
第1巻の内容紹介:
競馬界の盟主となった吉田善哉という人間を浮き彫りにしていく
1921年吉田善助の三男坊として生まれた善哉少年。子供のころから馬のお腹から生まれたといわれたほどの馬好き。父からまかされた千葉の牧場。青年善哉の苦闘の始まりだった。結核で兵役は免除されたものの、人も馬も飢え、死と隣り合わせで遮二無二生き抜いた戦中。そして、戦後、父善助の果たせなかった夢を追う善哉の意欲はとどまることを知らず、日本人にはまれな強大なエネルギーで社台ファームを形作っていく、その馬産に賭ける前半生を描く。
1999年のJRA馬事文化賞、ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞した、ノンフィクションの名作。
●吉川良(よしかわ・まこと)
1937年、東京生まれ。芝高等学校卒、駒澤大学仏教学部中退。1978年『自分の戦場』で第2回すばる文学賞受賞。1979年『八月の光を受けよ』で芥川賞候補、『その涙ながらの日』で二度目の候補、1980年『神田村』で三度候補となった。1999年JRA馬事文化賞、ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。
血と知と地 (下)
吉川 良 (著)
社台ファームの総帥、故吉田善哉の伝記的作品
社台ダイナースクラブの成功により順調に発展する事業だが、前進しか知らない善哉は、得た金は種牡馬や繁殖牝馬の購入に注ぎ続けた。そして、ノーザンテースト産駒ダイナガリバーによる、父善助からの悲願であるダービー制覇。さらにあの奇跡の種牡馬サンデーサイレンスの獲得、山元トレセンの設立と、その意欲はとどまることなく、父子二代の望みは社台王国として達成され、息子たちの時代に引き継がれる。10年にわたり交友のあった著者が描く吉田善哉の生涯。
吉川 良さんの文章を読みなおしてみた。
「なるほど なるほど」と感心し、同じ競馬好きとして納得もする。
ペン1本でフリーの文章家、作家として食べている。
並の人ではない。真似ようもない。
やはり人として深く交わっているし、見るべきものを見、感じるべきことを感じている。
機智に富むし、一つの世界観を有している。
その表現力は相当の修練によるものであろう。
思うに毎日書く、毎日創造的に生きる。
感性を磨く。
思えば当方は、常に競馬場では一人であった。
ことさらに他人との接触を避けてきた。
だから表現する内容も乏しいのである。
沼田利根