人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラでプッチーニ「ラ・ボエーム」を観る ~ ロドルフォのマッテオ・リッピ、ミミのニーノ・マチャイゼ、ムゼッタの辻井亜季穂にブラボー!

2020年01月25日 09時53分33秒 | 日記

25日(土)その2.よい子は「その1」も見てね。モコタロはそちらに出演しています

昨夕、新国立劇場「オペラパレス」でプッチーニの歌劇「ラ・ボエーム」を観ました キャストは ミミ=ニーノ・マチャイゼ、ロドルフォ=マッテオ・リッピ、マルチェッロ=マリオ・カッシ、ムゼッタ=辻井亜季穂、ショナール=森口賢二、コッリ―ネ=松位浩、ベノア=鹿野由之、アルチンドロ=晴雅彦、パルピニョール=寺田宗永、合唱=新国立劇場合唱団、児童合唱=TOKYO  FM少年合唱団、管弦楽=東京交響楽団、指揮=パオロ・カリニャー二、演出=粟國淳です

 

     

 

舞台はクリスマス・イヴのパリ。若く貧しい芸術家4人が住む屋根裏部屋で詩人ロドルフォが一人で詩を書いていると、同じ建物に住むお針子ミミがロウソクの火をもらいに訪ねてくる。二人はたちまち恋に落ちる。画家マルチェッロも元恋人ムゼッタとよりを戻し、彼らは恋を謳歌する。2月の雪の日、ロドルフォは貧乏な自分の力では胸を患うミミを救うことはできないと考え痛恨の別れを決意する。その数カ月後、ミミが瀕死の状態で屋根裏部屋に運び込まれ、愛するロドルフォの傍らで息を引き取る

 

     

 

私が新国立劇場で粟國淳の演出で「ラ・ボエーム」を観るのは2003年4月、2004年9月、2008年1月、2012年1月、2016年11月に次いで、今回が6回目です これほどのロングランを続ける演出には、それなりの理由があります 一番の見ものは第2幕のクリスマス・イヴで賑わうカルチェ・ラタンのカフェ・モミュスのシーンです 人々の背景の建物があちこちに動きます。スペクタクルで圧巻の演出です これはコンピュータ制御、ではなく、人の手によって動かされているのです

ところで、プログラム冊子に音楽ジャーナリストの井内美香さんが「初演までの紆余曲折」という論考を寄せていますが、その中に次のような記述がありました

「『ラ・ボエーム』は各幕に『幕 atto』という呼称ではなく『絵 quadro』という呼び方が採用されており、それはそれぞれの幕が主人公たちの生活の一部を切り取ったものだ、という意味を持っている それだけにこの作品においては音楽によって各幕に正しい色彩を与えることが重要だったのだ

これを読んで、あらためて曲目解説を注意深く読んでみたら、次のように書かれていました

第1幕 屋根裏部屋で(In soffitta)、第2幕 カルチェラタンにて(Al Qualtiere Latino)、第3幕 アンフェール関門(La Barriera d' Enfer)、第4幕 屋根裏部屋で(In soffitta)

そうだったんですね。初めて理解しました

さて、このオペラの聴きどころはたくさんあります 第1幕では暗闇の中でミミの手を握って歌うロドルフォの「冷たい手を」、それに続いてミミが歌う「私の名はミミ」、第2幕でムゼッタが元恋人の気を引こうと歌う「私が独りで街を行くと」、第3幕のフィナーレでロドルフォとミミが歌う「花の季節に別れましょう」・・・・挙げていったらキリがありません 今回あらためて「プッチーニは凄いな」と思ったのは、第3幕のフィナーレの、マルチェッロとムゼッタが痴話げんかをしている傍らで、ロドルフォとミミが辛い別れの歌を歌うシーンです まったく違う心象風景を同時進行で歌わせてしまうプッチーニの手腕には脱帽です

