人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

尾高忠明 ✕ スティーヴン・イッサーリス ✕ 大阪フィル でエルガー「チェロ協奏曲」、ブルックナー「交響曲第3番」を聴く

2020年01月22日 07時19分46秒 | 日記

22日(水)。わが家に来てから今日で1940日目を迎え、菅義偉官房長官は21日の記者会見で、首相主催の「桜を見る会」について、2011~13年度(11、12年度は未開催)の会場設営などの資料が見つかったと発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     そんな古い資料を残しておいて 直近の資料は廃棄したなんて 辻褄が合わないべさ

 

         

 

昨日、夕食に「牛肉のしぐれ煮」と「ホウレン草の胡麻和え」を作りました 両方とも美味しかったです

 

     

 

         

 

昨夕、サントリーホールで大阪フィルハーモニー交響楽団  第52回東京定期演奏会を聴きました プログラムは①エルガー「チェロ協奏曲 ホ短調 作品85」、②ブルックナー「交響曲 第3番 ニ短調 ”ワーグナー” 」(第3稿)です 演奏は①のチェロ独奏=イギリス出身のスティーヴン・イッサーリス、指揮=尾高忠明です

 

     

 

自席は2階RD3列7番、一応通路側です。会場は8割以上は埋まっている感じです

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成。コンマスは ソロ・コンマスのチェ・ムンスです 言うまでもなく彼は新日本フィルのソロ・コンマスでもあります その隣はエピス・クァルテットのヴァイオリン奏者・須山暢大です よく見るとチェロの首席にエルデーディ弦楽四重奏団のチェロ奏者・花崎薫がスタンバイしています。彼も大フィルの楽員だったのですね

1曲目はエルガー「チェロ協奏曲 ホ短調 作品85」です この曲はエドワード・エルガー(1857‐1934)が1919年に作曲した作品です 第1楽章「アダージョ~モデラート」、第2楽章「レント~アレグロ・モルト」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります

イッサーリスをセンターに迎え、尾高氏の指揮で第1楽章に入ります 席がステージから遠いせいか、あるいは予習で聴いた20世紀最高の名女流チェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレのCDがあまりにも感動的だったせいか、イッサーリスのチェロが十分に届いてきません ひと言でいえば迫力不足です オケはソリストを引き立てなければならないため大きな音は控えるので、全体的に大人しい演奏になってしまいます イッサーリスの演奏自体は技巧を凝らした素晴らしいものなので、楽章を追うにしたがって慣れてきましたが、イッサーリスだったらもっと迫力のある音が出せるはずだと思いました

ソリスト・アンコールはカザルスの「鳥の歌」でした

 

     

 

プログラム後半はブルックナー「交響曲 第3番 ニ短調 ”ワーグナー” 」(第3稿)です この曲はアントン・ブルックナー(1824‐1896)が1872年~73年に作曲、その後1876年~77年に改訂(第2稿)、さらに1788年~89年に改訂(第3稿)された作品です 第1楽章「より遅く、神秘的に」、第2楽章「アダージョ・クァジ・アンダンテ」、第3楽章「スケルツォ」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります

ブルックナーは1873年夏に、バイロイトで祝祭劇場の建設の指揮にあたっていたワーグナーを訪問し、第2交響曲と 4楽章がスケッチのままの第3交響曲の草稿を見てもらいましたが、ワーグナーは第3交響曲に大きな興味を示しました    そのためブルックナーはこの第3番をワーグナーに献呈することを決めたのでした    この交響曲が”ワーグナー”という通称で呼ばれるのはそのことに起因します

尾高氏の指揮で演奏に入りますが、全体を聴いた印象は、まず第一にホルンが素晴らしい 楽員名簿によると高橋将純という奏者らしいですが、彼を筆頭にホルン・セクションが終始 素晴らしい演奏を展開していました    ホルンはブルックナーの交響曲では主役級の楽器なので、ホルンが良いと全体が引き締まります トランペット、トロンボーンも素晴らしく、フルート、オーボエ、ファゴットといった木管楽器群は極めて安定していました 第2楽章では冒頭の弦楽セクションのアンサンブルが美しかった 第3楽章では小気味の良いスケルツォが聴けました 第4楽章では、金管、木管、弦楽器、ティンパニが総力を挙げての熱演で、ブルックナーの音の大伽藍を打ち建てました エルガーでは思い切った音が出せなかった反動が来たかのように、各セクションとも持てる力を出し切っていました 渾身の演奏を展開したオーケストラ、そしてオケから最大限の力を引き出した尾高氏に満場の拍手とブラボーが送られました

私は 「そうだ。それでいいんだ」と終始 ひとり小さく頷きながら聴いていました。それほど会心の演奏でした。大阪フィル、恐るべし

聴き終わって つくづく思ったのは、ブルックナーやマーラーの交響曲はヘッドホンでチマチマ聴いていてもダメで、コンサート会場で音のシャワーを浴びる体験をして初めて本当の良さが解かるのだということです

 

     

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新国立劇場2020/2021シーズン オペラ・ラインアップ発表 ~ 全10公演のうち4公演が新制作 ~ プルミエ会員継続へ

2020年01月21日 07時24分59秒 | 日記

21日(火)。わが家に来てから今日で1939日目を迎え、第201回通常国会が20日召集され、安倍晋三首相は午後の衆参両院会議で施政方針演説を行ったが、憲法を巡っては「未来に向かってどのような国を目指すのか、その案を示すのは私たち国会議員の責任ではないか」と憲法審議会での議論を呼びかけた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       桜を見る会・IR汚職・2閣僚辞任と問題山積の状態で 憲法論議どころじゃないだろ

     

         

 

昨日、夕食に「筑前煮」を作りました ちょっと薄味だったので、後で醤油と砂糖を追加して再び煮込みました

 

     

 

         

 

新国立劇場から「2020/2021シーズン  会員継続案内」が届きました それと同時に 新国立劇場の情報誌「ジ・アトレ」2月号が届き、その中で新シーズンのラインアップが発表されました その概要は下記の通りです

①2020年10月 ベンジャミン・ブリテン「夏の夜の夢」 マーティン・ブラビンズ指揮東京フィル。ディヴィッド・マクヴィカー演出。藤木大地ほか。

②2020年11月 藤倉大「アルマゲドンの夢」 大野和士指揮東京フィル。リディア・シュタイアー演出。ピーター・タンジッツほか。

③2020年11~12月 J.シュトラウス2世「こうもり」 クリストファー・フランクリン指揮東京フィル。ハインツ・ツェドニク演出。ダニエル・シュムッツハルトほか。

④2021年1~2月 プッチーニ「トスカ」 ダニエル・カッレガーリ指揮東京交響楽団。アントネッロ・マダウ=ディアツ演出。キアーラ・イゾットンほか。

⑤2021年2月 モーツアルト「フィガロの結婚」 エヴェリーノ・ピド指揮東京交響楽団。アンドレアス・ホモキ演出。ヴィート・プリアンテほか。

⑥2021年3月 ワーグナー「ワルキューレ」 飯守泰次郎指揮東京交響楽団 ゲッツ・フリードリヒ演出。ダニエル・キルヒほか。

⑦2021年4月 ストラヴィンスキー「夜泣鳴きうぐいす」&チャイコフスキー「イオランタ」 アンドリー・ユルケヴィチ指揮東京フィル。ヤニス・コッコス演出。ハスミック・ユルチュクほか。

