goo blog サービス終了のお知らせ 

人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「国際音楽祭NIPPON2020」公演:延期から中止へ / METライブビューイングでベルク「ヴォツェック」を観る ~ 主役のペーター・マッティと斬新な演出のウィリアム・ケントリッジにブラボー!

2020年03月04日 07時24分36秒 | 日記

4日(水)。ジャパン・アーツのホームページによると、諏訪内晶子芸術監督「国際音楽祭NIPPON2020」の一連のコンサートは、これまで「延期」とされていましたが、「中止」と発表されました 私が聴く予定だったのは3月8日午後1時開演の「ベートーヴェン  室内楽マラソンコンサート  第1部  ピアノ三重奏曲」公演です これにより私が聴く予定だったコンサートのうち13公演が中止になりました 

また、昨日 日本演奏連盟から「2020都民芸術フェスティバル参加公演払戻のご案内」が届きました    同連盟を通してチケットを購入した対象者に対しては、同封の「払戻依頼書」に必要事項を記入のうえ、中止になった公演のチケットと共に返信用封筒に同封して3月23日までに郵送することになっています 払い戻し対象公演は次の3つです

①2月28日(金)14時開演 東京交響楽団(東京芸術劇場コンサートホール)

②3月6日(金)  19時開演 東京シティ・フィル(同上)

③3月10日(火)19時開演 「不滅の恋人」(東京文化会館小ホール)

私は②と③が該当します こういう措置は有難いのですが、まだ残り10公演の払い戻し手続きをしなければなりません しかも、今後も中止公演が増える可能性が大きいので油断が出来ません

話は変わりますが、今住んでいるマンションの管理組合の臨時総会が3月15日(日)18時から「区民広場」で開催されることになっていたのですが、中止の連絡が入りました 新型コロナウイルス感染拡大防止に向けて政府から出された方針の影響は、学校だけでなく、公共の小さな集会所の閉館にも及んでいます    これでは大事なことがいつになっても決まりません

ということで、わが家に来てから今日で1982日目を迎え、新型コロナウイルスの感染が拡大している中国で、都市が封鎖されたり、工場の操業が止まったりしたことで、汚染物質である二酸化窒素の濃度が最大3割減るなど 大気汚染が大きく改善したことが、欧米の衛星データからわかった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                     中国にとっては 喜ぶべきことか 悲しむべきことか 判断が難しいところじゃね?

 

         

 

昨日、夕食に勝浦市在住の大学時代の友人S君が送ってくれたアジを塩焼きにして、イカをバター醤油焼きにしました とても美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、ベルク「ヴォツェック」を観ました これは2020年1月11日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です 出演はヴォツェック=ペーター・マッティ、マリー=エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァ―、鼓手長=クリストファー・ヴェントリス、大尉=ゲルハルト・ジーゲル、医者=クリスチャン・ヴァン・ホーン。管弦楽=メトロポリタン歌劇場管弦楽団、指揮:ヤニック・ネゼ=セガン、演出=ウィリアム・ケントリッジです

9階「シアター6」は25人程度の入りです 新型コロナウイルス感染拡大騒ぎの中、月曜日、しかも上映されるのが暗い「ヴォツェック」とあっては仕方ないところだと思います

 

     

 

理髪師あがりの兵卒ヴォツェックは、上官の大尉から嘲弄されながらもじっと耐え、そのうえ妻マリーと幼い男の子を養うために医者の生体実験の道具として身体を提供し日銭を得るという貧困のどん底にあった 彼は肉体的にも精神的にも不安定になっていくばかりだった 一方 妻マリーは、通りがかりの軍楽隊の逞しい鼓手長に惹かれ、ついに彼を家に引き入れてしまう(以上第1幕)

