2日(月)。わが家に来てから今日で1980日目を迎え、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日本大相撲協会は1日、大阪市内で臨時理事会を開き、戦後初となる大相撲春場所の15日間無観客開催を決定した というニュースを見て 力士たちに活を入れるモコタロです
観客がなくても 覇気良い残った!
昨日は東京文化会館小ホールで「4館連携 若手アーティスト支援 アフタヌーン・コンサート」を聴く予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止となったので、新文芸坐で「勝手にしやがれ」と「去年マリエンバードで」の2本立てを観ました
館内を見渡すと全部で40人程度の入りでしょうか。いつもより極端に少ないようです。マスク姿も目立ちます
「去年マリエンバードで」はアラン・レネ監督による1961年フランス・イタリア合作映画(モノクロ・4Kデジタルリマスター版・94分)です
時代も国籍も不明なバロック調の宮殿のようなホテルに宿泊し、社交に興じる客たち その中に、女 A(デルフィーヌ・セイリグ)と男 X(ジョルジュ・アルベルタッツィ)、そして男 M(サッシャ・ピトエフ)の3人がいた。AとMは夫婦だが、XはAに対し「1年前にマリエンバードで会い、愛し合った」と語りかける。Aは否定するが、Xは「1年後に駆け落ちする約束もした」と言う
Aは何度もXからその話を繰り返し聞かされるうちに、おぼろげながら記憶を取り戻していく
Xは再び二人で駆け落ちをしようと迫るが、Aは現在の安定した生活を失うことを恐れ戸惑うばかりで、次のステップに踏み切れない
この映画を観るのは多分、今回が3度目だと思います これまでは、まったく内容が理解できませんでした
現在と過去、夢(想像)と現実が混然一体となってストーリーが展開するからです
この映画は1961年の第22回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したそうですが、よくもこれほど理解不能な作品が受賞したものだと思います
後に、この作品を担当したロブ=グリエは この作品について、「黒澤明の『羅生門』がモチーフになっている」と語り、「①現在、②Xの回想(Xにとっての主観的事実)、③Aの回想(Aにとっての主観的事実)、④過去(客観的事実=Mの視点)の4本の脚本を作成し、それらをバラバラにつなぎ合わせて最終的な脚本を完成した」と明かしています
これでは分かるわけがありません
この作品については、ロブ・グリエ自身がお気に入りのジョークがあるそうです。それはこういうものです
警官「怪しい男だな。この辺りで窃盗事件が多発しているんだが、お前がやったんじゃないのか?」
男「違いますよ」
警官「本当か?昨日の夜も事件があったんだが、昨夜は何をしてた?」
男「昨夜は映画を観てました。『去年マリエンバードで』って映画です」
警官「嘘じゃないだろうな?本当に観たと言うなら、どんな話だったか説明してみろ!」
脚本を書いた当の本人も「説明困難な映画」であることを認めているわけです
それでも、今回は映画館に貼り出してある「作品解説」をじっくり読んでから観たので、これまでよりもスムーズにストーリーを追うことが出来ました 過去に観た時もそうだったのですが、一番印象に残ったのは終始 画面に流れていたパイプオルガンの音(あるいは音楽)です
音楽担当はフランシス・セイリグで、マリー=ルイズ・ジローが演奏しています
不安感を掻き立てるようなオルガンの音が通奏低音のように流れ、頭にこびりついて離れません
この映画とオルガンの音は切っても切れない関係にあると思います
なお、Aを演じているデルフィーヌ・セイリグが身に着けている数々の衣装はココ・シャネルが製作したものです モノクロ映画であるのが残念に思うほど凝りに凝った衣装のオンパレードです
「勝手にしやがれ」はジャン=リュック・ゴダール監督による1960年フランス映画(モノクロ・デジタルリマスター版・90分)です
追いかけてきた警官を殺してパリに逃げて来た自動車泥棒のミシェル(ジャン=ポール・ベルモント)は、新聞売りのアメリカ人留学生パトリシア(ジーン・セバーグ)との自由な関係を楽しんでいた しかし、新聞に「警官殺し逃走犯」として顔写真が載ったミシェルは、パトリシアの元に刑事が事情聴取にやってきて、しだいに追い詰められていく
パトリシアはミシェルの愛を確かめるために、彼の居場所を警察に伝え、そのことをミシェルにも伝える
しかし、ミシェルはもはや疲れ切っていた
逃走中 警官に背中を撃たれ「最低だ!」とひと言 残して息を引き取る
この映画は、即興演出や手持ちカメラでの街頭撮影など、当時の劇場映画の概念を打ち破る技法で製作され、ヌーベルバーグの記念碑的作品と言われています その当時、この映画を観た人たちは驚いたことでしょう。とにかく、常に動いています。登場人物と一緒にカメラが動いています
この映画ではクラシック音楽が2曲使われています 1曲目はパトリシアの部屋で二人で過ごしている時、彼女がポータブル・プレーヤーにLPレコードを載せて流すショパン「子犬のワルツ」です
もう1曲は映画の終盤で、パトリシアが新聞を買いに出かける直前にLPレコードをかけて流すモーツアルト「クラリネット協奏曲イ長調K.622」です
彼女はこの曲の第1楽章「アレグロ」をかけて新聞を買いに出かけ、その間に 心変わりして 刑事に電話でミシェルが家にいると密告し、新聞を買って帰ってくると、ミシェルがテーブルに突っ伏して寝入っている背後で第3楽章「アレグロ」が流れているーというシーンです
この映画の中で、パトリシアが「ブラームスは好き?」と訊くと、ミシェルは「嫌いだ」と答え、「それじゃ、ショパンは?」と訊くと、「最低だ
」と答えているので、必ずしもゴダール監督はショパンが好きで使ったのではないかもしれません
あるいは、彼一流のアイロニーでしょうか