⑧2021年4月 ドニゼッティ「ルチア」 スペランツァ・スカップッチ指揮東京フィル。ジャン=ルイ・グリンダ演出。イリーナ・ルングほか。

⑨2021年5月 ヴェルディ「ドン・カルロ」 パオロ・カリニャー二指揮東京フィル。マルコ・アルトゥーロ・マレッリ演出。ミケーレ・ペルトゥージほか。

⑩2021年7月 ビゼー「カルメン」 大野和士指揮東京フィル。アレックス・オリエ演出。ステファニー・ドゥストラックほか。

上記10公演のうちブリテン「夏の夜の夢」と藤倉大「アルマゲドンの夢」(世界初演)は新国立オペラ初登場、ストラヴィンスキー「夜鳴きうぐいす」&チャイコフスキー「イオランタ」のダブル・ビルとビゼー「カルメン」は新制作です ポピュラーな定番オペラに加え、日本人作曲家を含めた”現代もの”オペラを取り入れたラインアップは、いかにも大野和士芸術監督らしい選択だと思います

私は2002/2003年シーズンから「オペラ・プルミエ(初日公演)」会員ですが、センターブロック後方の通路側席が気に入っているので、ずっと同じ席で継続してきました 新シーズンも躊躇なく継続することを決め、さっそく申込書を郵送しておきました

 

     

 

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飯守泰次郎 ✕ 新交響楽団で ハイドン「交響曲第104番”ロンドン”」、チャイコフスキー「交響曲第6番”悲愴”」、モーツアルト:歌劇「魔笛」序曲を聴く ~ 新響第248回演奏会

2020年01月20日 07時18分14秒 | 日記

20日(月)。わが家に来てから今日で1938日目を迎え、31回目の今年で最後となる大学入試センター試験が18日、全国689会場で始まったが、「世界史B」の設問で出題ミスがあり、この問題については全員に得点を与える というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      「米国で弾劾裁判にかけられた3人目の大統領は誰?」という問題がいつか出るか

 

         

 

昨日、東京芸術劇場コンサートホールで新交響楽団第248回演奏会を聴きました プログラムは①モーツアルト:歌劇「魔笛」序曲、②ハイドン「交響曲第104番ニ長調”ロンドン”」、③チャイコフスキー「交響曲第6番ロ短調”悲愴”」です 指揮は飯守泰次郎です

今回は新交響楽団の維持会員になって初めてのコンサートです ホール入口の維持会受付で、維持会回数券を座席指定券と引き換えました。2階センター左ブロックの左端席が空いていたので2階C列17番を押さえたのですが、何とどん詰まりの席でした 音響的にはかなり良い席ですが、奥まで入っていくのは煩わしいので、次回からは気をつけようと思います

 

     

 

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの新響の並び。コンミスは堀内真美さんです

1曲目はモーツアルト:歌劇「魔笛」序曲です 「魔笛」はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が最晩年の1791年に作曲したドイツ語によるオペラです 3つの和音で開始される「序曲」を聴くと、イングマール・ベルイマン監督の映画「魔笛」を思い出します 音楽が鳴っている間、紙芝居仕掛けのオペラ「魔笛」の幕開けを待つ老若男女の人々の顔が次々と映し出されます

飯守泰次郎氏がゆったりした足取りで指揮台に向かいます。身体のどこかが悪いのではないかと心配になります タクトが振り降ろされ、3つの和音が会場を満たします 冒頭のアダージョ部分は極めて遅いテンポですが、テーマの提示と共にすぐに快速テンポに変わります。管楽器も弦楽器も良く鳴っています

2曲目はハイドン「交響曲第104番ニ長調”ロンドン”」です この曲はヨゼフ・ハイドン(1732-1809)が1795年に作曲、同年ロンドンで初演された ハイドン最後の交響曲です   ハイドンは1791年から92年までと、1794年から95年までの2度、ロンドンの興行師ザロモンの招きによりイギリスを訪問して大成功を収めます 第99番から この第104番までの6つの交響曲は、2回目のロンドン訪問時に作曲されました 第1楽章「アダージョ~アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「メヌエット:アレグロとトリオ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ・スピリトゥ―ソ」の4楽章から成ります

飯守氏の指揮による”これぞ古典交響曲”というべき堂々たる演奏を聴いていると、「交響曲の父」と呼ばれるハイドンの集大成というべき第104番の”形式美”が浮かび上がってくるようです 管楽器ではオーボエとフルートが素晴らしい演奏を展開していました

 

     

 

プログラム後半はチャイコフスキー「交響曲第6番ロ短調”悲愴”」です    この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)が1893年に作曲した最後の交響曲です 1893年10月16日に行われた初演のわずか9日後にチャイコフスキーは急死しています 最後の楽章が「アダージョ・ラメントーソ(ゆるやかに・嘆くように)」であることと相まって、「チャイコフスキーは自らの死を覚悟しながらこの交響曲を作曲したのではないか」という説が有力視されているようです 第1楽章「アダージョ~アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アレグロ・コン・グラツィア」、第3楽章「アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アダージョ・ラメントーソ」の4楽章から成ります

コンミスが内田智子さんに代わります 飯守氏が再度登場し指揮台に向かいますが、指揮台の上には椅子が置かれています

飯守氏の指揮で演奏が開始されます この曲では、クラリネット、オーボエ、フルート、ファゴットといった木管楽器群が素晴らしく、ホルン、トロンボーンといった金管楽器も良く鳴っていました 第2楽章のワルツは流麗で 聴いていてとても心地良い演奏でした 第3楽章のスケルツォは、咆哮するブラス、渾身の弦、炸裂するティンパニが素晴らしかった 飯守氏は途中、椅子に座って指揮をしましたが、すぐに立ち上がりタクトを振りました 昨年末に体調を崩されたうえ、今年80歳を迎える飯守氏にとって、指揮をするという行為は相当疲れるのでしょう しかし、熱演する楽員を前に シャキッとしなければいけない、と自らを律する姿勢が見て取れます 第3楽章の終結部はオケの総奏で終わるので、曲が終わったと勘違いした聴衆が拍手をしないように、飯守氏はタクトを降ろさず、間を置かずに第4楽章に移りました 第4楽章は絶望の”ため息”の音楽です。この音楽を聴くたびに、これではチャイコフスキーが死を覚悟しながら作曲したと言われても仕方ないな、と思います

ところで、「悲劇的」でもなく「悲壮」でもない「悲愴」という日本語訳のタイトルについては、いろいろと解釈があるようです チャイコフスキーは1891年に「人生」というタイトルを付けた交響曲(変ホ長調)を途中まで書きましたが、満足できずに破棄し「ピアノ協奏曲第3番」に改作しました(これも未完に終わる)。しかし、この「人生」というテーマは彼の頭に残っていたようで、1893年2月に新しい交響曲(つまり第6番)を書き始めます 彼はその過程で、この曲のテーマは「人生について」だと語ったと伝えられています 4つの楽章を通して聴くと、この曲は「人生について」というタイトルが相応しいような気がします

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佐藤俊介 ✕ 東京交響楽団でモーツアルト「ヴァイオリン協奏曲第1番」、「交響曲第26番」他を聴く ~ ミューザ川崎「モーツアルトマチネ」 / 新日本フィル来年5月度ルビー定期 開演時間変更

2020年01月19日 07時22分25秒 | 日記

19日(日)。新日本フィルから「開演時間変更のお知らせ」という文書が届きました。内容は2020/2021シーズン定期演奏会「アフタヌーン コンサート・シリーズ」の第39回演奏会(2021年5月14日と15日:バッハ「ミサ曲ロ短調BWV.232」)の開演時間を、両日とも14時から18時へ変更するというものです 理由は「指揮者の強い希望により子ども達による合唱を起用することになった」ためと書かれています

新日本フィルはすでに2020/2021シーズン継続案内を昨年中に会員あて発送しており、1月25日までに申込書を事務局に提出するよう求めています 私はつい先日郵送したばかりです。すでに申込書を提出している人で、今回の変更により21年5月の公演を聴けなくなる人は、1月末までにチケット・ボックスに連絡すれば5月度公演を除く7回連続券を送付するとのことです

今回の措置で疑問に思うのは、なぜ会員継続案内を済ませて受付している今になって開演時間の変更を知らせてくるのか、ということです 開演時間の変更は児童合唱の追加に伴うリハーサル時間の確保が主な理由だと推測しますが、4時間もずれるのは大きな変更です こうした問題は昨年中に新シーズンの案内を送る前に解決しておくべきことです

開演時間の変更は「指揮者の強い希望による」とのことですが、このような”強い希望”が通るのは音楽監督として4シーズン目を迎える上岡敏之氏だからこそだと思います これが客員指揮者だったら、いくら”強い希望”でも通るわけがないと思います 私は長年、新聞関係団体の事務局に務めていたので、楽団事務局のご苦労が手に取るように分かります 会場のトリフォニーホールの使用時間を変更し、オーケストラはもちろんのこと、独唱者5人と合唱団に時間変更を周知したうえで、会員向けの通知を出し、5月度ルビー(アフタヌーン・シリーズ)のキャンセルにも対応しなければならない また、今回の変更措置により、郵送費等のコストが増え、ある程度の減収も覚悟しなければならないかもしれません

「少しでも公演内容を良くしたい」という上岡敏之音楽監督の気持ちはよく分かるし、聴く側としてはとても有難いことだと思います しかし、私が懸念するのは、そうした”強い希望”が、楽団の運営経費の増大につながり、それが会員券の値上がりに跳ね返ってくるのではないか、ということです くれぐれもそのようなことがないようにしていただきたいと思います

ということで、わが家に来てから今日で1937日目を迎え、ポンぺオ米国務長官とエスパー国防長官が連名で17日付の米紙に「韓国は防衛にもっと貢献できるし、そうすべきだ」と、在韓米軍駐留経費の増額を要求した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       次は日本の番だ!  シンゾーはどこまでドナルドを説得できるか 問われそ~だな

 

         

 

昨日、ミューザ川崎で「モーツアルトマチネ『モーツアルト ✕ 青年時代』」を聴きました   プログラムは①C.P.E.バッハ「シンフォニア 変ホ長調 作品 183/2、H.664」、②T.リンリ―Jr.「ヴァイオリン協奏曲ヘ長調」、③モーツアルト「交響曲第26番 変ホ長調 K.184/161a」、④同「ヴァイオリン協奏曲 第1番 変ロ長調 K.207」です 指揮とヴァイオリン=佐藤俊介、管弦楽=東京交響楽団です

佐藤俊介は東京生まれ。2010年J.S.バッハ国際コンクール第2位、2013年からアムステルダム音楽院古楽科教授、2018年6月からオランダ・バッハ協会第6代音楽監督を務めています

 

     

 

オケは20数名の小規模編成です 左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります プログラム冊子の「本日の出演者」には「水谷晃(コンサートマスター)」と表示されていましたが、何らかの理由で出演が取りやめになり、アシスタント・コンマスの田尻順が代演を務めました

1曲目はC.P.E.バッハ「シンフォニア 変ホ長調 作品183/2、H.664」です この曲はカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(大バッハの次男:1714-1788)がハンブルクで活動していた1775~76年に作曲された4曲のシンフォニアの1曲です 第1楽章「アレグロ・ディ・モルト」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「アレグレット」の3楽章から成りますが、切れ目なく演奏されます

佐藤俊介が登場し、指揮ぶりで演奏を開始します 全体の曲想は、モーツアルトが尊敬していた「ハンブルクのバッハ」らしい溌剌としたもので、佐藤俊介は弦楽器にノンビブラートによる古楽器奏法を求め、メリハリのある演奏を展開しました 彼は楽譜を見ながら、時に後ろを振り返って指揮ぶりをし、オケから生き生きとした音楽を引き出していました

2曲目はT.リンリーJr.「ヴァイオリン協奏曲 ヘ長調」です この曲はモーツアルトと同じ年にイギリスで生まれた作曲家トーマス・リンリーJr.(1756-1778)が作曲した、完全な形で残された唯一のヴァイオリン協奏曲です 第1楽章「モデラート」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「ロンド」の3楽章から成ります 全体的に若さ溢れる曲想で「イギリスのモーツアルト」と呼ばれたリンリーJr.の面目躍如といった感があります 演奏では第1楽章における佐藤俊介の独奏ヴァイオリンが素晴らしかったです 作曲者リンリーJr.は残念なことにボートの事故で22歳の若さで死去したそうです 天才は若死にする

 

     

 

3曲目はモーツアルト「交響曲 第26番 変ホ長調 K.184/161a」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が17歳の時=1773年に作曲した作品ですが、原題は「シンフォニア」です この曲はモーツアルトが3回目のイタリア旅行からザルツブルクに帰国して間もなく作曲した作品です 第1楽章「モルト・プレスト」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグロ」の3楽章から成りますが、切れ目なく演奏されます

この曲でも、古楽器奏法によるメリハリの効いた演奏が展開されました 今は亡きアーノンクールだったらこういう演奏をするだろうな、と思わせるような明快で振幅の大きい演奏でした また、この曲ではホルンが2本加わりましたが、2本ともナチュラルホルンを使用して、古楽器特有のくすんだ良い音を出していました

最後の曲は「ヴァイオリン協奏曲 第1番 変ロ長調 K.207」です この曲もモーツアルトが1773年に作曲した作品です モーツアルトが作曲した第1番から第6番までのヴァイオリン協奏曲は、故郷ザルツブルクで作曲されたことから「ザルツブルク協奏曲」と呼ばれていますが、作曲者自身またはザルツブルクの宮廷礼拝堂楽団の首席奏者A.ブルネッティのために作曲されました 第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「プレスト」の3楽章から成ります

佐藤俊介はノンビブラートでグングン押していきます 全体的に明るく躍動感に満ちた演奏で、若きモーツアルトの青春の息吹を感じさせるエネルギッシュで清々しい演奏でした

オーボエの荒木奏美(首席)と浅原由香(客員)の二人の軽快な演奏が冴えていました

佐藤俊介の演奏は生で聴く機会がほとんどなかったのですが、今回聴いてみて、非常にアグレッシブで集中力に満ちた演奏をする人だな、と思いました オランダ・バッハ協会第6代音楽監督というのも頷けます

 

     

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萩原麻未、辻彩奈、安達真理、横坂源、加藤雄太でシューベルト「ピアノ五重奏曲”ます”」、「弦楽三重奏曲第1番」、ドビュッシー「月の光」他を聴く ~ 文京シビックホール「夜クラシック Vol.24」

2020年01月18日 07時22分26秒 | 日記

18日(土)。わが家に来てから今日で1936日目を迎え、11月の米大統領選で民主党候補指名を争うウォーレン上院議員が14日のテレビ討論会後に「私をうそつき呼ばわりするのか」とサンダース上院議員に詰め寄り、サンダース氏は「そちらこそ私をうそつきと言った」と反論した というニュースを読んで感想を述べるモコタロです

 

     

     民主党は仲間内で喧嘩してる場合か!  「一番のウソつきはトランプ」で一致だろ

 

         

 

昨日、夕食に「卵とトマトの炒め物」を作りました 砂糖、塩、胡椒だけの味付けで簡単で美味しいです

 

     

 

         

 

昨夜、文京シビックホールで「夜クラシック Vol.24 」を聴きました プログラムは①ドビュッシー「月の光」、②エルンスト「シューベルト『魔王』の主題による大奇想曲」、③J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」より「プレリュード」、④シューベルト「弦楽三重奏曲第1番変ロ長調D.471」、⑤同「ピアノ五重奏曲イ長調D.667”ます”」です 演奏はピアノ=萩原麻未、ヴァイオリン=辻彩奈、ヴィオラ=安達真理、チェロ=横坂源、コントラバス=加藤雄太です

ピアノの萩原麻未は2010年第65回ジュネーブ国際コンクール〈ピアノ部門〉で優勝。パリ国立高等音楽院及び同音楽院修士課程修了、モーツアルテウム音楽院を卒業、内外のオーケストラとの協演、室内楽などで活躍しています

ヴァイオリンの辻彩奈は1997年岐阜県生まれ。2016年モントリオール国際音楽コンクール第1位。現在、東京音楽大学特別奨学生として在学中です

ヴィオラの安達真理は桐朋学園大学、ウィーン国立音楽大学、ローザンヌ高等音楽院などを修了。室内楽奏者として内外のコンサートに出演しています

チェロの横坂源は桐朋学園大学、シュトゥットガルト国立音楽大学、フライブルク国立音楽大学で研鑽を積む。2010年ミュンヘン国際音楽コンクール第2位に入賞しています

コントラバスの加藤雄太は桐朋学園大学卒。現在、神奈川フィル客演契約首席奏者を務めています

 

     

 

自席は1階26列18番、センターブロック左から2つ目です

会場の照明が落とされ、舞台も客席も真っ暗になり無音状態になります すると舞台中央から静かなピアノのメロディーが聴こえてきます やがて演奏に合わせるかのようにスポットライトの照明がだんだん明るくなっていき、萩原麻未の姿が浮かび上がります 演奏しているのはドビュッシー「月の光」です この曲はクロード・ドビュッシー(1862-1918)が1890年に作曲した「ベルガマスク組曲」の第3曲で、印象主義への第1歩を示す作品です 「蜜蜂と遠雷」をはじめ映画音楽としてよく使われる曲です 萩原麻未の一つの大きな特徴である「弱音の美しさ」が発揮されたファンタジックな素晴らしい演奏でした

2曲目はエルンスト「シューベルト『魔王』の主題による大奇想曲」です この曲はチェコのヴァイオリニスト・作曲家のハインリヒ・ヴィルヘルム・エルンスト(1814-1865)が1854年に作曲した作品です 辻彩奈は、魔王と、その姿に怯える子供、その息子を抱えて馬を走らせる父親による対話を、超絶技巧を尽くした迫真の演奏で再現、ヴァイオリン1挺で悲劇の物語を紡ぎ出しました

3曲目はJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番ト長調」より「プレリュード」です この曲はヨハン・セバスティアン・バッハ(1685‐1750)がケーテン時代の1720年頃に作曲した6つの無伴奏チェロ組曲の最初の曲です 2日前に岡本侑也の演奏で聴いたばかりですが、横坂源の方が若干テンポが速めだったように思います 音楽の深さは作品そのものによるものかもしれませんが、演奏は素晴らしかったです

4曲目はシューベルト「弦楽三重奏曲第1番変ロ長調D.471」です この曲はフランツ・シューベルト(1797-1828)が1816年に作曲に着手したものの、第1楽章と第2楽章の初めの部分だけしか作曲されなかった未完の作品です 辻彩奈、安達真理、横坂源による演奏です。弦楽四重奏曲と違い 若干 物足りないかな、と思って聴いていましたが、まったくそんなことはなく、若き青年シューベルトの溌剌とした音楽の魅力が伝わってきました これは3人の演奏が素晴らしかったからこそです

演奏前のトークで辻彩奈と横坂源が「この日の5人の出演者は数年前『題名のない音楽会』で初めて一緒に演奏しました その時すごく楽しかったので、いつかまた同じメンバーで演奏したいと思っていたのです。今回その望みが叶いました」と語っていました

 

     

 

プログラム後半はシューベルト「ピアノ五重奏曲イ長調D.667”ます”」です この曲はシューベルトが1819年に作曲した作品ですが、ピアノ四重奏(ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)+コントラバスという変則的な編成をとっているのが特徴です 第4楽章が歌曲「ます」の主題による変奏曲であるため「ます」の愛称で呼ばれています 第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「スケルツォ:プレスト」、第4楽章「主題と変奏:アンダンティーノ」、第5楽章「アレグロ・ジュスト」の5楽章から成ります

5人全員が登場し、さっそく演奏に入ります。全曲を通して感じたのは、萩原麻未の節度のあるピアノの素晴らしさです ピアノが前面に出過ぎると弦楽器の音を殺してしまいますが、彼女の場合は、主張すべきところはしっかり主張しながら、節度を持って絶妙なバランス感覚で演奏しています 辻彩奈、安達真理、横坂源、加藤雄太の弦楽器群も見事なアンサンブルを奏でます 演奏前のトークで横坂源が、この曲について「何かと忙しい現代と違い、シューベルトの生きていた時代の、同じ景色をいつまでも見ているような のんびりした雰囲気を感じます」と語っていましたが、まさに「言い得て妙」な表現です いつ終わるか分からないような、同じフレーズが繰り返される、それがシューベルトのDNAだと言わんばかりの曲想です 最終楽章のフィナーレ近くで、あたかも曲が終わるかのように弦楽奏者の弓が一斉に上がる箇所がありますが、リード役の辻彩奈は「ここで拍手が来るかもしれないから、そうならないようにしなければ」と考えたのでしょう。あまり間を置かず、メロディーの繰り返しに入りました 愉悦感に満ちた素晴らしい演奏でした

満場の拍手に、安達真理が「今日のコンサートが私たちの演奏ツアーの最後です。これでこの仲間たちとも最後かと思うと、達成感とともに寂しさを感じます さて、アンコールに入りますが、今年初めてという方もいらっしゃると思います シューベルトと言えばウィーン。ウィーンと言えば・・・そんな曲を演奏します」と語り、ヨハン・シュトラウス2世(安達真理編)のワルツ「美しく青きドナウ」を御機嫌に演奏、楽しい雰囲気の中でコンサートを締めくくりました

この日の5人は息もピッタリで アンサンブルが素晴らしいので、またの機会に是非聴きたいと思います

 

     

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マーティン・ブラビンズ ✕ ヨルゲン・ライエン ✕ 東京都交響楽団 でマクミラン「トロンボーン協奏曲」、エルガー「エニグマ変奏曲」、ラヴェル「クープランの墓」を聴く

2020年01月17日 07時19分46秒 | 日記

17日(金)。わが家に来てから今日で1935日目を迎え、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が海外逃亡した事件に絡み、元会長の弁護団のうち弘中惇一郎弁護士と高野隆弁護士が弁護人を辞任したことが 16日分かった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     弁護団に黙って海外逃亡したら 切れ者の弁護士も 面目丸つぶれだ  バカバカしい

 

         

 

昨日、夕食に「鶏の唐揚げ」を作りました 今年初めてですが、とても美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、サントリーホールで東京都交響楽団の第895回定期演奏会Bシリーズを聴きました プログラムは①ラヴェル「クープランの墓」、②マクミラン「トロンボーン協奏曲」(日本初演)、③エルガー「エニグマ変奏曲」です 演奏は②のトロンボーン独奏=ヨルゲン・ライエン(ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団首席)、指揮=マーティン・ブラビンズです

指揮をとるブラビンスはイングリッシュ・ナショナル・オペラ音楽監督、英国王立音楽大学客員教授などを務めています

 

     

 

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの都響の編成。コンマスは矢部達哉です

1曲目はラヴェル:組曲「クープランの墓」です 「クープランの墓」はモーリス・ラヴェル(1875-1937)が1914年から17年にかけてピアノ曲(全6曲)として作曲、その後、1919年に4曲を抜粋して管弦楽用に編曲しました この曲は、18世紀フランスの大作曲家フランソワ・クープランの音楽に捧げるオマージュとして作られました 第1曲「プレリュード」、第2曲「フォルラーヌ」、第3曲「メヌエット」、第4曲「リゴードン」から成ります

ブラビンズの指揮で演奏に入ります 第1曲はラヴェル特有の浮遊感が魅力です 第2曲以降は舞曲ですが、なかでも第4曲は躍動感に満ちた演奏が繰り広げられます

2曲目はマクミラン「トロンボーン協奏曲」の日本初演です この曲はジェームズ・マクミラン(1959-)が2016年に作曲、2017年にアムステルダムでヨルゲン・ライエンの独奏により初演されました マクミランはこの「トランペット協奏曲」を 先天的な脳の病気により5歳で亡くなった孫娘サラ・マリア・マクミランに捧げました。トロンボーンは18世紀までは宗教音楽と深い結び付きがあったので、追悼の意味で独奏楽器にトロンボーンを選んだのでしょう 曲は単一楽章ですが、内容的には4つの部分から成ります

ブラビンズの指揮で演奏に入ります ライエンは最初、比較的大きな弱音器を付けたトロンボーンで演奏し、途中から通常の弱音器に代え、その後、それを外して演奏しました ライエンの演奏は緩急 高低が自由自在で、とくにフィナーレのコラールの宗教的とでも言うべき叙情的な演奏が強く印象に残りました

アンコールは、ライエンのトロンボーンと、矢部、双紙、古川、店村の弦楽四重奏によってアルヴォ・ペルト「Vater  unser」が叙情的に演奏され、満場の拍手を浴びました

 

     

 

プログラム後半はエルガー「エニグマ変奏曲」です この曲はエドワード・エルガー(1857-1934)が1898年から翌99年にかけて作曲した 主題と14の変奏曲から成る作品です 原題は「創作主題による変奏曲」ですが、各変奏曲には頭文字だけの記号が与えられ、それらは作曲者の妻や友人たちを暗示しているので、「エニグマ(謎)の変奏曲」と呼ばれています

私がこの曲に期待するのは第9変奏「ニムロッド」です     この変奏は親友のオーギュスト・ヨハネス・イェーガーを表しています    ニムロッドは旧約聖書に出てくる狩の名人で、イェーガーはドイツ語で「狩人」を意味しています。そういう関係から「ニムロッド」は彼の愛称だったのです

第8変奏から続けて静かに演奏されますが、次第に荘重でどこか懐かしい音楽が奏でられ、感動的に収束していきます ブラビンズは、私の思い描いた通りのゆったりとしたテンポで音楽を進めました。とても素晴らしい演奏でした

「ニムロッド」と言えば、毎年夏に来日するアジア・ユース・オーケストラ(A.Y.O)のアンコールを思い出します この曲は、世界各国でのオーディションを通過した総勢約100人の若者たちで構成されるA.Y.Oが最初に取り組む課題曲であると同時に演奏ツアーの最終日のアンコール曲として演奏する曲なのです 毎年「これがツアー最後の演奏!」という感傷から、演奏しながら涙を流す若者たちを見かけます 作品自体の素晴らしさと相まって、毎年感動で背筋が寒くなります

 

     

     

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芸劇ブランチコンサート・名曲リサイタル サロン「岡本侑也のチェロ」を聴く~バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」、カザルス「鳥の歌」、コダーイ「無伴奏チェロ・ソナタ」

2020年01月16日 07時26分06秒 | 日記

16日(木)。わが家に来てから今日で1935日目を迎え、大相撲春場所4日目の15日、横綱白鵬が日本相撲協会に休場を届け出た というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     白鵬の休場は例年のことだからもう慣れた  黒星続きなら黒鵬に名前を変えたら?

 

         

 

昨日、夕食に「野菜と挽肉のドライカレー」を作りました ドライカレーは私の定番料理です。何回食べても飽きません

 

     

 

         

 

昨日、東京芸術劇場コンサートホールで芸劇ブランチコンサート「名曲リサイタル・サロン 第5回 岡本侑也」を聴きました プログラムは①J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV.1007 」、②カザルス「鳥の歌」、③コダーイ「無伴奏チェロ・ソナタ  作品8」です

岡本侑也はミュンヘン音楽大学を首席で卒業、同大学院ソロ科も首席で修了。2017年エリザベート王妃国際音楽コンクールのチェロ部門第2位、イザイ賞を受賞したほか 多くのコンクールに入賞している実力者です

 

     

 

1曲目はJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV.1007 」です この曲は、ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750)がケーテン時代(1717-1723)に書いたと考えられています バッハが作曲した無伴奏チェロ組曲は6曲ありますが、19世紀には練習曲のような位置づけにあり、音楽的な価値が認められるようになったのはチェロの近代的な奏法を確立したカザルスが1904年に公開演奏してからでした この曲は「プレリュード」「アルマンド」「クーラント」「サラバンド」「メヌエット」「ジーグ」の6曲から成ります

岡本侑也が登場し「プレリュード」の演奏に入ります 「何とふくよかな音だろう」というのが第1印象です。後のインタビューで彼は、大ホールでソロの曲を弾くのは今回が初めてだと語っていましたが、小ホールと違い残響の長い大ホールは、バッハの音楽の大きさと深さを感じ取るのに最適です 朝から小雨交じりの湿度の高い天候だったので、チェロの音が湿っぽくならないか、と心配していましたが、そんな不安を吹き飛ばすような快演でした

