トランプ氏「日本は米を守る必要ない」日米安全保障条約に不満
アメリカのトランプ大統領は、NATO=北大西洋条約機構の加盟国の国防費の支出が少なすぎるという認識を示すなかで、日本にも言及し「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない」と述べて、日米安全保障条約の内容に不満をにじませました。
トランプ大統領は6日、ホワイトハウスで記者団に対し、ヨーロッパのNATO加盟国の国防費の支出について「全く不十分だ」という認識を示すとともに「彼らが払わないのであれば私は彼らを守らない」と述べました。
この話のなかでトランプ大統領は日本についても言及し「日本を好きだし、日本とはすばらしい関係にある。しかし、日本との間には興味深いディールが存在する。われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない。直接は関係しないが、日本はアメリカとの間で経済的に富を築いた。しかし、いかなる環境においても日本はわれわれを守らなくてよいのだ。いったい誰がこんなディールを結んだのか」と述べて、日米安全保障条約の内容が不公平だという認識を示し、不満をにじませました。
日米安全保障条約をめぐってトランプ大統領は、1期目にも不公平だという認識を示したことがあり、当時の安倍総理大臣に対し「変えなければならない」と伝えたとしています。
石破総理大臣「日本は基地提供する義務負っている」
石破総理大臣は参議院予算委員会で「日本が一方的に守ってもらっているという関係だけではない。日本はアメリカを守る義務は負わないが、基地を提供する義務を負っている。それがどれほど重要な意味を持つかなどは、きちんと話をしていかなければならない。ただ、大統領がこう言ったから『びっくり』『大変』とは思っていない」と述べました。
中谷防衛大臣「対日防衛義務確認してきた」
中谷防衛大臣は、閣議のあと記者団に対し「トランプ大統領の発言の逐一について、コメントしない」とした上で「日米首脳会談を含む累次の機会に、日米安全保障条約のもとでのアメリカの対日防衛義務を確認してきている。アメリカが条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いている」と述べました。
その上で、日本の防衛費について「主体的に防衛力の抜本的強化を進めていて、2027年度に、安全保障関連経費の水準がGDPの2%に達するよう、所要の措置を講じてきている。金額やGDP比ありきではなくて、大切なのは防衛力の中身だ」と述べました。
林官房長官「条約上の義務果たすことに全幅の信頼」
林官房長官は閣議のあとの記者会見で「アメリカは先の日米首脳会談を含む累次の機会に日米安全保障条約のもとでの対日防衛義務を確認しており、政府としてはアメリカが核を含むあらゆる種類の能力を用いて条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いている」と述べました。
その上で「平和安全法制により日本を守るため日米はあらゆる事態に切れ目なく互いに助け合うことが可能となり、今や日米同盟はかつてないほど強固になっている。わが国として主体的に抑止力と対処力を強化するための取り組みを不断に検討し、防衛力の抜本的強化を着実に進めるとともに日米で緊密に連携していく」と述べました。
元駐米大使 藤崎一郎さん「またかという感じ 日本冷静に」
元駐米大使の藤崎一郎さんは「またかという感じだ。安倍政権の2019年にも同じような発言をしていた。貿易赤字や円安、日本の自動車輸出に関する発言と同様に、トランプ氏は同じことが固定観念として入っているのだと思う」という見方を示しました。
また、トランプ大統領の発言の背景について「損得という物差しで物事を見ているため、大きな視点で見れば実はアメリカのためになっていても、まずはアメリカ側の持ち出しが大きいと考えているのではないか」と指摘しました。
そのうえで今後のトランプ大統領の出方については「ディールメーカーなので、強いことを言って相手からいろいろなものを引きだそうという要素もある」と分析しました。
さらに、藤崎さんは日本がとるべき対応について「大事なことは、日本が冷静に対応することだ。ひとつひとつの発言について、コメントしていく必要はない」とする一方で「ロシアでやったようにディールを作るのが好きな方だから、中国や北朝鮮で何か大きなディールをしようとするかもしれない。日本としては情報をしっかりとり、アメリカ政府に対してこれをやってもらったら困るとあらかじめインプットすることが大事なのではないか」と述べました。
そのうえでトランプ大統領が2月、石破総理大臣との首脳会談で日本の防衛への関与を強調した点などについて触れたうえで「石破総理大臣が約束を取り付けた共同声明があるので今後も日本がきちんとやっていくと強調すべきだ」と指摘しました。
トランプ大統領 日本めぐるこれまでの発言
アメリカのトランプ大統領が去年行われた大統領選挙や、ことし1月の就任式の演説などの場で日本に言及する機会はほとんどありませんでした。
一方、トランプ大統領は2月7日、首都ワシントンで石破総理大臣と初めて会談しました。
トランプ大統領が就任以降、外国の首脳と会談したのは、イスラエルのネタニヤフ首相に続いて2人目で会談では、▼アメリカの日本に対する貿易赤字は巨額で、解消するべきだという考えを強調したほか、▼安全保障の分野で連携を強化し日本がさらに防衛費を増額することに期待も示しました。
そして、トランプ大統領は石破総理大臣と一緒に撮った写真を贈って友好的なムードを演出したうえで「石破総理大臣とごいっしょできて大変光栄だ」とか「タフだがナイスガイだ」などと評しました。
一方、日本製鉄によるUSスチールの買収計画をめぐってトランプ大統領は首脳会談のあとの共同記者会見で、買収ではなく多額の投資で合意したとし、その後も「誰もUSスチールの株式の過半数を持つことはできない」などと述べていました。
また、3月3日にはトランプ大統領は記者団に対し「日本の円であれ中国の通貨であれ、ドルに対して通貨を下落させるとアメリカにとって非常に不公平で不利な状況をもたらす」と述べ、中国とともに日本が通貨安を誘導してきたと主張しました。
4日に行われた施政方針を示す演説では日本について、アラスカ州でのLNG=液化天然ガスの開発をめぐって「日本、韓国、そのほかの国々が 何兆ドルもの資金を投じてパートナーになることを望んでいる。本当にすばらしいものになるだろう」と述べていました。
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