今回の歌手陣で最も印象に残ったのはロドルフォを歌ったマッテオ・リッピです ジェノヴァ生まれの若手ですが、ミミを歌って一世を風靡したミレッラ・フレー二に師事し、2013年トーティ・ダル・モンテ国際コンクールで優勝、イタリアを中心に頭角を現しています 輝くテノールで、声が良く伸びます。演技力も申し分ありません

ミミを歌ったニーノ・マチャイゼはジョージア出身のソプラノです ミラノ・スカラ座アカデミー修了後、2007年に「連隊の娘」マリー役でスカラ座デビューを果たし、キャリアを積み、現在 世界中のオペラ劇場で歌っています   高音も低音も良く声が通ります。低音部はマリア・カラスの声に似ています

期待以上に素晴らしかったのはムゼッタを歌った辻井亜季穂です 愛知県立芸術大学大学院を首席で修了後、DAAD給付留学生として2011年に渡独、ライプツィヒ音楽演劇大学でマスターの学位を取得、14年から17年までテューリンゲン州立劇場専属歌手を務め、2017年からヴュルツブルク歌劇場専属歌手としてドイツを中心に活躍しています。美声で声に力があります とくに第2幕の「私が独りで街を行くと」は素晴らしい歌唱でした

このほか、マルチェッロを歌ったイタリア出身のバリトン、マリオ・カッシ、ショナールを歌ったバリトンの森口賢二、コッリ―ネを歌ったバスの松位浩も高水準だったと思います とくに松井浩が第4幕で歌ったコッリーネの「古い外套よ、聞いてくれ」は聴きごたえがありました

パオロ・カリニャー二指揮東京交響楽団は、歌手に寄り添いながら 若いボヘミアンたちの心情を自ら歌い上げていました

かくして「ラ・ボエーム」の初日公演は何度もカーテンコールが繰り返され、成功裏に終了しました

 

     

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キース・ロックハート ✕ 小曽根真 ✕ 新日本フィルでガーシュイン「ピアノ協奏曲へ調」、「パリのアメリカ人」、バーンスタイン「オン・ザ・タウン」他を聴く ~ 新日本フィル「ルビー・シリーズ」

2020年01月25日 07時23分58秒 | 日記

25日(土)その1.わが家に来てから今日で1943日目を迎え、トランプ米大統領の「ウクライナ疑惑」をめぐる米上院の弾劾裁判で、検事役の冒頭陳述が始まったが、ワシントン・ポスト紙によるとトランプ氏はツイッターで「圧力はない」などと弾劾関連を中心に、就任以来最多となる142回発信した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     自信のない奴ほどジタバタするもんだ  それにしてもトランプってヒマ人じゃね?

     

         

 

昨日、夕食に「牛タン塩焼き」と「生野菜サラダ」を作りました 昨日はコンサートのハシゴだったので娘のために家を出る前に作っておきました

 

     

 

         

 

昨日、午後2時から すみだトリフォニーホールで新日本フィルのルビー(アフタヌーン・シリーズ)第28回演奏会を、午後6時半から新国立劇場「オペラパレス」で新国立オペラ「ラ・ボエーム」を聴きました ここでは新日本フィルのコンサートについて書きます

プログラムは①バーンスタイン「キャンディード」序曲、②ガーシュイン「ピアノ協奏曲へ調」、③バーンスタイン「オン・ザ・タウン」、④ガーシュイン「パリのアメリカ人」です 演奏は②のピアノ独奏=小曽根真、指揮=キース・ロックハートです

同日午前11時からホールの隣のホテルで開かれた「ワンコイン講座」の講師・小室敬幸氏の解説によると、この日取り上げられた二人の作曲家は、ロシア系のユダヤ人の移民=ジョージ・ガーシュインとウクライナ系ロシア人(ユダヤ系)の移民=レナード・バーンスタインということで、共通点があります

キース・ロックハートは「ボストン・ポップス・オーケストラ」の第20代指揮者ですが、「ボストン・ポップス・オーケストラ指揮者」という正式称号が与えられたのは、1930年のアーサー・フィドラー、1980年のジョン・ウィリアムズ(「スター・ウォーズ」でお馴染み)に次いで3人目とのことです ちなみにこのオケは「ボストン交響楽団」がポピュラーな音楽を演奏する時に使う名称です

