦い味わい

24.グラス ~ ミニマル音楽としてのオペラ

25.アダムス ~ 核の時代にオペラは可能か

冒頭「著者独自の鋭い視点からオペラ作品を、あるいはヒーローやヒロインを解釈する姿勢も見られ、それが説得力を持っています」と書きましたが、その一例を挙げてみます

「16.プッチーニ ~ より繊細に、よりモダンに」の中で、筆者は「トスカ」第1幕フィナーレのシーンを次のように書いています

「やがて、フランス軍を打ち破ったというニュースが伝えられます。人々は大喜び、神への感謝を表現するため『テ・デウム』が演奏されることになります 私たちは神であるあなたを讃えます、と歌う壮麗な宗教音楽です。『トスカ』のもっとも独創的なシーンはここです パイプオルガンが鳴り響き、人々は祈り始めます。本来は、神を褒めたたえる敬虔な気持ちで歌われる音楽のはず。ところが、そのときスカルピアが歌うのは、まったく真逆の歌詞で、何が何でもトスカを抱いてやると激しい肉欲をあらわにするのです 神への清らかな賛歌と、おぞましい情欲という、これ以上は考えられないくらい激しいコントラストが作られています たとえば、『君が代』の旋律で下品な歌詞を歌ったらどうか。罰当たりな内容を念仏のように唱えたらどうか。そのような行為はひんしゅくを買い、悪趣味と看做されるに違いありません。しかし、あえてプッチーニはそんなシーンを作り出したのです。なぜか? スカルピアは、外面的には信心深い立派な人物です。でも、心の中はどす黒く汚れています。その恐ろしい落差が表現されているのです これこそ、音楽なしの演劇では表現できない、また文字だけの小説でも表現できない、オペラならではの表現です

私は、このシーンが大好きで、聴くたびに感動を覚えますが、筆者のこの文章を読んで、あらためて音楽作りに対するプッチーニの深い思考を認識しました

さて、本書で筆者が一番主張したいことは何か? というと、「オペラはヨーロッパのオペラ劇場で観なさい」ということです。筆者は次のように書いています

「少し前、ロンドンで高い評価を得ている日本料理屋で地元の魚の刺身を食べてみて おおいに納得しました 新鮮ではありました。でも美味しくなかったのです ヨーロッパで魚の生食が広まらなかったのは、ここの魚は刺身向きではないからだ、と。オペラを生み、育てたのはヨーロッパです。ですから、オペラはヨーロッパで観ないといけないのです 今ほど海外旅行が簡単な時代はありません。劇場のチケットはインターネットで買えますし、飛行機もホテルも、お手頃なものから贅沢なものまで、いろいろ探せます。休日も増えましたし、有給休暇も取りやすくなってきています。今の時代を生きる特権は、旅行をおいてほかにないとすら私は思っています。ですので、本書を読まれた方は、ぜひ本場でオペラをご覧ください 私が言いたいことはひたすらそれに尽きます。それをしないでオペラを語っても、生身の女性を知らないで女性論を語る未経験な青年のたわごとと変わるところがありません。ただちに、今が一番いいことは間違いありませんが、そうでなくても、いつか行くつもりになってください

お説その通りです 本場に行かなければ分からないことは多々あるでしょう。しかし、現実には「先立つものは金」です せめて、いつか行くつもりでいることにしましょう

最後に、許光俊氏によるクラシック音楽の入門書「クラシックを聴け!」(ポプラ文庫)をご紹介しておきます この本も クラシック音楽の聴き方がわかり易い言葉で具体的に書かれています 併せてお薦めしておきます

 

     

コメント
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