人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

セバスティアン・ヴァイグレ ✕ ルーカス・ゲニューシャス ✕ 新国立劇場合唱団 ✕ 読売日響でヒンデミット「主題と変奏”4つの気質”」、アイスラー「ドイツ交響曲」(日本初演)を聴く

2023年10月18日 00時17分52秒 | 日記

18日(水)。わが家に来てから今日で3200日目を迎え、2020年米大統領選での敗北を不正に覆そうとしたとして起訴されたトランプ前米大統領の裁判で、ワシントンの連邦地裁の判事は16日、トランプ氏に対し、裁判での証人や検察官、裁判所の職員を攻撃するような公の発言を禁じる命令を出した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     自分が不利になると それを逆手に取って 金集めをするのが トランプの常套手段だ

 

         

 

昨日、夕食に「アスパラ、ベーコン、ジャガイモ炒め」と「舞茸の味噌汁」を作りました 「アスパラ~」は作るのが簡単で美味しいです

 

     

 

         

 

昨夜、サントリーホールで読売日響「第632回定期演奏会」を聴きました    プログラムは①ヒンデミット「主題と変奏”4つの気質”」、②アイスラー「ドイツ交響曲 作品50」(日本初演)です    演奏は①のピアノ独奏=ルーカス・ゲニューシャス、②のソプラノ独唱=アンナ・ガブラー、メゾ・ソプラノ独唱=クリスタ・マイヤー、バリトン独唱=ディートリヒ・ヘンシェル、バス独唱=ファルク・シュトルックマン。合唱=新国立劇場合唱団、指揮=読響常任指揮者セバスティアン・ヴァイグレです

 

     

 

弦楽器は8型の小編成で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの読響の並び コンマスは長原幸太です ステージ中央にはグランドピアノが構えています

1曲目はヒンデミット「主題と変奏 ”4つの気質”」です     この曲はパウル・ヒンデミット(1895-1963)がナチス政権から逃れアメリカに亡命した1940年に、ジョージ・バランシン振付による同名のバレエのために作曲、1943年3月10日にヴィンタートゥールで初演されたピアノと弦楽合奏のための作品です 「4つの気質」とは、人間の性質を体液のタイプによって4つに分ける古代ギリシャに発する考え方です この作品は主題(3部構成)と4つの変奏から構成されていますが、それぞれの変奏にはこの4つの気質がタイトルとして与えられています 第1変奏「憂鬱質」、第2変奏「多血質」、第3変奏「粘液質」、第4変奏「胆汁質」です

ピアノ独奏のルーカス・ゲニューシャスは1990年モスクワ生まれ 2010年のショパン国際コンクールと15年のチャイコフスキー国際コンクールで第2位 幅広いレパートリーで知られています

ヴァイグレの指揮で主題の演奏に入りますが、ゲニューシャスは電子楽譜を使用します 第1変奏「憂鬱質」ではヴァイオリン・ソロとピアノの二重奏が繰り広げられますが、長原幸太の美しいヴィブラートが会場を満たしました まったく「憂鬱」を感じさせない音楽でした これは第3変奏「粘液質」も同様で、むしろ愉しさを感じました 第4楽章「胆汁質」ではゲニューシャスのアグレッシブな演奏が印象に残りました

満場の拍手にゲニューシャスは、ゴドフスキ「トリアコンタメロン」第11番「なつかしきウィーン」を洒脱に演奏、再び大きな拍手に包まれました

 

     

 

プログラムの後半はアイスラー「ドイツ交響曲 作品50」の日本初演です ハンス・アイスラー(1898-1962)は東ドイツのライプツィヒで生まれ、激動の時代を生きました 新ウィーン楽派のウェーベルン、ベルクと並ぶ、シェーンベルクの3人の高弟の一人となりますが、シェーンベルクと決裂して独自の道を歩むことになります 1930年代になるとナチス・ドイツが台頭し、ユダヤ系で共産党員の彼は欧州を転々とした後にアメリカに亡命します 彼はハリウッドで生計を立てながら「ドイツ交響曲」の作曲を進めました この曲はアイスラーが1935年から58年にかけて作曲、1959年4月24日に東ベルリンの国立オペラで初演されました 本作は4人の独唱、合唱、大編成の管弦楽による全11楽章から成る交響曲です 第1楽章「前奏曲」、第2楽章「強制収容所の闘士たち」、第3楽章「オーケストラのためのエチュード」、第4楽章「回想(ポツダム)」、第5楽章「ソンネンブルクで」、第6楽章「オーケストラのための間奏曲」、第7楽章「船の棺に収められた扇動者の埋葬」、第8楽章「農民カンタータ」、第9楽章「労働者カンタータ」、第10楽章「オーケストラのためのアレグロ」、第11楽章「エピローグ」の11楽章から成ります

