20日(日)。わが家に来てから今日で2869日目を迎え、北朝鮮の朝鮮中央通信は19日、金正恩総書記がミサイル発射の現地指導に自らの娘を同行させたと伝えた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
北朝鮮は今後も世襲制度を維持して金王朝を存続させるという意思表示に過ぎない
昨日、晴海の第一生命ホールで「ウェールズ弦楽四重奏団 ~ アカデミー生とともに」公演を聴きました プログラムは①モーツアルト「弦楽五重奏曲第4番 ト短調 K.516」、②ウェーベルン「弦楽四重奏のための緩徐楽章」、③シューマン「弦楽四重奏曲第2番 ヘ長調 作品41-2」、④R.シュトラウス:歌劇「カプリッチョ」作品85より序曲(弦楽六重奏)、⑤ブラームス「弦楽六重奏曲第2番 ト長調 作品36」です 演奏はウェールズ弦楽四重奏団(﨑谷直人、三原久遠、横溝耕一、富岡廉太郎)、ウェールズ・アカデミー生、クァルテット・アベリア、レグルス・クァルテットです
ウェールズ弦楽四重奏団は昨年結成15周年を迎えましたが、「後進の指導にも取り組みたい」として「ウェールズ・アカデミー」を創設しました これは「オーディションで選ばれたアカデミー生とのリハーサルの場を通して、アンサンブル能力を一緒に高め、第一生命ホールで共演する」というものです 今回はその第1回目の公演になります
1曲目はモーツアルト「弦楽五重奏曲第4番 ト短調 K.516」です ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756ー1791)は6つの弦楽五重奏曲を作曲しましたが、いずれも弦楽四重奏に第2ヴィオラが加わる編成となっています 「第4番 ト短調」は1787年、作曲者31歳の時に作曲されました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「メヌエット」、第3楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ」、第4楽章「アダージョ ~ アレグロ」の4楽章から成ります
この曲が日本で人口に膾炙したのは小林秀雄「モオツァルト」がきっかけでした それはこんな風に書かれています
「スタンダアルは、モオツァルトの音楽の根柢は tristesse(かなしさ)というものだ、といった。(中略) tristesse を味わうために涙を流す必要がある人々には、モオツァルトの tristesse は縁がないようである。それは、凡そ次のような音を立てる、アレグロで(ト短調クインテット、K.516)
(ここにK.516の第1楽章冒頭の楽譜が表示される)
ゲオンがこれを tristesse allante と呼んでいるのを、読んだ時、僕は自分の感じを一言で言われた様に思い驚いた。確かに、モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。涙の裡に玩弄するには美しすぎる。空の青さや海の匂いの様に、『万葉』の歌人が、その使用法をよく知っていた『かなし』という言葉の様にかなしい。こんなアレグロを書いた音楽家は、モオツァルトの後にも先にもない」
モーツアルトの「弦楽五重奏曲第4番 ト短調 K.516」を聴くとき、私はどうしても小林秀雄のこの言葉を思い浮かべてしまいます
演奏はヴァイオリン=﨑谷直人、東亮汰、ヴィオラ=谷村香衣、木田美帆、チェロ=山梨浩子です
﨑谷のリードで演奏に入ります 第1楽章冒頭はデモーニッシュな演奏を期待しましたが、その域までは達しませんでした しかし、全体的にソフトで丁寧な演奏でした
2曲目はウェーベルン「弦楽四重奏のための緩徐楽章」です この曲はアントン・ウェーベルン(1883ー1945)が若き日の1905年に作曲しました
ウェールズ弦楽四重奏団の4人が登場し、演奏に入ります チェロの富岡廉太郎は読響の首席ですが、エンドピンが極端に長いのにビックリします チェロ本体の位置が高いので、富岡はチェロを抱くようにして弾くことになります
この曲は後期ロマン派の流れを汲むロマンティックで聴きやすい曲です ウェーベルンもやるじゃん と思いますが、この路線のまま突き進んだら彼の名は音楽史に残らなかったでしょうね 聴きごたえのある素晴らしい演奏でした
3曲目はシューマン「弦楽四重奏曲第2番 ヘ長調 作品41-2」です この曲はロベルト・シューマン(1810ー1856)が32歳の時、1842年に作曲しました 第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「アンダンテ・クワジ・ヴァリアツィオー二」、第3楽章「スケルツォ:プレスト」、第4楽章「アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」の4楽章から成ります
演奏はクァルテット・アベリア(ヴァイオリン=菊川穂乃佳、清水里彩子、ヴィオラ=田口夕莉、チェロ=田上史奈)です
4人の演奏は明るく溌溂として、シューマンらしい旋律美に溢れていました
プログラム後半の1曲目はR.シュトラウス:歌劇「カプリッチョ」作品85より序曲(弦楽六重奏)です この曲はリヒャルト・シュトラウス(1864ー1949)が1941年に作曲、翌42年に初演されました
演奏はヴァイオリン=菊川穂乃佳、清水里彩子、ヴィオラ=田口夕莉、横溝耕一、チェロ=田上史奈、富岡廉太郎です
息の長い美しく甘美な旋律が続き、儚いロマンの香りが感じられますが、熟した果物のように、今にも枝から落ちそうな感覚があります 4人の演奏はそのようなリヒャルト・シュトラウス特有の濃厚なロマンを見事に表現していました
最後の曲はブラームス「弦楽六重奏曲第2番 ト長調 作品36」です この曲はヨハネス・ブラームス(1833ー1897)が1865年に作曲しました 第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「スケルツォ:アレグロ・ノン・トロッポ」、第3楽章「ポコ・アダージョ」、第4楽章「ポコ・アレグロ」の4楽章から成ります
演奏はヴァイオリン=吉江美桜、東條太河、ヴィオラ=山本周、横溝耕一、チェロ=矢部優典、富岡廉太郎です
この曲の演奏で際立っていたのは第1ヴァイオリンを担った吉江美桜です 第12回東京音楽コンクール第3位、桐朋学園大学を首席で卒業という経歴の持ち主です とにかく演奏スタイルが表情豊かで、ヴァイオリンが良く歌います また、中低音部にウェールズの2人が加わったことにより、重心の低い安定感のある演奏が展開しました 6人のアンサンブルが素晴らしかった
室内楽のコンサートは大ホールでの大曲の演奏と違い、親密な空間で演奏されるので演奏者に親しみを感じます 第一生命ホールには今後ともこの企画を続けてほしいと思います