2曲目はカザルス「鳥の歌」です この曲はパブロ・カザルス(1876‐1973)の生まれ故郷のカタロニア民謡です この曲が人口に膾炙したのは、1971年10月24日「国連の日」にニューヨークの国連本部において、カザルスが「私の生まれた故郷カタルーニャでは、鳥はピース、ピース、ピースと鳴くのです」と語り、この曲を演奏してからです

岡本侑也の演奏を聴きながら、かつて映像で観たカザルスの語りと演奏を思い出していました しみじみと良い曲だと思います

 

     

 

最後の曲はコダーイ「無伴奏チェロ・ソナタ  作品8」です この曲はゾルタン・コダーイ(1882-1967)が1915年に作曲、1918年に初演されました 第1楽章「アレグロ・マエストーソ・マ・アパッショナート」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります 

演奏前にナビゲーターの八塩圭子さんが「この曲は、チェロの4本の弦のうち下の2本を半音下げるようにという指示があるそうです。いま岡本さんは調弦中です」と説明しましたが、それだけで音楽の印象はかなり違ってくるんだろうな、と思いました

岡本侑也の演奏で第1楽章に入りますが、全体的に コダーイが研究したハンガリー民族音楽特有のリズムやメロディーの片りんが色彩感豊かに聴けました    また、低音域から高音域まで幅広く響かせることができるチェロの表現特性をあらためて認識することができました    それにしても、この超絶技巧曲を何なく涼しい顔で弾き切った岡本侑也は大したものだと思います

         

5月以降3回分のチケットを前売りするとアナウンスがあったので、ホール入口近くの前売りデスクに並びました 5月:石田泰尚(ヴァイオリン)、7月若林顕(ピアノ)、9月:砂川涼子(ソプラノ)ですが、5月の石田組長はパスして、若林顕と砂川涼子のチケットを買いました 一般発売は1月17日(金)からとのこと。良い席はお早めに

 

     

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新日本フィル2020 / 2021シーズン定期会員継続へ / ブレイディみかこ著「THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本」を読む ~ 貧困者支援、母子支援、子ども支援など

2020年01月15日 07時25分26秒 | 日記

15日(水)。風邪を引いたらしく喉が痛いので内科で診てもらいました。喉が赤くなっているがインフルエンザではないと言われ、一安心しました   薬をもらってきたのでしばらくは お酒の代わりに飲み続けることになります 昨年も1月に風邪を引いて2回分のコンサート・チケットを無駄にしています そういう悲しい過去があったので、今回は早めに病院に行きました

ということで、わが家に来てから今日で1934日目を迎え、トランプ米大統領は13日、イランのソレイマニ司令官殺害の根拠をめぐり、司令官主導の米大使館攻撃計画などの「差し迫った脅威」があったかは「どうでもよい」とツイッターに書いた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプの信条は「攻撃は最大の防御」らしいけど あまりにも場当たり主義的だ

 

         

 

昨日の夕食は、千葉県勝浦市在住の大学時代の友人S君が送ってくれた体長30センチ超のサバを塩焼きにして、「マグロの山掛け」「里芋の味噌汁」「生野菜サラダ」を作りました サバは脂がのってとても美味しかったです

 

     

 

         

 

新日本フィル2020/2021シーズン定期会員を継続することとし、申込用紙を送付しました アフタヌーン・コンサートシリーズ(金曜)のS席です。ベートーヴェン・イヤー(生誕250周年)ということで、このシリーズでは交響曲第3番から第8番までとトリプル・コンチェルトが取り上げられます 他のシリーズ(トリフォニー、サントリー、みなとみらい)では1曲もベートーヴェンの作品が取り上げられません 交響曲第1番と第9番は20年の年末特別演奏会で、第2番は21年3月の「すみだ平和祈念音楽祭」で取り上げられる予定です アフタヌーン・シリーズの目玉は上岡敏之指揮によるバッハ「ミサ曲ロ短調」(21年5月)です また、ブザンソン国際指揮者コンクール優勝の沖澤のどか指揮によるラヴェル「ボレロ」他(20年9月)は注目公演です

 

         

 

ブレイディみかこ著「THIS  IS  JAPAN  英国保育士が見た日本」を読み終わりました ブレイディみかこは1965年福岡生まれ。1996年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業で数年間勤務した後、英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。2017年「子どもたちの階級闘争」で新潮ドキュメント賞を、2019年「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」でYahoo!ニュース/本屋大賞2019ノンフィクション本大賞を受賞しています

 

     

 

本書は著者が20年ぶりに英国から日本へ一時帰国し、2016年1月末から4週間の間、日本における貧困者支援、母子支援、子ども支援、非正規労働者支援などの分野で働く人々を取材し、自らもボランティア活動に従事しながら、日本の弱者が置かれている現状を、英国における実態と比較しながらリポートしたドキュメントです

この本は次の5章から構成されています

第1章「列島の労働者たちよ、目覚めよ」

第2章「経済にデモクラシーを」

第3章「保育園から反緊縮運動をはじめよう」

第4章「大空に浮かぶクラウド、地にしなるグラスルーツ」

第5章「貧困の時代とバケツの蓋」

第3章においては「保育士配置基準がヤバすぎる衝撃」という見出しのもと、英国と日本の保育士の配置基準(国の基準)が比較されています それによると、

0歳児:日本では3人に保育士1人。英国では3人に1人。

1歳児:日本では6人に保育士1人。英国では3人に1人。

2歳児:日本では6人に保育士1人。英国では4人に1人。

3歳児:日本では20人に保育士1人。英国では8人に1人。

4歳児:日本では30人に保育士1人。英国では8人に1人。

となっています 著者は3歳児の保育士の人数に衝撃を受け、自分が英国の保育園で20人の園児の面倒をみることを想像し、「どうやって日本の保育士はそんな現場をこなしているのだろう」と驚きとともに疑問を呈しています しかし、実際に世田谷区の ある公立保育園で3歳児の保育の様子を見ていたら納得できたと書いています。「英国の保育園と違って、ここには遊具がない。三輪車もスクーターもスケートボードもないし、ジャングルジムも、滑り台もない だから玩具の取り合いをする子供もいないし、乗り物や遊具から落ちるという事故も起きないのだ」と書いています。すべての保育園がそういうわけではないと思いますが、英国と比べればそれに近いのが実態なのでしょう

また、その保育園で「汚れたオムツを保護者が家に持ち帰るようになっている」と聞いて、著者は英国だったら親が激怒するだろうと書いています これについては、処理費用が掛かるという理由を聞いて納得する一方で、オムツ処理費用はそれほど高額なのだろうか、と疑問を呈しています これについても保育園によって扱いは異なるかも知れません

一方、「英国と比較すると、日本の保育施設利用料は驚くほど安い」と書いています 著者が2015年まで働いていた英国の私立保育園では、8時から17時半まで預けた場合、1日に50ポンド(1ポンド=160円で8000円)の費用が掛かる。1か月預けると900ポンド(約14万4000円)以上になる 3歳児になれば、政府が週15時間は補助してくれるが、それでもフルタイムで子どもを保育園に預けられる家庭はそれなりの収入のある家庭だ、と書いています これに対し、日本では政府の補助金が潤沢に入っているといいます。保育園側の説明によると、ほとんどが国の予算で運営されているので、イギリスに比べると親の負担はずっと低く、都内の認可保育園で0歳から2歳だと、一番高くても親の負担は6万円台だといいます

その反面、英国では親が保育園を選べるが、日本では独特の「選考制度」があり自由に選べないという実態に驚いています 日本の場合、公立・私立を問わず保育園ではなく自治体に申し込むことになっており、親が子供の保育を必要とする理由を証明する書類、収入額を証明する書類、申し込みチェックシートなど、英国では考えられない面倒な手続きが必要とされ、その上 選考には「点数制」が採用され、フルタイムで働いている家庭は点数が高いという風になっており、高得点の家庭から順番に保育園に振り分けられるというものです

さらに、「日本の場合は親の収入によって保育料も変わるが、誰がいくら払っているかは分からないシステムになっているので、その意味では平等だと言える」のに対し、「英国では高額でインテリアにも凝った保育園にはミドルクラス家庭の子どもが集まり、貧困世帯の保育園には近隣の低所得層の家庭の子どもが集まっている。そこには日本の保育園のような階級のダイヴァーシティ(多様性)はない」と両国の根本的な違いを指摘しています

著者は同じ章の中で、「保育の仕事は政治のあり方次第でクールにも、アンクールにもなる 幼児を大人の経済活動の邪魔になる厄介者と看做す政治は、保育士をクールな職業にはできない」とし、「未来の世代のために借金を残すべきではないと言っても、その未来の世代が存在しなくなったら国は滅亡する。日本の反緊縮運動は保育園から始めよう」と語っています

すべてをご紹介できないので、著者の専門分野である保育に絞ってご紹介しましたが、著者は「自分の目で見たもの以外は信じない」という信念のもと、底辺の労働の現場に赴いて、英国との比較のもとに鋭い分析を加えています 時には本書のような”堅い”本を読むのも良いかもしれません。お薦めします

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第17回東京音楽コンクール優勝者コンサートを聴く ~ ロドリーゴ「パストラル協奏曲」(瀧本実里)、プッチーニ「誰も寝てはならぬ」他(工藤和真)、ベートーヴェン「第4ピアノ協奏曲」(秋山沙穂)

2020年01月14日 07時20分47秒 | 日記

14日(火)。わが家に来てから今日で1933日目を迎え、楽器販売「ヤマハミュージックジャパン」の管楽器情報などを発信するツイッターが11日夜、楽器ケースに入らないよう注意を呼びかけた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ゴーン被告はお金があったから無事に脱出できたけど 庶民は箱の中で窒息するよ

 

         

 

昨日の夕食は「白みそ肉鍋」にしました 鍋料理は身体が温まりますね

 

     

 

         

 

昨日、東京文化会館大ホールで第17回東京音楽コンクール優勝者コンサートを聴きました 出演は木管部門第1位の瀧本実里さん(フルート)、声楽部門第2位〈最高位〉及び聴衆賞の工藤和真君(テノール)、ピアノ部門第1位及び聴衆賞の秋山沙穂さんです バックを務めるのは三ツ橋敬子指揮東京フィル。司会は朝岡聡です

 

     

 

第17回を迎えるこのコンサートを聴くのは初めてです 自席は3階1列3番、3階の最前列ではあるものの左端のどん詰まりです 会場は5階まで文字通り満席です。よく入りました

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは依田真宣です 彼もこのコンクールの入賞者(2006年の第4回「弦楽部門第2位」)です

最初に演奏するフルートの瀧本実里さんは1994年栃木県出身。東京音楽大学卒。国内のフルート・コンクールでの入賞歴が多数あり、2018年のロームミュージックファンデーション奨学生です

演奏するのはJ.ロドリーゴ「パストラル協奏曲」です この曲はホアキン・ロドリーゴ(1901‐1999)が1978年にジェームズ・ゴールウェイの委嘱により作曲したフルート協奏曲です 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「ロンド」の3楽章から成ります

三橋敬子の指揮で第1楽章に入ります 極めてテンポが速く超絶技巧を要する曲想ですが、瀧本さんは確かな技術でクリアします 第2楽章はフルートの音色が生かされたカンタービレで、瀧本さんの美しいフルートが会場を満たしました 第3楽章は一転、躍動感に満ちた曲想で、再び瀧本さんの技巧が生かされました

2番手はテノールの工藤和真君です。1990年岩手県出身で、第53回日伊声楽コンコルソ2017第1位及び聴衆賞をはじめ 入賞歴が多数あります

最初にジュゼッペ・ヴェルディの歌劇「仮面舞踏会」より「永久に君を失えば」を、恵まれた体躯を活かした余裕を感じさせる歌唱力で歌い上げ、一気に聴衆の心を鷲づかみにしました 次いでジャコモ・プッチーニの歌劇「ラ・ボエーム」より「冷たき手を」を叙情的に歌いましたが、説得力がありました 次にピエトロ・マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より「母さん、あの酒は強いね」を感情表現豊かに歌い上げました そして最後にプッチーニの歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」を感動的に歌い上げ満場の拍手とブラボーを浴びました 私が聴いた若手のテノールの中では宮里直樹(2012年の第10回「声楽部門第2位」)と同じくらい有望な人材だと思います

 

     

 

プログラムの最後に演奏する秋山沙穂さんは1997年東京都出身。2012年、ショパン国際コンクールin Asia 中学生部門アジア大会金賞及びソリスト賞受賞。2018・2019年 宗次エンジェル基金、日本演奏連盟新進演奏家国内奨学生。現在、東京藝大4年在学中です

秋山さんの演奏を初めて聴いたのは昨年6月22日開催の東京藝大と韓国音楽院との合同演奏会でのベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第27番」です。2回目に聴いたのは7月4日開催の「藝大モーニングコンサート」で演奏したプロコフィエフ「ピアノ協奏曲第2番」でした それぞれの感想は翌日のブログに書いていますが、読み返してみるとかなり高い評価を与えています そのことがあったからこそ、今回の優勝者コンサートを聴こうと思ったのです

秋山さんが演奏するのはベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番ト長調作品58」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1805年から翌06年にかけて作曲、1808年にアン・デア・ウィーン劇場で交響曲第5番、同第6番などとともに公開初演されました 第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート」、第3楽章「ロンド:ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります この曲は、第1楽章冒頭がピアノ独奏で始まる点、第2楽章と第3楽章が続けて演奏される点など、当時としては画期的な試みが施されています

第1楽章が秋山さんの弱音のピアノで開始されます この楽章ではカデンツァが見事です 第2楽章冒頭は弦楽合奏と独奏ピアノとの”対話”、というより”問答”が聴けます 切り込むような弦楽合奏と内省的なピアノとのやり取りが独特の緊張感を生み出します   私には次のように聴こえました

ベートーヴェン(弦楽):私のコンチェルトを演奏したいというのはお前か?

秋山沙穂(ピアノ):そうでございます。

ベートーヴェン:なぜ私の曲なのか?

秋山:今年は先生の生誕250年目に当たりますので、これを機会に是非演奏したいと思います。

ベートーヴェン:どれほどの練習をしてきたのか?

秋山:今日のために一生懸命努力を重ねて参りました。

ベートーヴェン:そんな小さい声では私の耳には聴こえんぞ!

秋山:先生の前で緊張しております。

ベートーヴェン:しっかり弾きたまえ!

秋山:ありがとうございます。精一杯頑張ります。

ベートーヴェン:ほほぉ、なかなかやるじゃないか!

特徴のあるこの冒頭の音楽は、タイトルは忘れましたが数年前に観た映画音楽で使われていました 続けて演奏される第3楽章は一転、それまでの暗い森から抜け出したかのような明るく弾むような曲想に転換します 秋山さんはこの辺の切り替えが鮮やかです ベートーヴェン・イヤーの幕開けに相応しい素晴らしい演奏でした

この優勝者コンサートが「前売り券完売」になるほど人気があるとは思いもよりませんでした 来年からはもっと早くチケットを手配しようと思います

 

     

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クリストフ・エッシェンバッハ ✕ マリソル・モンタルヴォ ✕ 藤村実穂子 ✕ NHK交響楽団でマーラー「交響曲第2番ハ短調”復活”」を聴く / モコタロが動画デビューです!

2020年01月13日 07時20分33秒 | 日記

13日(月)。わが家に来てから今日で1932日目を迎え、動画初登場のモコタロです

 

             

             顔を洗って出直すところです

 

         

 

昨日、NHKホールでNHK交響楽団第1930回定期演奏会(1月Aプロ・2日目)を聴きました プログラムはマーラー「交響曲第2番ハ短調”復活”」です 演奏はソプラノ=マリソル・モンタルヴォ、メゾ・ソプラノ= 藤村実穂子、合唱=新国立劇場合唱団、管弦楽=NHK交響楽団、指揮=クリストフ・エッシェンバッハです

指揮をとるエッシェンバッハは1940年、ドイツのブレスラウに生まれ、ピアニストとして1962年のミュンヘンのARD国際音楽コンクールで最高位(1位なしの2位)入賞を果たし、1965年のクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝しました その後、ジョージ・セルやヘルベルト・フォン・カラヤンの支援のもと、30代半ばから指揮活動に重心を移していきました フィラデルフィア管、パリ管、ワシントン・ナショナル響などの音楽監督を歴任し、2019年秋にベルリン・コンツェルトハウス管の音楽監督に就任しました

マリソル・モンタルヴォはアメリカ出身のソプラノですが、今回はハンナ・エリーザベト・ミュラーの降板に伴い 急きょ代わりに歌うことになりました   エッシェンバッハとはウィーン・フィルやパリ管など数多くのオケで共演しているとのことです

藤村実穂子は言うまでもなく、ワーグナー音楽の聖地で開催される「バイロイト音楽祭」で主役級の役柄で9年連続出演するなど、日本を代表する世界的なメゾ・ソプラノ歌手です

 

     

 

「交響曲第2番ハ短調”復活”」はグスタフ・マーラー(1860-1911)が1888年から1894年にかけて作曲(1903年改訂)したソプラノとメゾ・ソプラノ独唱、合唱を伴う交響曲です

マーラーは第1交響曲を完成直後の1888年に1楽章形式の交響的作品を作曲し、「葬礼」と名付けました 後に彼はこれを、第2交響曲の第1楽章とします そして、1893年から1894年までに第2楽章~第5楽章を作曲します。この間 5年間の空白期間がありますが、マーラーが非常に尊敬していた指揮者・ピアニストのハンス・フォン・ビューローの前で試奏したところ、酷評されたことが原因であると考えられています マーラーは1901年、ある友人に「私が彼に『葬礼』を弾いて聴かせると、彼はナーヴァスに驚愕の色を表し、『トリスタン』でさえ私の作品に比べればハイドンの交響曲のようなものだと言い、まるで狂人のように振る舞った」と報告しています そんなビューローが1894年2月に死去します。マーラーが第2交響曲の第3楽章を書き上げた後のことでした マーラーはその葬儀に参列しましたが、その時に流れてきたオルガンと合唱によるクロブシュトックの詩に基づく「復活」を聴き、「電光のように私を打ち、すべてがはっきりと私の魂の前に現れた」と大きな感銘を受け、同じ詩によるコラールを第5楽章で用いました ベートーヴェンの「第九」を意識し、交響曲の最終楽章に合唱を入れることに逡巡していたマーラーは、自作を酷評した音楽家の葬儀で 図らずも 救いを見い出したことになります

マーラーは、さらに第4楽章に歌曲「子供の魔法の角笛」から「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」と「原光」を転用ました

第1楽章「アレグロ・マエストーソ」、第2楽章「アンダンテ・モデラート」、第3楽章「スケルツォ:穏やかに流れるような動きで」、第4楽章「『原光』極めて荘重に  しかし素朴に」、第5楽章「スケルツォのテンポで」の5楽章から成ります

 

     

 

新国立劇場合唱団の男女混声コーラス約85名が入場し配置に着き、次いでオケの面々が入場します 左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります 右奥にはハープが2台スタンバイします。コンマスは伊藤亮太郎です

スキンヘッドがトレードマークのエッシェンバッハが登場し、第1楽章に入ります 冒頭、チェロが集中力に満ちた力強い演奏を展開します 凄い音だと思って よく見ると、首席チェロ・藤森亮一の隣に日本フィルのソロ・チェロ奏者、辻本玲がスタンバイしています。凄いわけです エッシェンバッハは曲想に応じてクラリネットとオーボエにベルアップ奏法を求め、直線的に音を会場に届けようとします しかし、第1楽章から第3楽章までは、全体的に普通の演奏の域を脱していません 第3楽章終盤の演奏中にソリストの二人が舞台右袖から入場し舞台中央のティンパニの後方にスタンバイします これは間を置かずスムーズに第4楽章に移行するための措置です メゾ・ソプラノ藤村実穂子が『原光』冒頭の「赤く可愛いバラよ!」をドイツ語で歌い出した時、私は感動で背筋が寒くなるのを感じました 彼女はそういう力を持っています また、彼女の歌に寄り沿って演奏されるオーボエ(坪池泉美?)が素晴らしいパフォーマンスを展開しました 最初は座ったまま歌っていた合唱団は、中盤から立って歌いましたが、新国立劇場合唱団はいつ聴いても素晴らしいと思います 世界に通用するコーラスはこの新国立劇場合唱団とバッハ・コレギウム・ジャパン合唱団の2団体だと思います

間を置かずに第5楽章の冒頭「最後の審判」がオケの総奏で開始されます その後、舞台裏のバンダ(金管と打楽器のよる別動隊)が加わり、舞台上のオケと舞台裏のバンダとの対話が交わされますが、とくにフルートとバンダの息の長い対話が素晴らしかったです そして、オケ、ソリスト、合唱 総動員によるフィナーレは「これがマーラーだ」という大きな感動とともに閉じられました

カーテンコールが何度も繰り返されたこの日の公演は、人間の声が入った後半の楽章が圧倒的に良かったと思います それはマーラーが意図していたことであったかも知れません

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