作曲者と同じ東ドイツに生まれたセバスティアン・ヴァイグレは、日本での活動を深める中で「この曲を演奏するのは私の使命だ」と決意し、今回の日本初演に踏み切りました 4人のソリストの顔ぶれを見ると世界的に活躍し高い評価を得ている歌手ばかり、合唱も日本を代表する新国立歌劇場合唱団と、常任指揮者ヴァイグレの力の入れようが分かります 1回限りのコンサートにこれほどの資金を投入できるのは、コロナ禍においても読響の常任指揮者の責任を果たし、楽団と深い信頼関係を築き上げているヴァイグレだからこそ可能なのだと思います

オケは16型に拡大します。P席に新国立歌劇場合唱団のメンバーが配置に着きます 上手側に男声36人、下手側に女声44人という編成です ソプラノ独唱のアンナ・ガブラーは最初と最後しか出番がないので、第1楽章は女声合唱に交じって歌います。ヴァイグレとともにソリスト3人が入場しスタンバイします

ヴァイグレの指揮で第1楽章「前奏曲」が開始されます オーケストラの演奏に続いてソプラノと合唱が「おおドイツ、青ざめた母よ、お前はなんと汚されているか、お前の素晴らしい息子たちの血で!」と歌います パイプオルガンの左右スペースに「字幕スーパー」が表示されるので、聴衆は手元の歌詞対訳を見なくても済みます(ここにもお金をかけてますね)第2楽章以降にメゾ・ソプラノのクリスタ・マイヤーの出番がありますが、ドレスデン国立歌劇場から授与されている宮廷歌手の称号は伊達ではないところを証明しました 声そのものの魅力、声量、表現力、存在感・・・それらすべてを備えています 第4楽章以降にバリトンのディートリヒ・ヘンシェルの出番がありますが、声が良く通り、迫力のある歌唱が印象的です 第7楽章でやっと出番が来るバスのファルク・シュトルックマンはウィーン国立歌劇場とベルリン国立歌劇場の両方で宮廷歌手の称号を所持していますが、深みのある歌唱で存在感が抜群でした ソプラノのアンナ・ガブラーは世界の歌劇場で歌っていますが、出番こそ少なかったものの、美しくも強靭な歌唱で聴衆を魅了しました

特質すべきは迫力のあるコーラスを歌った新国立歌劇場合唱団の面々です そして、ヴァイグレ”監督”の意図を十分に汲み取って終始緊張感のあるアグレッシブな演奏を展開した読響の面々です

約65分の全曲を聴き終わって あらためて思ったのは、この曲のテーマは「ナチに対する怒りであり、その蛮行を許してしまったドイツへの怒りでもある」のではないかということです アイスラーは共産党員でしたが、彼の思想は各楽章の中で歌われています たとえば、第2楽章「強制収容所の闘士たち」では、合唱が「(お前たちは)ドイツには搾取する者と搾取される者の2種類の人間がいるという信念(を持っている)。そして階級闘争こそが都市や農村の大衆を貧困から解放するという信念だ たとえ拷問を受けたとしても、お前たちは我々の理想を止めようとしない」と歌います また、第5楽章「ソンネンブルクで」では、「彼らは総統が来ると壁のように直立不動で腕をピンと高く伸ばして手を見せる」と歌われます ”総統”とは言うまでもなくヒトラーのことです 第8楽章「農民カンタータ」では「農民よ、立ち上がれ! 銃を手に取れ! 首を垂れたままでいるな、どうせ死んでいく身なのだから」と歌われます   そして第9楽章「労働者カンタータ」では「奴らが船の棺に追いやったのは、真実を語った人なのだ。将軍、工場経営者、貴族、私たちの敵はそいつらだ」と歌われます

字幕スーパーを見ながら、「この歌は、今ウクライナで、あるいはガザで民衆が叫んでいることではないか」と思ってしまうことも少なくありませんでした 今、アイスラーの「ドイツ交響曲」を演奏する意味は、偶然ながらそこにあるように感じました

 

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする