日本と海外の出火原因で「決定的に違うこと」
まずもって今回の岩手県大船渡市の山火事で被災された皆さんにお見舞い申し上げます。
【写真】大船渡山火災発生前の林相 つい先ごろの能登半島地震・豪雨災害とも重なるのだが、急峻な山が落ち込んで入り組んだ海岸となった地域での出来事で、またしても山間部独特の被害対策の難しさを感じた。
14年前の大津波に続いて長期間の避難を余儀なくされる住民であるが、そんな中で再起の決意を語る人も多く、不屈の農山漁村を応援したい。
今回の山火事の第一の原因は、降雨が例年の3%程度と極端な乾燥下にあったことである。
また、焼失面積が拡大したのは強風が続いたのと著しい風向の変化であろう。そうした状況下にあるにもかかわらず、失火を起こしてしまったことに後悔がある。
2017年に北隣の釜石市で大規模な山火事があったことは記憶に新しいはずであるが、それにもかかわらず同じことを繰り返すのは、個人だけではなく社会全体の問題である。行政は山火事への警報のようなものを出すなどして、十分住民への注意喚起に努めるべきである。
と書いているうちにも、全国各地で山火事発生が相次いでいる。刈った草を焼いたとか。大船渡の惨状を見ていないのか、自分だけは大丈夫との自信なのか、学習能力のなさに開いた口がふさがらない。
日本における山火事の原因は、ほぼ100%人為である
海外では、落雷とか樹木同士の摩擦による自然発火があるようだが、日本ではまず考えられない。
その消火の極意は初期消火にある。筆者が若いころ、高知県の物部川源流部の西熊渓谷での経験がある。4月の日曜日、群生していたヤマザクラが咲くころで乾燥した日が続いていた。筆者は数人の同僚と多くの観光客に混じっていた。
突然「火事だ!」という叫びが上がった。振り向くとすでに背丈よりも高い炎がゴウッという音とともに上がっている。すると同僚がすぐに駆け寄って、何かで炎を叩き始めた。
一瞬ためらっていた筆者たちも加勢して、おそらくその辺に生えていた低木をへし折って叩いたのだと思う。加勢も増えて幸い炎はすぐに収まった。
最初は怖くてためらったが、勇気ある同僚の機転で初期消火が成功したのである。
今回の一連の山火事も、枯草やゴミ焼きから始まったのだろうが、最初はチョロチョロでもいきなりガソリンに引火したように音を伴って大きな炎となる。
そのとき飛び込まないと後の祭りである。
一面黒焦げとなった幼齢造林地の山火事跡の調査に行かされたことがある。
国有林では山火事跡は測量して被害面積を出し、投下した造林費に乗じて被害額を積算し、造林資産を除却しなければならない。焼け跡は焦げた臭いが鼻を突き、歩くとポンポンと黒い埃が舞い上がって、すぐに衣服や靴は真っ黒、鼻の穴も真っ黒、野帳も真っ黒になる。
無くなった価値を測るだけで、生産的なことは1つもない空しい仕事である。
概して山の仕事は面白いのだが、山火事対応だけは真っ平だった。
大船渡市の山火事は、焼失面積2900ヘクタール、死者1人、住宅だけでも76棟が全壊、その他漁業施設などにも多大な損害を出して、3月9日、発生から11日目に鎮圧された。避難していた多くの住民で帰宅できた方々はさぞやほっとしたことであろう。
山火事の全容がわかるまでには相当の期間を要すると思われるが、山火事注意の季節はまだつづくので、とりあえず森林にかかわった経験から愚見を述べてみたい。
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