不整脈の概要

2025年03月04日 04時16分07秒 | 医科・歯科・介護

執筆者:L. Brent Mitchell, MD, Libin Cardiovascular Institute of Alberta, University of Calgary

 
レビュー/改訂 2023年 1月
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やさしくわかる病気事典

不整脈とは、一連の心拍が不規則、速すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、あるいは心臓内で電気刺激が異常な経路で伝わるなど、心拍リズムの異常のことをいいます。

 

 

  • 不整脈の最も一般的な原因は心臓の病気(心疾患)です。

  • 自分で心拍リズムの異常に気づくこともありますが、ほとんどの人は、脱力感や失神などの症状が起きるまで不整脈を自覚しません。

  • 診断は心電図検査の結果に基づいて下されます。

  • 治療としては、心拍を正常に回復させるとともに、以降の発作を予防します。

心臓は4つの部屋(心腔)に分かれた筋肉でできた臓器で、一生を通じて、効率よく、確実に、絶え間なく働き続けるようになっています。各心腔の筋肉の壁(心筋)が規則正しく収縮することにより、拍動のたびに可能なかぎり少ないエネルギーで全身に必要な量の血液を送り出します。

心臓の筋線維の収縮は電気刺激によって制御されており、その電気刺激は、心臓内の決まった経路に沿って調節された速さで正確に伝わります。電気刺激は、右心房(心臓の右上にある心腔)の先端にあって心臓のペースメーカーとして機能している洞房結節(洞結節とも呼ばれます)という部分から発生します。洞房結節から電気刺激が発生する頻度が心拍のペース(心拍数)を決定します。その頻度は、神経からの信号や血液中の特定のホルモンの濃度に影響されます。

心拍数は自律神経系によって自動的に調節されていますが、自律神経系は交感神経系と副交感神経系で構成されています。交感神経系は、交感神経叢と呼ばれる神経ネットワークを介して心拍数を上昇させます。副交感神経系は、迷走神経という1つの神経を介して心拍数を低下させます。

また、心拍数は交感神経系から血流に放出されるホルモンからも影響を受けます。

  • アドレナリンエピネフリン

  • ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)

アドレナリンノルアドレナリンは心拍数を上昇させます。甲状腺から血流に放出される甲状腺ホルモンも心拍数を上昇させます。

成人における安静時の正常な心拍数は、通常は毎分60~100回です。しかし、若い成人や身体的に健康な人では、これより心拍数が低くても正常であることがあります。痛みや怒りなどの刺激や運動への反応としてみられる心拍数の変化は正常です。心拍数が不適切に速く(頻脈)または遅く(徐脈)なった場合、不規則になった場合、もしくは電気刺激が異常な経路で流れている場合にのみ、心拍リズムの異常とみなされます。

正常な刺激伝導路

心臓の洞房結節からの電気刺激は、まず右心房に、次いで左心房に伝わって、それぞれ心房の筋肉の壁を収縮させ、それにより血液が心房からその下にある心腔(心室)に送り込まれます。続いて、電気刺激は左右の心房を隔てる壁の下方の心室近くにある房室結節に伝わります。房室結節は心房から心室に電気刺激を伝達する唯一の経路になっています。これ以外の経路では、心房は電気を通さない組織によって心室から絶縁されています。この房室結節では電気刺激の伝導が遅くなりますが、その間に心房が完全に収縮できるため、心室に可能なかぎり多量の血液を送り込むことができ、心室が血液で満たされたら、心室に収縮の信号が伝わります。

心臓の刺激伝導系
 
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房室結節を通過した電気刺激は、ヒス束という線維の束に伝わりますが、その線維の束は左心室に向かう左脚と右心室に向かう右脚に分かれます。電気刺激は続いて、心室の表面全体を覆うように下方から上方へと規則正しく広がり、それにより心室が収縮して、心臓から血液が送り出されます。

心臓の電気刺激の伝導経路

洞房結節(1)で発生した電気刺激は、右心房と左心房(2)に伝わり、これらを収縮させます。電気刺激は次に房室結節(3)に伝わり、そこでわずかに遅くなります。それから、刺激はヒス束(4)という部分を下に進んで、右心室に向かう右脚(5)と左心室に向かう左脚(5)に分かれて伝わります。こうして電気刺激が心室に広がっていくことで、心室が収縮します。

" alt="" aria-hidden="true" />心臓の電気刺激の伝導経路
 

不整脈の原因

不整脈の最も一般的な原因は心疾患で、特に冠動脈疾患心臓弁膜症心不全が多くを占めています。また、数多くの薬が不整脈の原因になることがあり、該当するものは処方薬にも市販薬にもあり、心疾患の治療に使用されるものもあります。生まれたときから存在する異常(先天異常)によって引き起こされる不整脈もあります。心臓の刺激伝導系に加齢による変化が生じると、特定の不整脈が起こりやすくなります。

ときに不整脈の原因を特定できないこともあります。

心拍数が上昇する不整脈

心拍数が上昇する不整脈(頻拍性不整脈)は、特に誘因なく始まることもあれば、運動や精神的ストレス、過度の飲酒、喫煙などの要因や、かぜや花粉症の治療薬など刺激物質を含む薬によって誘発されることもあります。

甲状腺機能亢進症(甲状腺の活動が過剰になった状態)では、心拍数が上昇する頻拍性不整脈が引き起こされます。

心拍数が低下する不整脈

心拍数が低下する不整脈(徐脈性不整脈)は、迷走神経を過度に刺激するような痛み、空腹、疲労、消化器系の異常(下痢や嘔吐など)、嚥下などによって誘発されます。まれなケースですが、迷走神経が非常に強く刺激されることで心臓が一瞬停止することもあります。ただし、このような不整脈の大半は自然に消失する傾向があります。

甲状腺機能低下症(甲状腺の活動が不十分になった状態)では、心拍数が低下する徐脈性不整脈が引き起こされます。

不整脈の症状

不整脈があると、人によっては異常なリズムの心拍を自覚できることがあります。しかし、心拍の自覚(このことを動悸といいます)は感じ方に大きな個人差があります。正常な心拍を自覚する人もいますし、ほとんどの人は左側を下にして横になると、心臓の拍動を感じることができます。

不整脈には無害なものから生命を脅かすものまで、様々な種類があります。不整脈の重篤さは、不整脈による症状の重症度とはあまり密接に関連しません。つまり、生命を脅かす不整脈でも症状がみられない場合もある一方、それほど重要でない不整脈によって重度の症状が起きる場合もあります。多くの場合、不整脈そのものよりも、その原因になっている心疾患の性質や重症度の方が重要です。

 

 

 
 
 
 
 

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