中国で呼吸器感染症が流行 「90億人移動」で拡大懸念

2025年01月08日 22時00分42秒 | 医科・歯科・介護

1/8(水) 20:31配信 8日、北京の病院で、マスクを付けて順番を待つ人々(AFP時事)

 【北京時事】中国で呼吸器感染症の一種であるヒトメタニューモウイルス感染症">ヒトメタニューモウイルス感染症が流行している。

中国では今月下旬に始まる春節(旧正月)の大型連休前後に延べ90億人の移動を見込んでおり、国内外への感染拡大が懸念されている。


博士問題とマードック先生と余 夏目漱石

2025年01月08日 21時49分11秒 | 社会・文化・政治・経済


 が博士に推薦されたという報知が新聞紙上で世間に伝えられたとき、余を知る人のうちの或者あるものは特に書を寄せて余の栄選を祝した。
余が博士を辞退した手紙が同じく新聞紙上で発表されたときもまた余は故旧新知こきゅうしんちもしくは未知のあるものからわざわざ賛成同情の意義に富んだ書状を幾通いくつうも受取った。
伊予いよにいる一旧友は余が学位を授与されたという通信を読んで賀状を書こうと思っていた所に、辞退の報知を聞いて今度は辞退の方を目出めでたく思ったそうである。
もらっても辞してもどっちにしても賀すべき事だというのがこの友の感想であるとかいって来た。
そうかと思うと悪戯好いたずらずきの社友は、余が辞退したのを承知の上で、ことさらに余を厭がらせるために、夏目文学博士殿と上書うわがきをした手紙を寄こした。
この手紙の内容は御退院を祝すというだけなんだから一行いちぎょうで用が足りている。従って夏目文学博士殿と宛名を書く方が本文よりも少し手数てすうが掛った訳である。

 しかしすべてこれらの手紙は受取る前から予期していなかったと同時に、受取ってもそれほど意外とも感じなかったものばかりである。
ただ旧師マードック先生から同じくこの事件について突然封書が届いた時だけは全く驚ろかされた。
 マードック先生とは二十年前に分れたぎり顔を合せた事もなければ信書の往復をした事もない。
全くの疎遠そえんで今日まで打ち過ぎたのである。けれどもその当時は毎週五、六時間必ず先生の教場へ出て英語や歴史の授業を受けたばかりでなく、時々は私宅まで押し懸けて行って話を聞いた位親しかったのである。
 先生はもと母国の大学で希臘語ギリシャごの教授をしておられた。
それがある事情のため断然英国を後にして単身日本へ来る気になられたので、らの教授を受ける頃は、まだ日本化しない純然たる蘇国語スコットランドごを使って講義やら説明やら談話やらを見境みさかいなくられた。
それがため同級生はことごと辟易へきえきていで、ただけむかれるのを生徒のぶんと心得ていた。
先生もそれで平気のように見えた。大方どうせこんな下らない事を教えているんだから、生徒なんかに分っても分らなくてもかまわないという気だったのだろう。
けれども先生の性質が如何にも淡泊たんぱく丁寧ていねいで、立派な英国風の紳士と極端なボヘミアニズムを合併がっぺいしたような特殊の人格を具えているのに敬服して教授上の苦情をいうものは一人もなかった。
 先生の白襯衣ホワイトシャートを着た所は滅多めったに見る事が出来なかった。
大抵はねずみ色のフラネルに風呂敷ふろしきの切れはしのような襟飾ネクタイを結んでましておられた。
しかもその風呂敷に似た襟飾ネクタイが時々胴着チョッキの胸から抜け出して風にひらひらするのを見受けた事があった。
高等学校の教授が黒いガウンを着出したのはその頃からの事であるが、先生も当時は例の鼠色のフラネルの上へ繻子しゅすか何かのガウンを法衣ころものように羽織はおっていられた。
ガウンの袖口には黄色い平打ひらうちひもが、ぐるりと縫い廻してあった。
これは装飾のためとも見られるし、または袖口をくくる用意とも受取れた。
ただし先生には全く両様の意義を失った紐に過ぎなかった。
先生が教場できょうに乗じて自分の面白いと思う問題を講じ出すと、殆んどガウンも鼠の襯衣シャツも忘れてしまう。
はてはわがいる所が教場であるという事さえ忘れるらしかった。
こんな時には大股おおまたで教壇を下りて余らの前へひげだらけの顔を持ってくる。
もし余らの前に欠席者でもあって、一脚の机がいていれば、必ずその上へ腰を掛ける。
そうして例のガウンの袖口に着いている黄色い紐を引張って、一尺程の長さをこしらえて置いて、それでぴしゃりぴしゃりと机の上をたたいたものである。
 当時余はほんの小供こどもであったから、先生の学殖がくしょくとか造詣ぞうけいとかを批判する力はまるでなかった。
第一先生の使う言葉からが余自身の英語とはすこぶる縁の遠いものであった。
それでも余は他の同級生よりも比較的熱心な英語の研究者であったから、分らないながらも出来得る限りの耳と頭を整理して先生の前へ出た。
時には先生のうちまでも出掛けた。
先生の家は先生のフラネルの襯衣シャツと先生の帽子――先生はくしゃくしゃになった中折帽なかおれぼうに自分勝手に変な鉢巻はちまきを巻き付けてかむっていた事があった。
――すべてこれら先生の服装に調和するほどに、先生の生活は単純なものであるらしかった。

       中

 その頃のは西洋の礼式というものを殆んど心得こころえなかったから、訪問時間などという観念を少しもさしはさむ気兼きがねなしに、時ならず先生を襲う不作法ぶさほうを敢てしてはばからなかった。ある日朝早く行くと、先生は丁度朝食あさめししたためている最中であった。
家が狭いためか、または余を別室に導く手数てかずを省いたためか、先生は余を自分の食卓の前に坐らして、君はもう飯を食ったかと聞かれた。先生はその時卵のフライを食っていた。
なるほど西洋人というものはこんなものを朝食うのかと思って、余はひたすら食事の進行を眺めていた。実は今考えるとその時まで卵のフライというものを味わった事がないような気がする。
卵のフライという言葉もそれからずっと後に覚えたように思われる。
 先生はやがて肉刀ナイフ肉匙フォークを中途で置いた。
そうして椅子を立ち上がって、書棚の中から黒い表紙の小形の本を出して、そのうちの或頁あるページを朗々と読み始めた。
しばらくすると、本をせてどうだと聞かれた。正直の所余には一言ひとことも解らなかったから、一体それは英語ですかと聞いた。
すると先生は天来の滑稽を不用意に感得したようにはばかりなく笑い出した。
そうしてこれは希臘ギリシャの詩だと答えられた。英国の表現エキスプレッションに、珍紛漢ちんぷんかんの事を、それは希臘語さというのがある。
希臘語は彼地かのちでもそれ位ずかしい物にしてあるのだろう。
高等学校生徒の余などに解るはずは無論ない。
それを何故なぜ先生が読んで聞かせたのかというと、詳しい理由は今思い出せないが、何でも希臘の文学を推称すいしょうした揚句あげくの事ではなかったかと思う。
とにかく先生はそういう性質たちの人なのである。
 先生の作った「日本におけるドン・ジュアンの孫」という長詩もたしか聞かされたように思う。
けれどもそのうちの或行あるぎょうにアラス、アラック、という感投詞が二つ続いていたと記憶するだけで、あとはまるで忘れてしまった。
 ベインの『論理学』を読めといって先生が貸してくれた事もあった。余はそれを通読するつもりでうちへ持って帰ったが、何分なにぶん課業その他が忙がしいので段々延び延びになって、何時いつまで立っても目的を果し得なかった。ほど経て先生が、久しいぜん君に貸したベインの本は僕の先生の著作だから保存して置きたいから、もし読んでしまったなら返してくれといわれた。
その本は大分丹念たんねんに使用したものと見えて裏表うらおもてとも表紙が千切ちぎれていた。
それを借りたときにも返した時にも、先生は哲学の方の素養もあるのかと考えて、小供心こどもごころうらやましかった。
 あるときどんな英語の本を読んだらかろうという余の問に応じて、先生は早速さっそく手近にある紙片に、十種ほどの書目しょもくしたためて余に与えられた。余は時を移さずその内の或物を読んだ。
即座に手に入らなかったものは、機会を求めて得るたびにこれを読んだ。
どうしても眼に触れなかったものは、倫敦ロンドンへ行ったとき買って読んだ。先生の書いてくれた紙片が、余のたもとに落ちてから、約十年の後に余は始めて先生の挙げたすべてを読む事が出来たのである。先生はあの紙片にそれほどの重きを置いていなかったのだろう。
凡てを読んでからまた十年も経った今日から見れば、それほど先生の紙片に重きを置いた余の方でも可笑おかしい気がする。
 外国から帰った当時、先生の消息を人伝ひとづてに聞いて、先生は今鹿児島の高等学校に相変らず英語を教えているという事が分った。
鹿児島から人が出てくる度に余はマードックさんはどうしたと尋ねない事はなかった。けれども音信はその後二人の間に全く絶えていたのである。ただ余が先生について得た最後の報知は、先生がとうとう学校をやめてしまって、市外の高台たかだいきょぼくしつつ、果樹の栽培さいばい余念よねんがないらしいという事であった。先生は「日本における英国の隠者いんじゃ」というような高尚こうしょうな生活を送っているらしく思われた。博士問題に関して突然余の手元に届いた一封の書翰は、実にこの隠者が二十余年来の無音ぶいんを破る価ありと信じて、とくに余のためにしたためてくれたものと見える。

       下

 手紙には日常の談話とことならない程度の平易な英語で、真率まじめに余の学位辞退を喜こぶむねが書いてあった。その内に、今回の事は君がモラル・バックボーンを有している証拠になるから目出めでたいという句が見えた。
モラル・バックボーンという何でもない英語を翻訳すると、徳義的脊髄という新奇でかつおもむきのある字面じづらが出来る。余の行為がこの有用な新熟語に価するかどうかは、先生の見識に任せて置くつもりである。(余自身はそれほど新らしい脊髄がなくても、不便宜なしに誰にでも出来る所作しょさだと思うけれども)
(余自身はそれほど新らしい脊髄がなくても、不便宜なしに誰にでも出来る所作しょさだと思うけれども)
 先生はまたグラッドストーンやカーライルやスペンサーの名を引用して、君の御仲間も大分あるといわれた。
これには恐縮した。余が博士を辞する時に、これら前人ぜんじんの先例は、ごうも余が脳裏のうりひらめかなかったからである。
――余が決断を促がす動機の一部分をも形づくらなかったからである。
もっとも先生がこれら知名の人の名を挙げたのは、辞任の必ずしも非礼でないという実証を余に紹介されたまでで、これら知名の人を余に比較するためでなかったのは無論である。
 先生いう、――われらが流俗以上に傑出しようとつとめるのは、人として当然である。
けれどもわれらは社会に対する栄誉の貢献によってのみ傑出すべきである。
傑出を要求するの最上権利は、すべての時において、われらの人物如何いかんとわれらの仕事如何によってのみ決せらるべきである。
 先生のこの主義を実行している事は、先生の日常生活を別にしても、その著作『日本歴史』においてあきらかにうかがう事が出来る。
自白すれば余はまだこの標準的スタンダード述作ウォークを読んでいないのである。
それにもかかわらず、先生が十年の歳月と、十年の精力と、同じく十年の忍耐を傾け尽して、ことごとくこれをこの一書の中に注ぎ込んだ過去の苦心談は、先生の愛弟子まなでし山県五十雄やまがたいそお君からくわしく聞いて知っている。
先生は稿を起すに当って、殆んどあらゆる国語で出版された日本に関するすべての記事を読破どくはしたという事である。
山県君は第一その語学の力に驚ろいていた。
和蘭語オランダごでも何でも自由に読むといってあきれたような顔をして余に語った。
述作じゅっさくの際非常に頭を使う結果として、しまいには天をあおいで昏倒こんとう多時にわたる事があるので、奥さんが大変心配したという話も聞いた。
そればかりではない、先生は単にこの著作を完成するために、日本語と漢字の研究まで積まれたのである。
山県君は先生の技倆ぎりょうを疑って、ずかしい漢字を先生に書かして見たら、うまくはないが、かくだけは間違なく立派に書いたといって感心していた。これらの準備からなる先生の『日本歴史』は、ことごとく材料を第一のみなもとから拾い集めて大成したもので、もうからない保証があると同時に、学者の良心に対してごうましからぬ徳義的な著作であるのはいうまでもない。
「余は人間にあとう限りの公平と無私とを念じて、栄誉ある君の国の歴史を今になお述作しつつある。
従って余の著書は一部人士じんしの不満を招くかも知れない。けれどもそれはやむを得ない。
ジョン・モーレーのいった通り何人なんびとにもあれ誠実を妨ぐるものは、人類進歩の活力を妨ぐると一般であって、その真正なる日本の進歩は余の心を深くかつ真面目まじめに動かす題目に外ならぬからである。」
 余は先生の人となりと先生の目的とを信じて、ここに先生の手紙の一節をありのままに訳出した。
先生は新刊第三巻の冒頭ぼうとうにある緒論しょろんをとくに思慮しりょある日本人に見てもらいたいといわれる。
先生から同書の寄贈を受ける日それを一読して満足な批評を書き得るならば、そうして先生の著書を天下に紹介する事が出来得るならば余のさいわいである。
先生の意は、学位を辞退した人間としての夏目なにがしに自分の著述を読んでもらって、同じく博士を辞退した人間としての夏目なにがしに、その著述を天下に紹介してもらいたいという所にあるのだろうと思うからである。
――明治四四、三、六―八『東京朝日新聞』――





モラルバックボーン

2025年01月08日 21時36分33秒 | 社会・文化・政治・経済

【見落としがちな道徳の本質(1)】

モラル・バックボーン

朝倉 喩美子

東京都教職員研修センター教授

【見落としがちな道徳の本質(1)】モラル・バックボーン
 

二十年ほど前のある土曜の午後、当時勤務していた学校の校庭にたたずむ女性が目についた。

ずっと校舎を眺めている。卒業生だというその女性は、訳あって渡米し数十年ぶりに帰国して、母校が懐かしくなり訪れてみたのだという。

「米国では苦難の連続で、自分の命を断ってしまおうかとさえ考えたこともあったが、何とか乗り越えてこられたのは、この学校で『モラル・バックボーン』をしっかりと身に付けてもらったおかげ」。

涙ぐみながらとつとつと語る言葉に、彼女の深い思いがにじんだ。

「モラル・バックボーン」――直訳すると「道徳性の背骨」である。

小学校の頃に培われた道徳性が生き方の指針となり、彼女の人生の節目ごとに支え続けたというのである。

道徳性とは、よりよく生きようとする人間の背骨にもなり得るのだ。私にとって忘れられない言葉となった。

目まぐるしく変動する現代にあっては、物事の本質は見えにくい。

集団や社会が広がるほど、自分にとって異質な存在が増え、分かりにくさの多様性は拡大する。

また、情報社会の急速な進展は、世界の最良・最上の情報に触れられる良さがある反面、不安要素を拡大・増幅させる手だてにもなっている。

その中で何を信じ、誰を頼りにして、どのように判断すればいいのか、大人にも見当がつかない場合が多い。青少年にとっても同様である。

目の前のささいな出来事にとらわれて全体像が見えなかったり、感情的ないさかいに翻弄されて自分を見失ったり、あれこれ考えあぐねて行為の選択に迷ったりすることもあるだろう。

そんなとき、最終的に正しい示唆を与えてくれるのは「モラル・バックボーン」、つまり不動不変の根本的な原理・原則、「人としての在り方、根本的なものの見方・考え方、行動規範」ではないだろうか。

とするならば、教師は、大人は、社会は、目の前の子供たちに、確かな背骨となるモラル・バックボーンを備えてやらねばならない。

それを子供自身が内面的なよりどころにしながら、自らの意志と力で豊かな自己実現を図っていけるようにしてやりたい。

教師である私の道徳研究は、この女性との出会いから本格化した。

現在私は、東京都内各小・中学校の道徳教育を志す教員らと、授業研究を重ねている。

道徳科の授業とはどういうものなのか、教師は「何のために」「何を」「どのように」指導するのか、追究する中で見えてくる本質的なものを探っている。

この連載を通じて、これからの道徳教育を一緒に考える材料にしていただければ幸いである。

【プロフィール】
あさくら・ゆみこ 東京都教職員研修センター研修部授業力向上課教授。
日本道徳科教育学会副会長。練馬区立小学校統括校長など公立学校長を歴任したほか、東京都小学校道徳教育研究会会長、小学校学習指導要領解説道徳編作成協力者を務めた。
「教師の自己満足に終わらない学び手主体の授業を創る」(『道徳教育』2018年10月号)ほか、雑誌寄稿、論文多数。
 

兵庫県の斎藤元彦知事(8日、県庁で今年初の定例会見

2025年01月08日 21時11分25秒 | 社会・文化・政治・経済

斎藤元彦兵庫県知事「見ていない」漏えい疑いがある元県幹部の男性のパソコンに保存の私的情報

配信 日刊スポーツ

8日、県庁で今年初の定例会見を行った。  

斎藤氏の疑惑告発文書を巡り、作成した元県幹部の男性のパソコンに保存されていた私的情報が外部に漏れた疑いがある問題について、1月7日付で弁護士らによる第三者委員会を設置したことを明らかにした。
斎藤氏は「24年度末まで、場合によっては年度を超えるかもしれないということですが、その当たりを目途に報告を受けられるように第三者委員会と調整している」と報告を受けたとした。  
昨年11月の知事選に、斎藤氏の応援を目的に立候補した政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が元県幹部の男性の私的情報とされるデータを入手したとし、交流サイト(SNS)上で公開するなどした。  
斎藤氏は12月、公開されたデータが「本物か分からない」とし、第三者委員会で調査する意向を示していた。  
斎藤氏は設置される第三者委員会で「県保有の情報漏えいに関することが公益通報に該当するか、県の保有情報が外部に漏えいした可能性があることの事実確認、同一性の確認だと思う」とし、「原因や背景を究明してもらうことを目的として調査する」と述べた。  
男性の私的情報はSNSで拡散し続けており、被害を食い止めるためにも、県政のトップが重大事案と判断し、刑事告発を視野に入れるべきではとの意見もある。  
拡散している男性の私的情報について、県政のトップとして把握しておくべき情報ではとの指摘に斎藤氏は「見ていない」と述べ、今後は「必要に応じて対応していく」とした。

公明・山口氏、衆参同日選に否定的 「望ましくない」

2025年01月08日 21時04分05秒 | その気になる言葉

配信  時事通信

記者団の質問に答える公明党の山口那津男元代表)

=8日午後、首相官邸 公明党の山口那津男元代表は8日、夏の参院選に合わせて衆院選を行う「衆参同日選」に否定的な考えを示した。

山口 那津男(やまぐち なつお)氏  首相官邸で記者団の質問に答え、「同日選は憲法が予想しているところではないだろう。いっぺんに大量の民意を固定してしまうやり方は望ましくない」と語った。

山口氏はこれに先立って、石破茂首相(自民党総裁)と約40分間会談した。

首相は昨年12月のテレビ番組で、内閣不信任決議案が可決されるなどした場合の同日選の可能性を問われ、「ありますよね」と述べている。 


対話は、自他共の人間的成長を促し、世界を変える原動力

2025年01月08日 14時54分01秒 | その気になる言葉

▼時は最も得がたいもの―ヒルティ

カール・ヒルティは、スイスの下院議員を務め、法学者、哲学者、著名な文筆家としても知られる。

日本では『幸福論』、『眠られぬ夜のために』の著者として有名。

▼社会活動に積極的な高齢者ほど健康。

▼戦争時に平和運動を貫くことが難しい。

だが、信念を貫き獄死した人もいたのだ。

時に迎合するのではない。

真実を見極めて、信念を訴える。

混沌とした時代だからこそ、覚悟の生き方が求められる。

▼対話は、自他共の人間的成長を促し、世界を変える原動力だ。

人と人とを結び、不信と差別とを理解と信頼へと転換させていく。

 

 

 


農業の担い手育てよう!

2025年01月08日 14時31分49秒 | 社会・文化・政治・経済

第2節 力強く持続可能な農業構造の実現に向けた担い手の育成・確保

農業者の減少・高齢化等に直面している我が国の農業が、成長産業として持続的に発展していくためには、効率的かつ安定的な農業経営を目指す担い手の育成・確保が必要です。

本節では、農業経営体の動向、認定農業者制度や法人化、家族経営支援のほか、経営継承・新規就農、女性が活躍できる環境整備等の取組について紹介します。

(1)農業経営体等の動向

(農業経営体数は減少傾向で推移)

農業経営体数については減少傾向で推移しており、令和5(2023)年は前年に比べ4.7%減少し92万9千経営体となりました(図表3-2-1)。

このうち個人経営体は前年に比べ5.0%減少し88万9千経営体(全体の95.6%)となった一方、団体経営体は前年に比べ1.5%増加し4万1千経営体(全体の4.4%)となっています。

なお、個人経営体のうち、主業経営体は19万1千経営体、準主業経営体は11万6千経営体、副業的経営体は58万2千経営体となっています。

図表3-2-1 農業経営体数

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(基幹的農業従事者数は約20年間で半減)

基幹的農業従事者(*1)数は約20年間で半減しており、平成12(2000)年の240万人から令和5(2023)年は116万4千人にまで減少しています(図表3-2-2)。このうち49歳以下の基幹的農業従事者数は13万3千人と全体の約1割を占めている一方、65歳以上は82万3千人と全体の約7割を占めています。また、令和5(2023)年の基幹的農業従事者の平均年齢は68.7歳となっており、高齢化が進行しています。

図表3-2-2 基幹的農業従事者数と平均年齢

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*1 特集第2節を参照

(2)認定農業者制度や法人化等を通じた経営発展の後押し

(農業経営体に占める認定農業者の割合は23.7%に増加)

図表3-2-3 認定農業者数

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認定農業者制度は、農業者が経営の改善を進めるために作成した農業経営改善計画を市町村等が認定する制度です。同計画の認定数(認定農業者数)については、令和4(2022)年度は前年度に比べ1.1%減少し22万経営体となった一方、農業経営体に占める認定農業者の割合については、令和4(2022)年度は前年度から0.8ポイント増加し23.7%となっています(図表3-2-3)。このうち法人経営体の認定数については一貫して増加しており、令和4(2022)年度は前年度に比べ2.7%増加し2万9千経営体となり、法人経営体に占める認定農業者の割合は87.0%となっています。

農林水産省では、認定農業者が同計画を達成できるよう農地の集積・集約化や経営所得安定対策等の支援措置を講じています。

(農業法人の大規模化が進展)

図表3-2-4 法人経営体数

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農業経営の法人化には、経営管理の高度化や安定的な雇用、円滑な経営継承、雇用による就農機会の拡大等の利点があります。令和5(2023)年の法人経営体数は前年から2.5%増加し3万3千経営体となりました(図表3-2-4)。農業生産に占める法人経営体等の団体経営体のシェアは年々拡大しており、令和2(2020)年は農産物販売金額の37.9%、経営耕地面積の23.4%を占めています。

都府県における経営耕地面積規模別の経営体数については、平成12(2000)年以降、5ha未満の経営体数は減少する一方、10ha以上の経営体数は一貫して増加しています(図表3-2-5)。特に大規模層ほど法人経営体が占める割合が増加しており、30ha以上の経営体では平成27(2015)年に50.0%であった法人経営体の割合は令和2(2020)年には60.0%に拡大しています。離農した経営体の農地の受け皿となることにより、農業法人の大規模化が進展している様子がうかがわれます。

農林水産省では、農業経営の法人化を進めるため、都道府県が整備している農業経営・就農支援センターによる経営相談や、専門家による助言等を通じた支援を行っています。

図表3-2-5 経営耕地面積規模別の経営体数(都府県)

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(事例)中山間地の農地保全と採算性を両立した大規模農業経営を展開(新潟県)

新潟県上越市
集積した農地での営農

集積した農地での営農

資料:有限会社グリーンファーム清里

冬期のハウス栽培

冬期のハウス栽培

資料:有限会社グリーンファーム清里

新潟県上越市(じょうえつし)の有限会社グリーンファーム清里(きよさと)では、中山間地の農地保全という社会的使命と経営体としての採算性を両立した大規模な農業経営を展開しています。

山深い清里(きよさと)地区において平成5(1993)年に設立された同社は、離農者や農作業の委託を希望する者が増加する中、「郷土の農地を守る」との経営理念を掲げ、積極的に農地を引き受けて耕作放棄地の拡大を防止しています。また、集積した農地で効率的な農業を展開しており、令和5(2023)年産では165haの水稲生産を行っています。

一方、同社は、農地を徐々に引き受けてきた結果、自社のみの営農では限界があると判断し、経営規模の無秩序な拡大を回避しています。そのため、近隣地域の集落に呼び掛けて五つの集落法人を立ち上げ、法人同士で農作業の相互協力、農地利用調整、共同販売を行う基盤を構築しています。

くわえて、同社では、中山間地の豪雪地帯にある営農環境を踏まえ、冬期は水稲育苗ハウスでアスパラ菜等の栽培に取り組み、周辺住民に宅配販売しているほか、歩道等の除雪作業の受託等により、従業員の周年雇用と地域貢献を両立しています。

さらに、経営の多角化・複合化を図るため、ワイン用ぶどうの栽培や繁殖和牛の飼育等も進めています。

今後とも女性を含めた若者の雇用を創出し、収益性の高い農業経営を実践することにより、地域農業の発展に貢献していくこととしています。

(集落営農組織の法人化が進展)

図表3-2-6 集落営農組織数

データ(エクセル:35KB / CSV:3KB

集落営農組織は、地域農業の担い手として農地の利用、農業生産基盤の維持に貢献しています。令和5(2023)年の集落営農組織数は前年に比べ137組織減少し1万4,227組織となりました(図表3-2-6)。一方、法人化した集落営農組織数は年々増加しており、任意組織(法人化していない組織)よりも組織基盤が強固な法人が着実に増えています。

農林水産省では、集落営農組織に対し、法人化のほか、機械の共同利用や人材の確保につながる広域化、高収益作物の導入といった各々の状況に応じた取組を促進し、人材の確保や収益力向上、組織体制の強化、効率的な生産体制の確立を支援していくこととしています。

(雇用労働力の確保等の経営発展に向けた課題に対応する必要)

農業における就業者数のうち雇用者数については、平成12(2000)年の30万人から令和5(2023)年は55万人にまで増加しています(図表3-2-7)。

一方、国内の生産年齢人口が今後大幅に減少していくことが避けられない状況において、各産業で人材獲得競争が激化することが見込まれます。

農林漁業の有効求人倍率については、平成26(2014)年以降は1.0倍を超過するなど、人手不足の状況が継続しています(図表3-2-8)。

離農の進行が見られる中、農地等の受け皿となる経営体の多くは、雇用労働力が確保できなければ農業経営を拡大していくことは難しい状況にあります。今後、農業分野で雇用労働力の継続的な確保が課題となる中、食料安全保障の観点からも、雇用労働力の確保に関する施策を講じていくことが重要となっています。

農林水産省では、農業における労働力不足を解消するため、国内外からの人材の受入体制整備、呼び込み・確保、育成までを一体的に支援することとしています。また、就労条件の改善や他産地・他産業との連携等による労働力確保のための支援を行っています。

図表3-2-7 農業における就業者のうち雇用者数

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図表3-2-8 農林漁業の有効求人倍率

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(農業法人の財務基盤は他産業と比べて脆弱な状況)

農業法人の経営状況については、売上高の減少に対する耐性を示す指標である損益分岐点比率が過半の部門で90%を超えており、概して売上高の減少に対する耐性が低くなっています(図表3-2-9)。また、中長期的な財務の安全性を示す指標の一つである自己資本比率はおおむね30%を下回っている一方、借入金依存度は50%を上回る水準となっています。

経営規模や産業特性の異なる、他産業の中規模企業と一概に比較することはできませんが、農業法人については、総じて、債務超過となるリスクが高く、財務基盤が脆弱(ぜいじゃく)であるといった実態にあることがうかがわれます。このため、農業経営の改善を進めるなど、経営基盤の強化を図っていくことが求められています。

図表3-2-9 農業法人の財務基盤に関する指標

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(農業者の経営管理の向上に向けた努力が重要)

適正な価格形成、環境負荷低減等の持続可能な農業の取組に向けては、生産コストの実態を消費者まで伝達することが必要です。そのためには、農業者による経営管理能力の向上に向けた取組の強化が必要となっています。

農林水産省では、適正な価格形成を通じた経営発展・経営基盤の強化の観点から、原価管理を含めた農業者の経営管理能力の向上等を促進する施策を実施することとしています。

くわえて、雇用確保や事業拡大、環境負荷低減や生産性向上のための新技術の導入等の様々な経営課題に対応できる人材の育成・確保を図るため、農業者のリ・スキリング(*1)等を推進することとしています。

このほか、各都道府県においても、営農しながら体系的に経営を学ぶ場として農業経営塾を開講する取組等により、農業者に対する研修機会の提供に取り組んでいます。

*1 職業能力の再開発・再教育のこと

(コラム)農業における「経営力」を養成するオンラインスクールが始動

オンラインでの講義

資料:一般社団法人
アグリフューチャージャパン

AFJ日本農業経営大学校(にほんのうぎょうけいえいだいがっこう)を運営する一般社団法人アグリフューチャージャパンでは、農業における「経営力」を養成するオンラインスクールを、令和5(2023)年6月に開講しました。

農業を取り巻く情勢が大きく変化する中、長期にわたって経営の持続性を確保していくためには、事業開発やマーケティング等の経営技術を養うことが重要となっています。

このため、同法人では、農業経営を志す人々を対象に、現場で働きながら学べるオンラインスクールを開講し、経営理論に基づく戦略的思考やノウハウを習得できるカリキュラムを設け、多様な農業の実現に向けた取組を後押ししています。

例えば次のステージの経営を目指す農業者等を対象とした「経営マスターコース」のカリキュラムは、「経営戦略」、「マーケティング」、「マネジメント」、「ファイナンス」の四つの領域から構成されており、農業の産業特性を踏まえながら、ヒト・モノ・カネに関する知識やスキルを体系的に習得できるよう工夫されています。

令和5(2023)年度は、農業経営者や後継者、独立を目指す法人従業員等約150人の受講者が、農業経営者として求められる判断力や各種スキル・ノウハウを学び、身に付けています。

今後は、アグリビジネス分野において、新たな価値を創出し、変革を起こす人材を育成する「イノベーター養成アカデミー」を令和6(2024)年4月に開講することとしており、次世代の農業経営者の育成に向けて精力的に活動を展開していくこととしています。

(農業者年金の被保険者数は減少傾向で推移)

農業者年金は、農業従事者のうち厚生年金に加入していない自営農業に従事する個人が任意で加入できる年金制度です。同制度においては農業者の減少・高齢化等に対応した積立方式・確定拠出型が採用されており、農林水産省では、青色申告を行っている認定農業者等やその者と家族経営協定を結び経営参画している配偶者・後継者等一定の要件を満たす対象者の保険料負担を軽減するための政策支援を実施し、農業者の老後生活の安定と農業者の確保を図っています。

図表3-2-10 農業者年金の被保険者数と受給権者数

データ(エクセル:33KB / CSV:2KB

農業者年金の被保険者数については減少傾向で推移しており、令和4(2022)年度は前年度に比べ614人減少し4万4,576人となっています(図表3-2-10)。一方、受給権者数については増加傾向で推移しており、令和4(2022)年度は前年度に比べ1,861人増加し5万5,376人となっています。

年金等を給付する事業を実施している独立行政法人農業者年金基金(のうぎょうしゃねんきんききん)では、若者や女性の加入拡大に向け、推進活動を実施しています。

(3)経営継承や新規就農、人材育成・確保等

(約7割の経営体が「後継者を確保していない」と回答)

5年以内の後継者の確保状況については、約7割の経営体が「確保していない」と回答しています(図表3-2-11)。農地はもとより、農地以外の施設等の経営資源や、技術・ノウハウ等を次世代の経営者に引き継ぎ、計画的な経営継承を促進することが必要となっています。

農林水産省は、将来にわたって地域の農地利用等を担う経営体を確保するため、地域の担い手から経営を継承した後継者が行う経営発展に向けた取組を市町村と一体となって支援するとともに、都道府県が整備している農業経営・就農支援センターにおいて相談対応や専門家による経営継承計画の策定支援、就農希望者と経営移譲希望者とのマッチングを行うなど、円滑な経営継承を進めています。

図表3-2-11 5年以内の後継者の確保状況別経営体数

データ(エクセル:33KB / CSV:2KB

(新規就農者数が前年に比べ減少)

令和4(2022)年の新規就農者数は、前年に比べ12.3%減少し4万5,840人となりました(図表3-2-12)。この要因としては、新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んでいた雇用が回復した影響等によって他産業からの就農者が減少したこと等が考えられます。

図表3-2-12 新規就農者数

年齢階層別では、60~64歳の新規就農者数は、前年に比べ30.8%減少し6,750人となりました。また、将来の担い手として期待される49歳以下の新規就農者数は、近年1万8千人前後で推移していましたが、令和4(2022)年は前年に比べ8.4%減少し1万6,870人となりました。さらに、49歳以下の新規就農者数のうち新規雇用就農者の割合は、令和4(2022)年には新規自営農業就農者(38.5%)を上回る45.7%を占めており、新規就農者の受け皿としても法人経営体の役割が大きくなっています。

就農形態別では、令和4(2022)年の新規自営農業就農者は前年に比べ14.9%減少し3万1,400人、新規雇用就農者は前年に比べ8.6%減少し1万570人、新規参入者は前年に比べ1.0%増加し3,870人となりました。

農業者の減少・高齢化が進む中、地域農業を持続的に発展させていくためには、農業の内外から若年層の新規就農を促進する必要があります。

このため、農林水産省では、農業への人材の一層の呼び込みと定着を図るため、就農相談会の開催や、職業としての農業の魅力の発信等について支援を行っています。また、就農準備段階や就農直後の経営確立を支援する資金や雇用就農を促進するための資金の交付に加え、経営発展のための機械・施設等の導入を地方と連携して親元就農も含めて支援するとともに、伴走機関等による研修向け農場の整備、新規就農者への技術サポート等の取組を支援しています。

このほか、農業経営基盤強化促進法に基づき、青年等就農計画を作成し市町村から計画の認定を受けた認定新規就農者は、令和4(2022)年度は前年度に比べ2.3%増加し1万806人となりました。農林水産省では、将来において効率的かつ安定的な農業経営の担い手に発展するような青年等の就農を促進するため、新規就農施策を重点的に支援しています。

(事例)新規就農の育成支援を受け、夫婦二人で楽しむ農業を実践(宮崎県)

 
宮崎県川南町(かわみなみちょう)に移住した保坂政孝(ほさかまさたか)さん・美幸(みゆき)さん夫妻は、新規就農者の育成サポートを受け、ピーマン農家として独立後、夫婦二人の時間を大切にしながら、二人で楽しむ農業を実践しています。

保坂さん夫妻は福岡県内で勤務していましたが、夫婦二人の時間が持てない生活を変えたいとの思いを抱えていました。そのような中、宮崎県の移住相談窓口を訪れた際に、同町の農業研修生への応募を勧められ、受入体制や支援制度が充実していたことに加え、自然豊かな環境や農業に魅力を感じたことから、夫婦二人で応募を決めました。

平成30(2018)年7月~令和2(2020)年6月の2年間にわたって研修施設で実践研修等を受講し、農業機械の取扱いや農作物栽培の基礎のほか、独立に向けた模擬経営研修等の実践的な知識等を習得しました。

また、独立に向けては、自ら農地を探す必要はなく、リース事業の支援を受けて新設されたハウスを取得できたほか、各種補助金の情報提供や運転資金の無利子融資等のサポートを受け、経営開始の準備を進めました。

令和2(2020)年7月に独立した後は、尾鈴(おすず)農業協同組合(以下「JA尾鈴」という。)のピーマン部会に所属し、研修時から指導を受けているベテラン農業者やJA尾鈴の指導員、ピーマン部会員等から巡回指導を受けながら、8月後半に苗を植え、10月から翌年6月まで収穫を行う日々を過ごしています。令和5(2023)年は20aのハウスでピーマンを栽培していますが、宮崎県(みやざきけん)経済農業協同組合連合会との契約栽培により、就農1年目から市場よりも安定した単価で出荷できるため、目安となる目標(20a規模で1,000万円)を上回る売上高を実現しています。

保坂さん夫妻は、経験を積み重ねる中でピーマン栽培への自信を深めており、今後とも地域の人々とのつながりやコミュニケーションを大切にするとともに、二人の時間を大切にしながら、楽しんで農業を続けていくこととしています。

(農業高校・農業大学校による意欲的な取組が進展)

図表3-2-13 農業大学校の卒業生数

 

農業経営の担い手を養成する農業高校は全ての都道府県、農業大学校は41道府県において設置されています。

このうち農業大学校の卒業生数については、平成26(2014)年度以降はほぼ横ばいで推移しており、令和4(2022)年度の卒業生数は1,735人、卒業後に就農した者は935人(卒業生全体の53.9%)となっています(図表3-2-13)。このほか、同年度の卒業生全体に占める自営就農の割合は14.3%、雇用就農の割合は34.1%となりました。

また、近年、GAP(*1)(農業生産工程管理)に取り組む農業高校・農業大学校も増加しており、令和5(2023)年3月末時点で111の農業高校、31の農業大学校が第三者機関によるGAP認証を取得しています。GAPの学習・実践を通じて、農業生産技術の習得に加えて、経営感覚・国際感覚を兼ね備えた人材の育成に資することが期待されています。

農林水産省では、若年層に農業の魅力を伝え、将来的に農業を職業として選択する人材を育成するため、スマート農業や有機農業等の教育カリキュラムの強化のほか、地域の先進的な農業経営者による出前授業等の活動を支援しています。

(事例)全国で初めて農業大学校生が構成員となる法人を設立(山口県)

資料:山口県立農業大学校

山口県防府市(ほうふし)の山口県立農業大学校では、全国で初めての取組として、農業大学校生が構成員となる法人を設立・登記し、学修カリキュラムにおいて農産物販売や新商品開発の事業に取り組んでいます。

同校では、令和5(2023)年4月に、米や麦等の生産や経営について学ぶ「土地利用学科」を新設し、ドローン等の先端技術を導入したスマート農業の授業を強化しています。また、同校と県の農業試験場、林業指導センターを統合した「農林業の知と技の拠点」を整備し、即戦力となる人材の育成や、先端技術開発の加速化のほか、生産から加工、販売まで手掛ける6次産業化の支援も行っています。

このような中、同校では、法人経営に必要な経営管理能力やビジネス感覚を身に付けるとともに、事業計画の決定プロセスや、会計・決算、経営責任等を実体験として学修できるフィールドとして、同年7月に「一般社団法人やまぐち農大(のうだい)」を設立しました。

同法人は、同校の全学生を構成員とし、農産物販売や新商品開発の事業に取り組むこととしています。同年度においては、新設された会社経営論等の学修カリキュラムに基づき、設立登記事務や青果物の販売実習に取り組み、同校等で生産された野菜・果実等の農産物や加工品等の仕入れ販売を行ったほか、交流イベント等を実施しました。

今後は、県内企業と連携して、若者視点に立ったアイデアや発想による6次産業化商品の開発に向けた検討を進めていくこととしています。

(4)女性が活躍できる環境整備

(女性の認定農業者数は前年度に比べ1.5%増加し1万2千経営体)

令和5(2023)年における女性の基幹的農業従事者数は、前年に比べ5.9%減少し45万2千人となりました(図表3-2-14)。女性の基幹的農業従事者は全体の38.8%を占めており、重要な担い手となっています。

令和4(2022)年度における女性の認定農業者数は、前年度に比べ1.5%増加し1万2千経営体となりました(図表3-2-15)。また、全体の認定農業者に占める女性の割合については、令和4(2022)年度は前年度に比べ0.1ポイント増加し5.3%となりました。

認定農業者制度には、家族経営協定等を締結している夫婦による共同申請が認められており、その認定数は5,841経営体となっています。

(女性が継続して経営参画している経営体は経営規模が大きく経営の多角化も進展)

女性の農業経営への参画動向について見ると、女性が継続して経営参画している経営体は、参画していない経営体に比べ販売金額規模や経営規模が大きいほか、経営の多角化や農業後継者の確保が進展していることがうかがわれます(図表3-2-16)。

一方で、女性が経営参画しなくなった経営体は、経営規模が小さいほか、経営の多角化や農業後継者の確保が進展していないことがうかがわれます。

(農業委員、農協役員、土地改良区等理事に占める女性の割合は増加)

農業委員会等に関する法律及び農業協同組合法においては、農業委員や農協理事等の年齢や性別に著しい偏りが生じないように配慮しなければならないことが規定されています。

農業委員や農協役員、土地改良区(土地改良区連合を含む。)理事に占める女性の割合については増加傾向で推移しており、令和4(2022)年度の農業委員に占める女性の割合は、前年度に比べ0.2ポイント増加し12.6%に、令和5(2023)年度の農協役員に占める女性の割合は前年度に比べ1.0ポイント増加し10.6%に、令和4(2022)年度の土地改良区等理事に占める女性の割合は前年度に比べ0.2ポイント増加し0.8%になりました(図表3-2-17)。

農林水産省では、「女性登用の意識醸成に向けて~農協の女性員外監事の活躍事例~」の公表、「土地改良団体における男女共同参画事例」の充実化等を通じて、女性登用の更なる推進に取り組んでいます。

 
(女性が働きやすく暮らしやすい環境を整備する必要)

農村においては、依然として、家事や育児は女性の仕事であると認識され、男性に比べ負担が重い傾向が残っています。

総務省の調査によると、令和3(2021)年における女性の農林漁業従事者の1日(週全体平均)の家事と育児の合計時間は2時間57分で、男性の26分に比べ長くなっています(図表3-2-18)。

男性・女性が家事、育児、介護等と農業への従事を分担できるような環境を整備することは、女性がより働きやすく、暮らしやすい農業・農村をつくるために不可欠です。そのためには、家事や育児、介護は女性の仕事であるとの意識を改革し、女性の活躍に関する周囲の理解を促進する必要があります。

(事例)地域の女性や若者から選ばれる職場づくりを推進(愛媛県)

愛媛県伊方町(いかたちょう)の農業法人である株式会社ニュウズでは、女性経営者のリーダーシップの下、地域の女性や若者から選ばれる職場づくりを推進しています。

同社は、12.6haの園地で、うんしゅうみかんや清見(きよみ)等の作期の異なる17品種のかんきつを栽培しており、通年出荷のほか、6次産業化や台湾への輸出等にも取り組み、先進的な経営を展開しています。

同社は、「本氣(ほんき)のみかんで幸せを届ける」ことを経営理念に掲げ、その実現に向けて「社員満足を追求し、将来の夢が語り合える会社」となるよう、スタッフが成長できる組織づくりや各スタッフのライフプランに合った働き方を可能にする取組を実践しています。

組織づくりに当たっては、採用の工夫から始め、繁忙期の勤務実態を示した上で、会社のビジョンに共感を持った人材を採用しています。また、定期的な個人面談や評価制度の導入により、各スタッフの夢や目標を実現するための会社のサポート体制や本人のアクションプランを確認しているほか、スタッフが設定した個人目標の達成度を評価して賞与や昇給を決定するなど、スタッフと組織の双方の成長を実現しています。

また、女性スタッフのライフスタイルが変化しても仕事を継続できるよう、配置転換や勤務形態の変更を柔軟に行うほか、個々の作業の見直しにも着手し、作業工程や収支等のデータの把握や業務の「見える化」を行い、業務改善や効率化を推進しています。

このような経営改革の推進により、地域の女性や若者から選ばれる職場として、雇用機会が少ない半島地域における雇用の創出に寄与しています。今後は「愛媛(えひめ)みかん」の可能性を広げるため、女性経営者としての目線も活かしながら、栽培面積の更なる拡大や生産技術の向上、加工品の開発等を推進していくこととしています。

農林水産省では、労働に見合った報酬や収益の配分、仕事や家事、育児、介護等の役割分担、休日等について家族で話し合い、明確化する取組である家族経営協定の締結を推進しています。

また、農業経営における共同経営者としての女性の地位・責任を明確化するため、農業経営改善計画における共同申請を推進しています。

さらに、農業において女性が働きやすい環境整備に向けて、農業法人等における男女別トイレ、更衣室、託児スペース等の確保に対する支援を行っています。

(地域をリードする女性農業者の育成と農村の意識改革が必要)

令和5(2023)年における女性の経営への参画状況を見ると、経営主が女性の個人経営体は個人経営体全体の6.5%、経営主が男性だが、女性が経営方針の決定に参画している個人経営体の割合は24.1%となっており、女性が経営に関与する個人経営体は全体の30.7%となっています(図表3-2-19)。

今後の農業の発展、地域経済の活性化のためには、女性の農業経営への参画を推進し、地域農業の方針策定にも参画する女性リーダーを育成していくことが必要です。あわせて、女性活躍の意義について、男性も含めた地域での意識改革を行うことにより、女性農業者の活躍を後押ししていくことが重要です。

これまで農村を支えてきた女性農業者が直面してきた、生活・経営面での悩みや解決策といった過去の知見や経験を新しい世代に伝えることや、学びの場となるグループを作り、ネットワーク化することは女性農業者の更なる育成に有効と言えます。また、女性農業者が持つ視点を活用し、消費者や教育機関といった農業者の枠を超えた者とのネットワークの形成を進めることも期待されています。

このように活動の幅を更に広げていくことは、農業・農村に新しい視点をもたらすとともに、女性農業者の農業・農村での存在感の向上にもつながるものと考えられます。

このため、農林水産省は、地域のリーダーとなり得る女性農業経営者の育成、女性グループの活動支援、家族経営協定の締結や地域における育児・農作業のサポート活動等の女性が働きやすい環境づくり、女性農業者の活躍事例の普及等の取組を支援しています。また、令和5(2023)年10月には、女性リーダーの育成や農村地域の男性の意識改革を促すこと等を狙いとして、女性農業委員の地域での活動等を紹介する動画を公表し、都道府県等における研修での活用を促しました。

(「農業女子プロジェクト」が設立10周年を迎え、多様な活動を展開)

「農業女子プロジェクト」は、社会全体での女性農業者の存在感を高め、女性農業者自らの意識改革や経営力発展を促すとともに、職業としての農業を選択する若手女性の増加を図ることを目指し、多様な活動を展開しています。

平成25(2013)年に設立された同プロジェクトは、令和5(2023)年に設立10周年を迎えました。設立当時37人だったメンバーは1千人を超え、地域・世代を超えた全国レベルでの女性ネットワークに成長しました。参画企業や教育機関も徐々に拡大し、メンバーとの協同による商品・サービスの開発や未来の農業女子を育む活動といった多彩な取組が実施されています。

また、農業女子プロジェクト10周年記念として、女性が活躍する姿をさらに知ってもらうため、同年11月に、一般消費者とメンバーとの交流イベントを開催するとともに、特設Webサイト「わたしたちの未来への種まき」を開設し、女性農業者に出会える全国各地のイベントや女性農業者の未来への想いを紹介する動画を公開しました。


 

 

 

 

 

 

 

 


変化する世界情勢

2025年01月08日 14時23分41秒 | 社会・文化・政治・経済

第1章 国際情勢等の変化

1.国際情勢の変化

(1)グローバル化の進展

 冷戦終結を契機として、政治の壁の崩壊が進み、人、物、情報、企業行動のグローバル化が大きく進展した。急速なIT化が、このような状況をさらに加速化しつつある。
 また、このような中、既存の大企業による世界進出が進んだだけでなく、国境を越えた企業の再編によりグローバルな大企業が新たに誕生するなど、ビジネスにおけるグローバル化も進展してきている。
 さらに、米国に世界中から高度な知的活動を担う人材が集まり、研究開発や医療などの分野の知的労働を多くの中国人やインド人等が担っていることに見られるように、製品の製造等のみならず、知的労働もグローバル化し、知的労働人材の国際流動や多国籍企業の研究開発の国際展開などが進んでいる。
 このような状況において、英語が、国際的な協議・交流の場や国際ビジネスの現場において標準的に使われるようになってきていることにも留意が必要である。

(2)新興国の台頭等による多極化の進展

(2)新興国の台頭等による多極化の進展

 最近中国をはじめとするBRICs諸国等が経済改革等を行い、先進諸国からの資本導入等により驚異的な成長を見せているとともに、巨大な人口や未開拓市場を擁していることなどから、製品やサービスの巨大な市場としても存在感を増してきている。インドにおけるソフトウェア企業の国際的な台頭や中国のレノボによるIBMのパソコン部門の買収に見られるように、中国やインドからもこのようなグローバル企業が誕生する兆しがあることに留意が必要である。
 また、これらの国々は、巨大な人口を背景に、経済だけでなく、国際政治、研究開発、文化の面においても国際社会における存在感を増してきている。これに伴い、2000年前後までの米国を中心とした従来のグローバル化の動きから、幅広い分野で国際社会の多極化が進展してきている。また、このような中、事業をグローバルに展開するためには、多様な価値観や文化を持つ市場のニーズに対応することが求められてきている。
 また、例えば、従来、グローバルな企業の多くは日米など先進諸国から生まれたが、近年においては、エレクトロニクス分野におけるサムソンやTSMCのようなグローバルな企業がこれら新興国から誕生するなど、多極化ことは注目すべき現象が見られる。

図:世界経済の実質成長率

図:世界経済の実質成長率

資料:丸紅(株)経済研究所

図:世界の人口の推移

図:世界の人口の推移
資料:(財)日本エネルギー経済研究所

図:日米中印のGDP(PPPベース、兆㌦)

図:日米中印のGDP(PPPベース、兆㌦)
資料:丸紅(株)経済研究所

(3)世界の産業構造の変化

1.製造業におけるモジュール化・水平分業(オープン化)の進展

(3)世界の産業構造の変化

1.製造業におけるモジュール化・水平分業(オープン化)の進展

 現在、パーソナルコンピュータや携帯電話といったエレクトロニクス製品を中心に、標準化された汎用部品の組合せで製造を行うことにより、組立て自体に高度なすりあわせを必要としなくなる「モジュール化」と呼ばれる動きが進展してきている。
 モジュール化の流れは、パーソナルコンピュータのような限られた分野からデジタル家電などにも広がりつつある。
 このモジュール化の進展と並行して、研究開発や設計企画と製造、販売の分離等の国際的な事業の水平分業(オープン化)が進展してきている。また、水平分業は、最終製品のみならず、製品を構成する部品においても進んできており、半導体や太陽光電池に見られるような製造過程内の様々な工程の分離が進んでいる。 
 このような中、台湾等の企業は、欧米企業のイノベーションの成果をうまく活用し、研究開発などを最小限にすることによるオーバーヘッドの軽さを活かし、エレクトロニクス製品等のシェアを大きく伸ばしつつある。
 また、欧米の一部の企業は、自社が有する優れた製品の設計、企画能力と中国や台湾等の企業が有する最終製品の製造能力を巧みなグローバル連携を通じて組み合わせることなどにより、シェアを大幅に拡大している。例えば、半導体業界では、設計から製造までを一貫して行う企業は比較的苦境にある中、主に設計のみを行う欧米先進国のファブレスという形態と、主に製造のみを行うファウンダリという形態の企業が大きく成長している。
 このように、従来1社で企画、研究開発、設計、製造、販売を一体的に行う垂直統合型のビジネスモデルが主流であったが、グローバル化やモジュール化の進展に伴って水平分業型のビジネスモデルが拡大するなど、イノベーションモデルの多様化が進んでいる。