 

     

 

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの新日本フィルの並び。コンマスは西江王子です いつものように第2ヴァイオリンの篠原英和氏と松崎千鶴さんを確認

1曲目はバーンスタイン「キャンディード」序曲です この曲は作曲家でもあり指揮者でもあり教育家でもあるレナード・バーンスタイン(1918-1990)が作曲、1956年にニューヨークのブロードウェイで初演されたミュージカルの序曲です 物語は主人公のキャンディードが様々な困難を乗り越えて真理へとたどり着き、日々の幸福に気が付くというものです

ロックハートの指揮で演奏に入りますが、いきなりゴージャスなサウンドが会場を満たします まるで”ニュー・ジャパン・ポップス・オーケストラ”に変身したかのようです パンチがありました

2曲目はガーシュイン「ピアノ協奏曲へ調」です この曲はジョージ・ガーシュイン(1898‐1937)が1925年に作曲した作品です 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アダージョ~アンダンテ・コン・モート」、第3章「アレグロ・アジタート」の3楽章から成ります

ソリストの小曽根真は1983年バークリー音楽大学ジャズ作・編曲科を首席で卒業。同年、米CBSと日本人初のレコード専属契約を結び、アルバム「OZONE」で世界デビュー 2016年には、チック・コリアと日本で初の全国デュオ・ツアーを成功させました 最近はジャズと共にクラシックにも積極的に取り組んでいます ちなみに、「ワンコイン講座」の解説によると、小曽根氏はガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」と「ピアノ協奏曲へ調」が表裏に入ったLPレコードを買って聴いたそうですが、何を勘違いしたか、「ピアノ協奏曲へ調」のことを「ラプソディー・イン・ブルー」と思い込んでいたそうです 世界の小曽根真にして こういうことがあるのですね

ロックハートの指揮で第1楽章に入ります。冒頭のトランペットが素晴らしい 小曽根のピアノは第2楽章のアダージョも良かったですが、何と言っても第3楽章におけるインプロヴィゼーション(即興演奏)は圧巻でした これぞジャズとクラシックの融合です 演奏後、彼はピアノの蓋を閉じて、客席からオケのメンバーが見えるようにしました こういう心遣いはクラシックの演奏家には見られません。こういうところに演奏者の人間性が現われます 演奏ともども素晴らしいパフォーマンスでした

 

     

 

プログラム後半の最初はバーンスタイン「オン・ザ・タウン」です この曲は1944年12月にブロードウェイで幕を開けましたが、450回のロングランになりました 物語は、24時間の休暇を得た水兵たちがニューヨークの街でガールハントを楽しむという内容です この日の演奏は、ロックハートが独自に選んだ7曲を演奏しました 「ミス地下鉄の発表」「ロンリー・タウン:パ・ド・ドゥ」「現実のコニー・アイランド」「サブウェイ・ライド~想像のコニー・アイランド」「グレート・ラヴァ―」「パ・ド・ドウゥ」「タイムズ・スクエア・バレエ(第1幕フィナーレ)です

ロックハートの指揮で演奏に入ります。オーケストラ挙げての御機嫌な演奏です 何回か演奏される西江王子のヴァイオリン・ソロが冴えていました オーボエ、クラリネットを中心とする木管群、アルトサクソフォンの演奏が素晴らしかったです

最後の曲はガーシュイン「パリのアメリカ人」です この曲は1928年12月にウォルター・ダムロッシュ指揮ニューヨーク・フィルにより初演されました ガーシュインは1926年にパリを訪れましたが、その時の刺激と経験が作曲に生かされています

ロックハートの指揮で演奏に入りますが、いかにも一人のアメリカ人がパリの喧噪の中に置かれて、クラクションを鳴らされて右往左往している様子が目に浮かぶようです この曲でも西江王子のヴァイオリン・ソロが冴えていました

満場の拍手にガーシュイン「ストライク・アップ・ザ・バンド」をノリノリで演奏、ホールの音頭を上昇させました

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