28日(月)。わが家に来てから今日で2877日目を迎え、中国・上海の新疆ウイグル自治区にちなんで名づけられた道路の交差点で「習近平退陣しろ、共産党退陣しろ」と叫ぶ大規模なデモが行われた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
新疆ウイグル自治区の人権問題と 政権のゼロ・コロナ政策に我慢できなくなったね
METライブビューイングが今年も開幕しました 昨日、新宿ピカデリーで「METライブビューイング2022ー23」第1弾、ケルビーニ「メデア」(MET初演)を観ました これは今年10月22日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です 出演はメデア=ソンドラ・ラドヴァノフスキー、ジャゾーネ=マシュー・ポレンザーニ、クレオンテ=ミケーレ・ペルトゥージ、グラウチェ=ジャナイ・ブルーガー、ネリス=エカテリーナ・グバノヴァ。管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団、指揮=カルロ・リッツィ、演出=デイヴィッド・マクヴィカーです
「メデア」はマリア・ルイジ・ケルビーニ(1760ー1842)がフランソワ=ブノワ・ホフマンの台本を基に作曲、1797年3月13日にパリのテアトル・フェイドーで初演されたオペラです
舞台は古代コリント。国王クレオンテは、アルゴー号で数々の冒険に出かけて武勲を立てたジャゾーネに、娘のグラウチェを嫁がせることにした しかし、グラウチェの心にはジャゾーネの前妻メデアの存在が重くのしかかっていた かつて、ジャゾーネは、金羊毛を手に入れるため、コルキスの王女であるメデアに弟を殺させ、その上で残忍な心を持った魔女メデアと結婚したのだった ジャゾーネは王クレオンテにアルゴー号の探検で手に入れた数々の宝物を披露すると、そこにメデアが現れ、かつてジャゾーネと交わした愛と、彼に奪われた2人の子どものことを訴える しかし、ジャゾーネは冷たくそれを拒む(以上、第1幕)
クレオンテはメデアに国外追放を命じるが、彼女の懇願により1日の猶予を与えることにする メデアは侍女ネリスに自分の子を連れてきて、グラウチェに復讐するために毒を仕込んだ王冠とローブを結婚祝いとして彼女に贈るようにと頼む(以上、第2幕)
メデアは自分とジャゾーネの間の子を殺すべきかどうか迷う グラウチェが毒を仕込んだ王冠とローブで死んだという知らせを聞き、メデアは復讐の成功を喜ぶが、人々が彼女の死を悲しんでいるのを聞き、子どもも殺してしまう 出てきたジャゾーネに復讐が終わったと告げ、宮殿に火を放つ(以上、第3幕)
歌劇「メデア」はパリでは20回で打ち切られましたが、ドイツ系諸国では19世紀だけで500回以上も上演されました しかし、20世紀に入ると忘れ去られてしまいました その後、1953年開催のフィレンツェ音楽祭はマリア・カラスをタイトルロールに迎え、ヴィットリオ・グイの指揮で「メデア」を上演、大成功を収めました それ以後、カラスは代表的レパートリーとして62年6月まで31回「メデア」を歌いました この間、1957年9月にはトリオ・セラフィン指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団をバックにスカラ座で録音を行いました それが下のCDです
正直に告白すると、この2枚組CDは20年以上前に購入したものの、包装用セロファンを開けることなくCD棚に眠らせていて、今回このライブビューイングを観るにあたり、「そういえばマリア・カラスのCD持ってたよな」と引っ張り出してきたものです ここだけの話、ほかにも何組かあります
カラスの凄絶な演唱に魅せられたパゾリーニ監督は1969年に映画「王女メデア」を製作し、カラスは歌わずに女優として出演しました その映画が下のVHSビデオです
正直に告白すると、このVHSテープは20年以上前に購入したものの、再生用プレーヤーが壊れてしまい1度も観ることなくビデオ・テープ棚に放置されていたものです
なお、この映画は今年7月3日に新文芸坐で観たので、その感想を翌4日のブログに書きました 興味のある方はご覧ください
ライブビューイングに戻ります
メデアを歌ったソンドラ・ラドヴァノフスキーは1969年米イリノイ州生まれのソプラノですが、ドラマティックな歌唱と身体を張った演技はマリア・カラスに届きそうです 何よりも、グラウチェと自分の子供たちを殺したのは、そもそもジャゾーネの裏切りが原因であり、メデアこそ犠牲者だったということを説得力を持って歌い切りました また、マクヴィカーの演出はメデア役に過酷なまでの動きを要求するので、53歳のラドヴァノフスキーにとっては厳しいものがありますが、そんな表情はおくびにも出しません 幕間のインタビューによると、そもそもこの公演は彼女がMETのピーター・ゲルブ総裁に「メデア」を歌わせてくれと提案して実現したそうです 自信も覚悟もあったのでしょう 素晴らしいディーヴァです
ジャゾーネを歌ったマシュー・ポレンザーニは1968年米イリノイ州生まれのテノールですが、リリカルな歌唱と迫真の演技で聴衆を魅了しました
国王クレオンテを歌ったミケーレ・ペルトゥージは1965年イタリア・パルマ生まれのバスですが、国王に相応しいノーブルな歌唱と威厳のある振る舞いで存在感を示しました
グラウチェを歌ったジャナイ・ブルーガーは1983年シカゴ生まれのソプラノですが、落ち着いた歌唱で美声を発揮しました
ネリスを歌ったエカテリーナ・グバノヴァは1979年モスクワ生まれのメゾ・ソプラノですが、深みのある声で聴衆を魅了しました
特質すべきは1960年イタリア生まれのカルロ・リッツィ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団の演奏です 歌手に寄り添いながら、自らメデアの悲しみや怒りを、ジャゾーネの迷いを歌い上げていました とくに劇的な序曲と第2幕と第3幕の導入部における管弦楽だけによる音楽は、これから起こる出来事を暗示する渾身の演奏でした
今回の公演の大きな特徴は1966年スコットランド生まれのデイヴィッド・マクヴィカーによる演出です ステージ上で演じられている舞台が、バックの壁に鏡のように映し出し出されます 実際には天井から舞台を見下ろす位置にあるカメラが映した映像を背景のスクリーンに映し出していると思われますが、観る者に強い印象を与えます
本ライブビューイングの上演時間は幕間のインタビュー等の特典映像、休憩(1回=約10分)を含めて3時間6分 上映は12月1日(木)までです
MET初演となる今回の「メデア」は新シーズンの開幕に相応しいチャレンジングな公演でした