2.製品開発、知的財産・標準化戦略、事業モデルの一体的な取組

優れた技術開発を行う技術的なイノベーションに着目するだけでなく、モジュール化や水平分業の進展等の状況を踏まえ、市場シェア獲得に向けたビジネスモデルの確立も視野に入れたイノベーションを実現しなければ、産業としての国際競争力を維持・強化することができなくなってきている。例えば、我が国の企業が関連特許の約9割を有しているDVDプレーヤーの他、液晶パネル、太陽光発電セルなど日本の研究成果から生まれた製品についてモジュール化が進展する等、産業構造が世界的に大きく変化し、我が国企業のシェアが急速に減少していることからもそのことが分かる。
 これを乗り越えていくためには、中核となる技術を確立するとともに、ビジネスモデルを想定した戦略的な世界標準の獲得や、新興国の企業を取り込んで組立てを委託するなど、技術、知的財産、標準、国際連携等を一体化した戦略的な取組が重要となっている。

図:半導体産業の業態別売上げ規模と営業利益率

図:半導体産業の業態別売上げ規模と営業利益率 

資料:飯塚委員

図:ファブレス企業の伸張

図:ファブレス企業の伸張
資料:飯塚委員

図:競争力モデルの変容と多様化

図:競争力モデルの変容と多様化

図:DVDプレーヤー等モジュール化した製品に関する我が国の企業のシェアの推移

図:DVDプレーヤー等モジュール化した製品に関する我が国の企業のシェアの推移

3.諸外国におけるプロセス・イノベーションとプロダクト・イノベーションの選択等

 欧米企業との国際的な分業や日本の優れた素材・部品・製造装

3.諸外国におけるプロセス・イノベーションとプロダクト・イノベーションの選択等

 欧米企業との国際的な分業や日本の優れた素材・部品・製造装置等の活用などの手段により、十分な先端技術を有しない中国等の新興国においても、容易に一定の品質の製造を行うことが可能となってきている。その結果、東アジア諸国の産業は、プロセス・イノベーションの導入を進め、大きな飛躍を遂げた。
 一方で、これら新興国のプロセス・イノベーションのキャッチアップになどに対応するため、欧米をはじめとする先進諸国においては、プロダクト・イノベーション指向が強くなる傾向にある。
 また、製品の中核価値が、ア)それら製品を構成する部品・素材やそれらを製造する製造装置、イ)サービスを含む製品全体を構想し、様々な技術を組み合わせていく製品構想力、ウ)ハードウェアからソフトウェア、エ)水平分業の中でどのようにビジネスを展開していくのかというビジネスモデルを含む経営力に移行する動きがあるとともに、近年では高度に発展してきた数学やIT、シミュレーション技術の活用が重要になってきている。

4.製品や事業モデルの構想先行型のイノベーションとサービス経済化の進展

 従来の技術シーズ指向型の製品開発とともに、アップルのiPodや任天堂のWiiのように、最終利用者指向の製品や事業モデルが先行した形でのイノベーションで大きな成功を収めているものが出てきている。
 また、GDPに占めるサービス産業の割合の推移を見ると、1970年代以降、世界的な増加傾向にあり、世界経済の中でサービス産業の重要性が高まっている。このような中、近年ではものづくり分野においても、顧客の発注から製品の製造、物流、保守等に至るまでのサービスを高度に統合し、システム化して取り扱う「製造流通業」と呼ばれるような新たな産業の形態も出現している。

5.IT、バイオなどの「サイエンス型産業」の台頭等

 現在、世界的に医薬品産業やソフトウェア産業に代表されるような、ほかの産業に比べ科学的な発見や成果と製品開発が緊密につながっている「サイエンス型産業」と呼ばれる一群の産業が、その存在感を増している。

(4)資源・エネルギー・食料需給の逼迫

 近年の科学技術の急速な発展とその活用の拡大に伴い、著しい経済成長や産業構造の転換が進んだ一方で、人口の爆発的増加、資源・エネルギーや食料の需給逼迫、地球温暖化、水資源の汚染や枯渇等の様々な問題が顕在化しており、一国だけでなく世界全体の課題として対応することが求められている。これらの問題に対応するため、二酸化炭素の排出量の制限のような様々な制約が今後現れると想定される。

2.諸外国の経済政策等の変化

(1)「イノベーション国家モデル」の台頭

 経済危機を克服し経済再生に成功した10か国・地域(※)を類型化し、その分析を行った「経済の発展・衰退・再生に関する研究会」報告書(財務省財務総合政策研究所)を見ると、

  1. 「ニュージーランド」型(市場重視型)
  2. 「フィンランド」型(技術重視型)
  3. 「オランダ」型(雇用重視型)

の3つのパターンの経済運営の類型のうち、先端産業育成、産学官の人材交流を伴う緊密な協調、政府によるベンチャー資金支援等を行った2.の「フィンランド」型(技術重視型)がもっとも高い生産性向上を示したことが報告されている。逆に、規制緩和・行政改革の成功例とみなされるニュージーランドの生産性向上は相対的には低いという結果が出ている。
 また、近年の分析をみても、フィンランドに代表される「技術重視型」の経済運営を行う国の生産性向上は大きい。また、フィンランドと同様、IT投資を含むイノベーション投資や産学連携を強力に推進した米国のTFPの向上も大きくなっている。

※ イギリス、フィンランド、オランダ、ポーランド、スペイン、スイス、アルゼンチン、ニュージーランド、香港、台湾

図:各国比較全要素生産性の伸び【()は改革の時期。TFPの伸びの各国比較】

図:各国比較全要素生産性の伸び【()は改革の時期。TFPの伸びの各国比較】
資料:財務省財務総合政策研究所「経済の発展・衰退・再生に関する研究会」報告書

(2) 産業への国家の関与が強まる傾向

 諸外国の一部においては、産業への国家の関与を強化する傾向があり、競争力強化につながる例も出てきている。
 例えば、台湾等のアジア諸国では、政府のサイエンスパークの設置、公的研究機関による民間企業の支援、税制優遇策等が産業の躍進に大きく寄与している。
 欧州では、各国政府やEUの施策が航空宇宙、自動車、情報通信分野の競争力強化に大きな役割を果たした。
 また、以前は経済活動への政府介入に消極的な傾向があった米国や英国においても、世界的な経済危機により、金融機関への資金投入や2009年の補正予算を定める米国再生・再投資法による巨額の研究開発投資等に見られるように、経済活動等に対する政府の関与を強めている(※)。

2008年11月に出された米国国家情報会議(NIC)の報告書「Global Trends 2025:A Transformed World」では、国家に重要な役割を担わせる経済マネジメントシステムを「国家資本主義」(State Capitalism)と呼び、「中国、インド、ロシアは西欧的な自由主義のモデルには従わず、国家資本主義のモデルを採用するだろう。(中略)韓国、台湾、シンガポールのようなほかの新興国もこのような国家資本主義を採用した。」としている。

(3) 世界的な「グリーン・ニューディール政策」の展開

 様々な地球規模問題の中でも、特に地球環境問題への関心は高く、環境保全と経済成長の両立が、我が国を含め、世界共通の喫緊の課題となっている。
 このような中、米国をはじめとする諸外国では、環境・エネルギー対策の強化によって雇用の創出と需要の喚起を図り、長期的な成長を目指す「グリーン・ニューディール政策」が展開されている。

お問合せ先

科学技術・学術政策局

 


自国ファーストが支持を得ても国益を損ねうる訳ケインズ著

2025年01月08日 14時16分53秒 | その気になる言葉

『新訳 平和の経済的帰結』(書評)

 
 
20世紀を代表する経済学者J.M.ケインズの『平和の経済的帰結』を、21世紀の現代に読む意味とは(写真:NOV/PIXTA)
世界が密接につながるグローバル経済では、国内の経済状況が悪くなると、自国ファーストが支持を得やすい。とりわけ戦争という国難においては、その傾向は強まる。
1919年の第1次世界大戦終戦直後、敗戦国ドイツに強硬な態度をとる国々に対し、異を唱えたのが、20世紀最高の経済学者とも称されるジョン・メイナード・ケインズである。
本記事では、イギリス経済学を専門とする高崎経済大学経済学部教授・伊藤宣広氏が、ケインズの国際経済観を描いた『新訳 平和の経済的帰結』(山形浩生訳・解説)の現代的意義を読み解く。

敗戦国を再起不能にする「カルタゴ式平和」

『平和の経済的帰結』は、20世紀を代表する経済学者J.M.ケインズが、第1次世界大戦後に調印されたヴェルサイユ条約を弾劾する目的で書いた本である。この本によって、ケインズはジャーナリストとして世界的に名を知られるようになった。

このたび新訳が刊行されたので、本書を読むにあたってぜひ押さえておきたいポイントや背景知識について解説するとともに、改めて、21世紀の現代においてこの本を読む意味を考えてみたい。

まず、第1次世界大戦の幕引きにあたっては、戦後のドイツの処遇をめぐって、フランスによる「カルタゴ式平和」対アメリカの「ウィルソンの14か条」という対立構図があった(54頁)。

「カルタゴ式平和」とは、ポエニ戦争で勝利したローマが、敗北したカルタゴに厳しい賠償を課して国力を削ぎ、最終的に滅亡に追い込んだ歴史的事例にちなんで、敗戦国ドイツを再起不能にするような過酷な講和条件の押し付けを意味する。

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健康寿命の延伸

2025年01月08日 14時10分53秒 | 社会・文化・政治・経済

健康寿命延伸プラン

2019年に策定された「健康寿命延伸プラン」は、健康寿命の目標と、その目標を達成するための施策について定めたものです。2040年までに健康寿命を男女ともに2016年に比べて3年以上延伸し、75歳以上とすることを目指しています。

健康寿命を3年以上延伸し、75歳以上に

2019年5月29日の「第2回2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」において、「誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現」のための3本柱の一つとして、「雇用・年金制度改革等」や「医療・福祉サービス改革プラン」とともに「健康寿命延伸プラン」[1][2]が発表されました【図】。健康寿命延伸プランでは、2016年は男性72.14歳、女性74.79歳だった健康寿命を、2040 年までに男女ともに3年以上延伸し(2016年比)、75歳以上とすることを目指しています(男性75.14歳以上、女性77.79歳以上)。

このプランを達成するため、①健康無関心層も含めた予防・健康づくりの推進と、②地域・保険者間の格差の解消、に向け 「自然に健康になれる環境づくり」や「行動変容を促す仕掛け」など「新たな手法」も活用し、「次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成」「疾病予防・重症化予防」「介護予防・フレイル対策、認知症予防」の3分野を中心に取り組みを推進することとしています。

図.健康寿命延伸プランの概要([1]より一部改変)

健康寿命延伸プランの概要

各分野の具体的な内容は次のとおりです(2019年5月29日「第2回2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」においてとりまとめたプランを一部改定[3])。

I 次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成等

東京栄養サミットを契機とした食環境づくり
産学官連携プロジェクト本部の設置、食塩摂取量の減少(8g以下)
ナッジ*1等を活用した自然に健康になれる環境づくり
2022年度までに健康づくりに取り組む企業・団体を7,000に
子育て世代包括支援センター設置促進
2020年度末までに全国展開
妊娠前・妊産婦の健康づくり
長期的に増加・横ばい傾向の全出生数中の低出生体重児の割合の減少
PHR*2の活用促進
検討会を設置し、2020年度早期に本人に提供する情報の範囲や形式について方向性を整理
女性の健康づくり支援の包括的実施
2019年度厚生労働科学研究で健康支援教育プログラムを開発済   等

*1 ナッジ:「ひじで軽くつつく」という意味。行動経済学上、対象者に選択の余地を残しながらも、より良い方向に誘導する手法
*2 PHR:personal health record(パーソナル・ヘルス・レコード)の略。個人の健康診断結果や服薬歴等の健康等情報を電子記録として本人や家族が正確に把握するための仕組み

II 疾病予防・重症化予防

ナッジ等を活用した健診・検診受診勧奨
がんの年齢調整死亡率低下、2023年度までに特定健診実施率70%以上等を目指す
リキッドバイオプシー*3等のがん検査の研究・開発
がんの早期発見による年齢調整死亡率低下を目指す
慢性腎臓病診療連携体制の全国展開
2028年度までに年間新規透析患者3.5万人以下
保険者インセンティブの強化
本年7月を目途に保険者努力支援制度の見直し案のとりまとめ
医学的管理と運動プログラム等の一体的提供
2019年度厚生労働科学研究で運動施設での標準的プログラムを開発済
生活保護受給者への健康管理支援事業
2021年1月までに全自治体において実施
歯周病等の対策の強化
60歳代における咀嚼良好者の割合を2022年度までに80%以上   等

*3 リキッドバイオプシー:がん組織ではなく、血液や尿などの体液に含まれる遺伝子を解析し、がんの診断や治療法の選択に役立てる技術

III 介護予防・フレイル対策、認知症予防

「通いの場」の更なる拡充
2020年度末までに介護予防に資する通いの場への参加率を6%に
高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施
2024年度までに全市区町村で展開
介護報酬上のインセンティブ措置の強化
2020年度中に介護給付費分科会で結論を得る
健康支援型配食サービスの推進等
2022年度までに25%の市区町村で展開等
「共生」・「予防」を柱とした認知症施策
2019年6月に認知症施策推進大綱をとりまとめ
認知症対策のための官民連携実証事業
認知機能低下抑制のための技術等の評価指標の確立   等

(最終更新日:2022年01月11日)

佐藤 敏彦
 

佐藤 敏彦 さとう としひこ

青山学院大学 特任教授

1986年慶應義塾大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学公衆衛生大学院修了、同研究員、東京女子医科大学公衆衛生学講師、世界保健機関ジュネーブ本部「政策と情報のためのエビデンス」局サイエンティスト、北里大学医学部公衆衛生学教室准教授、同臨床研究センター教授を経て現職。一般社団法人ヘルスケア・データサイエンス研究所理事長(兼職)、厚生労働省「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」委員。専門は公衆衛生学、特に疫学、健康情報学。


「ことしの10大リスク」を発表

2025年01月08日 13時57分22秒 | 社会・文化・政治・経済

 トランプ氏の影響も 米調査会社

国際情勢を分析しているアメリカの調査会社が「ことしの10大リスク」を発表し、国際秩序を主導する国家がないことによる混迷を最大のリスクとして指摘し、「冷戦初期に匹敵する地政学的に最も危険な1年になる」と警鐘を鳴らしました。

国際政治学者のイアン・ブレマー氏が率いるアメリカの調査会社「ユーラシア・グループ」は、恒例となっている「ことしの10大リスク」を6日発表し、最大のリスクとして「深まるGゼロ世界の混迷」をあげました。

「Gゼロ」はブレマー氏が国際秩序を主導する国家が存在しない状態をさして使ってきた用語で、ブレマー氏はオンラインでの会見で、「アメリカは世界で圧倒的な強国だが、きたるトランプ政権が単独主義を志向するなか、外交政策はより取引的になり、多国間主義や国際機関、法の支配などへの支持を放棄するようになるだろう」と指摘しました。

一方、中国についても「より内向きになっている」と述べ、経済問題や国内の課題に専念せざるをえないという見方を示しました。

そのうえで「ことしは冷戦初期、さらには1930年代に匹敵する地政学的に最も危険な一年になる」と述べリーダーシップの不在による混迷に警鐘を鳴らしています。

また2番目以降のリスクも、「トランプの支配」や「米中決裂」などトランプ氏の返り咲きに伴うものが多くを占め、それ以外ではロシアやイランの動向のほかAI=人工知能が制御できなくなることへの懸念などが10大リスクとしてあげられました。

【詳細】ことしの10大リスク

アメリカの調査会社「ユーラシア・グループ」が6日に発表した「ことしの10大リスク」は、以下のとおりです。

1 深まるGゼロ世界の混迷

世界的な課題への対応を主導し国際秩序を維持する国家は存在しない状態で地政学的な不安定が常態化する。新たな世界大戦すら起きるリスクはかつてないほど高まっている。1930年代や冷戦初期に匹敵する危険な時代に突入しつつある。


“指導死” 教師の指導の後に子どもが自殺…背景に何が?

2025年01月08日 13時41分50秒 | 社会・文化・政治・経済

2023年7月3日NHK

 

    指導死(しどうし)ということばをご存じでしょうか。


教員による不適切な指導がきっかけとなった子どもの自殺を、遺族や研究者が「指導死」と呼び、指導のあり方を考えてほしいと訴えています。

指導死ということばの裏に、何があるのか。
子どもの自殺が過去最多となる今、子どもの命を守るヒントを探して遺族を訪ねました。

(#学校教育を考えるディレクター 藤田 盛資/社会部記者 寺島 光海)

 

“きょうだい思いのお兄ちゃん” 中学1年の冬、突然の自殺

妹を優しい笑顔で見守る、加藤碧さん(13)。
3人きょうだいの長男で、“てきぱきとしっかりした感じではないけど、朗らかで親しみやすい雰囲気のお兄ちゃんだった”といいます。

宇宙に興味を持ち、勉強を頑張りたいとみずから選んだ私立の中学校に進学。

小学生から続けてきた水泳の練習にも打ち込み、毎朝7時には学校に通っていたそうです。

碧さんは2017年12月、中学1年生の冬にみずから命を絶ちました。
その日の朝もふだんと変わらない様子だったという碧さんの身に何が起きたのか。
父親の健三さん(51)にとって、あまりに突然の出来事でした。


父親・加藤健三さん

午後1時すぎ、妻から一本電話がかかってきて。碧から“今までありがとう”というLINEが入ってきたと。すぐ上司に伝えて会社を飛び出して。


息子のスマホには居場所確認のアプリを入れてたので、それを見て息子の方に向かっていきました。もう本当に、生きた心地がしないというか、いつも通勤する乗り換えの駅が、こんなに長く感じたことがなくて……。移動の最中、息子の居場所も移動し始めて、着いた先は警察署でした。


息子がビニールに包まれた状態で、ろうそくが立てられていて。そんなふうに知ったんで。本当に信じられなくて、朝さっき話したでしょって。朝話したのになんで、ということしか、その日は分かりませんでした。

年末年始は、そば屋を営む実家を家族みんなで手伝っていた加藤さん一家。
碧さんも楽しみにしていた家族行事は、かなわなくなりました。

見えてきた “不適切な指導”

なぜ息子は、みずから命を絶ったのか。当初、父親の健三さんは、学校や公的な機関が調査をしてくれると考えていました。

しかし、警察は、自殺であり事件性がないとして、その後の捜査は行われませんでした。行政も“私立の学校に対しては何もしない。報告を受けるのみだ”と取り合ってもらえなかったといいます。

健三さんは、少しでも当時の碧さんの気持ちを知りたいと、みずから調べ続けました。

遺品の定期券を頼りに当日の行動をたどったり、学校の友人から話を聞いたりして集めた資料は、分厚いファイル10冊分にのぼりました。


父親・健三さんが集めた資料の束「true・1日一歩」

同時に、学校に対して、第三者による調査委員会の設置を要望しました。
弁護士らによる第三者委員会が設置されたのは、碧さんの死から約1年7か月後。
去年1月、報告書がまとめられました。

そこに書かれていたのは、亡くなる前日と当日の“指導”についてでした。

亡くなる前日の指導

亡くなる数日前、碧さんの所属する水泳部の顧問は、指導の一環として年賀状を送るようにと、顧問2人の自宅の住所を書いたメモを部員たちに渡していました。碧さんはそのメモを撮影し、クラスのLINEに投稿。

これを知った顧問は、個人情報の取り扱いを指導しようと碧さんを呼び出し、ほかに誰もいないプールの教官室で“とんでもないことをしてくれたな”と叱責するなど、約40分指導したとされます。

調査委員会は、投稿の意図は不明と結論づけていますが、「クラスの友人からも年賀状を出せるようにとの善意から、住所情報をLINEに流してしまった可能性が高いといいうる」としています。
調査委員会は「威圧的で一方的な指導」であったとしています。

亡くなる当日の指導

学校には、近隣のゲームセンターで両替機に忘れたお金がなくなり、学校の生徒が関わっていないか確認してほしいという電話が入っていました。

碧さんへの前日の指導の中で「両替機」という言葉を聞いたことを理由に、亡くなる当日、最初の教員が3~4分の聞き取りを実施し、数分後に別の教員が20分程度の聞き取りを行ったとされます。碧さんは関与を否定し続けたとされます。

調査委員会は、指導は「関与について強い予断をもって聴き取りを行っていることもまた問題であったといえる」とし、碧さんが「関与しているかどうかは確定できない」としています。

そして、指導の約20分後、碧さんは死を選びました。


第三者委員会の報告書

調査委員会の報告書は、指導と碧さんの自殺との関係について、
「2日間の指導がAさんの自殺の大きな原因となっていることは動かしがたく、指導の不適切さと自殺との関連性は認められる」と結論づけています。

報告書の指摘について学校側に見解を問うと、「重大かつ真摯(しんし)に受け止めているところであり、再発防止に最大限努めております」などの回答が寄せられました。

学校側は、遺族に謝罪するとともに、具体的な再発防止策として、
(1) 生徒指導等における聴き取り方法についてのルールを明文化した規程を作成
(2) 報告書を利用して、外部講師を招いての学内研修を実施
(3) 生徒指導についての教員研修を定期的に実施
(4) 子どもの自殺や予防についての教員研修を定期的に実施
(5) 生徒のストレスチェック制度の導入
(6) カウンセラーによる「命の大切さを考える授業」の継続
など、6点を今後も継続していくとしています。


碧さんの死後も相次いでいる、教師の指導後に起きる子どもの自殺。

その報道に触れるたびに、父親の健三さんは“もっと息子の死の事実が知られていれば、防げる死があったのではないか”という思いが、胸を締めつけるといいます。

父親の加藤健三さん

私自身かつては、ことばの指導だけで人が死ぬなんてことがあるのかと疑問に思っていました。そして今でも、息子の報告書を見て、死ななきゃいけなかったのか?って思い続けています。でも、当事者になってしまった。


指導死は、家族にとって全く覚悟なく、突然に起きてしまう。息子の場合、指導を受けて約15分後に亡くなっていますが、指導が終わったときにはもう死を考えていたのかなと思います。家族にとっては寄り添う隙がなくて、今でもどうしたら助けられたのか、答えが見つからないんです。


先生たち、指導したことでまさか死ぬと思って指導している先生は、誰1人いないと思うんです。ただ、そういうことが実際にある。子どもを思って指導してくれているとは思うんですが、子どものための指導は紙一重だということを知っていただきたいです。

指導死は“平成元年以降に108件” 指導直後の自殺が57%という調査結果も


教師の指導のあとに起きる自殺は、どれほど起きているのか。

遺族などの声を受け、文部科学省は毎年行っている自殺に関する調査の選択肢の中に「教職員による体罰、不適切指導」を新たに設け、初めて実態の把握に乗り出すことになりました。

遺族と研究者でつくる団体では、こうした自殺を「指導死」と呼んで、独自に調べてきました。まだ公的な統計がない中、裁判記録や調査報告書を集め調べたところ、平成元年以降に指導死とみられる自殺が93件、未遂とみられるケースを含めると少なくとも108件起きていたことが分かりました。

その1件1件を分析すると、碧さんのように指導の直後(指導の当日や翌日)に自殺したケースは57%に上っていました。


「まさか息子以外にも、似たような形で命を失っている子どもがこんなにもいるなんて」。
そう語るのは、調査した団体の代表のひとり、大貫隆志さんです。

当時中学2年生だった息子の陵平さんは、学校でお菓子を友達からもらって食べたことをきっかけに1時間半にわたる指導を受け、さらに“学年の集会で全員の前で決意表明をするように”と伝えられたあと、みずから命を絶ちました。

中学生の息子を亡くした遺族 大貫隆志さん

陵平が通っていた中学校は、数年前まで廊下を自転車が走ってるような学校だったんです。だから1年生のうちにきつくルールを守るように指導する体制をとっていたわけです。


その厳しさの中で、「たとえお菓子、あめ1粒といえども見逃さない」ということを教員は言っていましたので、まさにそういう指導受けたんだろうなと思います。真面目な子どもほど自分が叱責を受けたことに対して反省してしまうわけですよね。


大人から見れば「そんなことで」ということを理由に命を絶ってしまう子どもがいる。これはもう自殺の研究の中で明らかになっていることなんですね。だから学校での生徒指導のあり方にも、そうした視点を取り入れるべきだと思うんです。

自殺のきっかけになりうる不適切な指導は、どうすればなくしていけるのか。
教育評論家の武田さち子さんは、学校現場への負担を減らすことから始める必要があると指摘します。


教育評論家・武田さち子さん

学校はいま厳しい労働環境で、先生も減っていて、先生たちの人権は守られてないと思うんですね。だから子どもの人権を守らなくていいなんてことでは全くないんですが、やはり自分の人権が守られてない人は、人権に対してどうしても感度が低くなると思います。先生が“もう学校行くのは嫌だ”と思っている中で、じゃあ子どもたちが笑って過ごせるような教室が作れるかっていったら、難しいと思うんですね。

そして、子どもが亡くなってから調べるのではなく、指導により子どもの心が非常に傷ついた、そのために学校に行けなくなったという段階できちんと調査してほしい。その段階で調査されていたら、防げたと思えるケースもあります。

国の生徒指導の手引きに“不適切指導”が明記 遺族の思い

「不適切な指導で子どもが苦しむという事実を広く知ってほしい」。
弟の死をきっかけに国や社会への働きかけを行った女性がいます。

「はるか」さん(29)です。
およそ10年前、当時高校1年生だった弟の悠太さん(16歳)が自ら命を絶ちました。

亡くなる前日の部活の顧問による不適切な指導などが原因だと裁判に訴え、確定した2審の判決では、顧問が自殺を予測することは困難で責任はないと判断されたものの、十分な事実確認をせず厳しく叱責したことは不適切だったと認定されました。

悠太さんが命を絶ったとき、はるかさんは高校を卒業したばかり。学校も弟の死を真摯に受け止めてくれるという期待感があったといいます。

はるかさん

当時、私自身いろいろな先生にお世話になって高校を卒業した直後でした。学校は、すべての生徒の命を大事な命として扱ってくれると信じていて、どうしたら弟を救えたのか、弟が亡くなってしまったことを私たちと同じように悲しいと思って動いてもらえると思っていましたが、現実はそうではありませんでした。自分が信じてきた社会が大きく崩れたように感じて、すごく怖いという感覚を抱いていました。


学校の先生の指導は正しいという前提が社会の中にあるのではないかと感じていますが、そうした指導の中にも、子どもを深く傷つけているものがあることを知ってほしいと思います。「不適切指導」ということばがなかなか浸透せず、子どもたちが苦しんでいる現状に対して、国は、向き合ってくれるだろうかという思いを私自身抱いていました。

こうした中、はるかさんは、国が、教員が生徒を指導する際の手引き「生徒指導提要」の見直しを進めているという動きを知ります。はるかさんは、弟が亡くなってから、この生徒指導提要を何度も読み込んでいました。

この中に、「不適切な指導」が明記されれば、現場の先生たちが、自らの指導のあり方について立ち止まって考えてもらうきっかけになるのではないか。
自ら、同じような経験を持つ遺族に声をかけ、新たな「生徒指導提要」に「不適切指導」について言及してもらうよう求める要望書を、おととし(2021)文部科学省に対して提出しました。

その後、文部科学省は有識者会議の議論を経て去年、12年ぶりに「生徒指導提要」を改訂し初めて「不適切な指導」に言及しました。

考えられる具体例として、
・大声で怒鳴る、ものを叩く・投げる等の威圧的、感情的な言動で指導する
・児童生徒の言い分を聞かず、事実確認が不十分なまま思い込みで指導する
・組織的な対応を全く考慮せず、独断で指導する
・殊更に児童生徒の面前で叱責するなど、児童生徒の尊厳やプライバシーを 損なうような指導を行う
・児童生徒が著しく不安感や圧迫感を感じる場所で指導する
・他の児童生徒に連帯責任を負わせることで、本人に必要以上の負担感や罪悪感を与える指導を行う
・指導後に教室に一人にする、一人で帰らせる、保護者に連絡しないなど、適切なフォローを行わない

といった項目を上げた上で、
「教職員による不適切な指導等が不登校や自殺のきっかけになる場合もある」という文言が加えられました。

はるかさんは、この内容を、より多くの人に知ってもらいたいと感じています。

はるかさん

今回の改訂で、文部科学省も子どもの命や気持ちを大切だと思ってくれているのかも知れないと感じました。

「不適切な指導がある」と明記され、具体例が挙げられたことで、指導に疑問があっても「自分が悪いことをしたから仕方ない」などと悩む子どもや保護者が救われるきっかけになるのではないかとも思います。

弟が亡くなってから10年がたち、自分も10歳年を取ると、弟が生きた16年間がどれだけ短い人生だったかを感じます。こんなに短い人生で死なないといけないほど追い詰められることが、当たり前であってほしくありません.

そのためにも、「生徒指導提要」の内容が幅広く現場に浸透していくことが重要だと感じています。弟と同じような思いをする子がこれ以上出ないよう、私も声を上げ続けていきたいです。

【相談窓口はこちら】

厚生労働省ではホームページでSNSや電話などの相談窓口を紹介しています。

SNSやチャットでの相談窓口です。
▽NPO法人「自殺対策支援センターライフリンク」が行う「生きづらびっと」LINE@yorisoi-chat
▽NPO法人「東京メンタルヘルス・スクエア」が行う「こころのほっとチャット」LINE@kokorohotchat
▽NPO法人「あなたのいばしょ」チャット https://talkme.jp
▽NPO法人「BONDプロジェクト」LINE@bondproject
▽NPO法人「チャイルドライン支援センター」が行う「チャイルドライン」 https://childline.or.jp/

主な電話での相談窓口です。
▽NPO法人「自殺対策支援センターライフリンク」が行う「#いのちSOS」0120-061-338
▽一般社団法人「社会的包摂サポートセンター」が行う「よりそいホットライン」0120-279-338※岩手・宮城・福島からは0120-279-226
▽一般社団法人「日本いのちの電話連盟」が行う「いのちの電話」0120-783-556
▽都道府県が実施している電話相談などに接続される「こころの健康相談統一ダイヤル」0570-064-556

このほか以下の子ども向けの相談窓口も紹介しています。
▽NPO法人「チャイルドライン支援センター」が行う「チャイルドライン」0120-99-7777
▽文部科学省が行う「24時間子供SOSダイヤル」0120-0‐78310
▽法務省が行う「子どもの人権110番」0120-007-110

これらを紹介しているURLは、「https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/」(NHKのサイトを離れます)で、「まもろうよこころ」でも検索できます。

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この記事の執筆者

報道局 社会番組部 ディレクター
藤田 盛資

2011年入局、金沢局と首都圏局を経て現職。
「教員の働き方」や「校則改革」など学校現場を取材。

みんなのコメント(34件)

提言
問題提起
女性
2024年9月16日
教員による指導とも言えないような不適切な行い(虐待)によって子供の人権が侵害されている。教室という密室で、圧倒的な力の差がある教師から追い詰められた子供はどうすることもできない。命を落とすか、精神を病むかまで追い詰められる。
特に、私立学校でこういった子供の人権侵害が起こっていても、どの公の機関も監督指導ができない。
弁護士でさえも私学に介入することは難しいと言う。
私立学校は、教育の自由を盾にして、どう対応するかは全て自分たちで決められるのだ。自浄作用が働かない私立学校は治外法権状態である。いじめや不適切な指導についてなど、文科省のガイドラインも平気で無視している。被害者が救済を訴えてもどこ吹く風。子供がPTSD発症しもう3年闘っている。
県はそんな学校に数億もの私学助成金を出している。せめてこどもの人権侵害には介入救済できるよう国はきちんと法整備するべきではないか。
ぜひ取材してください。
悩み
ツツジ
19歳以下 女性
2024年9月6日
私は小さい頃袋叩きにあったなあ、もう苦しくて、今は落ち着いたけど...まだ古傷が癒えない
体験談
葉月
19歳以下 女性
2024年7月17日
私も教員から不適切指導を受け、人生を狂わされた一人です。
小学校のときの担任から不適切指導を受け、不登校になり、精神科を受診。PTSDとのことでした。
その後、私立中学に進学し、今は2年生になります。
自殺にこそ至らなかったものの、死は考えましたし、小6で始めた自傷行為も続いています。小6のときに比べたら大分マシになりましたが、今でも希死念慮に襲われ、過呼吸やフラッシュバックは日常茶飯事、精神科通院も続いています。
もし、私の言葉が教員の皆さんに届くなら、言葉の重みを知ってほしいです。子供は、学校という小さな世界で生きています。その中で教員というのは絶対的な権力者に見えるのです。教員の言葉は、時に親の言葉よりも深く胸に突き刺さります。大人の想像の何倍も、です。だからこそ、発言には気をつけてほしい。ふと出た一言が子供の人生を狂わせてしまうのです。
そのことを頭に置いておいてほしいです。
悩み
助けて!
50代 女性
2024年4月27日
不適切な指導。体罰、暴行。
教諭による不適切な指導の事実があるのに認めない。学校も市教育委員会も体罰の調査をしない。池田町中2自殺案件にあまりにも類似した内容に解決の糸口無し!うちの子が死ななきゃダメなのか?
感想
虐めサバイバー
40代 男性
2024年4月23日
やはり「虐待」がキーワードではないでしょうか?介護会社のコラムにあるのですが、高齢者虐待の前段階に「不適切なケア」という概念があるそうです。指導死はこれと同じでしょう。不適切ケアならぬ不適切指導。問題は大人から見たら「不適切」でも子供からしたら「虐待」だということです。子供の繊細さを加味しなければならない。そもそも教師に自分が加害者であるとの自覚があったのか?児童虐待をする親でも「加害者に虐待の自覚がない」ということは往々にしてあります。指導死を招いた教師に取材して、当時の心理を精神分析してほしい。教育虐待としての側面もあるはず。子供たちが車輪の下で圧し潰されています。
体験談
助けて!
40代 女性
2024年4月5日
2024年4月、息子中3も、福井県池田町中2指導死(文科省H29.10通知文)と恐ろしい程同じ目に合ってます。教師からの激しい叱責、暴行、嫌がらせ、問題教師が認めないから事実が無いと。学校は調査を渋りやらない。文科省が動かぬ証拠という事には必死で潰しにかかる。
体験談
K S ママ
19歳以下 女性
2023年12月28日
小学校時に通っていた個人塾の先生のハラスメントで、娘は今でも二次障害を抱えてます。もともとASD気質だったため、10年前の当たり前が理解できなかった様で、先生にはかなり嫌われていた様です。
親もその頃は、先生に任せているからと安心してましたが娘にとっては地獄の時間だった様です。小学生高学年頃から時々情緒不安定になりました。
提言
みかん
70歳以上 女性
2023年11月27日
不登校の子ども達や引きこもりの方やその親御さんの相談、何らかの障害を持つ方々のサポートを仕事としています。(市の引きこもり相談員でもあります)
不登校の子はもちろん発達障害を持つの子の話、引きこもりをしている人たちの話の中でいかに学校の問題行為や暴言というか間違った指導の話が出てくるか。
正直、枚挙にいとまがないと言ってもいいレベルです。
我が子も学校の命に係わるいじめの不適切な対応で不登校になった経験がありますが30年経っても変わらない学校の子どもの人権を無視した状況に恐怖と言っていいものを感じています。
多様な学びの場の設置で学校が選べるようになれば、学校も変わらざるを得ないかと思います。
提言
いじめサバイバー
40代 男性
2023年11月26日
仕組みの問題です。私もいじめに抵抗して相手に怪我をさせた時に生徒指導室に連れて行かれ、教員数人に取り囲まれて暴れ者扱いされ、いじめ加害者と握手させられました。
しかし自分が大人になってみると教師たちがとても異常な労働環境にいたこともわかるんです。私を叱責した教師たちの一人は過労死しました。学校という場所自体、社会から隔絶され教員は過重労働、子供は半日以上狭い教室に閉じ込められるという、とても不自然な環境です。
閉鎖的な環境で力関係に差があり心身に暴力を振るっても罰がない、こんな環境で虐待が起こらないほうが不思議です。指導じゃないです、虐待です。教師を虐待加害者に追い込んでいるのは制度疲労を起こした教育システムであって、問題が起きてから個人を責めても意味はありません。必要なのは教育制度改革です
提言
まま
50代 女性
2023年11月7日
神奈川県の支援学校に娘を通わせています。
入学して初めての校内実習において、娘の認知発達に見合わない高い要求をされたために、現在不登校となっています。
3年前に姉が亡くなり、深い悲嘆の中で精神科にも通っており、卒業後も企業就労などは望まないから(卒業後この学校で就労するのは半数ほどで、残りは生活介護や就労支援です)娘のペースを大事に発達に合わせた内容をと、合理的配慮を明確に求めていたにも関わらず、追い詰める問答(事実は強い叱責でしたが、学校側は認めません)や、混乱を起こすと分かっている長い説明などを繰り返されるなどの合理的配慮の不提供により、死にたいなど強い精神不安を起こしています。
学校は事実を認めませんが、合理的配慮として視覚支援を使用すると公文書に書かれた内容も提供されなかった事は差別に他なりません。実態報道をしてほしいです。

核廃絶へ科学者議論「パグウォッシュ会議」 来年広島で開催へ

2025年01月08日 13時32分50秒 | その気になる言葉

パグウォッシュ会議(パグウォッシュかいぎ、Pugwash Conferences)、正式には科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議(かがくとせかいのしょもんだいにかんするパグウォッシュかいぎ、Pugwash Conferences on Science and World Affairs)は、全ての核兵器およびすべての戦争の廃絶を訴える科学者による国際会議である。「2007年-2012年」期の会長は、スリランカの外交官ジャヤンタ・ダナパラ

バートランド・ラッセルアルベルト・アインシュタインによるラッセル=アインシュタイン宣言での呼びかけを受け、11人の著名な科学者によって創設された。

来歴

[編集]

1957年7月7日カナダノバスコシア州パグウォッシュにある鉄道王サイラス・スティーブン・イートンの別荘に、湯川秀樹朝永振一郎小川岩雄マックス・ボルンフレデリック・ジョリオ=キュリーら10カ国22人の科学者たちが集まって第1回の会議が開かれた。会議においてはすべての核兵器は絶対悪であるとされた。

しかし第2回会議以降、核兵器に対する評価は変化し、核兵器廃絶を訴えるラッセルらと、核兵器との共生を求めるレオ・シラードらとの対立が鮮明化し始めた(シラードは核抑止論側に立った)。核抑止論が会議に定着し始め、1964年第12回会議において、最小限抑止の原則は全面軍縮に至る最も有用な道であるとされた。[要出典]

1958年9月20日、ウィーンで開かれた第3回パグウオッシュ会議で、ウィーン宣言が採択された。

1961年のソ連の水爆実験再開に抗議する湯川・朝永・坂田声明は、署名者の一人だったジョセフ・ロートブラットによって握りつぶされた。 これらを契機に1962年、日本版のパグウォッシュ会議ともいえる科学者京都会議が湯川主宰により開催された[1]。 1990年第40回会議(ロンドン)は日本船舶振興会創価学会の寄付を受けた[要出典]。後に明らかになったことであるが、ソビエトは欧米の反戦運動に工作員を送り込んでおり、パグウォッシュ会議においてもソ連に関する批判は抑制あるいは握りつぶされるとともにアメリカおよび西側の批判が拡張されるという事態になっていた[2]。アメリカにおけるソビエト誘導の反戦活動の拠点となっていたのは米国平和委員会(US Peace Council)であり、アメリカ議会の諜報委員会においてこの組織と関係の深かった組織としてパグウォッシュ会議の名前が挙げられている[3]

1995年にはノーベル平和賞を受賞している。1995年の広島における会議は原発関係者の大口寄付を受けた[要出典]

2024年10月1日の朝日新聞によれば、パグウォッシュ会議の第63回世界大会が、2025年11月1~5日に広島市で開かれる。日本開催は4回目で、広島開催は20年ぶり。共催する日本パグウォッシュ会議によると、約40カ国約200人の参加を見込む。講演や討論、被爆者らとの対話などを想定し、「広島宣言」として提言の取りまとめをめざす。一部は一般公開する[4]

NHK 9月24日 17時39分

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世界の科学者が集まり、核兵器廃絶に向けて議論する「パグウォッシュ会議」が、被爆から80年となる来年、広島で開催されることになりました。

主催する専門家は「先行きが不透明な時代に、被爆者の声も踏まえて、国の立場を超えた率直な議論をしたい」と話しています。
「パグウォッシュ会議」は70年前にアメリカが行った水爆実験のあと、核兵器廃絶を訴えた物理学者のアインシュタインらの宣言に基づいて始まった国際的な科学者の集まりで、1995年にはノーベル平和賞も受賞しています。
会議は原爆投下から80年となる来年、20年ぶりに広島で開催されることになり、関係者が協議した結果、開催日は来年11月1日から5日間とすることが決まりました。
物理学者で「日本パグウォッシュ会議」の代表を務める広島大学の稲垣知宏教授は、NHKの取材に対し「先行きが不透明な時代で核のリスクは決して小さくなっていない。国の立場を超え、科学者が対面で話し合うことで核兵器廃絶のための新たな可能性に向けた率直な議論がしたい」と述べました。
そのうえで稲垣教授は「科学者と被爆者が直接対話する機会をプログラムに入れ込み、議論に生かすようにしたい。広島から被爆者の願いも込めて、世界に対しより強いメッセージを出したい」と述べ被爆地で開催する意義を強調しました。

広島のニュース

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友人の村木さんが亡くなる

2025年01月08日 13時19分28秒 | 日記・断片

村木さんの家が雨戸で閉ざされていたので、近隣のご婦人に確認したら「娘さんんの家へ越しました」と言うのだ。

だが、実際は、脳梗塞で病院に入院していたのだ。

エナジートロンの治療体験をいさせてあげるべきであったと悔やまれた。

血液のドロドロを解消する作用があり、少なくとも取手のハピネスプラザでは530人ほどの人が体験している。

「体に電流を流すのは怖い」と言う人がいるのだが。

心臓にピースメーカーが入っている人はダメであるが、多くの人が治療効果を語るのである。

飛蚊症や耳鳴り、足のツリ。

腰の痛みも解消される。

血糖値が下がった人、血圧が下がった人も。

昨日は、卵のプレゼントがあった。


カーター元米大統領が100歳で死去 ノーベル平和賞も受賞

2025年01月08日 13時00分22秒 | 社会・文化・政治・経済

 

ホワイトハウスで国民への演説に臨む当時のカーター大統領(1977年4月)

画像提供,Getty Images

画像説明,ホワイトハウスで国民への演説に臨む当時のカーター大統領(1977年4月)
「我が国では最終的決定は民主的に行われ、過激な提案や思慮に欠ける提案は穏健化される」2002年のノーベル平和賞授賞式で米国政治を強調した。
 
「私はウソをつかない」1976年ジョージア州知事から大統領選に出馬した際のキャッチフレーズだった。
 

アメリカのジミー・カーター元米大統領が29日、米ジョージア州プレーンズの自宅で死去した。100歳だった。活動拠点だったカーター・センターが声明で明らかにした。

息子のチップ・カーター氏は、「父は英雄でした。私にとってだけでなく、平和と人権と無私の愛を信じるすべての人にとって、英雄でした」とコメント。

「こうした共通の信念を通じて、私たちきょうだいは世界の人たちと一緒に、父を共有しました。父は多くの人を結び付ける人で、そのおかげで私たちにとっては世界が家族です。皆で共有する信念に沿って生き続けることで、皆さんが父の思い出を尊重してくださる、そのことに感謝します」と、チップ氏は述べた。

カーター・センターによると、カーター元大統領の遺族はジャック、チップ、ジェフ、エイミーの子供4人と孫11人、ひ孫14人。1946年に結婚した妻ロザリン氏は昨年11月に亡くなっている。孫も1人、亡くなっているという。

カーター元米大統領(提供:カーター・センター)

画像提供,X/Carter Center

画像説明,カーター元米大統領(提供:カーター・センター)

南部の農家、ホワイトハウス、ノーベル平和賞

海軍を経て実家のピーナッツ農家を継ぎ、ジョージア州議会議員、同州知事を経て、1976年の大統領選に民主党から立候補した。

ウォーターゲート事件の余波が続くアメリカで、国民に決してうそはつかないと約束。事件で大統領を辞任したリチャード・ニクソン氏の副大統領から後任となった現職のジェラルド・フォード大統領を破り、1977年に第39代大統領に就任した。

大統領として、ヴェトナム戦争の徴兵忌避者に恩赦を与えた。南部出身者ながら、黒人と白人の生活空間を分離する政策を否定し、就任演説では「率直に申し上げる。人種差別の時は終わった」と宣言。アフリカ系アメリカ人の公職任命を積極的に進めた。

 
動画説明,ジミー・カーター氏がアメリカ大統領に宣誓就任した瞬間(1977年1月20日)

女性の権利推進にも取り組み、政権幹部に複数の女性を任命。妻ロザリン氏には、ファーストレディとして国民のため積極的に活動するよう応援した。

アメリカ大統領として初めて気候変動問題を重視し、ホワイトハウスの暖房温度を下げて自分はジーンズやセーターを着て過ごした。ホワイトハウスの屋根には太陽光発電パネルを設置したが、後任のレーガン大統領に撤去された。アラスカ州の何百万エーカーもの原野を開発から保護するための環境保護法も成立させた。

平和条約署名後に、エジプトのサダト大統領(左)とイスラエルのベギン首相(右)と手を重ねるカーター大統領。カーター氏の仲介で両国は平和条約を結んだ(1979年3月26日、ワシントン)

画像提供,REUTERS/Carter Center

画像説明,平和条約署名後に、エジプトのサダト大統領(左)とイスラエルのベギン首相(右)と手を重ねるカーター大統領。カーター氏の仲介で両国は平和条約を結んだ(1979年3月26日、ワシントン)

国際舞台では、1978年にエジプトとイスラエル間の歴史的な平和条約に至るキャンプ・デイヴィッド合意を仲介した。1979年には、ニクソン政権の路線を継承し、中国との国交を樹立した。1979年12月のソヴィエト連邦によるアフガニスタン侵攻に対抗し、1980年のモスクワ五輪をボイコットした。

1979年2月のイラン革命に伴う第2次石油危機で、世界同時不況となるとアメリカ経済も低迷。これが支持率低下につながった。

イラン・テヘランにおけるアメリカ大使館人質事件の長期化と、1980年4月の米軍による救出作戦失敗で支持率が一気に急落し、1980年大統領選では共和党のロナルド・レーガン氏に大敗した。この時の大統領選でカーター氏を支持したのは6州のみだった。

退任後は地元ジョージア州に設立した「カーター・センター」を拠点に、平和、環境、貧困対策、人権などのために絶え間なく働く活動家となり、広く再評価されるようになった。アメリカ大統領経験者としてさまざまな紛争地を回り、各国要人と対話を重ね、平和仲介のために働いた。こうした活動が評価され、2002年10月にノーベル平和賞を受賞した。

2015年にがん治療を受けていると公表したのち、2023年2月には「残された時間を家族と過ごす」として、自宅でホスピス・ケアを受けると発表した。妻ロザリン氏は、2023年11月に亡くなっている。

「まっとうな人」

カーター元大統領の死去を追悼し、ホワイトハウスでは星条旗が半旗で掲げられた(29日、ワシントン)

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画像説明,カーター元大統領の死去を追悼し、ホワイトハウスでは星条旗が半旗で掲げられた(29日、ワシントン)

カーター夫妻と長年にわたり親しく交流したバイデン大統領夫妻は声明で、「アメリカと世界は今日、傑出したリーダーと国家指導者と人道家を失った」としのんだ。

「私たちは60年以上にわたり光栄なことに、ジミー・カーターを親友と呼んできた。しかしジミー・カーターの何が傑出しているかというと、アメリカと世界各地で彼に一度も会ったことのない何百万人もの人も、彼のことを親友と思っていたことだ」として、バイデン夫妻は「彼は思いやりにあふれ、倫理的に澄み渡っていて、疫病を撲滅し、平和を築き、公民権と人権を前進させ、自由で公平な選挙を推進し、家のない人に家を与え、常に社会で最も力のない人たちを代弁していた。世界中の人たちの命を救い、暮らしを向上させ、変化させた」とたたえた。

バイデン氏はこの後、カーター氏追悼のための記者会見を開き、カーター氏が抱き続けた価値観はアメリカと世界中の人の手本になり得ると述べた。海軍士官、ジョージア州知事、アメリカ大統領と歴任しながら、本質的には「日曜学校の説教師であり続けた人」だとして、「私たちの同時代人というだけでなく、時代を超越した人だ(中略)彼が大事にした価値観が消えてなくなるなど、決してあってはならない。誰もがもう少しジミー・カーターのようになろうとするのが、みんなにとっていいことだ」と強調した。

バラク・オバマ元大統領は声明で、カーター氏が日曜学校で教えていたジョージア州プレーンズのマラナタ・バプテスト教会に世界中から大勢が集まっていたと振り返り、多くの人はカーター氏の大統領としての業績のために教会を訪れただろうが、「日曜の朝にあの教会にいた大勢は、もっと根本的なことのために来ていたはずだ。つまり、カーター大統領がまっとうな人だったからだ」と書いた。

「ウォーターゲートの影が残る時代に大統領に選ばれ、ジミー・カーターは有権者に、自分は常に本当のことを言うと約束した。そしてその通りにした。結果がどうなろうと、公共の利益を推進しようとした」とオバマ氏は書き、「品位と尊厳と正義と奉仕の人生を送るとはどういうことかを、彼が全員に教えてくれた」としのんだ。

妻ロザリン氏と、住宅再生の地域活動に参加したカーター氏(2010年、メリーランド州ボルティモア)

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画像説明,妻ロザリン氏と、住宅再生活動に参加したカーター氏(2010年、メリーランド州ボルティモア)

カーター氏は今年の大統領選で、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領に一票を入れられるようになるまでは生きているつもりだと述べ、実際に10月1日に100歳になって間もなく、期日前投票を済ませた。

訃報を受けてハリス副大統領は声明で、カーター氏が「優しく賢明で、素晴らしく品位と礼節のある人だった」としのんだ。「その人生と業績は今も私を奮い立たせてくれるし、後に続く人たちを今後も何世代にもわたり奮い立たせることでしょう。この世の中は、カーター大統領がいたことでより良い場所になりました」と述べた。

ドナルド・トランプ次期大統領は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「ジミーは大統領としてこの国の転換点にあって、さまざまな難問に直面した。すべてのアメリカ人の人生をより良くするため、彼は全力を尽くした。そのことに私たち全員は感謝すべきだ」と書いた。

バッキンガム宮殿の公式晩さん会でのエリザベス女王とカーター氏(1977年5月、ロンドン)

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画像説明,バッキンガム宮殿の公式晩さん会でのエリザベス女王とカーター氏(1977年5月、ロンドン)

イギリス国王チャールズ3世は声明で、「カーター元大統領の死去を知り、非常に悲しく思っています」とコメント。

「献身的な公僕で、平和と人権の推進に人生をささげた人です。その熱意と謙虚さは多くの人を突き動かしました。私は元大統領が1977年にイギリスを訪れた際のことを、とても懐かしく覚えています」と国王は振り返り、「カーター氏の家族とアメリカ国民のことを思い、祈っています」といたわった。