精一杯稼いだわずかな収入を渡してくれる夫に対し、マリーは密かに自責の念に駆られるが、彼への不満は抑えきれない 一方、ヴォツェックも、医者と大尉との思わせぶりな口ぶりからマリーと鼓手長の関係に対する疑念を抱き始め、彼女と口論になる やがて彼は、酒場で踊るマリーと鼓手長の姿を目の当たりにするが、上官に対しては手を出せない その夜、兵舎で彼は泥酔した鼓手長から罵倒され 暴力を振るわれ、ついに彼は精神に異常をきたしてしまう(以上第2幕)

自責の念に駆られるマリーだが、すでに遅かった ヴォツェックは林の中の池のほとりに彼女を誘い出し、赤い月の光の中、ナイフで刺殺する その手についた血を酒場で人々に見咎められた彼は、異常な物音に気付きつつも、見捨てて去る 夜が明け、マリーの死体が発見されるが、彼女の子供は何も知らずに遊び続けるのだった(以上第3幕)

 

     

 

今回の公演の大きな特徴はウィリアム・ケントリッジによる舞台と演出です METライブではショスタコーヴィチ「鼻」、ベルク「ルル」に次いで3回目の演出ですが、「動くドローイング」と呼ばれるアニメーション・フィルムと大道具・小道具が混然一体となった斬新な演出が目を引きます 「ヴォツェック」は全3幕から成りますが、約100分 切れ目なく演奏されます その間、背景のアニメは演奏される音楽に合わせて刻々と変化していきます

もう一つの特徴は、子供を人形に演じさせていることです 2月に観たMETライブ「蝶々夫人」でも子供を人形に演じさせていましたが、アンソニー・ミンゲラの演出が文楽を参考にした、まるで生きているような動きだったのに対し、今回のケントリッジの演出は、子供が防毒マスクのような顔で無機質な表情をしているのが対照的です

ヴォツェックを歌ったペーター・マッティは、1965年スウェーデン生まれのバリトンです 私はどうしてもMETライブ「セヴィリアの理髪師」で歌ったエネルギッシュなフィガロのイメージが強いのですが、今回の「ヴォツェック」を観てイメージが一新しました というよりも、喜劇も悲劇も歌い演じ分けられる「歌う役者」と言った方が良いかもしれません

マリーを歌ったエルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァ―は、南アフリカ・ヨハネスブルク出身のソプラノですが、強く芯の通った美声で聴衆を魅了します

鼓手長を歌ったクリストファー・ヴェントリスは1965年ロンドン生まれ、声の良く通るヘルデンテノールです 話は脇道に逸れますが、何かの本に「ヘンデルテノール」と書かれていて、のけ反ったことがあります

大尉を歌ったゲルハルト・ジーゲルは1963年バイエルン州生まれ、パワフルなテノールです

医者を歌ったクリスチャン・ヴァン・ホーンは、1978年ニューヨーク生まれ。低音の魅力たっぷりのバスバリトンです

このオペラは「歌う」というよりも「絶叫する」といった方が相応しいかもしれません 彼らがこの困難なオペラを歌い演じるにあたって一番頼りになったのは、客席に見えないところで歌手をフォローする「プロンプター」だったと思います

観終わって、あらためて思うのはアルバン・ベルク(1885-1935)はどうしてこのような暗く絶望的なオペラを書いたのだろうか、ということです この作品はゲオルク・ビュヒナーの戯曲「ヴォイツェック」をもとに1917年から1921年にかけて作曲されましたが、折しも勃発した第1次世界大戦に際して徴兵されたことから、その時の兵役での苦しい不快な体験がこの作品に反映していると思われます 一例を挙げれば、人体実験にされているヴォツェックが医者から「かってに小便をするな」と咎められるシーンがありますが、これに似た非人間的な扱いは実際に軍隊で経験したのだと思います

ヤニック・ネゼ=セガン指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団が、第3幕でヴォツェックがマリーを殺した後に演奏した、2度の強烈なクレッシェンドによる音楽は「この世の終わり」を表しているかのように絶望的に響きました

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする