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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

原田マハ著「デトロイト美術館の奇跡」を読む ~ 財政破綻に陥ったデトロイト市による美術館のコレクションの売却を阻止した感動の物語

2020年03月29日 07時16分08秒 | 日記

29日(日)。昨日は東京都から「不要不急の外出自粛要請」が出ていたからというわけではないのですが、映画をはじめ「この日でなければならない用事」がなかったので、一日中 家で読書をして過ごしました    いつもは今後コンサートで聴く予定の作品のCDを聴きながら読んでいるのですが、この1か月は、せっかく予習をしても次々とコンサートが中止になってしまうので、予習が成り立たなくなってしまいました 昨日は、4月12日のN響定期で聴く予定だったヴォーン・ウィリアムズの「交響曲第5番」を中心に 彼の交響曲のCDを片っ端から聴いていました    中止になったのは承知していましたが、次のコンサートがいつ実現するか先が読めないので、選曲のしようがないのです

さて、昨日 新国立劇場から4月7日開催予定のオペラ「ジュリオ・チェーザレ」公演中止に伴う払い戻し書類が、また 東京都交響楽団からは3月4日開催予定だった定期演奏会Bシリーズ公演中止に伴う払い戻し書類が届いたので、それぞれ月曜日に郵送できるように準備しておきました また、NHK交響楽団からは4月度定期演奏会中止の案内ハガキが、読売日響からは4月8日の定期演奏会中止の案内ハガキが届きました。どこのオーケストラも払い戻し処理の事務作業で大変ですね

ということで、わが家に来てから今日で2007日目を迎え、英首相官邸の報道官は27日、ジョンソン首相が新型コロナウイルスに感染したと発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ジョンソン首相は EUから離脱する前に 新型コロナウイルスから離脱しないとね

 

         

 

原田マハ著「デトロイト美術館の奇跡」(新潮文庫)を読み終わりました 原田マハは1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科と早稲田大学第二文学部美術史科を卒業。2005年「カフーを待ちわびて」で日本ラブストーリー大賞を受賞しデビュー 2012年に発表した「楽園のカンヴァス」で山本周五郎賞を受賞したほか、数々の文学賞を受賞しています このブログでは映画をテーマとした「キネマの神様」をご紹介しました

 

     

 

デトロイトの自動車工場で溶接工として働くフレッド・ウィルは妻のジェシカとともに、1885年に建設された歴史のあるデトロイト美術館を訪れ、セザンヌが描いた「マダム・セザンヌ」を観ることを楽しみにしていた 多くのコレクションはロバート・ハドソン・タナヒルという善意のコレクターから寄贈されたものだった 2013年7月のある日、フレッドは新聞の見出しをみて驚愕する。そこには「デトロイト市財政破綻 DIA(デトロイト美術館)のコレクション 売却へ」と書かれていた そんなある日、DIAのコレクション担当チーフ・キュレーター、ジェフリー・マクノイドは、行きつけのカフェでフレッドと出会い気が合って友人となる DIAのために自分の出来ることはないかと考えたフレッドは、「私は年金生活者だから、その金額が精一杯なんですが、ほんのわずかでも、寄付をしたいんです」と言い、額面500ドルの小切手をジェフリーに手渡す ジェフリーはその行為に心に打たれ、わずかな希望の光を見る ダニエル・クーパーはデトロイト市が2013年7月に負債総額180億ドルを抱えて「破産宣言」をした後に司法省から任命を受けて市が債務調整計画案を策定する上で、市と債権者とのあいだに立って調停をおこなう首席調停人である ダニエルはジェフリーに「DIAのコレクションは、クリスティーズの試算によれば100億ドル以上の価値があるということだが、『売る』のでなく『守る』ために、寄付を募るだけの価値がある、ということだね」と言う 発想の転換にジェフリーはハッとする ダニエルの調停によりDIAは各方面の財団に寄付を募り、寄付金目標額を達成したばかりでなく、DIAは市の管理下を離れて独立行政法人となることが出来た ある春の日、妻を亡くして独りとなったフレッドは、ボランティアとして「ギャラリー・ツアー」のガイド・デビューを飾ろうとしていた

この小説は、デトロイト美術館の財政破綻という歴史的事実をもとに、「守るべきは市民の生活か、あるいは市民の誇りか」という葛藤の中で、発想の転換により両方を守ることに成功した物語を描いた心温まる作品です

この作品では「アート(美術)の危機と救済」を扱っていますが、音楽や演劇や歌舞伎などを含めた「芸術・芸能の危機」の救済という意味では、現在 われわれは 新型コロナウイルスの感染拡大に伴うコンサートや興行の中止という危機を目の当たりにしています

昨日の日経朝刊によると、チケット大手のぴあ の矢内広社長はこのほど、首相官邸にエンタメ産業(コンサート、スポーツイベントなどのライブ・エンタメ産業)のダメージを試算した資料を届けました。それによると、3月23日までに中止・延期になった公演や試合の総数は8万1000本で、入場できなかった観客総数は5800万人に達するとしており、その損失額は1750億円であると見積もっています さらに大型連休を含む5月末まで各種興行が実施できない場合、中止・延期の公演・試合の総数は15万3000本となり、入場できない観客総数は1億900万人に及び、損失総額は3300億円となると試算しています しかも、これにはレジャー施設(オリエンタルランド等)や映画館は含まれていないといいます。いかに損失が大きいかということです

こうした中、日本では超党派の国会議員有志が音楽ライブなどが中止になった場合、損失補償などの支援策が講じられないか検討を進めている、とのことです 個人の力には限界があります。文化の維持・発展のため、今こそ国家レベルの救済策が必要です いま安倍政権は文化が守れるかどうかが問われています

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